犬が人間用の薬を誤飲することについて
家の中で過ごすことが多い犬にとって、暇つぶしやイタズラなどで、いろいろなものに興味を示します。ソファやクッション、ベッド、オモチャなど破壊され、苦い思いをした飼い主さんも多いと思います。
その中でも特に危険なのが、容易に口に入る小さなもの。例えば、タバコやタオルの切れ端、つまようじ、肉や魚の骨、電池など、犬にとって危険なものが数え切れないほど家の中には存在します。
人間の薬も例外ではありません。風邪薬や花粉症の薬、子供用の薬など、常備しているご家庭も多いでしょう。最近では、飲みやすいように外側を砂糖でコーティングした糖衣錠が多いため、犬はそのニオイに惹かれ、飲み込んでしまうことが多いといわれています。
では、犬が人間の薬を飲むとどうなってしまうのでしょうか?
犬が薬を誤飲したときの危険な成分と症状
実際、動物病院では人間用の薬を処方する場合があります。しかしそれは、犬の病気や症状をもとに、獣医師さんが正しい薬を正しい量で処方しているものであり、飼い主さんが安易に、「犬の体調が悪いときは人間の薬をあげていい」と推測しては決していけません。
人間の薬は、もちろん人間のために作られた薬です。つまり人間の体の大きさを基準として作られているため、人間よりも小さい体の犬が薬を飲むと、想定以上の作用が体に働いてしまいます。
例えば、体重50kgを想定して処方された薬を、体重5kgの犬が飲んでしまった場合、その作用は10倍にも及びます。
アメリカ動物虐待防止協会(ASPCA)のアニマル・ポイズン・コントロール・センター(APCC)が発表した、「ペットにとって危険な人間用薬」によると、下記の成分が危険だと警告しています。
イブプロフェン
解熱剤や鎮痛剤などに含まれる成分です。市販されている鎮痛剤は、ほとんどが糖衣錠であり、このニオイに惹かれて飲み込む犬が多いといわれています。少量でも大変危険な成分で、胃腸の潰瘍を引き起こします。
アセトアミノフェン
人間に対しては、発熱や頭痛などの症状を緩和する成分です。犬がアセトアミノフェンを含むと、肝臓に大きなダメージを与え、赤血球へも悪影響をもたらします。
ゾルピデム
睡眠導入剤に含まれる成分です。
寝る前に飲むことが多いため、ベッドサイドに置きっぱなしになっている薬を犬が飲み込むケースが多いといわれています。心拍数が急上昇し、異常に興奮するなどの症状があらわれます。
デュロキセチン
抗うつ剤の一種です。犬が口にすると、異常な興奮や吠え、失神を引き起こします。
犬が薬を誤飲してしまった場合の対処法
犬の誤飲は、飼い主さんが目を離したスキに行われます。そのため、「知らない間に嘔吐していた」「気付いたら横たわっていた」と発見が遅れることが多いといわれています。無理に吐かせようとすると、かえって危険な場合があるため、すぐに動物病院に電話して指示を仰ぎましょう。
このとき、
- 飲んだ薬の種類
- 飲んだ薬の量
- 飲んでからの時間
- 飲んでからの様子
を観察し、獣医師さんに報告すると良いでしょう。
犬が薬を誤飲しないための予防方法
一番の予防は、犬の届かない場所に薬を保管すること。シンプルですが、逆にこれ以外の対策はありません。
高いテーブルの上に置いたとしても、一生懸命手を伸ばせば、届くかもしれません。ジャンプしてテーブルの上に乗る子もいるでしょう。やんちゃな子はイスに登って、何とか手に入れようと奮闘するかもしれません。「薬なんて興味を示さないだろう」「ここなら大丈夫だろう」と、安易に推測するのはやめましょう。
まとめ
犬に誤飲、誤食は、気を付けていても起きてしまうトラブルです。特に好奇心旺盛な子犬の時期は注意が必要です。薬は放置せず、引き出しの中に入れる、封が開かないように袋に入れるなど、犬の目の届かないところに保管しましょう。