犬に塩分は必要なの?
一説には犬は汗をあまりかかない為、体外に排出することがないという理由から、塩分はあまり必要ないと言われます。ですが、犬も人も細胞外液のナトリウム濃度がほぼ同じで、決して犬は塩分が不必要なわけではありません。
確かに犬はあまり汗をかく機能がありませんが、基本的に汗によって塩分を排出する量は全体の約10%にも満たず、その殆どは尿から排出されている為、犬には塩分は必要ないというのは間違いといえます。
犬も人も塩分が生命維持に必要不可欠な成分であり、ある研究結果では1日に4mg/kgほど必要といわれていますが、これは生命維持に必要最低限の量です。
犬に必要な塩分の適量は諸説ありますが、1日に25~50mg/kg必要といわれ、これはナトリウムの量で塩分換算式はナトリウム(mg)×2.54÷1000です。
世界最小の犬種であるチワワの場合は約0.18gで、世界最重量といわれるセント・バーナードの場合は約4.9gになります。
なお、世界保健機関(WHO)は健康成人の塩分の適量を1日5gで、ナトリウムでいうと40mg/kgと設定されているので、犬の適量とそれほど大差がないことがわかるかと思います。
そもそも塩分とは?
人でもそうですが、塩分にはいくつかの働きがあります。塩分は細胞間液や体内を循環する血液量をコントロールする働きがあるのです。
その他にも、浸透圧の調節・酸とアルカリのバランスを保つ働きがあり、神経の伝達・筋肉の収縮・糖やアミノ酸の腸管での吸収にも関わっているので、生きて行く上で重要な成分といえます。犬が塩分不足になるとどうなる?
では、塩分が不足すると、犬にはどういった症状が現れるのでしょうか?
塩分が不足すると、倦怠感・食欲不振・血液濃縮・筋肉痛などの症状が現れ、進行すると精神障害なども引き起こします。塩分が不足の状態が慢性的に続くと、軽い下痢や嘔吐で自力で立ち上がれなくなる事もあるので注意が必要です。
犬の塩分が不足した際の症状(軽症)
犬の塩分が不足した際には以下のような行動を確認することができます。
- 他の犬のおしっこの後を舐める
- 土やコンクリート、壁などをよく舐める
- 排尿後に入念に陰部を舐める
- 肢をよく舐める
- 人の足や手を舐める
犬は塩分が不足すると、本能的にその不足分をどうにか補おうとします。これらの行動が認められた場合には、塩分が不足している可能性が高いので、塩分の調節を行うよう考慮しましょう。
犬の塩分が不足した際の症状(重症)
また重症の場合には以下のような症状が確認できます。
- シュウ酸カルシウム結石ができやすくなる
- 尿の色が濃い黄色になる
- 腎臓の数値が上がり始める
- 安定した麻酔ができにくくなる
- 軽い下痢や嘔吐でも動けなくなる
この状態になった場合にはすぐに動物病院で診察を受けるようにしましょう。腎臓の数値が上昇し始めると、塩分制限を行います。人の場合は人工透析を行いますが、獣医療の場合には人工透析が一般的ではない為、点滴が一番有効な治療方法といわれています。
嘔吐や下痢は体内の塩分を大量に排出する機会となり、塩分の蓄えが少ない犬の場合には早々に重症化してしまいます。手術などの麻酔時に不整脈が起こり、安定した麻酔ができなくなります。
シュウ酸カルシウム結石
シュウ酸が体内に吸収され、尿が産生される時にカルシウムと結合して結石になります。これはシニア犬に多いといわれています。
この結石は主に腎臓で生成され、飲水量と尿の量が減少すると、腎臓がシュウ酸やカルシウムで飽和状態に陥ってしまい、結石ができやすくなるといわれます。
シュウ酸を含む食べ物を摂取しないようにする等といわれていましたが、基本的にシュウ酸を含む食物を摂取する機会が多くはない為にシュウ酸の摂取と結石の関連性は少ないといわれています。
消化がよくミネラルバランスの良い食事をとる事が必要といわれます。また、ストラバイト結石の治療により、アルカリ尿を改善した結果、賛成尿になりすぎてしまい、シュウ酸カルシウム結石ができるという場合もあります。
人工透析
腎臓は一度低下した機能を取り戻す事が難しい臓器なので、残った腎臓だけでは体を維持する事が不可能な場合に、行われるのが人工透析です。人工透析には血液透析と腹膜透析がありますが、動物では人よりも人工透析をできる動物病院が少ないのが現状です。
塩分が不足した際の症状(最悪)
最悪の場合としては以下のような症状が出る可能性があります。- 意識が朦朧として反応が著しく鈍くなる
- 運動能力自体が衰え、運動障害や椎間板疾患と誤診される
- 内臓機能の限界から下痢を起こし、腎臓機能検査の数値が跳ね上がる
この場合は、迅速な対応が必要となるのでできる限りこの段階に至る前に対処するようにしましょう。
犬の塩分が不足した場合の治療
塩分が不足した際の治療は、ずばり塩分を摂取させる事です。意識が朦朧としていた犬でも、十分な塩分を与える事で普段通りになります。
ただし、ここで気を付けるべき事は、適切な塩分量です。冒頭でも説明したとおり、適切な塩分量は素人では判断が難しいため、なるべく獣医さんの判断を仰ぎましょう。
また、塩分摂取の方法は「点滴」をしてもらう方法もあり、緊急性をようする場合やどうしても判断が難しい場合は、動物病院で点滴を行ってもらいましょう。
犬が塩分を過剰摂取した場合はどうなる?
