犬が「本気噛み」をする3つの心理
犬の「噛む」という行為にはいくつかの種類があり、もちろんその時の感情もあります。決して無意味に噛みついているわけではありません。犬が本気噛みをする理由を3つご紹介します。
① 興奮して力の加減が出来ない
犬は楽しいことが大好き。飼い主さんと遊ぶことに喜びを感じる子はとても多いはず。しかし、その犬種がもともと持つ気質や性格によって、非常に興奮しやすいタイプの子もいます。
また、犬によっては猟犬や闘犬として活躍していたルーツから、獲物を追いかけて捕捉する本能が強いために、本気噛みにつながっているケースもあります。
愛犬と一緒に楽しく遊ぶことは、犬の心身の健康を保つためにもとても大切なことですが、興奮しすぎてしまうのは良くありません。本気噛みに繋がる危険性があるのはもちろん、自身の興奮で体温が上がってしまい熱中症を起こしてしまう子もいます。
② 「嫌だ!やめて!」という意思表示
「嫌だ」「やめてほしい」という気持ちを伝える手段としても、犬は本気噛みをします。例えば、爪切りなどのお手入れを行おうとすると、過去に痛みや不快感を感じたことを覚えていたために、愛犬が自分自身を守ろうと噛んでしまうのです。
「もっと力強く噛めばやめてくれるかも」と考えた愛犬が、嫌がっているのに無理に行為を続けようとした時に、軽く噛む程度の抵抗から本気噛みをするようになってしまうのもよくあるパターンです。
③ 自分や縄張りを守るための攻撃心
犬は恐怖心がピークに達した時や、縄張りなど自分自身の大切な物を守る時など、様々な場面で本気噛み行動に出ます。これは攻撃行動のひとつで、本気噛みをする前に、唸る、吠えるなどの前兆となる行動がよく見られるはずです。
多くの原因には、厳しすぎるしつけや犬への暴力、過剰な甘やかしなど、愛犬に不信感を持たれるような対処をしていたり、信頼関係を築いてこなかったこれまでの生活にあります。
「本気噛み」は子犬の「甘噛み」とはまったく違う
愛しい愛犬が「甘噛み」を通り越して「本気噛み」をしてきたら、飼い主さんのショックは相当なものですよね。
「甘噛み」は犬がじゃれて遊んでいる時に、軽く噛みつく行為のこと。子犬期によくある遊び半分のような噛み方で、力加減をしているので噛まれた側が怪我をすることはほとんどありません。
一方、「本気噛み」は読んで字のごとく、力加減なく本気で噛んでくることです。本気噛みをされれば、小型犬でも人を骨折させたり、犬の体格によっては人の命を危険にさらすほどの大怪我に繋がる恐れもあるため、対処法を考えなくてはいけません。
本気噛みを放置する危険性
愛犬の本気噛みに何の対処もできないと、飼い主さんはもちろん、愛犬や家族以外の他人にもさまざまなデメリットが生まれます。
飼い主との信頼関係の崩壊
どんなに大好きな愛犬であっても、本気噛みをされてしまうと、愛犬に対して恐怖心が芽生えてしまうのは当然のことです。
しかし、「噛まれるから」と愛犬と距離を置けば置くほど、犬にとっては「噛めばみんなが自分の言うことを聞く」「思い通りになる」と理解し、本気噛み行動が余計にエスカレートする危険も秘めています。
そうして本気噛みされることが増えるたび、飼い主さんだけでは対処できない「噛み犬」が生まれる悪循環ができあがってしまうのです。
家族以外の人とのトラブル
犬の本気噛みは、飼い主さんや同居動物はもちろんのこと、周囲の人を巻き込んで怪我を負わせる危険性もあります。
家族以外の人が大怪我をしてしまった時には賠償トラブルにも発展するほか、あまりに激しく人を噛んでしまうトラブル続きの犬は通報され、保健所に引き渡さなければいけなくなることもあります。最悪の場合は愛犬の命にも関わります。
