帝王切開でしか出産できない犬とは
犬の帝王切開術とは
帝王切開が適応となる状況として、陣痛が弱い微弱陣痛、胎子が大きすぎて骨盤の通過が難しい場合、もしくは母犬の骨盤が小さすぎる場合などがあります。
また、胎子が逆子やへその緒を巻いてしまった状態など、整復が難しい胎子の体勢、胎子の奇形、胎子が死んでしまった場合も帝王切開が適応となります。
その他にも母体の異常として、子宮捻転や鼠径部の子宮ヘルニア、妊娠中毒症などの場合も帝王切開を行います。
疾病や出産時の異常に気がつく場合、帝王切開は一般的に適応されますが、難産発生率の高い犬種では、分娩の予定日前に母体と胎子の安全を考慮して帝王切開を行うことが主流となっています。
帝王切開術はタイミングが重要
手術の時期は母犬の予後と胎子の生存に影響を及ぼします。
陣痛開始から12時間以内に帝王切開術を行えば、母犬の予後は比較的良いと言えますし、胎子の生存率も高くなります。
しかし、帝王切開をすることの判断が遅れたりすぐに手術が行えないなどの理由により、陣痛開始から24時間以上経過すると、母犬は疲労やショックにより予後は最悪の場合死至ります。
胎子に関しても同様で、手術開始時間が遅くなればなるほど死亡する確率が高まります。
万一のことを想定して、いつでも帝王切開を緊急手術として行ってくれる動物病院を探しておきましょう。
では次に、ほとんどの出産を帝王切開で行わなければいけない犬種をご紹介します。
ブルドッグの場合
子犬の頭部が大きすぎて、母犬の骨盤腔を通過することが困難であるため帝王切開での出産がほとんどとなります。
遺伝性に帝王切開の選択を行うことがほとんどで、自然分娩で稀に出産する例もありますが、母犬の苦痛は長期に及ぶため、注意が必要です。
また、子犬も長時間を要する自然分娩により致死率も上がるためブルドッグは帝王切開での出産が主流になっています。
フレンチブルドッグの場合
フレンチブルドッグもブルドッグと同じように、帝王切開術での出産になる場合がほとんどです。
自然分娩は、母犬と胎子の生存に危険を及ぼすため、あらかじめ帝王切開術を選択します。
ブルドッグやフレンチブルドッグの子犬は、ペットショップやブリーダーで他の犬種よりもやや高価となっているのをご存知でしょうか?
その高値の理由は、帝王切開術の費用や出産のリスクを背景としています。
チワワの場合
小型犬では、母犬の骨格が小さいチワワが帝王切開術を用いての出産になることが多いです。
ブルドッグやフレンチブルドッグのように計画的に帝王切開を選択することは少ないですが、超音波エコー検査やエックス線検査などの画像診断を行い、胎子と母体の骨盤の大きさを分娩予定日前に確認することが大切です。
あらかじめ把握できていることで、安全策として帝王切開術での出産を計画し分娩時の事故を防ぐことができます。
これは、チワワに限らずヨークシャテリアや他の小型犬でも同様ですので、母子の安全を守る対策として動物病院での画像診断をおすすめします。
なぜ特定の犬種に帝王切開が必要になったのか
品種改良により自然分娩が困難になった
いわゆるブルドッグとして愛されているイングリッシュブルドッグはマスティフ系の犬種でした。
『ブル(雄牛)』と『ドッグ(犬)』という名前の由来から、ブルベイティングという闘牛目的に改良されました。
この競技は、数匹の犬を牛がいる空間に放ち、牛の鼻を噛み牛を倒した犬が勝者となります。犬に賞金を賭けて、人々の娯楽としてブルベイティングが行われていました。
品種改良が行われる前は、マスティフのようにマズルも現在のイングリッシュブルドッグよりは長く、頭部と体部の大きさのバランスも取れていました。
牛に噛み付いても呼吸ができやすいよう下顎が出ているように改良され、短足で体高を低くすることにより牛の角から逃れやすいよう改良されました。
