犬の健康のキー「脂肪」について知っておきたいこと

【獣医師監修】犬の健康のキー「脂肪」について知っておきたいこと

犬の食事のことを考える時、脂肪は悪者だと思われがちです。けれども犬にとっても脂肪は3大栄養素の一つで健康に欠かすことのできないものです。脂肪について知っておきたいことをご紹介します。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

犬にとって必要な栄養素「脂肪」

フードボウルの前に座るジャックラッセルテリア

人間でも犬でも「健康的な食事」というと低脂肪やノンファットなど、脂肪分が少ない方が良いというイメージを持たれがちです。けれども、脂肪は脳、皮膚、内臓など体のほとんどの器官で様々な役割を果たしている大切な栄養素です。ちょっとややこしいけれど、愛犬の健康を支えるのに大切な脂肪のことを、ちょっと考え直してみましょう。

最初に、脂肪はモノグリセリド(グリセリンに脂肪酸が1つだけ結合している状態)と様々な種類の脂肪酸によって構成されています。オリーブオイル、牛脂、亜麻仁油など脂肪の種類によってそれぞれ違う種類の脂肪酸が含まれています。体内でいろいろな働きを担うのは、この『脂肪酸』たちです。

また、脂肪酸には体内で合成できるものとできないものがあり、合成できないものは食べ物から必ず摂取しなくてはなりません。この食べ物から摂取することが必須である脂肪酸が『必須脂肪酸』です。必須脂肪酸にはオメガ6系脂肪酸と、オメガ3系脂肪酸の2つの系統があります。

2つの系統の必須脂肪酸

机に置かれたいろいろな食品

先に述べたように、必須脂肪酸には次の2つの系統があります。

オメガ6系脂肪酸

オメガ6系に分類される脂肪酸の代表的なものは「リノール酸」です。リノール酸はひまわり油、紅花油、ごま油、大豆油、コーン油など一般的に調理に使われる油に多く含まれています。リノール酸は体の組織を正常に機能するために欠かせない栄養素です。リノール酸は、体内で「ガンマリノレン酸」「アラキドン酸」という別の種類のオメガ6系脂肪酸を生成します。実はリノール酸には体内の炎症を促進させる働きがあります。しかし、体内で生成されたガンマリノレン酸には炎症を抑える働きがあり、バランスが保たれます。

ガンマリノレン酸を生成する能力は年齢とともに衰えがちで、一定の年齢から皮膚の赤みや痒みなどの炎症が見られるようになるのは、体内でリノール酸が過剰になっている場合があります。アラキドン酸は体内の生化学物質合成に欠かせない他、神経や免疫機能の調整をする役目もあります。アラキドン酸は肉や卵に多く含まれているので、犬の場合リノール酸からの生成が少なくても不足することはあまりありません。

オメガ3系脂肪酸

オメガ3系に分類される代表的な脂肪酸は「アルファリノレン酸」「ドコサヘキサエン酸(DHA)」「エイコサペンタエン酸(EPA)」です。アルファリノレン酸は亜麻仁油、シソ油、エゴマ油に多く含まれています。DHAやEPAは魚の油の成分としてサプリメントなどでよく知られています。アルファリノレン酸が活用されるためには、体内でDHAとEPAに変換されなくてはなりません。

しかし犬の場合、アルファリノレン酸からDHAとEPAに変換するための酵素が少ない個体が非常に多く、ほとんどの場合、アルファリノレン酸からは十分な量のDHAやEPAが得られません。犬にとってはアルファリノレン酸ではなく、DHAやEPAが含まれる油を摂取するのが理想です。オメガ3系脂肪酸は皮膚、筋肉、血液、免疫機構、脳などで重要な役割を果たしているため、不足すると様々な不調をきたします。オメガ6系のリノール酸が促進する炎症反応を抑える働きもあります。

ドッグフードや犬の手作りごはんで気をつけたいこと

ボウルに山盛りのドッグフード

ドッグフードは必要な栄養素が全て含まれているというのが前提となっています。けれども実際には、成分そのものは含まれているけれどバランスが崩れている場合も少なくありません。犬の場合、必須脂肪酸はオメガ6系が4に対してオメガ3系が1の割合が望ましいとされています。

しかし、ドッグフードの中でもコーンが多く使われているものはリノール酸がとても多く含まれているため、オメガ6とオメガ3の割合が20対1またはオメガ6がもっと多いという状態になっていることがあります。コーンが多く含まれるフードを食べると皮膚が赤くなったり痒くなったりするのは、アレルギーというよりもリノール酸による炎症反応が暴走している場合も多いようです。

また、オメガ3系脂肪酸の摂取源として使われているのが亜麻仁など植物性のものだけというフードも少なくありません。この場合、犬は亜麻仁などに含まれるアルファリノレン酸を体内で活用することができなくて、オメガ3系が決定的に不足してしまうことになります。

また、オメガ3系脂肪酸を含む油はどれも酸化しやすく熱に弱い性質があります。高温で調理されるドッグフードでは、フィッシュオイル などDHAやEPA豊富なオイルが使われていても、どの程度有効なのか疑問な部分もあります。

ドッグフードではこのようにリノール酸が突出して多く含まれ、DHAやEPAが不足しているものが少なくありません。心当たりがある場合、リノール酸の炎症反応を抑える働きのあるガンマリノレン酸を含むボラジ油やブラックカラント油、DHAなどを含むフィッシュオイルなどのサプリメントをプラスすることをかかりつけの獣医師やペット栄養士さんと相談してみるのも良いかと思います。

手作りごはんを作っている方は、オメガ6とオメガ3のバランスを考えることを常に意識するようになさってください。意外と盲点なのが、健康に気を配ってオメガ3系はしっかり摂取しているけれど、低脂肪のお肉を使ったり、油控えめにしたりしているためにオメガ6系が不足しているという例が手作りごはんでは少なくないのです。

まとめ

ウィンクする犬の正面顔アップ

犬にとって必要な栄養素の一つ脂肪、その成分である各種脂肪酸についてご紹介しました。脂肪のお話はとてもややこしくて取っつきにくいのですが、知っていると愛犬の健康管理がとてもやり易くなるので、多くの方に知っていただきたいと思います。愛犬の健康なかでも皮膚のことでお悩みの場合は、ぜひ一度フードの原材料や、手作りごはんの内容で脂肪=油に注目してみてください。新しい発見があるかもしれません。

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