犬の偽妊娠とは(想像妊娠)
人間の想像妊娠は、強く妊娠を望んでいたり、妊娠に対する強い恐怖がある場合などに多くみられるなど、概念やイメージが起因して生じるため、一般に想像妊娠といいます。
一方、犬の場合は妊娠に対する概念を持っているはずもないですが、想像妊娠と似たような症状が生じることがあります。犬の想像妊娠は、黄体ホルモンなどの作用により生じることから「偽妊娠」といいます。
犬の偽妊娠の症状
- 営巣
- 出掛けるのを嫌がる
- つわり、食欲不振
- 不従順
- 乳房が膨らむ、母乳が出る
- 腹部が膨らむ等
犬の偽妊娠は、個体によりその状態も大きく違います。軽度の場合、気が付かない事も多く、顕著な場合は、布や紙あるいは飼い主の衣類を1か所に集めて巣作りをしたり、ぬいぐるみを子犬にみたててケージやハウスの中に持ち込み授乳しようとすることもあります。
犬の偽妊娠の原因
発情期から発情後期へと移行する約2か月間は、妊娠に必要なホルモン分泌が続くことから、つわりや腹部のふくらみ、母乳が出るなどの変化が生じることがあります。
個体差はありますが、ホルモンの分泌量が多い場合、偽妊娠の状態となります。
偽妊娠の多くが、発情後4~6週にみられることが多いのは、これらのホルモンの作用が原因であることによります。特に偽妊娠にはプロラクチンが強く影響するといわれています。
犬の発情
犬の発情は、
- 1.発情前期
- 2.発情期
- 3.発情後期(無発情期)
月齢12か月前後になり、女の子が成熟するとヒート(生理)が来ます。
ヒートが始まってからおおむね10日が『1.発情前期』で排卵の準備期間となります。発情前期を過ぎた7~10日目程度が『2. 発情期』となり男の子を受け入れる準備が整います。
発情期の内、おおむね3~5日間が排卵日となるのですが、この時期までに妊娠しやすくなるための様々な生理現象か生じます。
ホルモン分泌の作用
特に黄体ホルモンやプロラクチン、エストロゲン、プロゲステロンなどの分泌が顕著となり、血漿プロジェステロン濃度が高まります。これらのホルモンが活性化することで、受精卵が着床する条件を整えていき、妊娠した場合は、胎児の生育に適した状態となっていきます。
発情期が過ぎると『3. 発情後期』となり妊娠した場合は「妊娠期」、妊娠していない場合は「無発情期」へと移行していきます。犬の発情周期は、6か月サイクルが多いのですが、そのうち4カ月近くがこの発情後期となります。
犬の偽妊娠の期間
犬の偽妊娠については諸説あり、病気などの異常な状態であるとの見解と、正常な生理反応であるとの説に分かれます。獣医師の考え方や方針により診断は別れます。
10日~15日程度で自然に収まることが普通ですが、症状が長期化する場合は、念のため獣医師の診察を受けた方がいいでしょう。
犬の偽妊娠の注意点
ヒートの度に偽妊娠する場合は、注意が必要です。発情、妊娠状態にあるということは、子宮膜に長期間の充血があることとなるため、子宮蓄膿症のリスクが高まることや乳房が膨らむことで、乳線炎や乳線腫瘍のリスクが高まる可能性があります。
子宮蓄膿症
子宮内が炎症することにより膿がたまる疾病です。膣から膿が出たり悪臭がします。子宮口が閉じている場合、溜った膿によって子宮が破裂し、腹膜炎を併発することもあります。
乳腺炎
乳腺が目詰まりを起こしたり、あるいは舐め過ぎやひっかき傷から細菌に感染することで炎症を起こし発症します。放置しておくと乳頭が壊疽をおこし、最悪の場合は切除手術しなければならいこともあります。
犬の偽妊娠の対処法
前述したようにホルモンの作用であることから、避妊手術以外には、偽妊娠を予防する対策は困難です。
度々、偽妊娠の症状が出る場合は、交配や出産は控えた方が無難であるため、早期に避妊手術することも予防のために有効な手段です。
また、母乳が出ている場合や乳房のふくらみが顕著な場合は、乳線炎にならないように柔らかいタオルをあてて、優しくマッサージすることで滞った母乳が腐敗しないように気を付ける必要があります。
また、自分で乳首を舐めてるようであれば、舐められないように腹帯や術後着を着用させるなどの対策をしましょう。
避妊手術
偽妊娠の抜本的対策として最も有効なのは、避妊手術です。避妊手術に対する考え方にも賛否ありますが、偽妊娠に起因する疾病の予防には有効といえます。
避妊手術は、生後6~8ヵ月の初潮が来る前に行うことが最も効果的です。避妊手術を行うことで、乳腺腫瘍の発生率は1/200に低下するとのデータもあります。
子宮を摘出するため、子宮蓄膿症の予防にも有効です。当然ですが、避妊手術をした場合、偽妊娠になることはありません。避妊手術の効果は、これらの疾病予防の他、発情時のストレスの軽減などにより、1年程度寿命が伸びるといったデータもあります。