また、特徴的なシワも牛の角による傷害を抑えるためであり、一部では断耳も行われていました。さらに、牛に噛み付いた時の遠心力もできるだけ抑えることができるよう、重心を前駆に置くように改良されました。
牛を倒すということを目的に品種改良が重ねられたため、体重もできるだけ重くするという傾向もありました。
しかし、動物愛護の観点から、イギリスでは1835年に犬の闘牛がなくなり、牛と闘うという役目は無くなりましたが、ブルドッグ愛好家やブリーダーはブルドッグの保存に力を注いだ結果、現在のブルドッグがあります。
当時のブルドッグは現在のブルドッグよりも闘争的で獰猛でした。
現在のブルドッグからは想像できませんが、別の犬に生まれ変わったような変貌を遂げたと言われています。
彼らの表情はユーモラスですが、少し闘犬の趣が残っていますね。ですが、性格は当時からするとだいぶ温和になり、世界中の愛犬家に愛されています。
闘犬のために、品種改良が重ねられた際に前駆に重みを置いていたことが原因で骨盤が小さいです。
この骨盤の小ささ、頭部の大きさのバランスが不自然なためブルドッグは帝王切開を前提として出産が行われています。
帝王切開での出産という選択肢
帝王切開術が当たり前のように適応されている犬種がいますが、やはり帝王切開術は自然分娩よりも感染や生命に関わるリスクが高まります。
ブルドッグなどの短頭種は、現在世界中から愛されていますがこのようなリスクを伴う帝王切開で出産していることをしっかりと頭に入れておくことが重要だと思います。
私たちの知らないところで、危険性を伴う出産を行った結果命を落としてしまった犬もいたことでしょう。
短頭種を飼いたいという方は、特に帝王切開術での出産が行われているということを考え理解する必要があると思います。
品種改良の結果、このような現状が生じてしまいましたが、今後自分のブルドッグに出産をさせたいという方は、帝王出産を行ってまで出産をさせたいのかどうか、しっかりと考えてください。
不安や心配を募らせる方も多いと思うので、獣医師などの専門家に相談しましょう。
犬の帝王切開に関するまとめ
ブルドッグやフレンチブルドッグなどの難産発生率の高い犬種のほとんどは、帝王出産にてこの世に生まれてきました。
帝王切開術を行い、リスクのある出産を経て生まれた犬はもちろん、リスクを背負ってまで生んだ母犬のことも忘れてはいけません。
私たちの知らないどこかでは、残念ながら高リスク出産の末、命を落としてしまった犬もいるかもしれません。
どの動物にも言えることですが、命に最後まで責任を持ちましょう。
ユーザーのコメント
20代 女性 ばうむ
ブルドッグやフレンチブルドッグなど人間が品種改良し産まれた犬種なので、そもそもが人が手を加えないと生活できない犬種と言われていますよね〜。読んでいて納得しました。
どんな犬種でも出産をする際には、時と場合により帝王切開になる可能性がありますが、ブルドッグなどは帝王切開になる可能性の方が高く自然分娩はほとんどないようなのでその分リスクなども上がりますよね。
ブルドッグやフレンチブルドッグの仔犬を見かけると可愛いなぁ〜なんて癒されていましたが、その裏で母犬は命がけで出産していたんですね。(全ての母犬が命がけで産んでいますが)
もし、飼っているブルドッグなどを出産させたいと考えている場合はリスクなど調べたり、出産させる病院を探すなどする必要がありますよね。もちろん何があるか分からないため出産するかどうかも考えておかなくてはなりません。
ブルドッグだけでなく、チワワやトイ・プードルなどでも特に小柄なわんちゃんは帝王切開になることも多いと聞きます。
出産予定がない場合は、避妊手術をおすすめします。
30代 女性 さら