皆さんの愛犬たちは、普段どんな場所で、どんな寝方で眠っているでしょうか?
わんちゃんたちも、人と同じようにいろいろな寝方で睡眠をとります。わんちゃんが寝るときの姿勢からは、
- その場の環境や寝具に対するわんちゃんの気持ち
- 眠るときに近くにいる人動物に対するわんちゃんの気持ち
が透けて見えることもあるほどです。
愛犬がぐっすりと眠っている姿は、飼い主さんから見ればすべて可愛く思えるものですが、「せっかくならリラックスして眠ってくれていると良いなあ…」と思うのが飼い主さんたちの共通認識のはず。
睡眠がきちんと取れていないと、わんちゃんも体と心を休めることができず、ストレスから体調不良に陥ったり、病状が悪化することもあります。
もしも愛犬の寝方を見て改善できることがわかれば、よりぐっすりと眠れるように、環境を整えてあげたいものですね。
愛犬のいつもの寝方を見て、うちの子がゆっくりと体を休められているかどうか、ぜひ確かめてみてください!
寝方からわかる犬の気持ち
それでは実際に、わんちゃんたちの寝方からどんな気持ちがわかるのかを知ってみましょう!
皆さんの愛犬たちは、どんな寝方で眠っていることが多いでしょうか?
仰向け
いわゆる「へそ天」とも呼ばれる、わんちゃんにとってはかなりリラックスした寝方です。動物にとって、お腹は敵や信頼していない人の前では見せたくない急所のようなものです。
例えば、人の場合でも心を許していない相手と会話をするときに、無意識に腕を組んでガードするような仕草を見せることがあるでしょう。
自分をさらけ出せないと思ったときには、必然的に体を隠す傾向にあるのはわんちゃんたちも同じことです。
もしも愛犬が飼い主さんの傍でこの寝方をよくしてくれているのであれば、「あなたたちの傍では安心して眠っていますよ」というサインでもあると言えます。
- 飼い主さんへの信頼をよく見せている
- ここは安心して自分をさらけ出せる寝場所だと伝えている
- 知らない他人の前ではなかなか見せない飼い主さんだけが見られる寝方
横向き
横向きも、わんちゃんにとっては大いにリラックスした寝方の1つです。寝るときだけでなく、起きていて簡単な休息を取るときの自然な姿勢でもあり、皆さんの愛犬たちもよく行う寝方ではないでしょうか?
横向きの寝方からさらに体の力が抜けていって、仰向けの姿勢に移行することもあります。また、暑い季節には後ろ足だけ開いて、横向きと仰向けの姿勢の中間で眠るハイブリッドな寝姿の子も。
そして、わんちゃんたちが睡眠中に夢を見ているかどうかはまだはっきりとはわかっていませんが、横向きの姿勢のときに、まるで夢の中でも走っているのかな?と微笑ましく思うほど、足をパタパタと動かす子もいるようですよ。
- 長時間眠るのにも楽な姿勢
- 体の力を抜いてのんびり過ごせている
- もしかしたら夢を見ているかも!
丸まる
野生のイヌ科の動物もよくとる寝姿が、丸まって眠るこの姿勢です。急所であるお腹を守りつつ、体温が逃げていかないように保持する意味も込められています。
そのため、冬場や、夏でもエアコンがよく効いた部屋で丸まっているようであれば、「もしかして寒いのかな?」と愛犬が眠る周囲の室温を確かめてあげるとなお良いでしょう。
人よりも地面に近い場所で過ごすわんちゃんにとって、下に溜まる性質を持つ冷気を直に感じている可能性もあります。
また、寒さ以外でも、周囲にいる人・環境に少し緊張していたり、不安を感じているときにもこの姿勢で眠る場合があります。
眠っている途中でよく目を覚まして耳を動かしていたり、顔をあげて周りを確認するような仕草を見せることがあれば、何か愛犬の眠りを妨げているものがないか確認してあげましょう。
- 犬という動物にとって自然な寝姿
- 寝場所がちょっと寒いと思っていることがある
- 周りの物音や人が気になっていることもある
うつ伏せ
うつ伏せで眠っているときには、熟睡というよりは、ウトウトしている時間を愛犬が過ごしている場合が多いです。
伏せの姿勢は、わんちゃんが必要なときにすぐに立ち上がって、次の行動に動くための姿勢でもあります。
そのため、周囲の環境が完全にリラックスできる場所ではないと感じたり、熟睡するつもりがない寝場所ではこの姿勢をとっているかもしれません。
例えば、
- ドッグカフェの足元で飼い主さんを待っているとき
- 日向ぼっこが気持ち良くて思わず眠りに誘われたとき
- 知らない場所にお泊りをして緊張を感じているとき
など、「眠りたいけど眠れない」ときや、「気持ち良くてうっかり寝ちゃった」というときに見せる寝姿でもあります。
気持ち良さを感じてウトウトしているだけであれば良いのですが、眠れないと愛犬が感じているのであれば、日が経つごとに睡眠不足による体調不良がどんどん出てくる可能性があります。
台風などで天気が悪い日が続いたり、お家の周りで工事が始まって愛犬がゆっくり眠れていなさそうだと感じたら、できるだけ物音に邪魔されない環境を作ってあげましょう。
