犬に人間用石鹸は使っていいの?
愛犬のシャンプー剤は、ホームセンターやネットショップ、トリミングサロン、ペットショップなどで購入することが多いでしょう。犬用、低刺激、舐めても安心といったことを謳って販売されていますが、実は犬用シャンプー剤は人間用と違って規制がなく、成分表示の義務はありません。
表示したいものだけ表示し、隠しておきたい成分は非表示にすることができてしまうのが現状です。つまり、各メーカーさんがどれだけ犬のことを考えて、良心的に作っているかということにかかっているのです。
成分表などを見ると使用することに疑問を感じるものもあり、良かれと思ったシャンプー剤が皮膚トラブルを招いていた、なんてことも。
だからといって、弱酸性の皮膚を持つ人間用に作られているシャンプー剤を、弱アルカリ性の皮膚を持つ犬に使用するのは刺激が強すぎてしまいます。
そこで現在注目されているのが、成分表示の義務がある人間用の石鹸です。石鹸を使用すればリンスが必要なく、シャンプーの時間短縮で愛犬のストレスも軽減されます。そこで疑問となるのが、人間用の石鹸は犬に使用しても問題ないのでしょうか?
その答えは、ある一定の条件を満たしていれば使用することができる、ということです。では、犬に使用できる石鹸について詳しく見ていきましょう。
原材料を確認する
まずは石鹸の原材料を確認しましょう。人間用の石鹸は医薬品や医薬部外品、化粧品となるため、必ず原材料や全成分が表記されています。石鹸を作るために必要な原料は油脂と塩基(アルカリ)を反応させたもので、石ケン素地と呼ばれています。
主成分である石ケン素地のほかに原材料として、エデト酸塩、ジブチルヒドロキシトルエン、ベンザルコニウム塩、トリクロサン、水酸化ナトリウム、着色料、保存料、香料、酸化チタン、EDTA-4Na、牛脂、豚脂、グリセリン、大豆油、菜種油、パーム油、ヤシ油、オリーブオイル、蜂蜜など、様々なものが使用されていることを目にすることができるでしょう。
犬の肌に安心して使用できるのは、保存料や品質安定剤、香料、着色料、殺菌剤などが使用されていないものが大前提。どんな原材料が表記されているかよく確認して、わからない成分がを見かけたら、その場で携帯電話のインターネット機能を使って調べることも大切です。
基本的には、「石ケン素地」や「純せっけん分」と書かれているほか、「脂肪酸ナトリウム」「グリセリン」「水」などの表記しかなければ「純石けん」で完全に無添加なものです。
そのほかに植物系のオイルや蜂蜜などの表記があれば保湿効果があるものなので、愛犬の肌にどちらが合っているか考えて選んであげるといいでしょう。
無添加の石鹸を使う
犬に人間用の石鹸を使用するのであれば、無添加の石鹸を選ぶようにします。無添加といってもその定義は曖昧で、香料不使用や着色料不使用というだけで「無添加」と謳っているものもあります。そのため、しっかり成分表や原材料を確認することが大切です。
犬の皮膚はとてもデリケートだという話を、見聞きしたことがある飼い主さんは多いでしょう。その所以は、犬の皮膚の厚さが人間の5分の1~6分の1程度しかないことにあります。
洗浄力が強すぎれば肌に必要な脂や常在菌までも取り除いてしまい、皮膚の表面を保護してくれる機能が弱くなってしまいます。
化学成分が添加物として使用されている石鹸も多いですが、化学成分はすべて犬に不要な成分。乾燥によるフケや痒みの原因となるだけでなく、湿疹、皮膚炎、真菌、脱毛症、アトピー性皮膚炎、被毛の状態が悪化などの皮膚トラブルを引き起こす原因となるため、注意しましょう。
無添加石鹸では「化学成分無添加」や「完全無添加」といったものを選ぶほか、刺激の少ない顔用石鹸(洗顔石鹸)、ベビー用石鹸を購入してください。
無添加であっても一般的な浴用石鹸(化粧石鹸)は、人間が体を洗う用に作られているため洗浄力は少し抑えられていますが、犬に使用するのは避けるようにしたほうが無難です。
こんな犬は人間用石鹸を避けるべき
人間用石鹸は全成分の表記が義務付けられていて安心ですが、すでに皮膚病を患って現在治療している犬には、例え無添加で顔用やベビー用であっても使用は避け、まずは獣医師に相談してください。場合によっては皮膚病用のシャンプー剤を処方されることもあります。
人間用の石鹸に限らずですが、犬用シャンプー剤や犬用石鹸でもその犬に合う、合わないはあります。人間用石鹸を使用して皮膚トラブルが起きた場合も、使用は中止し動物病院を受診するようにしましょう。
また、子犬に人間用石鹸を使用する際も、まずは獣医師に相談してからにしてください。
犬用石鹸を手作りしてみよう!
