飼い主が外出すると吠えるのはなぜ?
犬にとって「飼い主の家族」とは?
飼い主さんが1人で犬を飼育しているのではなく、家族がいる場合や、1人暮らしでも家族以外の人が定期的に出入りする場合など、犬を飼育している環境は様々です。
つまり、一言で「飼い主」と言っても、家族構成によって「自分が犬の飼い主だ」と思っている人が複数存在する家庭も多いと思います。最も多い家族構成としては、
- 「世帯主である男性」
- 「食事などの世話をしてくれる庇護者である女性」
- 「それらの人に守られている子供」と言った役割を担っている家庭です。
そして、その役割分担を犬は本能的に察知します。
例えば、「世帯主」と「庇護者」に自分も守られていると感じていたら、「世帯主と庇護者に守られている子供」と自分は、同じ役割を担っている、と考えます。そして、「守られている子供」の中で最初に精神的にも肉体的にも成長して大人になるのは犬です。
ですから、犬は「守られている子供」の役割を担っているグループの中でのリーダーという意識を持ちます。
分離不安のため
犬の分離不安とは、犬が飼い主や仲間の犬と離れて1頭だけになったとき、強い不安や恐怖を感じてパニックを起こしてしまうことを言います。原因は様々ですが、飼い主さんが外出するとわかったとたんに、突然感情が激しく変わって、激しく吠えるようであれば、分離不安の疑いがあります。
リーダーとして群れを守ろうとしているため
室内飼育の犬なら、家の中と家の外の敷地内が犬のテリトリーです。その中は、自分が信頼するリーダーが守ってくれる安全地帯ですが、そこから外は犬のテリトリーではないので、仲間である子供さんが危険な目にあっても守ることができません。
ですから、大人の飼い主さんではなく、子供さんが学校に行くために外へ出るとなると、「外に出るな!危ないぞ!」という注意喚起のために吠えていることもあります。
出かけるときにだけ吠えているときの対処法
クレートに入れて、おやつを上げる
- 出かける準備をしている間、犬がどんなに落ち着きなく騒いでも、一切、相手にしません。
- いざ出かけるときに「特別なおやつ」を用意して、「おいで」と誘導してクレートの中に入れます。そして、おやつを食べている間に、さっと出かけます。
- その後、5~10分してすぐに戻り、クレートを開放します。
- 吠えていなければ「よく静かにできたね」などのポジティブな言葉で犬をほめてあげましょう。
これを毎日、少しずつ、家を空ける時間を延ばしていきます。そうすると、「飼い主さんは出かけても待っていれば必ず帰ってくる」と犬が理解します。そこまで訓練できれば、飼い主さんが外出しても吠えることはなくなるはずです。
監修ドッグトレーナーによる補足
吠える頻度が高い犬、吠えるのが近所迷惑になってしまう、クレートに入るのを嫌がる、このようなケースだとどうすればよいでしょうか?じつは素晴らしい練習方法があります。
それは「クレートの中に入る練習を繰り返す」という方法です。まずクレートの扉は常に開けた状態にしておきます。愛犬がクレートの中に入ったらごほうびをあげる。愛犬がクレートの中から出てきてしまってもかまいません。扉を閉めることもしません。とにかくクレートの中に入るだけ。入ればほめてあげましょう。
練習を繰り返すと愛犬はクレートに入るといいことがあると学習して、自らクレートの中にいる時間が長くなっていくかと思います。愛犬が自らクレートの中に入るように導いてあげましょう。
特定の人や犬にだけ吠えるときの対処法
子供にだけ吠える
「出かけないで!家にいて!」という感情で吠えている場合と、「外に出かけると危ないよ!」という感情で吠えている場合が考えられます。いずれにせよ、犬の感情をコントロールできれば吠えやませることができるので、「吠えなければいいことがある」と教えます。
「マテ」ができることが大前提
まず、「マテ」がしっかりできることが前提です。
- 吠え始めたら、「マテ」と犬の行動を制御します。
- それができたら、クレートや犬が留守番をするときや、眠るときに使っているゲージなどに誘導して、中に入れます。
- 静かに中に入ることができたら、そのときだけの「特別おいしいおやつ」を与えます。食べるのに時間のかかるガムタイプやジャーキーなどがよいでしょう。
- 犬がそのおやつに気を取られている間に、さっと見送ります。
