寂しさは犬のストレスに…
犬は、もともと群れで生きる動物であるため、基本的に寂しがり屋です。ひとりぼっちで留守番をしたり、飼い主さんとのコミュニケーションが不足したりすると、寂しくなってしまうことがあります。
そして寂しいときは、その気持ちを飼い主さんに伝えようとします。犬なりの方法で、飼い主さんに『寂しいサイン』を送るのです。飼い主さんがそのサインに気づかないでいると、寂しさが蓄積され、大きなストレスになりかねません。
ストレスは下痢や嘔吐、血便といった体調不良を引き起こすこともあるので、愛犬の『寂しいサイン』は見過ごさないようにしたいものです。そのためにはまず、犬は寂しいときにどのようなサインを見せるのか知っておく必要があります。そこで今回は、犬の『寂しいサイン』をご紹介したいと思います。
犬の『寂しいサイン』
①前足をなめる
犬が自分の前足をなめるのは珍しいことではなく、様々な理由から前足をなめます。かゆみや違和感がある場合のほか、不安や緊張を和らげるためや、寝る前の習慣として前足をなめることもあります。
そして、寂しさや退屈を感じているときにも前足をなめます。留守番中や、飼い主さんに構ってもらえず、何もすることがないときに、目の前にある前足をなめるのです。舌の出し入れや咀嚼は、心拍数を下げて気持ちを落ち着かせる効果があると言われているので、前足をなめると寂しい気持ちも落ち着くのかもしれません。
前足に限らず、体の一部分をずっとなめ続けている場合は、ケガや痛み、皮膚病変、常同障害(生活に支障を来すほど同じ行動を続ける心の病気)などが疑われます。動物病院を受診しましょう。
②上目遣いをする
飼い主さんが何か作業をしているときにふと視線を感じて見てみると、そこには上目遣いで視線を送る愛犬の姿が…。ということはありませんか?犬は寂しさや退屈を感じているときに、上目遣いをして何とも切ない表情を見せることがあります。力ない感じで座ったり、伏せたりしていることが多いようです。
どうしたらいいのか分からず不安なときにも、上目遣いをして飼い主さんに訴えることがあります。そのときの状況から、寂しいのか不安なのか判断してあげましょう。
③「クーン」と鳴く
犬は寂しいとき、小さくか細い声で「クーン」と鳴くこともあります。上目遣いをしても寂しい気持ちに気づいてもらえない場合、「クーン」をプラスしてアピールすることも。
クレートやサークルの中から「クーン」と鳴くこともありますが、それはそこから出してほしいからです。寂しそうに鳴いたからといって出してしまうと、鳴けば出してもらえると学習し、出してもらえるまで鳴き続けるようになる可能性があります。
要求吠えのひとつですので、クレートやサークルから出してほしくて鳴いているときは無視をして、「鳴いてもムダなんだな」と、犬が諦めるのを待ちましょう。
④いたずらをする
留守番をしていた愛犬に、部屋の中をいたずらされた経験がある飼い主さんは多いと思います。退屈で暇つぶしにいたずらをすることもありますが、寂しいサインであることも。飼い主さんがいない寂しさや不安を紛らわすために、家具を噛んだり、絨毯やドアを引っかいたりしてしまうことがあるのです。
疲れて帰ってきたときに、部屋の中がメチャクチャになっていたら、叱りつけたくなることもあるでしょう。でも、何時間も前にやったことを叱られても、どうして叱られているのか、犬には理解できません。
いたずらを叱るよりも、上手に留守番できるようにトレーニングをしてあげましょう。数分の留守番から始めて、徐々に時間を延ばしていき、「飼い主さんは出掛けても、必ず戻ってくる」と理解させます。また、留守番前に散歩や遊びで適度な運動をさせて、留守番中にたくさん眠れるようにしてあげるのがおすすめです。寝て過ごす時間が多ければ、あまり寂しさや不安を感じずに済みます。
⑤仮病を使う
過去に足をケガをしたり、ちょっと足を引きずったりしたときに、飼い主さんに優しくされた経験のある犬は、寂しいときに仮病を使うことがあります。痛くないのに足を引きずって、飼い主さんの気を引こうとするのです。飼い主さんの仕事が忙しいとき、赤ちゃんが生まれたとき、新しいペットを迎えたときなどに多く見られます。
仮病は、飼い主さんや家族の前でだけ痛いふりをするのが特徴です。誰も見ていないところでも足を引きずっているようならば、関節などに異常があるかもしれないので、動物病院で受診を。もし仮病であっても、叱ったり放っておいたりせずに、しっかりコミュニケーションを取って、愛情を示してあげましょう。
分離不安の可能性も…
寂しいサインのいくつかは、分離不安の症状と重なるものがあるため、注意が必要です。分離不安とは、犬が飼い主と離れたときに強い不安を感じ、問題行動や体調不良を起こす心の病気のことです。社会化期(生後3~12週の間)の経験不足、飼い主さんへの強い依存、留守番時のトラウマなどが、分離不安を引き起こす要因になります。
症状は主に留守番中に見られ、
- 吠え続ける、鳴き続ける
- 粗相をする
- 家具などを破壊する
- 常同行動(部屋を行ったり来たりする、前足をなめ続けるなど)をする
- 嘔吐や下痢、血便などの体調不良
といったことが挙げられます。
留守番の間ずっと前足をなめている、あるいは鳴き続けているようであったり、留守番のたびに部屋がメチャクチャになっていたりするような場合は、分離不安になっている可能性があるので、獣医師に相談することをおすすめします。
まとめ
今回は、犬の『寂しいサイン』を5つご紹介しました。愛犬が寂しいサインを見せたときは、散歩や遊びの時間を増やすなどして、愛犬の心を満たしてあげましょう。また、ひとりぼっちになる留守番中に寂しさや不安を感じる犬は多いので、上手に留守番できるようにトレーニングをしたり、留守番中の寂しさや不安を軽減する工夫をしたりすることも大切です。
寂しいサインの中には、分離不安の症状と重なるものもあるので、気になる場合は一度、獣医師に相談してみましょう。