ただし、開腹手術となるため、手術自体のリスクや全身麻酔によるリスクも考えておかなければなりません。
〈避妊手術の費用〉
避妊手術は、通常1~2日程度の入院で、病院によっても異なりますが、3~5万円程度の費用が掛かります。
まとめ
これまで説明させていただいた通り、子宮蓄膿症などの合併症がなければ、偽妊娠そのものについては、深刻な疾病と考える必要はないといえます。
愛犬の健康管理を第一に考えた場合、避妊をしない場合のリスクや対処に関する正しい知識を学ぶ、あるいは適切な時期に避妊を検討するなど、飼い主の責任ある判断の上、適切な対処をしておくことが望ましいのではないでしょうか。
避妊手術自体に対する考え方もまた、飼い主さまそれぞれで違ってくるかと思いますが、一番はわんちゃんが健康で幸せな一生を過ごせるように考えてあげてくださいね。
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ユーザーのコメント
20代 女性 まろん
その子は、自分のゲージのいつも寝ているクッションの上にぬいぐるみを置き、一日中肌身離さずそのぬいぐるみを自分の赤ちゃんのように扱っていたそうです。飼い主がそのぬいぐるみを取ろうとすると、本気で怒って?みつこうとする程だったようです。ぬいぐるみを自分の赤ちゃんに仕立てて肌身離さずいるなんて、可愛い。と思ってしまいましたが、乳腺炎などの病気になる場合もあるようで、驚きました。
だいたい1週間から2週間程で落ち着くようですが、しっかり様子を見てあげなきゃいけないんだなと思いました。
30代 女性 すみれ
犬も人も「想像妊娠」て、何か切ないですね。
30代 女性 YY
生き物として種の保存が遺伝子に組み込まれているから人間のように「私は一人で生きていくの」ってことにはならないからね。。。
私は避妊手術に一票!
女性 匿名
女性 めろんそーだ
基本的には人と違い、環境によるかもしれませんが多頭飼いなどでなければ妊娠したいとはわんちゃんは考えもしないですよね。
我が家では、初めてのヒートが来る前に(1歳になる前ですが)避妊手術をしたのですが、偽妊娠には避妊手術が効果的なんですね。
偽妊娠でも身体は妊娠中と同じようになり、行動だったり母乳が出たりで乳腺炎になったりする場合もあるんですね。
偽妊娠のわんちゃんの様子が分からないですが、飼い主さん自身ではどうしたらいいか分からないと思いますので偽妊娠かも?と思ったら動物病院などで診察を受けるのが良いでしょうね。
こういう記事を読むと、仔犬を産ませる予定がない場合は(出産経験があり、今後出産しない場合も)避妊手術をした方が病気を予防する事ができるし良いんじゃないかな、と思いました。
手術自体は平均的に2-4万前後で、手術時間は10分もかからないとお聞きしました。(確か去勢も避妊も)
ですが、去勢手術と比べると避妊手術はメスを入れるので、不安だったり可哀想と迷ってしまわれる方もいると思います。
私も手術の日は麻酔もするし手術も大丈夫かな?大丈夫かな?と心配でドキドキしていました。
値段だけでなく、口コミや獣医師を見て、この先生ならお願いしたいなと思える方にお願いすると良いと思います。
手術への不安だったり考えを相談してみると、親身になって答えてくれる先生もいます。
想像妊娠自体は病気ではないですが、愛犬がなってしまうとびっくりしてしまいますよね。偽妊娠のメカニズムや、
避妊手術が予防になる事を知り勉強になりました。
40代 女性 匿名
避妊手術をヒート前にしたかったのですが、生後半年過ぎで1キロ行くか行かないかの体重だったのと、アレルギー持ちのせいもあり、全身麻酔と小さな体の体力の不安がどうしても拭えず、避妊手術に踏み切れないまま初ヒートが来てしまいました。
ヒート自体には、本人がちゃんと対処していましたが、ヒートが終わってから1ヶ月が過ぎても、おっぱいの腫れが引かず、日に日にパンパンに腫れて来たので、慌てて動物病院に行った所、偽妊娠でお乳も出て来ている事が判明し、更に1週間様子を見て、引かなければホルモンのお薬を投薬する事になっています。
うちの場合の症状ですが、現在は一時のパンパンのオッパイよりは腫れは治まってきましたが、まだ、腫れています。嘔吐は1度だけありました。攻撃性や、お出かけに行きたがらないなどは全く無く、食欲も変わらずでした。偽妊娠中の小さな、小さな愛犬の姿を見ると、苦しんでいる訳では無いのですが、なんとも言えない切ない気持ちになってしまいます。
女性 ガンモ
20代 女性 匿名
しかも、偽妊娠になってしまった…
ぬいぐるみを抱き締めている姿を見ると、手術を戸惑ってしまう