現在では、犬用石鹸も多く販売されています。しかし、人間用石鹸と比べると高額で、その犬用石鹸が愛犬に合うかどうかもわからない状態では、購入にためらってしまうことも。犬用石鹸は自分で作ることも可能なため、この機会に手作りしてみてはいかがでしょうか。
材料
- オリーブオイル...60g
- ココナッツオイル...20g
- パーム油...10g
- ひまし油(キャスターオイル)...5g
- ホホバオイル...5g
- お好みのエッセンシャルオイル...4滴程度
- 苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)...13g
- 水...30g
【使用する備品類】
- マスク
- 手袋
- メガネ
- 温度計
- ガラス製のかきまぜ棒
- 耐熱耐アルカリ素材の容器(ビーカーや計量カップなど)
- 耐熱のガラス製のボウル
- 泡だて器
- ゴムベラ
- シリコンモールド
- 発泡スチロールやダンボールなどの保温できる箱
愛犬用の石鹸を手作りする際に、一番購入場所に悩むのが苛性ソーダです。苛性ソーダは調剤薬局を扱う薬局で購入することができますが、特定科学薬品で劇薬扱いとなっているため、身分証明書と印鑑が必要になります。用紙に書き込む際に使用用途も必要となりますが、「石鹸を作る」と記入すれば販売してくれます。
劇薬というと怖いイメージを持ちますが、普通に石鹸やシャンプー、アルカリ洗剤にも使用されているもので、アルカリの元です。きちんと希釈して使用すれば問題なく、使用しなくなって捨てる際も十分な水に薄めて土に返すか排水すればいいものです。
苛性ソーダは在庫があればその場で販売してくれますが、取り寄せとなることもあるため事前に薬局に確認しておくといいでしょう。また、シリコンモールドはシリコンでできた型枠で、100円ショップや手芸店、ネットショップで購入することができます。
温度計や耐熱容器、ガラス製のボウルなどの備品を揃えるのが大変、という場合では石鹸作りのスターターキットなども販売されているため、利用してみてもいいかもしれません。
1.材料を計る
まずは全ての材料を計り、それぞれ分けておきます。この際、苛性ソーダの取り扱いは慎重に!石鹸を作るときは、キッチンのシンクの中など安全な場所で行うといいでしょう。また、念のため、手袋とマスク、メガネを着用しておくことをおすすめします。
2.苛性ソーダと水を混ぜる
水の入った耐熱・耐アルカリ性の容器に苛性ソーダを入れ、かき混ぜ棒を使用して、解けるまでよく混ぜます。苛性ソーダと水が混ざると、100度近くの温度になります。刺激臭も出るため、換気も忘れずに行ってください。
3.温度を合わせる
苛性ソーダ水の入った容器を水を貼ったボウルに入れ、温度計で40~60度程度になるように冷まします。ホホバオイルとエッセンシャルオイル以外のオイル類も、湯せんで40~60度になるように温めます。
4.苛性ソーダ水とオイルを混ぜ合わせる
ガラス製のボウルに温めたオイルをすべて入れ、苛性ソーダ水をゆっくり入れてから、泡だて器で混ぜ合わせます。40度に保ちながら、最低20分はしっかり混ぜてください。気泡入りの生地にならないように、気泡ができてきたら泡だて器のスピードを調整して落ち着かせます。
5.ホホバオイルとエッセンシャルオイルを入れる
石鹸の生地がとろっとしてきたら、ホホバオイルとお好みのエッセンシャルオイルを入れて、ゴムベラを使用してよく混ぜます。
エッセンシャルオイルは使用してもしなくても、どちらでもかまいません。エッセンシャルオイルのニオイが苦手なワンちゃんもいるため、判断して使用してくださいね。
6.シリコンモールドに流し込む
