チョコ色のラブラドールの寿命が短い傾向【研究結果】

チョコ色のラブラドールの寿命が短い傾向【研究結果】

世界中で常に人気犬種の上位に来るラブラドール。ラブラドールの色別の疾患や寿命についてのデータが分析調査され、その結果チョコラブは黒ラブやイエローラブに比べて寿命が短い傾向があることが発表されました。

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記事の監修

東京農工大学農学部獣医学科卒業。その後、動物病院にて勤務。動物に囲まれて暮らしたい、という想いから獣医師になり、その想い通りに現在まで、5頭の犬、7匹の猫、10匹のフェレットの他、ハムスター、カメ、デグー、水生動物たちと暮らしてきました。動物を正しく飼って、動物も人もハッピーになるための力になりたいと思っています。そのために、病気になる前や問題が起こる前に出来ることとして、犬の遺伝学、行動学、シェルターメディスンに特に興味を持って勉強しています。

英国のラブラドールの医療記録から見る初のリサーチ

チョコレートラブの横顔

原産国であるイギリスはもちろん、世界中の様々な国で絶大な人気を誇る犬種、ラブラドール・レトリーバー。一方その人気と裏腹に、ラブラドールは健康上の問題が起きる例が多いとも言われていますが、どのくらいの割合で、障害や疾患が起こるのかというデータはあまりありません。

このたび、オーストラリアのシドニー大学と、イギリスの王立獣医科大学が共同で、イギリスのデータベースを利用して、3万3千頭以上のラブラドールのデータを分析調査し、その結果を発表しました。

ラブラドールの色別の疾患や寿命

同じ方向を見つめる色の違う3匹のラブラドール

VetCompassTMという動物病院の症例を集めたデータベースを使って、2013年の一年間にイギリス国内の動物病院(一次診療施設)を受診した全ラブラドール33,320頭以上のデータを分析しました。その頭数をコートの色別に分けると、黒ラブ44.6%、黄イエローラブ27.8%、チョコラブ23.8%という割合でした。

ラブラドール・レトリーバー全体の寿命の中央値は、12.0歳でした。そのうち非チョコ色である黒とイエローの寿命中央値だけを見ると、12.1歳、チョコラブの寿命中央値は10.7歳と、1.4歳という開きがあることがわかりました。

3万3千頭以上のラブラドールのうち6.2%にあたる2074頭について、かかった病気についても調査しました。その結果、61.6%の犬が、1つ以上の障害病気や健康上の問題を抱えていました。主なものは、外耳炎(10.4%)、体重過多/肥満(8.8%)、変形性関節症(5.5%)、でしたが、ここでもチョコラブの健康問題が明らかになりました。

コートの色別の罹患率を見ると、耳と皮膚の疾患でその差が有意でした。外耳炎の罹患率は、黒ラブが12.8%、イエローラブが17.0%でしたが、チョコラブでは23.4%と、黒ラブの2倍近い数字でした。また、ラブラドール全体の1.4%で見られた化膿性創傷性皮膚炎については、黒ラブが1.1%、イエローラブが1.6%で、チョコラブでは4.0%と外耳炎よりもさらに大きい差が見られました。

監修獣医師による補足

化膿性創傷性皮膚炎は、急性の皮膚の細菌感染症で、ホットスポットや湿性皮膚炎とも呼ばれています。気温と湿度があがってきた季節に多く見られ、強いかゆみがあるため、犬が患部を引っ掻いたり噛んだりする様子がよく見られます。「急に毛が抜けて、皮膚がぐじゅぐじゅしている。」と言って来院される場合が多いようです。

獣医師:木下 明紀子

なぜチョコラブの寿命が短い?

伏せているチョコラブ

チョコレート色のラブラドールと暮らしている方には、ショッキングな発表ですよね。でもなぜチョコラブは、黒やイエローに比べて病気の罹患率が高かったり、寿命が短かったりするのでしょうか?

今回の研究を発表した研究者は、次のように語っています。

「チョコレート色のラブラドールを選択的に繁殖するためには、両親がチョコレート色でなくてはなりません。その結果、チョコラブの遺伝子プールは狭くなり、耳と皮膚の健康に影響する遺伝子を持つ割合が高くなっている可能性があります。」

耳と皮膚の疾患は、病気としては命にかかわるものではありませんが、平均寿命が他のコートカラーのラブラドールに比べて短い原因には、遺伝子プールの狭さと関連している今回のデータには現れていない健康上の問題がある可能性もあります。また、チョコラブが他のカラーのラブラドールよりもかかりやすい病気があることによって、それらの病気が体への負担となって長年蓄積し、免疫力が低下することも寿命が短い理由として考えられる、とも言っています。