人もそうですが、塩分を取れるだけ取ればいいわけではありません、何事も適量が存在します。では、塩分を過剰摂取した場合にはどういった症状が現れるのでしょうか?
人の場合は塩分を過剰摂取すると高血圧や胃がんを引き起こし易いといわれますが、犬の場合は現在の所は認められてはいません。
但し、腎臓疾患や心臓疾患を進行させてしまう事が分かっているので、これらの疾患を罹患している犬を飼育している飼い主は気をつける必要があります。
普段の餌に塩分を加えた方がいいの?
市販のドッグフードを食餌として与えている犬の場合には、もともと塩分が添加されている為にドッグフードとは別に塩分を与える必要はありません。
自分の家族である愛犬に市販のドッグフードではなく、手作りの食餌を与えたいと思う飼い主もいると思いますが、手作りの場合は犬には塩分が必要ないという間違った定説から、塩分を入れない、もしくは不足する場合があるので手作りの食餌を与える場合には塩分量を注意して作るようにします。
ただ、塩分を加えればいいわけではなく、その犬の体重や健康状態に合わせて加えるようにします。
塩分が多いおやつ
愛犬が喜ぶおやつをついつい与えて過ぎてしまいますよね。ですが、中には塩分量が多いものもあるので、塩分過剰にならないように注意しましょう。
犬用ジャーキーだと100g当たり1~3g、犬用ビスケットで100g当たり1~3g、犬用煮干しだと100g当たり3~5gで、食パンで100gあたり1.3g、チーズだと100g当たり2.8gほど含まれています。またドッグフードにも塩分が含まれている為に、あまり与え過ぎないようにしましょう。特に小型犬や超小型犬の場合は体重が軽いので、塩分量も少なく過剰になり易いのでやり過ぎには要注意です。
まとめ
以前は、犬には塩分があまり必要ないという説が正しく思われていた事もありましたが、調べてみると塩分が必要な理由も納得の理由でした。なぜ犬には塩分が必要ないという事が信じられてきたのか謎です。
必要な塩分量は体重によって変わってくるので、細かく理解しておく必要はありませんが、大まかな体重だけでも理解するようにします。理解しておくと、どれだけの塩分が必要で塩分過剰にもならず、塩分不足にもならない量を理解しやすいと思います。
塩分の過剰や不足だけで大事な家族である愛犬を苦しめる事がないように、塩分の適量の範囲を超えないようにしてあげましょう。
ユーザーのコメント
50代以上 女性 ろちゃん
家の場合、不足の症状はないようで安心しました。何事も適量が大切ということですね。
30代 女性 チョコママ
しかし、犬が塩分を摂取するなんて初めて聞きました!犬の汗腺は足の裏にしかないので、塩分は必要ないとずっと思っていました。
うちの愛犬は、人の手や足をペロペロしつこいくらいに舐める時があります。どれだけ舐めるの?!と思ってしまうくらい舐めるので、塩分を欲しているのかなぁと思いました。
50代以上 女性 ソナタ
愛犬がどのくらいの塩分が必要で塩分過剰にもならず、塩分不足にもならない適切な量を理解しておく事が重要ですね。
女性 匿名
50代以上 男性 匿名
正しく書くならば食塩の取り過ぎは良くないと書くべきでしょう。
むしろ日本人は塩分が不足しています。
アルツハイマーなどは塩分不足が引き起こす症状です。
海水を天日で干して作った天日海塩を十分に与えるようにしましょう。(人間も同じです。)
40代 女性 てとめる
女性 匿名
女性 ぐりぐら