子供さんが登校する時間はほぼ同じなので、この習慣が身につくと「おいしいおやつがもらえる時間だ」と覚え、そればかりが気になるようになります。この一連の作業を子供さんの役割にすると、子供さんが登校する際に「吠えずにお部屋の中に入ったら、おやつをもらえる」と理解します。
特定の大人にだけ吠える
子供さんではなく、家族の中に大人がいて、その特定の人だけに吠える場合もあると思います。「さみしいから出かけないで!」という感情で鳴いているときと、「危ないから外に出るな!」と吠えているときでは全く違う吠え方をするので、飼い主さんなら犬がどんな感情で吠えているのか、おおよそ予想できるのではないでしょうか。
「さみしいから出かけないで」と鳴いているときは、分離不安の可能性があります。「危ないから外に出るな!」と主張しているときは、吠えられている人に対して犬は「自分が守るべき対象」だと思っていると言うことです。
犬に気づかれないうちに家を出る
特定の人に吠える場合、おそらく家の中に犬が絶対的に信頼するリーダーが残っているはずです。リーダーが「守るべき仲間」に対して、何の注意喚起をしないので、犬が代わりに「危ないから外に出るな!」と注意喚起しているのです。あるいは、「リーダーの代わりは私!」と自己主張しているとも考えられます。
いずれにせよ、吠えやませるには犬の頭の中の序列の間違いを解決しなければならないので、少し時間や根気が必要になります。手っ取り早く改善するには、犬が最も信頼する人に犬の注意を逸らしてもらい、犬が気づかない間に外へ出てしまいましょう。
監修ドッグトレーナーによる補足
犬は出かける前の準備で「飼い主さんが出かける」と察知します。みなさんはどうでしょうか。出かける前に決まった行動パターンを作っている、という人がほとんどではないでしょうか?
例えば、着替える→化粧をする→鞄を用意する→玄関へ向かう。この一連の流れを愛犬が記憶している可能性があります。愛犬に気が付かれないように出ていくにはこの一連の流れを変化させるのもひとつの手段です。
化粧を先にしてみたり、鞄は先に玄関に用意しておく、着替えの場所を変えるなどいつもと違う準備の流れだと、愛犬が気が付きにくいかもしれません。
留守中、長時間ずっと吠えている場合の対処法
人がいない間、ずっと鳴き続けている場合もあります。体力を消耗するし、犬にとっても近所の人にとっても大きなストレスになります。できる限り早く対処し、改善できるように最善の努力をしましょう。
一人でいられるように訓練する
過剰に甘やかして育てたことによる分離不安であれば、犬に精神的自立ができるように飼い主さんも心を鬼にして努力する必要があります。例えば、同じ布団で寝る、過剰に甘やかすなどの行動を改善して、犬が犬らしく行動できるように訓練します。
出かける1時間前から30分は、犬のためだけの時間とする。
散歩に出かけても良いですし、犬とぬいぐるみなどで遊んでもいいです。ただし、外出する30分前には切り上げましょう。体力を消耗しますし、犬も飼い主さんと過ごすことができて満足します。
規則正しい生活を送る
例えば、特別変則的な時間帯で働くのでなければ、犬の生活リズムが狂わないように規則正しい生活ができるように調整します。犬の睡眠時間は、平均一日12~14時間です。どんなに飼い主さんを恋しいと思って騒ぎたくても、眠くて眠くて我慢できなかったら、犬は寝てしまいます。
そうなるように、夜はしっかり寝かせ、朝起きたら少し運動させて、そのあと朝寝して…といった定期的なリズムを取ることも、留守番での鳴き癖を改善するには有効です。
まとめ
犬は言葉を話して人間と意思を交わすことができません。けれども、鳴き声の大きさ、目の動きなどから感情を察知することはできます。
ただ、「うるさい!静かに!」と叱りつけるのではなく、なぜ、吠えるのか、それぞれの犬の性格から予想して、「外出するときにだけ、どうしてこんなに吠えるんだろう?」と疑問を持ちつつ、愛犬の様子を注意深く観察してください。原因がわかれば、もっと確実な対処法を見つけることができるはずです。
監修ドッグトレーナーによる補足
ご近所トラブルとして非常に多いうちのひとつが、留守時の無駄吠えになります。飼い主さんが自宅に居ないので、その場で対処が難しくなってしまうことが、トラブルになる原因のひとつですね。
だからといって無駄吠えを許していい訳ではありません。そのままではご近所との関係が悪化してしまい、そこに住み続けるのが大変になってしまいます。幸いしつけをしていけば無駄吠えを減らす方向へ導けますので、諦めずに練習を繰り返しましょう。