犬に「しつけ」が必要な理由
人間と生活していくためのルールを学ぶため
人間の子供にも「トイレトレーニング」をするように、犬と一緒に暮らすようになると犬のトイレトレーニングを行います。そうしなければ、犬は家の中で自分の好きな場所に排泄するようになってしまいます。
また、人間の生活圏で一緒に暮らしていく上で、「外出した後は足を拭く」ことや「階段を上らない」「ソファに乗らない」などのそれぞれのご家庭の事情によって、いろいろなルールがあると思います。
このルールは、時に犬の健康のためや、人間が快適に暮らすためのものと言えます。いずれにせよ、犬にとっても、飼い主さん家族にとってもストレスなく暮らしていくために、家族の一員として愛犬には「家族のルール」を教える必要があります。
安全に生活していくため
飼い主さんが愛犬の身の安全を守るために、いつでも愛犬の行動を制御できるよう、愛犬をトレーニングする必要があります。例えば、散歩の途中、首輪がすっぽ抜けてしまって、愛犬が走り出してしまったとします。そんなとき、「トマレ」あるいは、「まて」と指示を出し、「コイ」あるいは、「おいで」と呼んで戻ってくるように躾けていれば、慌てることはありません。
人間社会で共存していくため
世の中の人すべてが犬が好きなワケではありません。特に大型犬は、その容姿だけで恐怖を覚えるほど犬が苦手な人もいるでしょう。また、犬の鳴き声を非常な騒音だと感じ、不快な思いをして文句を言う人もいます。
けれども、犬は警戒心から吠える生き物ですし、大型犬と言うだけで人を襲うワケでもないのに、容姿だけで怖がられるというのも飼い主さんにしてみれば理不尽な話です。ですが、そういった人たちに「犬を飼う」ことを受け入れてもらい、トラブルを回避するには、人間の害にならないように犬の行動を制御するしかありません。そのために、吠えたら鳴きやませる、人間を怖がらないようにする、といった躾が必要です。
ハンドシャイとは?
「ハンドシャイ」とは、犬が人の手を異常に怖がっている状態を言います。犬がハンドシャイになってしまう原因は、人間の手によって恐怖や痛みを与えられた体験が原因と考えられています。飼い主さんによって叩かれた場合もあるでしょうし、飼い主以外の人間に暴力的な虐待を受けたことでハンドシャイになってしまったら、撫でようとしてくれた人間の手でも怯え、警戒して、最悪の場合、自分の身を守るために牙をむいて攻撃してくることもあります。
犬を躾けるときに必要なこととは?
まず、「叩くしつけ」は、「悪いことをしたら罰を与える」という形の躾の仕方です。逆に「誉めるしつけ」は、「良いことをしたらご褒美をもらえる」あるいは、「悪いことをしなかったら、ご褒美がもらえる」と言うルールの躾の方法です。この「誉めるしつけ」を行うにあたって大切なのは、犬から信頼されているかどうかが非常に重要です。
なぜなら、利口な犬ほど好きでも嫌いでもない人間に褒められても、大して嬉しいとは思わないからです。人間でも、嫌いな人から褒められるよりも、好きな人から褒められた方がずっと嬉しいですよね。犬を躾ける立場になったとき、まずは犬から信頼され、好かれるようになるにはどうすればよいかを考えましょう。
犬をしつけで叩いてはいけない理由
犬を叩くということは、躾として体罰を使ってしつけをする、ということです。プロの訓練士さんやトレーナーさんの中には、知識や経験から的確に、かつ最小限に行うことで体罰によるしつけや訓練を行うことがありますが、体罰を使っての躾は非常に難しく、様々な制約があります。
罰は、弱すぎれば効果がなく、強すぎれば恐怖になる
体罰はいつも適度な強さが必要ですが、その加減は素人にはわかりません。犬の体格、性格などによって叩く力の強さは変えなければいけないし、また、その強さはいつも一定でなければなりません。なぜなら、体罰の強さが日によって違ったり、時と場合によって痛みや恐怖が違ったりすれば、何が悪くて叩かれているのかが理解できず、犬が混乱します。
体罰によって、体に悪い影響が出ることがある。
例えば、チョークチェーンなどを使って、犬の首を絞める体罰を与えて犬の行動を制御する躾の方法があります。この方法を何度も使うと、犬の気管を傷つけてしまう恐れがあります。
罰によって恐怖を感じると 似たものが恐怖の対象となりやすい
人間の手だけでなく、体罰を与えるときに棒などの道具を使ったとき、犬は似たような形状のものに恐怖を覚えることがあります。
罰から逃れるために攻撃行動になりやすい。
人間に対して攻撃的な行動を取る犬に対して体罰を行うと、自分の身を守ろうとしてより攻撃的になってしまう恐れがあります。
体罰を与える人の精神状態が不安定になりやすい
「犬のために罰を与えている」という考えで犬に体罰を与える側の人間が、自分が犬に与える暴力によって、犬が恐怖のために服従し、怯える様子を見ているうちに自分の感情を抑制することができなくなることがあります。
「どうして、主人のいうことが聞けないんだ」と怒りに任せて犬に暴力をふるっているうちに、無意識に犬に暴力を与えることで、自分の「怒りの感情」が減っていき、それによって快感を覚えてしまうことがあるそうです。信じられないことですが、そんな感情を持ってしまったら、自分よりも弱い存在である犬を虐待することで快感を得ようという欲望がわき、意味もなく犬に罰を与えたいと考えるようになります。
やがて、徐々に精神的に不安定になり、暴力に対して罪悪感を持つことすらなくなって、日常生活の人間関係にも支障が出てきます。犬を叩いてしつけることへの悪影響は、犬にだけ現れるのではありません。
罰では「こうして欲しい」という行動を教えることはできない。
体罰では、「これをしてはダメ」ということを教えることができても、「トイレシートの上でオシッコをする」「ハウスと言えば、クレートやキャリーバッグの中に入る」と言った、飼い主さんにとって「好ましい行動」を教えることができません。
例えば、どうしてトイレを失敗するの!と怒られ、叩かれたら、「オシッコをすることが悪いこと」と覚えてしまって、隠れて排泄をするようになります。ですから、犬に「こうして欲しい」ということがあり、それを躾けるのであれば、体罰ではなく、「できたときに褒めて、ご褒美を与える」ことを繰り返した方がずっと効果的です。
まとめ
犬を躾けるのは、人間の社会の中で生きていけるように躾けるのと同じです。トイレの場所を教え、ご飯の食べ方や人に対する礼儀を教え、人間社会の中でなるべく問題を起こさないように様々なことを教えていくのと同じだと思います。
子供を躾けるのに、叩く必要があるのかどうか…?と考えてみましょう。そうすれば、家族の一員である愛犬を躾けるときに叩いて躾けることが必要かどうかの答えが出せるのではないでしょうか?