特に、神経質だったり怖がりな性格のわんちゃんでは、より気を配ってあげる必要があります。
他にも、子犬では遊んでいる最中でもまるで電池切れかのようにパタッと眠ってしまったり、老犬で浅くでも眠る時間が長くなっていくときに、この姿勢で眠っていることがよくありますよ。
- すぐに起き上がることができる寝方
- のんびり過ごしているときのウトウトとした浅い眠り
- 緊張や不安で熟睡できないときの浅い眠り
愛犬のどんな寝方が可愛いと思う?(アンケート結果)
わんちゃんホンポでは、愛犬の寝姿を普段見ている飼い主さんに向けて、どんなポーズで寝ている愛犬が可愛いかというアンケート調査を行いました。
アンケート出典:https://wanchan.jp/enq/finish/711位になったのは「仰向け」で、これだけで約42%もの割合を占めました。次いで2位になったのは「横向き」の22%で、仰向けと合わせると半数以上になります。
これは、愛犬の寝相がどんな意味を示しているかわかっているかどうかに関わらず、飼い主さんから見て「気持ちよさそうに寝ている姿」が可愛いと感じている証拠でしょう。
私たち人は言葉で気持ちを伝えることが多いですが、実際は言葉以外でも目で相手の仕草や表情を見て、感情を読み取っています。
全身から力が抜けて、体を広げて寝ている愛犬の姿から、人は無意識にでも「心を許してくれていそう」「安心してくれていそう」というイメージを膨らませている部分があるのではないでしょうか?
「丸まる」・「うつ伏せ」の寝姿も、先にあげた2つの寝方に次いで可愛いと感じている飼い主さんは多いです。
この2つの寝方の中には、緊張や不安、寒さを感じている可能性もあると先ほどご紹介しました。
しかし、飼い主さんが微笑ましく感じているのは、このときのわんちゃんたちが自然な寝姿であったり、気持ち良さからウトウトしているから可愛いと感じているはずです。
丸まって寝ているの愛犬のフォルムが可愛いと感じたり、まさか!と思う場所でだらんと力を抜いてうつ伏せで寝ているのを、おもしろい寝方だなあと思ったこともあるかもしれませんね。
- 可愛いと感じる寝姿は、愛犬がリラックスした様子を見せるから
- 痛みや苦しいことが体の中にあれば、犬はリラックスできずゆっくり眠れない
- 安心して眠る愛犬の様子を見るだけで飼い主さんは癒される
- 時には笑っちゃうようなおちゃめな寝方もご愛敬
みなさんの愛犬の寝姿をご紹介!
ここからは、皆さんからいただいた「可愛いと感じた愛犬の寝姿」をご紹介します!「うちの子もこういう寝方するなあ」「他の子はこんな寝方をすることもあるのか!」と、自分の愛犬以外のわんちゃんの姿を堪能してみてくださいね。
頭隠して尻隠さずの状態で眠っているのがなんとも可愛らしい1枚です!へそ天で寝ている姿勢からは気持ちよさそうないびきが聞こえてきそうですね。
思わず眠くなって寝てしまったのでしょうか?よく熟睡していそうな寝姿です。
ベッドのカーブに見事に体を添わせながら眠っているお写真。とてもリラックスしている様子がよくわかります。
ソファーを丸ごと占領して長い体をゆったりと伸ばして寝ています。飼い主さんの座る場所は一体どこに…!
重なったブランケットの上で爆睡。ちょっぴり舌が出ているのが可愛いですね。
毛布に包まれた状態で、もこもことした場所で眠れて暖かそうです。
熟睡しつつも気になるのはやや開いた目がドキドキします!起きているの?寝ているの?
どうしてそこで?と思わず聞いてしまいたくなる場所で眠っています。果たして熟睡はできたのでしょうか?
後ろにベッドが見えますがあえて床で寝ているご様子。眠そうな目を頑張って開けてこちらを見つめている様子が可愛いですね。
わずかにカーテンの隙間から日が差して、毛並みの美しさもあいまって、まるでちょっとしたアートのようです。
専用ベッドの上にさらにブランケットを敷いてもらい、とても居心地が良さそうです。優しい顔でまるで夢を見ているようですね。
飼い主さんのベッドと枕を独占してとても気持ちが良さそう!まるで人が入って眠っているような寝姿ですね。
近くにあるのは飼い主さんの服でしょうか?大好きな匂いに囲まれて、のんびり寝ぼけている様子が可愛らしいです。
全身をピーンと伸ばしてまったりと。その柔軟性に驚きです。
飼い主さんの近くで眠っているのでしょうか?穏やかな顔で熟睡していますね。
お気に入りの相棒とぐっすり。ぎゅっと抱きしめて離さない姿に頬が緩みます。
ふたりそろって同じ顔・同じ姿勢で眠っている姿がそっくりです!仲良く並んで眠っているのを見られるのは、多頭飼いの特権ですね。
仰向けで眠っている愛犬に毛布をかけてあげたのは飼い主さんでしょうか。まったく気づかずリラックスして眠っています。
自分が安心できる場所にたっぷり毛布を敷いてもらって、とても眠り心地が良さそうですね。顔を出口の方に向けているのは、飼い主さんのことを眠る前まで見つめていたのでしょうか?
