トイプードルでよく見られる病気には、アレルギー性皮膚炎や膝蓋骨脱臼、レッグペルテス病などいくつかあります。
また最近では椎間板ヘルニアで来院するケースも増えています。
しかし、今回はおそらく一番多いと思われる病気「犬の歯周病」についてお伝えします。
歯周病とは歯石などが原因で歯の根っこや歯肉が細菌感染で冒される病気ですが、実は他の犬種よりもトイプードルさんは重症化するケースが多いように感じています。
特に小さい体のトイプードルさんほど重症化しやすい傾向にあると思います。
歯周病がひどくなりやすい理由
ではなぜトイプードルさんでは歯周病がひどくなりやすいのでしょうか?ここでは2つの理由を解説します。
1、歯の生え方
1つ目は歯の生え方です。
トイプードルさんは一般的な犬の歯並びに比べて、非常に密に歯が並んでいます。
中にはお口が小さすぎて歯がまっすぐ生えることができず、ずれて生えてしまうトイプードルさんもけっこういます。
このように密に生えてしまったり、ずれて生えてしまうと、当然歯と歯の間に歯垢が溜まりやすく、歯周病の原因となる細菌感染を非常に起こしやすい状態にしてしまいます。
さらには小さなお口に歯が密に生えてきますので、すべての歯の形成に十分な栄養が行き渡らず、一般的な犬の歯に比べて弱い歯になってしまうということも考えられています。
2、口の小ささ
そしてもう1つの要因として考えらえるのが、トイプードルさんの口の小ささです。
歯周病を予防する方法は、歯ブラシをしっかりかけてあげることが大切なのですが、口が小さい犬種のため、十分な歯磨きがしづらいのです。
特に体重が2kg以下の特に小さいトイプードルさんは、奥歯をきちんと磨ける歯ブラシがないため、どうしても奥歯に歯垢が溜まりがちな犬種です。
さらにどの犬でも難しいのが、歯の裏側のケアですが、こちらも特に口が小さいとケアしづらく、歯垢が溜まりがちになります。
治療法
実際に歯周病の治療をしてみると、奥歯や犬歯の裏側がすっかり冒されており、抜歯せざるを得ないケースが多々あります。
そんなトイプードルさんに多い歯周病ですが、唯一の治療方法は全身麻酔を行った上での歯科処置です。
犬の歯周病は、よく勘違いされるのですが、歯の病気ではありません。
歯の根っこや歯肉も巻き込んだ病気ですので、歯周病の診断には歯の根っこを調べる検査、すなわち歯科専用のレントゲン検査や歯ぐきに「プローブ」と呼ばれる細い針のようなものを入れたりする検査が必要になるのですが、これらは全身麻酔が必要です。
さらに治療となるとその根っこへアプローチするため、歯周ポケットを処置したりもします。
当然痛みを伴いますし、非常にデリケートな処置ですので、とても無麻酔や局所麻酔でできるものではないのです。
もちろん犬への全身麻酔にはわずかではありますが危険が伴います。
しかし明らかに犬の歯周病を放置するデメリットの方が、全身麻酔のリスクを上回りますので、そのあたりをかかりつけの獣医師とよくご相談された上で実施していただくと良いと思います。
無麻酔スケーリングの危険
また、最近ではよく「無麻酔スケーリング」を実施している動物病院やペットサロンを見かけますが、残念ながらこの無麻酔スケーリングは、あくまで見た目の歯石を除去する「美容処置」であり、歯周病治療にはなりません。
それどころか、無麻酔スケーリングをすると、見た目には綺麗になるのですが、そのために歯周病の発見が遅れがちになり、気付いた時には抜歯が必要な状態になっていた、ということも多く、注意が必要です。
予防法
犬の歯周病を治療した後、あるいは幸いにも歯周病にかかっていない場合は、しっかりとした予防処置を行うことで、歯周病にかかるリスクを下げることができます。
そしてその予防方法とは前述した「歯ブラシによる歯磨き」です。
重要なのでなんども書きますが、歯周病は歯の病気ではなく、歯の周囲の組織も冒される病気です。
ですので、歯と歯の間や、歯周ポケット(歯と歯ぐきの間)の歯垢を除去することがもっとも大切なのですが、今のところそれができる唯一の方法が「歯ブラシを用いた歯磨き」です。
よく犬のお口のケアでは、歯磨きガムやガーゼを用いた指みがき、あるいは歯や歯ぐきに塗るタイプのケア用品なども使われていますが、どれも「歯」を綺麗にする効果はたしかにあります。
しかし歯と歯の間や歯周ポケットの汚れを落とすことはどの製品でもできません。
おそらく歯ブラシよりも手軽に歯周病が予防できるものがあれば、私たち人間も利用していると思います。
もちろん、これらは歯ブラシと併用することでより歯周病予防の効果を上げることはできると思います。
ですので、トイプードルさんの歯周病予防には、まずはしっかりとした歯ブラシ習慣を身につけましょう。
特に小さなプードルさんの場合は、磨きにくさが問題になりますから、できるだけヘッドの小さな歯ブラシを選び(場合によってはいくつかの歯ブラシを使い分けても良いと思います)、こまめな歯ブラシを行ってあげてください。
ユーザーのコメント
女性 ゆべし
顎が小さいので歯の生え方に問題が生じやすく、結果咬み合わせが悪くなり歯垢が溜まりやすく歯石にもなりやすいです。
歯の生え変わりの時期には早めに乳歯を取り除き、永久歯のバランスが崩れないようにしてあげる必要がありますが、なかなか難しいですよね。ぐらついてから抜けるまではそんなに時間もかからないので、早いうちから硬めなおもちゃや歯に絡みやすいおもちゃを与えるといいです。
フードもドライフードを与えることで歯石対策にもなります。フードの形状ですが、小型犬だからだとあえて小粒を選ばなくても大丈夫です。少しくらい大きい粒でもよく噛むので、歯垢も付きにくく、歯石は自然と剥がれていきます。
トイプーの歯磨きは歯だけではなく歯茎も一緒にマッサージが必要になります。歯ブラシだけではなく指にガーゼを巻いてごしごしすることも効果があります。
歯周病が原因で心臓病になるという話も有名ですね。歯に残った細菌が内臓へ回り、心臓や肝臓、腎臓などになんらかのダメージを与えてしまうことがあります。人間ほど神経質に歯磨きをしなくても大丈夫ですが、歯の状態を見るためにも毎日口を開いてみることはした方が良さそうですね。
20代 男性 はると