犬にもあるといわれている帰巣本能とは
動物が、一定の住処や巣などから遠く離れても、再び同じ場所に戻ってくる性質を帰巣性と言い、その能力を帰巣本能と言います。一般的には犬や猫の他に、燕、伝書鳩、鮭、蜜蜂、蟻などが帰巣性があると言われています。
帰巣本能のある動物は体内時計や生体磁石を持っており、犬や猫はこれに加え、発達した嗅覚が武器になっていると言われています。散歩などの最中に、愛犬がぐるぐると周囲を歩き回り、自分の知っている臭いを見つけると歩き出す。そのような光景をあなたも見たことがあるのではないでしょうか。
どんな犬でも帰巣本能はあるのか?
残念ながら全ての犬に帰巣本能があるわけではないようです。特に同じ散歩コースしか歩かない完全室内犬は帰巣本能がない、或はあってもそれほど強くない、と言われています。
犬種ではシベリアンハスキーなどは、帰巣本能が低いのではないか、と言われていますが、それは適応能力の高さに理由があるとの見解があります。なぜなら、元々そり犬として過酷な環境で暮らしていたため、飼い主や仲間とはぐれた時に、巣に帰るよりも生き残ることを選択するからだと言われています。
反対に柴犬などは帰巣本能が強いと言われていますが、犬種よりも飼い方や個体差、能力によって、帰巣本能に差があるようです。
犬の帰巣本能に関するエピソード
1995年にはイギリスで、約130Km離れたから町から7週間かけて帰ってきた愛犬の事例があるそうです。他にはどんなものがあるのか見てみましょう。
コリーミックスのボビーの場合
1923年の夏、インディアナ州・ウォルコットで、飼い主の運転する車から飛び出して、行方不明になった生後6ヶ月のボビー。
あらゆる手を尽くし捜索しましたが、結局見つからず、仕方なく飼い主は自宅へと戻りました。
しかし同じ頃、ボビーもまた自宅を目指していました。
川を泳ぎ、山を超え、途中で寄り道をしつつも、約6ヶ月を掛けて、飼い主の経営するレストランに辿り着いたボビー。
その距離はなんと4,800キロ!!因みに北海道の稚内市役所から沖縄の那覇市役所までの距離が 3,422.1kmと言われています。
ラブラドールレトリバーのタフ
1996年、フロリダ州に住む飼い主が、出先で目を離した隙に姿を消したのは、イエローラブラドールレトリバーのタフ。
飼い主が慌てて辺りを捜索するも見つからず、結局見つかったのは、行方不明になった場所から、飼い主の家に29キロほども近づいた場所だったそうです。
ビーグル犬のレーザー
ビーグル犬のレザーは3歳の時に、ウィニペグに住む飼い主に引き取られましたが、その1ヵ月後、旅先でちょっとしたアクシデントから行方不明に。
懸命に捜索したところ、幾つもの目撃情報が寄せられ、レーザーが自宅へ向かって帰って来ていることに飼い主は気付きます。
最終的に自宅近くで保護されたレーザーは、およそ80キロほどの距離を自宅へと戻って来たことになります。
シベリアンハスキーのムーン
先程はシベリアンハスキーは帰巣本能が低い傾向にあるのではないか、と申し上げましたが、勿論個体差によって例外もあります。
ネバダ州・エリーでのお話。
飼い主が3匹の犬をドライブに連れていった際に、休憩で立ち寄った場所から姿を消したシベリアンハスキーのムーン。
数時間捜索したものの見つからなかったため、飼い主は諦めて岐路に。
しかしそれから1週間掛けて、ムーンは砂漠や山や川を越え、123キロの道程を飼い主の元へと帰って来たそうです。
ジャックラッセルテリアのジャービス
イギリス・デボン州に住む飼い主が飼っているジャックラッセルテリアのジャービスは、旅先で散歩中に突如として行方不明に。飼い主が必死に探し回ったものの見つからず、そのまま岐路につきました。
