犬がタオルを噛む理由
愛犬がタオルを噛んでいる場面を目にしたことがある飼い主さんは、多いのではないでしょうか。くわえるだけならまだしも、食べものでもないタオルをどうして噛むのでしょうか?
その理由はさまざまですが、愛犬がどんな理由でタオルを噛むのか探ってあげましょう。
- 理由1.強迫性障害からの行動(ウールサッキング)
- 理由2.歯の生え変わりで歯が痒い
- 理由3.運動不足やストレスから
- 理由4.おもちゃだと思っている
- 理由5.お腹が空いている
- 理由6.寂しさから
理由1.ウールサッキング(ブランケットサッキング)
「ウールサッキング」または「ブランケットサッキング」という言葉を聞いたことはありませんか?
タオルや毛布、布団の端、ブランケット、ぬいぐるみなどを噛みながらチューチューと吸う行為で、人間ではブランケット症候群やタオル依存症と呼ばれる心の病です。
犬の場合ではウールサッキングやブランケットサッキングと呼ばれることが多く、一見遊んでいるかのように見えたり、かわいらしい姿に見えますが、強迫性障害(常同行動)からの行動になります。
ひたすらタオルなどを吸い続けていたり、鳴き声をあげながらくわえたものを足でフミフミしている、ぐちゃぐちゃになるほど噛む、などの行動が見られれば、心の病にかかっていることが考えられます。
犬のウールサッキングの原因は、遺伝的な要因、母犬から早く引き離されてしまった、食欲の異常などもありますが、ウールサッキングの多くはストレスからのものです。
あまりにもひどくなると、タオルや毛布などの布を食べてしまうこともあるので、まずは獣医師に相談してくださいね。
理由2.歯の生え変わりで歯が痒い
1歳前後くらいまでの子犬では、歯の生え変わりの時期にタオルなどを噛むことがあります。もちろん、この時期はタオルに限らずどんなものでもカミカミしたい衝動に駆られますが、至って正常な行為です。
子犬の歯は生後2ヵ月で乳歯が生え揃います。その後、3ヵ月頃から永久歯へ生え変わりが始まり、7ヵ月頃になるとすべての歯が永久歯になります。この歯の生え変わりが、子犬にとっては辛い時期。
新しい歯が歯茎を押し上げて刺激することで歯が痒くなったり、歯茎が炎症を起こしたり腫れて痛痒くなったりなどの口の中の違和感を何とかしたい一心で、タオルであろうがコードであろうが雑誌であろうがカミカミしてしまうのです。
子犬の噛む行動は、やめさせることはできません。噛んでもいいおもちゃを与えてあげると共に、噛んで欲しくないものは片付けておくといった工夫をしましょう。
理由3.運動不足やストレス
お留守番の時間が長かったり、十分な運動時間がとれていない場合、タオルなどを噛むことはよく見られる行動です。犬用ベッドをボロボロにされていたり、毛布やタオルが噛みちぎられてボロボロになっていたりしていませんか?
犬は飼い主さんが大好き!でも、かまってもらえない寂しさや、遊んでもらえないイライラ、お散歩に満足できていないといったストレスから、タオルなどを噛んでしまうことがあります。
噛んでも根本的なストレスの原因となっているものの解消にはならないため、繰り返してしまうのです。
質の良いお散歩を心がけたり、お散歩の時間や回数を増やしてあげる、毎日10分でも集中して遊んであげる、用事が終わったらすぐに帰宅してあげるといった、ストレスの元を取り除いてあげることが大切です。
理由4.おもちゃだと思っている
ほとんどの飼い主さんは、愛犬に犬用おもちゃを与えていることでしょう。それでもタオルを噛むのは、おもちゃだと思っていることがあります。
犬がタオルをくわえて振り回すのは、「獲物」をやっつけるため。仕留めたと感じて満足すれば、遊ぶのをやめます。
どんな犬にも狩猟本能があるので、与えられたおもちゃだけでなく、興味を持ったものに対してじゃれて遊びたいと思う気持ちがあっても何ら不思議なことではありません。
また、与えられたおもちゃが犬の好みでなかった場合に、自分好みのおもちゃを探し、噛んで振り回すことができるタオルを選ぶ、といったこともありますよ!