シリコンモールドに分量外のホホバオイルを薄く塗り、生地を流し込んでいきます。シリコンモールドが何かの形になっていて凸凹している場合は少なめに生地を入れ、型を台の上に軽く落とすようにトントンとして、生地をいれてはトントンを繰り返し、生地が隙間なく凸凹に行き渡るようにしましょう。
7.保温して乾燥させる
シリコンモールドにラップをして、発泡スチロールやダンボールの箱に入れて24時間保温します。24時間経ったら、型から外してください。
型が大きく、切り分けて使用したい場合は、保温が終わったら包丁などで切っておきます。その後、新聞紙などの上に置き、風通しの良い場所で4週間程度乾燥させたら完成です。
犬の石鹸を作る際に注意すべきポイント
犬用石鹸を手作りする際に、注意すべきことがあります。犬の皮膚はとてもデリケートなため、自然由来のものなら何でも使用していい、というわけではありません。意外にも使用してはいけないものも多いので、しっかり覚えておきましょう。
使用を避けるべきオイルがある
犬用石鹸に植物のオイルを使用するのは、保湿効果を持たせるためです。でも、オイル選びを失敗すると逆効果。愛犬の皮膚や被毛に残った油脂が酸化したり、微生物が繁殖...なんてこともあり、皮膚にダメージを与えてしまうことにもなりかねません。
不飽和脂肪酸を多く含むオイルは酸化が速く、使用は避けたほうがいいでしょう。特にリノール酸やリノレン酸を多く含むオイルは酸化スピードが半端ありません。使用しないように気をつけてくださいね。
【使用を避けるべきオイル】
ローズヒップオイル、ククイナッツオイル、くるみ油、キャノーラ油、グレープシードオイル、ひまわり油、紅花油、月見草油、大豆油、小麦胚芽油、綿実油、米ぬか油、ピーナッツオイル、アプリコット核油、コーン油、スイートアーモンドオイル、ごま油
良かれと思ってもオプショナル素材は使用しない
愛犬のために良かれと思っても、炭やクレイなどの汚れを取り除く効果のあるスクラブ成分を使用することは、犬の皮膚を傷つけてしまうこととなるため、使用しないようにしましょう。
使用してはいけないエッセンシャルオイルがある
リラックス効果や元気を促進する効果、消臭効果や防虫効果など、エッセンシャルオイルは犬に良い効果をもたらしてくれるものもあります。しかし、作用が強すぎて犬には悪影響となるエッセンシャルオイルもたくさんあります。
心臓病を患っている犬や妊娠中の犬は特に注意が必要となり、健康であっても皮膚刺激が強い成分のアルデヒド類や、神経毒性のある成分のケトン類、肝毒性のある成分のフェノール類などのエッセンシャルオイルは使用してはいけません。
【使用してはいけないエッセンシャルオイル】
ルー、ヤロー、アニス、カシア、タイム、バーチ、カラマス、サンタナ、タンジー、ヒソップ、カンファー、ジュニパー、マグワート、サッサフラス、ワームウッド、ウォームシード、マスタードセイボリー、ビター・アーモンド、ラベンダーストエカス、グローブウィンターグリーン
最後に
愛犬の健康のために少しでも良い物を...という飼い主さんの意識も高まり、犬用シャンプー剤から人間用石鹸に切り替える方も増えています。とは言え、人間用石鹸はあくまでも人間の体に合わせて作られています。一般の石鹸は合成化学洗剤となっているため、愛犬に使用するのは避けたいものです。
しかし、石鹸にはメリットもあり、シャンプー剤を使用するとシャンプー剤のアルカリ性を後のリンスやコンディショナーで中和させる必要がありますが、石鹸のアルカリ性はよく洗い流すことですぐに中性に変わるため、シャンプー時間の短縮や皮膚へのダメージも軽減されます。
愛犬に石鹸を使用するならば、化学成分無添加の石鹸を使用するか、犬用石鹸を購入するようにしましょう。
また、人間用の石鹸には成分表示の義務があっても、残念ながら100%信用できないことがあるのも事実です。安心・安全な石鹸を求めるためにも、愛犬用の石鹸を手作りすることも考えてみてくださいね。