数日後、飼い主の元へジャービス帰宅の一報が入ります。
行方不明になった場所からはフェリーでの移動手段しかなく、ジャービスがいかにして帰って来たかは未だに謎のままです。
エアデールテリアのマックス
ニューヨークに住む飼い主と、出先で車の追突事故に遭遇したのは、エアデールテリアのマックス。その際に驚いたマックスは車から飛び出し、そのまま行方不明に。
飼い主は大掛かりな捜索活動をしましたが、結局見つかりませんでした。
しかしそれから一ヶ月ほどが経ち、飼い主が仕事から家に帰ると、マックスが玄関の前に座っていました。
その距離はなんと72キロほど。体重が減っただけで、無事だったそうです。
電車に乗って帰って来たアーチー
スコットランドのとある駅で飼い主とはぐれた犬のアーチーは、電車に乗って飼い主の元へ帰って来たそうです。
その際にはちゃんと乗るべき電車に乗り、自宅近くの最寄駅で降りたとか。
ただ「切符は持っていなかった」そうです。
7年経って帰って来た笨笨
散歩に出た際、行方不明になってしまった笨笨。あちこち探し回りましたが結局見つからずに7年が経ちました。
ある日、飼い主がバイクで北京市内を走っていると、笨笨に似ている野良犬を発見。
名前を呼ぶと、強い反応を見せたので、飼い主は笨笨と判断。
この場合は帰巣本能が関係あったかは分かりませんが、こう言った事例もあるようです。
犬の帰巣本能についてのまとめ
我が家の場合
ここで私が幼い頃に飼っていたマルチーズ・シロの話を紹介します。
私が学校へ行っている間、母はよく庭でシロを遊ばせていました。
そんなある日、ほんの少し目を離した隙に行方不明に。
学校から帰って来た私は、泣きながらシロを探しました。
保健所に問い合わせ、チラシを配り、当時出来ることは全てやったつもりです。それでもシロは見つかりませんでした。
シロがいなくなり一年。ペットロス状態だった私に両親は、知人の家で生まれたアイヌ犬・リトルを与えてくれました。
心の片隅ではシロを気にかけながらも、私はリトルとの新生活を満喫していました。
リトルが来てから一年、シロが行方不明になってから二年経ったある日のこと、一本の電話が鳴りました。
「お宅に犬はいますか?」と。
「います」と答えると「その犬の名前はシロですか?」と聞かれ「違います」と答えました。
すると今度は「白い犬ですか?」と聞かれ「そうです」と答えました。
アイヌ犬のリトルは白毛でしたから。
「どちら様ですか?」と聞くと「保健所です」と言って電話は切れました。
その時はそれほどその電話を気にはしませんでした。
しかしその数日後、父がいつものように会社に行こう、としたら、ぼろぼろのマルチーズが近所を彷徨っている場面に遭遇。「まさか!」と思い近づくと、それはあのシロでした。二年経って、シロは私の元へ帰って来たのです。
その時に漸く電話の意味が分かりました。
きっとシロは誰かに盗まれていたのでしょう。
それも我が家のことを知っている人だと思います。
その家から逃げたシロが、私のところへ帰ったかもしれない、と思い、盗んだ人は、保健所の名を語り、確認の電話をして来たのだと思います。
それから暫くシロは我が家で過ごしましたが、ある日また突如としていなくなったのです。裏庭に繋いで、ひなたぼっこをさせていた時です。
多分、同じ人が取り返しに来たのだと思います。
それ以降、シロに会うことは一度もありませんでした。
でも二年経っても、私のことを忘れないで帰って来てくれたシロには、確かに帰巣本能があったのだと思います。
帰巣本能は特別な犬だけ!?
