動物医療の進歩やフードの栄養改善。ペット知識の普及や飼い主さんたちの意識の高まり…。そんなさまざまな努力により、犬の平均寿命は過去に比べて大幅に伸びてきました。家族の一員である犬が長生きしてくれることは大変喜ばしいこと。
しかし、ヒトも犬も、寿命が伸びることによってさまざまな病気にかかりやすくなります。
犬の認知症発症率は、人より多い?
高齢になるほど、犬も認知症にかかる可能性が高くなります。調査によると、14歳以上の犬の40%、16歳以上では60%程度の犬が認知症を発症するとされ、それはヒトの認知症発症率(85歳以上で約40%)より高くなっています。
発症の年齢は13歳から増え始め、15〜16歳にピークに達します。8歳前後からの注意が必要というデータもあるので、早め早めの対策が重要です。
好発の犬種は日本犬系の雑種が最も多く、次いで柴犬、マルチーズとつづいています。さらに、日本では認知症にかかる犬は年々増加傾向にあるといいます。
どんな症状が出る?
初期の症状はわかりにくいことが多く、飼い主さんでも見過ごしてしまうこともあるようです。
認知症のサインとしては、
- 飼い主の呼びかけに反応しない
- 狭いところに入り、後退出来ず出てこれない
- 昼夜逆転している。夜、意味もなく鳴く
- 円を描くように歩き回る、目的もなくトボトボと歩く
- よく食べているのに痩せてくる
- 頻繁に震える
- 排泄が適切な場所で出来ない
が挙げられます。
呼びかけに反応しないなどは、歳を取ったからかな?と思いがちですよね。当てはまる項目が二つ以上ある場合は、病院へご相談ください。
認知症になってしまった犬のために、飼い主ができること
hill'sには、認知症になってしまった犬は、外界に反応せず、じぶんだけの世界にいる状態とかんがえられるとありました。
そんな愛犬に、飼い主さんが出来ることはなんでしょうか。研究によって、認知症のコントロールがある程度行えることがわかってきました。
栄養補助
オメガ3系脂肪酸とは、最近聞くようになった言葉です。犬ばかりでなくニンゲンの認知症予防や血圧コントロール、血流にも良いとされ、エゴマ油や亜麻仁油に含まれるとその商品が人気になりました。
犬の初期の認知症に有用なものとして、市販で売られているものにペット用のEPA粉末、ヒルズ社のプリスクリプションダイエット、DHA配合のサプリメントがあります。これらの給与を一週間ほどつづけると、夜泣きなどに改善が見られたという実験があります。
投薬
日本ではまだ認可されていませんが、アメリカでは犬の初期の認知症に対し、投薬による治療が始まっています。日本でも抗不安薬などの投与を行い、症状を緩和してくれる獣医さんもいるので、相談してみてください。
刺激を与える、ちゃんと話しかける
認知症だから…と、犬を無視をしたり、放置したりすることは、認知症をどんどんすすめてしまいます。
出来ることとしては、
- 散歩のコースを変えてみる
- 工夫できるおもちゃを与える
- 排泄問題があるときには、オムツをさせ、排泄したあとはお尻を拭き、清潔にしてあげる
- 撫でてあげる(マッサージ)
- なるべく側に居てあげる
ヒトも同じですが、認知症になっても手をかけられたことはわかります。愛情はちゃんと犬にも残るのです。
愛犬が認知症になってしまったとき、早めに気付けるかどうかが、犬の生活の質を左右します。
飼い主さんの根気、創意工夫が試されます。