頭がちょっと高い場所にもたれかけた不思議な姿勢ですが可愛いですね。ここはこの子のお気に入りの寝場所なのでしょうか。
ベッドの中で気持ちよさそうに眠る顔からは、ちょっぴり出ちゃった舌がちらり。
枕をがっつり占領して我が物顔で寝ていても、これだけ気持ちよさそうに眠っていれば起こしづらいですね。
へそ天で体をローリングさせつつ、半目で寝ているという思わず笑ってしまう大胆な姿勢です。完全無防備とはこのことですね。
獣医師によるQ&A
回答してくれる先生
わんちゃんの寝方についてお話してきましたがいかがでしたでしょうか?
さて、ここからは、飼い主さんがよく気になる愛犬の寝方に関わる質問をご紹介します。「うちも気になっていた!」という項目があれば、ぜひ参考になさってみてくださいね。
寝ているときにいびきをかくのは大丈夫?
いびきをかくのは、基本的に大丈夫です。
パグやシーズー、フレンチ・ブルドッグなどの短頭種が普段からいびきをかくのはとてもよくあることで大丈夫です。
ただ、そのような犬種では軟口蓋過長症や気管の低形成、外鼻腔(鼻の穴)の狭窄といった短頭種気道症候群が治療の対象になる程度ではないか、犬が活動している時の呼吸を気にしてあげてください。
短頭種ではない犬で、以前はいびきをかかなかったのによくいびきをかくようになった場合には、空気の通り道に異常が起こっている可能性もあります。顔の腫れや鼻水、鼻血などがないかチェックして、病院を受診するのがベストでしょう。
寝ているときに半目になったり舌が出たままになっているは大丈夫?
半目や舌が出たまま寝ていても、大丈夫です。
顔面神経麻痺や三叉神経麻痺ではない限り問題ありません(そのような麻痺では、起きている時にも異常があります)。眼の病気を持っているわんちゃんで寝ている間に半目になっているせいで余計に眼が乾燥する場合には、軟膏を塗ってあげると良いでしょう。
愛犬とは同じベッドで寝ない方が良いの?
同じベッドで寝ても問題ありません。
衛生面やしつけ面をクリアしていて、飼い主さんとわんちゃんが共に安眠できるのであれば、同じベッドで寝ても問題ありません。
愛犬が家族によって寝姿を変えるのは意味があるの?
相手に対する安心感が違うかもしれません。
この記事にあるように、犬がおかれている環境や一緒にいる相手によって犬の安心感が異なり寝方にも影響を及ぼしますので、犬が持つ安心感が家族間で大きく違えば、家族によって愛犬が寝姿を変えることはあるでしょう。
愛犬の体に負担がかかる寝姿ってあるの?
わんちゃんが自分でとった姿勢なら大丈夫です。
人でも寝違えたり寝起きにしびれていたりすることがあるように、わんちゃんが体のどこかに負担がかかる寝方をする可能性はあります。しかし起きた時に不快であれば同じ寝方を繰り返さないようにするでしょう。
エリザベスカラーを装着していたり術後や怪我といった体の機能の一部に障害がある状態では、寝るスペースを普段より広くしたり首をもたせかける高い部分を作ったりと、わんちゃんが体に出来るだけ負担をかけずに寝ることができる工夫をしてあげると良いでしょう。
寝ているときに体がピクピクするのは大丈夫?
筋肉や体がピクピクしていても、大丈夫です。
人が寝ている時に筋肉や手足がピクピクと動くことがあり、犬でも同じことが起きることがありますが、異常ではありません。眠りが浅い時に手足が動くことはよく見られます。
筋肉がピクピク動くのは、筋肉疲労や水分不足、電解質のアンバランスが原因のことがあると言われていますが、何も異常がなくてもよく見られる現象です。病気によって痙攣が起きる場合は、起きている時にも起きます。
東京農工大学農学部獣医学科卒業。その後、動物病院にて勤務。動物に囲まれて暮らしたい、という想いから獣医師になり、その想い通りに現在まで、5頭の犬、7匹の猫、10匹のフェレットの他、ハムスター、カメ、デグー、水生動物たちと暮らしてきました。動物を正しく飼って、動物も人もハッピーになるための力になりたいと思っています。そのために、病気になる前や問題が起こる前に出来ることとして、犬の遺伝学、行動学、シェルターメディスンに特に興味を持って勉強しています。