犬が人間同士の喧嘩を仲裁するときの行動
皆さんの愛犬は家族内で喧嘩が起こった時、その喧嘩を必死で仲裁する様子を見せますか?
今回はなぜ犬が人間の喧嘩を必死で仲裁するのかについてお話ししていきますが、その前に、すべての犬が人間の喧嘩を仲裁するわけではないということを頭に入れておきましょう。
犬にもそれぞれ性格があります。勇敢な性格の犬もいれば、臆病な性格の犬もいます。勇敢な犬であれば、喧嘩を仲裁する勇気や行動力を見せることも多いでしょうが、臆病な犬は喧嘩の仲裁に入る勇気は出ないかもしれませんね。
そのため、「うちの子は家族が喧嘩していても止めてくれない…」と不安に思う必要はまったくありません。それもその子の個性なのです。
これを念頭に置いた上で、もしも犬が人間の喧嘩を仲裁している場合、どのような行動を見せるのかを確認していきましょう。よく挙げられる例は以下に記載します。
- 喧嘩している人間の間に座り込む
- 喧嘩している人間を舐める
- 喧嘩している人間に向かって吠える
これらがよく見られる喧嘩を必死で仲裁している時の行動の例です。
「喧嘩を止めているようにも見えるね」と言う飼い主さんもいますが、元々野生で群れをつくり行動していた犬にとって、これは立派な仲裁行動なのです。
犬が自分自身や相手に争う意思がないことを伝えて、落ち着かせるためにする行動をカーミングシグナルと言います。
愛犬が人間同士の争いに割って入って仲裁するという行動は、このカーミングシグナルが発展したものと考えられます。
つまり、実際に「喧嘩をするな」「喧嘩はやめて」と人間の喧嘩を仲裁する意思を持って行動しているということです。
犬が人間の喧嘩を仲裁する理由3つ
犬が人間の喧嘩を必死で仲裁することがある、ということを知った上で、ここから本題に入りましょう。なぜ犬は人間の喧嘩を必死で止めようとするのでしょうか。
理由1.険悪な雰囲気を感じたくないから
まずは犬自身が過ごしている環境で、険悪な雰囲気を作ってほしくないからという理由が挙げられます。自分に置き換えてみると、理解できるのではないでしょうか。
例えば、自分がいつも寛いでいるスペースで他の人が突然怒鳴り合ったり、険悪な雰囲気を醸し出したとしたら、どのように感じますか?
多くの人はストレスを感じるはずです。それは犬も例外ではありません。その状況を打開するために、「自分がなんとかするしかない」と立ち上がり、喧嘩を必死で止めようとするのです。
理由2.群れの和を乱してほしくないから
犬は元々、多くの仲間で群れ、集団で行動していた動物です。そのため、とても仲間意識が強く、その中で争いが起こることを嫌う傾向が強いです。
野生で生きていた頃、仲間内で喧嘩が発生し、和が乱れた場合、その隙を突いて敵が襲ってくる…ということもあったでしょう。このように犬が仲間として見なしている群れの中で、喧嘩などのトラブルが起こることは緊急事態に値するのです。
そのため、大事な仲間が喧嘩をしている際は、本能的に「喧嘩を止めないと」と仲裁するような行動をとるのです。
理由3.大好きな家族がいがみ合うのを見たくないから
最後に平等に愛している家族同士がいがみ合っている姿を単純に見たくないという理由です。これは子どもが親の喧嘩を見つめる目線に近いでしょう。
犬は忠誠心や家族に対する信頼がとても強い動物です。そのため、そのように愛している家族同士が喧嘩をする姿を見ると、強いストレスを感じてしまうのです。
先ほどもお話ししたとおり、仲間意識も非常に強いため、「みんなで仲良くしよう」「みんな大好きだから、どちらかのご機嫌を取るとか考えられない」といった不安やストレスを感じやすいのです。これを解消するために、犬は人間の喧嘩を必死で止めようとするのです。
犬が人に対して使うカーミングシグナル
一見喧嘩の仲裁をしていないように見える犬でも、実は喧嘩する人間をなだめるためにカーミングシグナルを出していることがあります。もしかしたら、喧嘩に無関心に見えるあなたの愛犬もカーミングシグナルを使って喧嘩を仲裁しようとしているかもしれません。
喧嘩の仲裁の他にも、飼い主への愛情表現など、犬は人に対してさまざまなカーミングシグナルを出しています。
犬が人間に対して使うカーミングシグナルにはどんなものがあるのか、ご紹介しましょう。
あくびをする
相手が怒っているとき、あくびをすることがあります。これは、「話を聞いていない」「ふざけている」という意味ではありません。
相手に対して「落ち着いてください」と、これ以上怒らないように提案しているのです。このとき、愛犬はこの怒られている状況を一刻も早く終わらせたいと思っています。
また親しくない人に触られたり、不快な気持ちになると、不安や恐怖を抑え込もうとしてあくびをしがちです。
背中を見せる
主に信頼関係ができている飼い主さんに対して、背中を見せることがあります。これもカーミングシグナルのひとつで、叱られているときにしがちな行動です。
犬は飼い主さんの語気や表情から、今怒っていると判断します。その状況を回避するために、プイッと背中を見せるのです。
これは「もう怒らないで、降伏します」という意思の表れです。この行動の意味を知らないと、飼い主さんは無視されていると勘違いして、愛犬を叱り続けてしまいがちです。愛犬が背中を見せたら、叱るのをやめましょう。
顔や目をそらす
動物同士では、目と目が合うと戦闘状態に移る場合があります。これは人間と動物においても同じことです。山登りをしていて、野生のサルに出会ったら目を合わせてはいけないというのもこうした戦闘状態を避けるためです。
愛犬が人に対して、顔や目をそらしたらちょっと怖いからこの場を離れたいという意思の表れです。
信頼関係のある飼い主さんにはあまりしませんが、家に遊びに来た飼い主さんの友人、離れて暮らしている飼い主さんの家族など、見慣れない人に対してはこういった行動をしがちです。
散歩中におしっこをして飼い主を見る
かなり特定の状況ですが、散歩中に愛犬から顔を見上げられたことはありませんか?おしっこは自分の存在を誇示する縄張りのような意味を持ちます。一方、おしっこしたときに誰かがいると意味は少し変わります。
犬と犬が直接出会って片方の犬がおしっこをした場合は、「友達になろうよ」という意思表示です。
散歩中におしっこをして飼い主さんの顔を見上げてきたら、「飼い主さんのことが大好き」という愛犬からのメッセージです。これは愛犬からの最高の愛情表現なのです。
顔をなめてくる
犬は誰彼構わず人の顔をなめることはありません。犬は信頼している人でなければ、顔はなめてきません。飼いはじめの頃は顔をなめられることはあまりないと思います。
飼い主さんとの信頼関係が深まってきたころに、愛情表現として顔をなめてくるのです。子犬の頃に母犬に母乳や食事をねだっていた名残から、こうした行動をとるのだと考えられます。
愛犬とはいえ、唾液には細菌が一杯含まれているので、口や鼻の中など粘膜をなめられないようにしてください。舐められたら必ず石鹸で洗うようにしてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。よくしつけ本などにも「犬には家族間の喧嘩を見せてはいけない」と書かれていることが多いですが、今回ご紹介したように余計なストレスを与えてしまうことも1つの理由です。
犬が人間の喧嘩を必死で止めようとする姿は愛らしいですが、なるべく愛犬の前では喧嘩を控えるようにしましょう。