研究者は、今回の分析調査について、イギリス国内のラブラドールについてだけの調査のためも、また一部の疾患については調査対象となったラブラドールの頭数が少なかったため、結果の解釈には少し注意が必要だとも述べています。しかし、コートカラーと寿命の関係についての報告はこれまでになく、この研究がラブラドールという犬種の健康と福祉に役立てば、と願っているそうです。

まとめ

寄り添って座る3色のラブラドールたち

イギリスの動物病院受診データを基にした分析調査で、チョコレート色のラブラドールは黒やイエローに比べて、いくつかの病気の罹患率が高く、平均的な寿命が短いという結果が発表されたことをご紹介しました。

ショックな結果ではあるのですが、あらかじめ罹りやすい病気や健康上の弱点が分かっていれば、予防のためのケアや治療の対策を立てることもできます。効果的な予防のためにも、今後のさらなる研究に期待したいと思います。

愛する犬とは、1年でも1か月でも長く一緒にいたいというのは、私たちの共通の思いですものね。

《参考》 https://cgejournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s40575-018-0064-x
McGreevy, P.D., Wilson, B.J., Mansfield, C.S. et al. Labrador retrievers under primary veterinary care in the UK: demography, mortality and disorders. Canine Genet Epidemiol 5, 8 (2018). https://doi.org/10.1186/s40575-018-0064-

▼ラブラドールレトリバーについて詳しく知りたい方はこちら

監修獣医師による補足

紹介されている研究は、人気犬種であるラブラドールのイギリスにおける寿命やかかりやすい病気を分析することを目的に行われたものです。

その結果、本記事で説明されている通りのチョコラブとブラックラブ、イエローラブとの健康上の問題についての違いが分かったのですが、その原因として考えられている遺伝子プールの狭さは、チョコラブやラブラドールに限った問題ではなく、どの純血種にもある問題です。

ある特徴だけを優先して繁殖を行うとどうしても繁殖に使える動物の数が限られてしまい、その動物が病気に関係する遺伝子を持っていた場合には、その遺伝子を持つ子孫の割合が増えるのです。

これが、「純血種は弱い」とか「雑種は強い」とよく言われている理由です。

また、ラブラドールには関係ありませんが、色や模様を決定する遺伝子と聴覚や視覚が関連している場合があり、犬種によって特定のコートカラー(パターン)の犬に聴覚や視覚に異常がある個体が多くいることがあります(ダルメシアンやブルテリア、グレート・デンなど)。

本記事で紹介されている内容以外の、この研究から分かったことを以下にご紹介します。

  • 変形性関節症(骨関節炎)はラブラドールで多く見られる疾患の一つです。その理由として肘関節形成不全や股関節形成不全などの遺伝的要因が強く疑われる疾患が多く見られる犬種であること、太りやすい子が多いことが考えられています。この研究では、ラブラドールの変形性関節症は雌よりも雄で多いのではないかと仮定して調査をしましたが、そのような性差は見られなかったということです。
  • 歯周疾患の罹患率はラブラドール全体で4.2%でした。この数字は、同様の調査の結果であるパグの6.14%より低く、ジャーマンシェパードの1.14%よりも高いものでした。歯周疾患のかかりやすさについては短頭や長頭といった頭の形が関係している可能性もありますが、フレンチブルドッグ(短頭種)やボーダーテリア(中頭種)などの結果と合わせて考えても一概には言えず、今後の検討が必要です。
  • 消化器疾患の罹患率は10.1%でした。ここで言う消化器疾患には、膵炎や原因不明の腸炎、ゴミ箱漁りや異物摂取による消化器症状、感染症、炎症性腸疾患などを含んでいます。消化器疾患の罹患率がラブラドールで高い理由の一つとして、ラブラドールには食欲が旺盛でゴミ箱漁りをする子が多いことが考えられています。
  • 皮膚と耳の疾患の罹患率について、ラブラドール全体(耳:10.6%、皮膚:9.7%)を他犬種と比較すると、パグ(耳:15.06%、15.6%)やフレンチブルドッグ(耳:14.0%)、ジャーマンシェパード(耳:11.14%、皮膚:13.98%)より少ない、という結果でした。 耳の構造や被毛の長さなどもこれらの疾患に関係してはいますが、皮膚と耳の病気はアトピーに関連しているものが多いため、ラブラドールの中でコートカラーによって皮膚と耳の病気の罹患率が異なったということは、ラブラドールを免疫学的に研究する余地があることを示しています。
  • 泌尿器疾患は、本研究でも雄より雌で多かったことが示されました。また、ラブラドール全体の2.7%で泌尿器疾患が死亡の原因となっていたそうです。
獣医師:木下 明紀子
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