また、噛み犬と思われた愛犬は、トリミングサロンやペットホテルの利用を断られたり、周りの人から避けられる犬になってしまうのです。
「本気噛み」が治らない時の対処法
どれだけ早く対処できるかが重要
本気噛みは、犬にとって「嫌なものが追い払えた」というような成功体験を積み重ねるほど、自分の意思を伝える手段として愛犬に根付いてしまいます。
そのため、噛まれてから叱ったり、噛まれている最中に愛犬にやめてほしいと伝えるような甘噛みと同じ対処法をとっていると、状況がどんどん悪化しがちです。
「本気噛み」と「甘噛み」はまったくの別物と考え、以下の2点にしぼって、愛犬の本気噛み行動をくり返さないよう意識しましょう。
- 噛まれる状況についての情報を整理(噛む対象は?どんな場面で?…など)
- 情報を元に噛まれる状況を作り出さないよう予防する
万が一、本気噛みされて怪我をしても、その場で強く叱ったり叩いたりすると、犬の抵抗心や攻撃意欲を高めてしまうこともあるため注意が必要です。
冷静に愛犬と接することに恐怖を感じるのであれば、噛まれた時の痛み軽減のために専用の革手袋などを使って、人が怪我をしないようにするのも1つの対処法です。
しつけはプロに介入してもらう
愛犬の本気噛みで悩まれている飼い主さんは、プロの力を借りるのが1番です。犬が本気噛みしてしまう時の心理は、興奮や抵抗、攻撃など、基本的に「負」の感情ばかりです。
苦手な行為を愛犬に受けて入れてもらうには、愛犬が負担にならないような方法で「大丈夫なんだよ」と教えてあげることが大切ですし、怖がりな犬に関しては「怖くないんだよ」と安心感を与えてあげることが重要です。
しかし、それをしっかり教えてあげるには飼い主さんとの信頼関係が築けていることが絶対条件です。ただ、愛犬に噛まれる恐怖心を抱いたまま向き合おうとしても、信頼関係を築くことはできません。
本気噛みへの対処を失敗して悪循環に陥る前に、「ドッグトレーナー」や「行動診療専門の獣医師」といったプロの力によって、愛犬との関係性や生活の問題点を教えてもらうことをお勧めします。
参考文献:獣医行動診療科認定医紹介 | 日本獣医動物行動研究会
犬のことを理解する努力を続ける
犬にとって噛むという行動は、自分の身や所有物を守るものとして自然な行為です。たとえ飼い主と言えども、その犬が大事にしているパーソナルスペースを侵したり、本来の気質や性格を無視すれば、本気噛みにつながることは少なくありません。
怖がりな犬にとっては、二本足で立って急に近づいてくる人は巨人が襲いかかってくるように見えて怖いでしょうし、親しくない相手と目を合わせる行為は犬の本能として威嚇だと感じます。
このように、人がする行動を犬はどう感じるのかを意識しながら、次のような犬との接し方を飼い主さんが理解することが、まず必要になる対処法と言えます。
- 犬を刺激せずあいさつしたりスキンシップする方法
- その犬種のルーツをもとにした特徴
- 本気噛みのしつけをする上で犬にしてはいけないこと(暴力、怒鳴るなど)
まとめ
犬の本気噛みは飼い主さんにとって、とても頭を悩ませる問題行動ですよね。しかし、本気噛みしてしまう犬は、犬自身もネガティブな心理状況のことが多いので、ストレスを感じているはずです。
そして、本気噛みの原因となってしまう刺激はその犬によって非常に様々です。愛犬に無理強いして止めさせるような対処は難しく、家族全員の行動や生活環境を見直すことも大切なのです。
本気噛みの行動がひどくなる前に、経験や知識が豊富なドッグトレーナーや獣医師を探してみましょう。