犬はシャンプーが嫌い
野生動物には基本的に入浴の習慣はありません。お風呂で体を洗わない代わりに砂や泥を浴びて寄生虫の付着を防いだり、水を浴びたりして汚れを落としています。犬も同様で、もともとはそれほど体を洗う必要を感じない動物なので、人間が良かれと思ってやっているシャンプー自体が犬にとっては大迷惑な行為なのです。
では、なぜ大迷惑と思うのでしょうか。
1.慣れていない
犬はリーダーの行動を学習することで生存してきた種で、もともとは相当臆病で警戒心が強い生き物です。新しいことや物に対してはよく観察してから近寄る性質もあります。
幼少期からお風呂に慣らしていた場合は除いて、多くの犬にとって浴室は普段足を踏み入れない場所です。急にそこに連れていかれ、確認する間もなく雨より強い水圧でお湯をかけられることは相当びっくりすることでしょう。しかもシャワーの場合は浴室内に音が反響して、犬の耳にとっては騒音に感じるかもしれません。
また、雨の日の散歩に出たとしても犬の被毛は厚く、皮膚にまで水が到達することは稀です。シャワーの場合は皮膚まで濡らすため、その感触に驚いてしまうという場合もあるでしょう。
2.痛い
人間のシャンプーは頭皮を清潔に保つ必要があることから、毛髪だけでなく頭皮までよく洗います。犬のシャンプーの場合も皮脂や汚れを取る目的があるため体中まんべんなく皮膚までしっかり濡らしてシャンプーをしますが、皮膚そのものをごしごしされることに犬は慣れていません。日ごろ露出していない犬の皮膚はとても敏感なので、あまり力を籠めすぎると痛みを感じて犬たちも嫌がります。
また涙や目やになどの汚れをとるため目元ギリギリまで洗うことがありますが、この時シャンプーやお湯が目に入って痛みを感じていることもあります。鼻の上も犬の敏感な部分ですから、そこを洗う時も臭うからといってごしごし洗うと痛がることもあるでしょう。
3.におい
犬たちにとって、においは大切な情報源です。自分のにおいや飼い主のにおいがついているものが近くにあると安心しますが、嗅ぎなれないにおいがそばにある時は緊張をしています。
シャンプーは大切な自分のにおいを嗅ぎなれない「変なにおい」に変換されてしまうので、犬にとっては迷惑に感じることもあるようです。
また野生動物は自分のにおいを外敵に嗅がれてしまうことを恐れるため、ほかの動物の糞便のにおいなどを体にこすりつけて体臭をごまかすことがあります。せっかくそうしたにおいで「安心感」を感じているのに、シャンプーをしてにおいが変わってしまうことを嫌がるのです。
4.嫌なことをされた
犬は学習する動物です。一度でもシャンプーや浴室で痛かったり、怖かったり、いやな目にあっていたりすればそれを学習してしまいます。同じ目にあうことを回避するため、お風呂に入れようとすると、あるいはシャンプーをしている最中に、それを拒否して暴れようとするのです。
お風呂好きにするには
前述のとおりいやな目にあった犬はそれを全力で拒否しようとします。そうならないように、初回のお風呂に入れる際に、楽しい場所・うれしい場所だと思ってもらえる工夫が必要です。
具体的には子犬のころから大好きなおもちゃと一緒に入れたり、一度に全部洗わずに足先やお尻など拒否反応の少なそうなところから数回に分けて洗ったりするなどしてもよいでしょう。
すでにお風呂嫌いになってしまっている場合、お風呂の外からシャワーの音を聞かせたり、おやつを与えながら少しずつ浴室に慣れさせるトレーニングをしたりする必要もあります。どうしても嫌がって暴れる場合、お湯を使って洗うシャンプーではなく流さないドライタイプシャンプーを利用するという選択肢もあります。
まとめ
一度お風呂嫌いになってしまうと、なかなかそれをお風呂好きにすることは難しいようです。そうならないためにも、子犬を飼い始めた際には徐々にシャワーに慣らしてあげるなど、注意深くお風呂に入れてあげてください。