理由5.お腹が空いている
愛犬の健康のために、食べるものに気を遣っている飼い主さんも多いですね。太らせてはいけないと、毎食のごはんの量にも気を付けていることと思います。
でも、犬は食べることが大好き。ごはんの量が足りずに、お腹を空かせてタオルを噛んだり食べたりしてしまうことも。
もちろん、食べたいという欲求が叶えられないストレスということもありますが、単純に空腹すぎて我慢できない、ということも考えてあげなければいけません。
愛犬が1日に必要な摂取カロリーに合わせて、ごはんやオヤツを与えてあげましょう。
また、食欲旺盛な犬にはカロリーが低くたくさん量が食べられるごはんを用意してあげる、与える回数を増やす、茹でた野菜でごはんのカサ増しをする、といった工夫をしてあげることも考えてみてくださいね。
理由6.寂しさから
夜中にタオルなどを噛んでしまう犬は、寂しさからの行動かもしれません。夜はケージの中で寝かせているといった場合に、多く見られるようです。寂しい、甘えたいといった気持ちで、タオルなどを噛んだり吸ったりしています。
夜中は目が届きにくいため、誤って食べて喉に詰まらせてしまっても気付きにくいです。ケージを寝室に用意してあげるなど、寂しさを感じないように工夫してあげましょう。
- ウールサッキング(ブランケットサッキング)は心の病気!
- 子犬にとって歯の生え変わり時期は歯が痒く、何でも噛みたい衝動に駆られる
- 犬がタオルを噛むのは原因があることを考えてあげよう
犬がタオルを食べた時の対処法
犬がタオルを食べてしまうと、腸閉塞を起こしてしまう危険があります。症状としては、食欲不振や嘔吐などがみられます。
腸が完全に詰まってしまうと、便やガスが出ずに体中に腸内細菌の毒素がまわってショック状態になったり、腸が損傷したり穴があいて激痛に襲われます。
腸閉塞は命に係わる緊急性の高い病気で、外科手術によって腸に詰まったものを取り除かなければいけません。愛犬がタオルを食べてしまってもケロッとしているから...なんて思わずに、対処してあげる必要があります。
かかりつけ医に相談
犬がタオルを誤飲した際には、すぐにかかりつけの獣医師に相談してください。いつも行く動物病院が閉まっている時間では、救急の動物病院に電話を入れ、指示を仰いでもらいます。
独断で嘔吐を誘発させたり、無理に引っ張り出そうとするのは危険なので、絶対にしないようにしてください。
また、動物病院へ連れて行く際は、飲み込んでしまった量をすぐに伝えられるように確認しておくことや、どんなものを飲み込んでしまったかわかるように現物を持参することで、スムーズに診察を受けることができます。
少量であれば様子見をする
愛犬が飲み込んでしまった量が、ほんのごくわずかであると確認できた場合は、様子を見ても構いません。しかし、嘔吐や下痢、食欲不振といった症状があれば、すぐに動物病院を受診する必要があります。
ほんのわずかの量であれば、便と一緒に出てくることもありますが、誤飲したその日でなくても数日後に体調が悪くなることもあります。愛犬に異変が生じていないか、しばらくはしっかり観察を続けることが重要です。
ガーゼに注意!実際あった話
我が家の愛犬は、抜歯手術の際に止血に使用されたガーゼを取り忘れられ、麻酔から覚めたときに飲み込んでしまった、ということがありました。
ガーゼを飲み込んだのがわかったのは、動物病院が閉まったあとに使用したガーゼの枚数をチェックしたことで発覚したようです。
翌朝、動物病院から電話がきて、「ガーゼを飲み込んでしまったかもしれないから、すぐに来て欲しい」と言われました。愛犬はいつもと変わらず元気で、食欲も排便もいつも通り。まさかと思っていましたが、胃の中にはテレビのリモコンサイズのガーゼがありました。
