人間が近寄ると、大きく尻尾を振って感情表現をする犬の動作は微笑ましいものですが、この犬の尻尾には、どのような使い道があるのか疑問に感じた人も少なくないでしょう。人間は使わなくなったために退化して、今では尾骨で太古には尻尾を持っていたのだと理解する程度です。
犬も自分の感情を相手に伝える程度しか尻尾を使っていないように考えますが、別の使い道があるのでしょうか。
犬の尻尾には体を動かすときの補助的役割がある
人間も歩く場合に腕を動かしますが、犬の尻尾には体を動かすときに尻尾を動かすことで、スムーズな動きになるようにしていることがあります。
歩くときのタイミングを取る
犬は歩いているときに、尻尾を左右に振っている場合があります。犬の歩き方は、右の前足を出すと左の後ろ足を続いて出すというように、四本の足をうまく動かさなければいけません。
生まれたときから同じ歩き方でも、何かでタイミングを取る方が歩きやすくなるでしょう。個体差があるので、歩いていても尻尾を動かさない犬もいますが、中には尻尾で歩くタイミングを取っている犬もいます。
体を斜めにするときのバランスを取る
犬は体を斜めにして動く場合、尻尾でバランスを取っていることがあります。人間も体が斜めになって倒れそうになると、腕や足を倒れる方向と逆に出すなどしますが、犬の場合はそれを尻尾が行っています。
四本足で歩く生き物は、体が斜めになってしまうと倒れやすいため、体重移動という意味で尻尾を使っています。
体を守るために尻尾を使う
尻尾を物理的に使用しない場合、その大きな理由に体内への影響が強い肛門を保護する役目が強くなっています。
肛門は内臓と直結しているため、体内にダイレクトにその影響が到達するため、その保護を目的にしているのが、多くの尻尾を持つ動物に言えます。
体内温度を下げないようにする
犬は寒いときはあまり尻尾を上げずに、垂らした状態にしていますが、これはお尻を冷やして内臓の活動低下を抑制するためです。犬の尻尾は短い個体もいますが、多くは長くて毛で覆われています。
冬場になると犬は尻尾を体に回すような格好で寝ますが、尻尾と言ってもその保温効果は高くなっている証拠です。腹部以外で毛が薄いのはお尻の部分であり、尻尾は弱い部分を保護する意図で進化の過程でも残ってきたのでしょう。
害虫からお尻を守る
犬は猫のように自分のお尻を舐めてきれいにできないため、地面で擦るか他の犬に舐めてもらうしかありません。しかし地面でお尻を擦ると、怪我をする可能性があることを知っていますし、複数の犬と共同生活をしていなければ、他の犬に舐めてもらうこともできないでしょう。
そうして何もしない状態にしておくと、当然、匂いが発生するので、害虫が近寄りやすくなってしまいます。特に厄介なのは犬の死因で多い、フィラリアを持っている蚊に刺されることです。
毛のある部分であれば、ある程度は毛が邪魔をするので蚊も皮膚までは近寄れませんが、お尻の部分は特に毛が少なくなっているため、もしも尻尾がなければ刺され放題になってしまうでしょう。
尻尾は上下左右と犬の体の中でも自由に動かすことができ、害虫を追い払って近寄らせないようにするためには好都合と言えます。このお尻の部分に害虫などを近寄らせないようにするために尻尾を動かすのは、体が大きくてお尻を自分で清潔にできない種類の動物が多く行っています。
まとめ
犬の尻尾は、人間などの目の前にいる対象に対する自分の感情を表現するだけに使われているのではなく、犬が生活する上で役割をちゃんと持っている器官です。
そのため犬は、尻尾を持たれると嫌がるのであり、動物であっても相手が嫌がることはしないのが当然です。ペットと飼い主であっても、その関係は対等でなければいけません。