犬に「しつけ」が必要な理由
人間と生活していくためのルールを学ぶため
人間と共に生活する上で、犬には色々なルールを教える必要があります。それがしつけです。家の中で好き勝手に排泄しないように、お迎えしたすぐから行うトイレトレーニングや、食事の場所や、入ったり乗っては行けない場所を教えるなど、それぞれのお家の事情によってもルールがあるでしょう。
このルールは、愛犬の健康や安全のためだけでなく、生活を共にする人間も快適に暮らすために大切なこと。犬にとっても、飼い主さん家族にとってもストレスなく暮らしていくには家族のルールを教える必要があるのです。
監修ドッグトレーナーによる補足
人間の赤ちゃんや子どもが何もわからないのと同じです。マナーやルールは教えなければ自然と身につくわけではありません。
しつけは犬の安全を守ることにも繋がります。万が一がないように、慌てずにゆっくりと覚えてもらいましょう。
安全に生活していくため
愛犬の安全を守るために、どんなときでも行動を制御できるようにトレーニングする必要があります。
例えば、散歩中に首輪が外れたり、リードを離して犬が逃走してしまったときに、「まて」「とまれ」などの指示でその場で止まらせて、その後「こい」「カム」の指示で呼び戻すことができれば、どんなときも慌てずにすみますし、事故なども防ぐことができます。
人間社会で共存していくため
世の中の人すべてが犬好きではありません。特に、大型犬はその大きさで恐怖を感じてしまう人もいるでしょう。また、犬の鳴き声を不快に思い、騒音だと感じられてしまうこともあります。
犬が吠えるのは本能です。警戒すればなおさら吠えてしまうものです。また、大型犬はその容姿だけで凶暴なのではと、怖がられるのも飼い主さんにしてみれば理不尽な話です。
ですが、じゃれたつもりでも大型犬が飛びついたら、相手にケガをさせてしまうこともありますし、要求吠えなどでご近所に迷惑をかけてしまうこともあるのです。トラブルを回避するには、犬の行動をしっかりと制御することは飼い主の義務です。
飛びついたり好き勝手に行動させない、無駄吠えなどもしつけする必要があります。
監修ドッグトレーナーによる補足
大型犬はしつけが大変だと思われがちですが、実際は小型犬の方がしつけが必要となるケースが多くあります。
小さくてかわいいから、飛びつかれたりいたずらをしても簡単にコントロールできるだろうと勘違いして、しつけが不十分になっているからです。
体の大きさや犬種などでしつけの方法が異なることもありますが、基本的なしつけは同じように必要です。
ハンドシャイとは?
「ハンドシャイ」とは、犬が人の手を異常に怖がっている状態を言います。犬がハンドシャイになるのは、人間の手によって恐怖や痛みを与えられた体験が原因と考えられています。
飼い主さんによって叩かれた場合もあるでしょうし、他の人間に虐待を受けたことがトラウマとなっていることも。ハンドシャイになると、撫でようとしてくれた人間の手だとしても近づいてくる手に怯えたり警戒して、自分の身を守るために牙をむいて攻撃してくることもあります。
監修ドッグトレーナーによる補足
ハンドシャイになると、トリミングや動物病院での診察なども困難になる場合があります。
健康を守る上で必要なケアができないと、愛犬の命を脅かすことにもなりかねません。
犬を躾けるときに必要なこととは?