薄い布類はレントゲンに映らないようで、内視鏡によってガーゼを確認し、そのまま内視鏡で取り出せたので開腹手術とはなりませんでしたが、あのままガーゼを取り出さなかったら腸閉塞となっていたことを考えれば、とても怖いことです。
薄いガーゼでさえそんな危険が伴うのですから、タオルとなれば危険度はあがるので注意してくださいね。
犬がタオルを噛むのをやめさせる方法
犬がタオルを食べてしまうと、腸閉塞になってしまう危険性があることをお伝えしました。
お腹の中に入ってしまったタオルを取り除くには、全身麻酔をかけて内視鏡や開腹手術が必要となり、犬の体にも負担がかかります。
気づかないうちに食べてしまっていれば、ショック状態になるギリギリまで気づかなくて手遅れになってしまいます。そうなることを防ぐためにも、犬にタオルを食べさせないようにしなければいけませんね。
噛んでいるだけでも、何かの弾みで飲み込んでしまう恐れもあるので、噛んだり食べたりする行為はやめさせるようにしましょう。
噛んでほしくないものは片付ける
身近に噛めるものがなければ、噛んだり食べたりできません。犬は自分でタンスやタオルストッカーから、タオルを取り出すことはできませんね。タオルなど噛んでほしくないものは、片付けておきましょう。
寒さ対策などでタオルなどを使用している場合は、タオルを使わずに湯たんぽなどで寒さをしのげるようにしてあげたり、サテンやナイロン生地のような噛みにくい素材で作られているものを使用するように工夫してくださいね。
新しいおもちゃを買ってあげる
タオルで遊ぶことが好きな犬には、タオルに似たような感触や振り回しがいのあるおもちゃ、好きなだけ噛めるおもちゃを買ってあげるといいでしょう。お気に入りのおもちゃがみつかれば、タオルを噛んで遊ぶことはなくなります。
ロープ状のおもちゃで飼い主さんと引っ張りっこをする楽しさを覚えれば、「タオルでは遊んでもらえないけど、このおもちゃなら遊んでもらえる!」と、タオルが噛んではいけないものと理解してもらうこともできます。
お散歩や遊びの時間を増やして運動不足解消
運動不足やストレスでタオルなどを噛んでしまう犬もいるように、もう一度愛犬の1日のサイクルを見直してみてください。お散歩の時間や回数は十分ですか?質の良いお散歩ができていますか?一緒にたくさん遊べていますか?
運動不足解消によって、タオルなどを噛まなくなる犬もたくさんいます。もちろん、運動が嫌いな犬や、心臓病などで無理な運動をさせてはいけない犬もいるので、歩いたり走ったりがすべてではありませんが、頭を使って考えてもらう遊びも運動になりますよ!
- タオルを片付けて噛めない環境を作る
- 愛犬に気に入ってもらえるおもちゃを買ってあげる
- 愛犬のストレス発散方法をみつけてあげる
犬がタオルを噛むのは想像以上に危険が伴う!
犬がタオルを噛むのは、いろいろな理由があります。単純にタオルを噛む感触が好きな場合もありますが、犬は口の中にある塊を丸飲みしてしまう習性があることを忘れてはいけません。
とすれば、口の中で噛んでいたタオルがちぎれれば、そのまま飲み込んでしまうことは十分に考えられますね。
ただタオルを噛んでいただけだったはずの愛犬の喉に詰まって窒息、腸に詰まって腸閉塞なんて、こんな予想もしない大きなトラブルが起きたら大変!誤飲も危険ですが、自ら進んで食べてしまう行為も危険です。
犬が何かを噛むのは習性からの自然なことですし、噛んでいいものであれば止めさせる必要もありません。しかし、愛犬が好んでタオルを噛むようであれば、理由を探り原因を取り除いて、なるべく早く止めさせてあげましょう。