しかし、一般的に犬の帰巣本能は、科学で証明されている訳ではありません。
帰巣本能の能力に関しては様々な説がありますが、どれもこれも仮説の域を出ないのです。
長い年月、長い距離を超えて帰って来た動物達のニュースが新聞、雑誌、テレビ等で取り上げられるのは驚くべき出来事だからだと思います。
その証拠に毎年数十万頭の犬が迷子になっているのですから。
完全室内犬が殆どの中、現在に生きる犬たちの多くは、家へ無事に帰り着く能力は持っていない、と思われます。
それなので、取りあえず私たち飼い主は、愛犬の帰巣本能を信じるよりも、迷子にならないことを最優先に、マイクロチップや、迷子札をつけるようにして、最善を尽くしましょう。
ユーザーのコメント
40代 女性 ぱん
家庭犬と過ごしている現在の犬は、昔に比べたら帰巣本能は劣るかもしれません。
わたしの知人の犬が近所の人に盗まれて遠くに置いてかれたことがあるのですが、数日後にはもとの家に帰ってきたとのことでした。小型犬でも帰る家が分かったなんて驚きです。やはり帰巣本能はあるのかもしれませんね。
多くの動物には、コンパスのような磁気方位システム(磁気感知)が内蔵されていることと、正確な体内時計により、太陽の位置と自分の位置の関係から本来の場所まで帰ってくるという本能が備わっているそうです。
また海外での研究チームの報告では、犬がおしっこやうんちをするときに、南北の軸に沿って用を足す習性があることが確認されているといいます。このことから犬にも磁覚が備わっていることが推測できるそうです。
動物の帰巣性については不明な点が多くて、科学的な説明は難しいそうですが、このようなことを聞くと、愛犬にも帰巣本能が備わってる気がしてきませんか。
30代 女性 ともちゃん
(例1)
普段とは別ルート、寄り道を挟んで惑わせても、2km以上先のお気に入りのカフェに行くためには「こっちの道だよ」と最短ルートを間違いなく示す
(例2)
散歩好きのため、帰路は嫌がりがち。ということで、帰路とわからないように工夫を重ねても、成功した試しはなし。行きはよいよい、帰りは・・・である。
犬の帰巣本能をはじめ、方向感覚には「磁気感知」という体内時計が作用すると言われており、方向音痴になりがちな飼い主の小手先では通じないのかもしれませんが、そんな愛犬でもマンションの6階と1階の違いは分からないようで、場所は同じだが階が違うお部屋に帰宅しようとはします。
機会があれば、探偵ナイトスクープあたりで特集してくれたらいいのですが(笑)
女性 ムツコ
残念ながらうちの先代のラブちゃんにはなく、おそらく現在のワンコにもない気がします。先代のラブちゃんは田舎でしたので庭に放し飼いにしていました。ある日、朝ご飯を上げようと見てみるとそこに姿はなく、山を少し登ってエスケープをしたようでした。どうしよう、と家族で焦っていると1本の電話が。「おそらくお宅のわんちゃんだと思うのですが、ゴミ置き場をうろうろしていて。その後海に行きました。」とのことでした。(田舎でまわりが犬をあまり飼っていなかったのですぐにわかってもらえました。)ゴミ置き場うろうろ・・おいおいと思いながら海に行くと浜でのんびり過ごしていました。時間が短かったからか、自分から抜け出したからか帰巣本能は感じられませんでした。その後は少し遊んで帰宅しましたが、電話をくれた近所の方には本当に感謝でした。万が一を考えて今のワンコには常に鑑札をつけています。
女性 colo
早速愛犬のトイレの時にじっくり頭の方向を確認すると、東向きでした。しかも毎回同じではなくいろんな方向を向いていたので、うちの子は方位磁石があまいようです。
毎日同じコースのお散歩をしていれば、次はどこを通って帰るかは習性で覚えるものだと思います。帰巣本能ではないのですね。
海外では遠距離遥々飼い主さんを探して帰ってきたお話も多いです。偶然で帰れるような距離ではないので、帰巣本能が優れている犬もいるのだと思います。逆に元から鈍い犬もいます。
子犬の頃から色々な土地に足を運ぶと、その土地ごとの匂いなどで帰巣本能も刺激されていくのかもしれません。日本のように限られた範囲をメインに生活をしていくと、その感覚も段々薄れて行ってしまうのかもしれませんね。
記事のシロちゃんが折角帰って来たのに、また盗まれる事態を平然と書かれることに少々苛立ちを覚えました。帰ってきたということはシロちゃんにとってそこがお家だったんだと思います。新しい子がいるからもういらなくなってしまったのでしょうか。折角まとまった記事だったのに、ここで残念な気持ちになりました。
女性 メイ
30代 女性 xoxo
昔飼っていた犬は、家の庭をなんらかの理由で脱走してしまったのですが、あちこちに迷子犬のポスターを貼りまくった結果、1か月後に隣町で見つかりました。うちから見える線路と同じように線路沿いにあるお宅で発見されました。
方向がわからなくなってしまっていたようですが、うちから見えていた景色を探していたんだなと思います。だいぶ遠くに行ってしまっていましたが、線路沿いを歩いていたことを思うと、どんな思いで過ごしていたのか胸が締め付けられます。
以前朝早い出勤中に、繁華街の真ん中でダックスがひとりで歩いているのを見かけました。捕まえようとしたのですが、逃げられてしまって、あの犬は家に帰れたのか未だに心配です。
女性 MOMO
女性 わん
女性 たぬき
50代以上 男性 KOU