「叩くしつけ」は、「悪いことをしたら罰を与える」という方法で、犬にとっては恐怖でしかなく、覚えることはおろか、叩く人間を信頼することもありません。
逆に「褒めるしつけ」は、「良いことをしたらご褒美がもらえる」や、「悪いことをしなかったらご褒美がもらえた」と、指示に従うことができたら良いことが待っていると犬に覚えてもらう方法です。褒めるしつけは、犬との信頼関係が築けているかが鍵となります。
なぜなら、犬はとても賢い動物なので、知らない人や信頼していない人から褒められても嬉しいとは感じません。人間も嫌いな人から褒められるよりも、好きな人から褒められた方がずっと嬉しいですよね。
しつけを始める前に、コミュニケーションをしっかりと取ることや、居心地の良い環境を作ることなどを優先し、愛犬との信頼関係を築きましょう。
犬をしつけで叩いてはいけない理由
犬を叩くということは、体罰を与えて恐怖で支配するということです。犬の訓練士やトレーナーの中には、知識や経験からなどから軽度の体罰与える訓練やしつけを行う人もいるようですが、これには様々な制約があります。
監修ドッグトレーナーによる補足
「生兵法は大怪我の基」という言葉をご存知ですか?身についていない知識や技術によってことを行うと失敗するというたとえです。
理解や経験がないのに高度な技術を試したり、プロの真似をすることは大変危険です。愛犬にそんな危険な思いをさせてはいけません。
罰は弱すぎれば効果がなく、強すぎれば恐怖になる
体罰は適度な強さが必要とされますが、その加減は素人にはわかりません。犬の体格や性格などによって叩く力の強さは変えなければいけないし、また、その強さはいつも一定でなければなりません。
なぜなら、体罰の強さが日によって違ったり、時と場合によって痛みや恐怖が違ったりすれば、何が悪くて叩かれているのかが理解できず犬が混乱します。
体罰によって体に悪い影響が出ることがある
例えば、チョークチェーンなどを使って犬の首にショックを与えて動を制御するしつけ方法がありますが、この方法は加減を間違えると、犬の気管や首に傷や大きなダメージを与えてしまう可能性があります。
罰によって恐怖を感じると 似たものが恐怖の対象となりやすい
人間の手だけでなく棒などの道具を使って叩いてしまうと、犬は似たような形状のものに恐怖を覚えることがあります。見ただけでも吠えてしまったりパニックを起こしてしまう子もいます。
罰から逃れるために攻撃的になりやすい
人間がしつけのつもりで叩いたとしてもそれが恐怖となってしまうと、犬は自分の身を守ろうとして攻撃的になってしまう恐れがあります。
監修ドッグトレーナーによる補足
犬の攻撃行動を体罰でしつけしようとすると、更に攻撃行動が増してしまい悪循環に陥ります。
叩けば叩くほど恐怖が増幅して取り返しがつかなくなることもあるので大変危険です。
体罰を与える人の精神状態が不安定になりやすい
「しつけのために罰を与えている」という考えで犬に体罰を与える人の中には、犬が恐怖でや怯えから服従している様子を見ているうちに、自分の感情を抑制することができなくなる場合があるようです。
「どうして、主人のいうことが聞けないんだ」と怒りに任せて犬に暴力をふるっているうちに、無意識に犬に暴力を与えることで、「怒りの感情」から快楽に変わってしまい、ますますエスカレートしてしまうようです。
精神的に不安定になり、やがて暴力に対して罪悪感を持つことすらなくなれば、日常生活にも支障が出るだけでなく、最悪の場合は犬の命を奪ってしまうことも考えられるのです。犬に体罰を与えることは人に対しても悪影響しかありません。
罰で「こうして欲しい」という行動を教えることはできない
体罰では「トイレシートの上でオシッコをする」「ハウスでクレートやキャリーの中に入る」など、飼い主さんにとって「好ましい行動」を教えることはできません。
例えば、トイレに失敗するたびに「どうして失敗するの!ダメでしょ」と怒ったり叩いてしまうと、犬は「オシッコをすることが悪いこと」と覚えてしまい、隠れて排泄をするようになったり、オシッコをしなくなってしまうこともあり、体調を崩してしまうことすらあるのです。
犬に覚えてもらいたいルールは、上手にできたらしっかりと褒める、ご褒美を与えることで「◯◯できた=嬉しいことが起きる、おやつがもらえる」と犬に覚えてもらうことが大切です。
まとめ
犬のしつけは、人間の社会の中で犬が快適に過ごすために大切なことです。
ごはんやトイレの場所を覚えてもらう、他人や他の犬との接し方や、生活音などに慣れていくことなど、すべては犬が心地よく人間と共存していくためにかかせないものばかりです。
大切なルールを覚えてもらうのに叩く必要があるのでしょうか?子どもをしつけと称して叩いていたら、虐待と言われるのと同じです。犬をお迎えしたときから、大切な家族の一員であることを忘れずに、愛犬との信頼関係を築いていきましょう。