犬の「リーダー論」は間違っているのか?

犬の「リーダー論」は間違っているのか?

これまで主流とされてきた“飼い主は犬のリーダーであるべき”という「リーダー論」が近年疑問視されるようになってきました。「リーダー論」は本当に間違いなのか、私たち飼い主は犬にとってどのような存在になればいいのか、じっくり考えていきたいと思います。

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犬の「リーダー論」とは?

5頭のフレブルと前に座るブルドッグ

そもそも犬のしつけにおいて言われるリーダー論とは犬の祖先が群れ生活を送るオオカミであると考えて、そのリーダー(=アルファ、上位の犬)の行動を真似ることで犬を従わせるというトレーニングの基本理論です。オオカミの社会は縦社会で下位の犬は上位の犬に対して逆らわないという意思表示のために仰向けになってお腹を見せたり、肩に手を掛けられることやマズルを軽くくわえられることを抵抗せずに受け入れるなどの行動を見せます。こうしたさまざまな行動を飼い主が真似をして、犬に受け入れさせることで飼い主が犬のリーダーとして認めさせるということになります。そうすることでしつけ全般が楽になり、犬も指示に従いやすくなると考えられ長い間トレーニング、訓練の分野で中心的な考えとなり世界中に広まりました。

犬の「リーダー論」の間違った認識

人の食事を見ている犬

日本ではまだまだ定着傾向にあるリーダー論ですが、動物愛護先進国とされる欧米各国ではかなり前からその理論に疑問が投げかけられてきました。そもそも犬の祖先がオオカミそのものではない可能性が高いことやオオカミもそれほど厳格な縦社会を築いているわけではないこと、犬は人間を同種として認識していないことなどが理由として挙げられます。そのため、よく言われる「犬は家族の順位付けをしている」や「飼い主は犬のリーダーとして絶対的な存在にならなくてはいけない」などということが疑問視されるようになってきているのです。

犬との関係性を築く上で大切だと言われてきたいくつかのことについても実は不要なのでは?という意見も。特に「食事は飼い主が先」「ドアを出るのは飼い主が先」「犬はベッドやソファなど高いところに上げてはいけない」「犬に前を歩かせてはいけない」などということはあまり意味のないことだと考えられるようになってきました。これらの行動は犬に飼い主をリーダーとして認識させるために必要だとされていましたが、どうやらほとんど意味のない行動のようです。もちろん、安全管理や衛生面の確保という点においては必要なことではありますが、リーダー論とはあまり深く関係しないと考えていいと思います。

犬のリーダーではなくパートナーになろう!

ビーチに座る白い犬と女性

世界的にも犬のリーダー論が疑問視されるようになり、日本のドッグトレーナーや動物行動学者などの間でも「リーダー論はもう古い」という風潮が広まってきています。家族として共に暮らす犬と飼い主の関係はどのような関係が望ましいのかという点においては、やはり飼い主が犬にとって頼れる存在であるということは大切だと思います。しかしそれは力で抑えつけたり、無理やりねじ伏せて受け入れさせるようなものではなく日頃の関係性の積み重ねの中で信頼関係を築き、頼れるパートナー・友人となることがベストだと考えられています。そのためには、犬の気持ちや意思に寄り添って尊重することも大切。犬と飼い主がお互いに歩み寄って折り合いをつけながら共に暮らしていくことが出来れば最高のパートナーとなれるでしょう。

犬の「リーダー論」に関するまとめ

赤いリードのラブラドール

これまでトレーニング、しつけにおいて重要だとされてきたリーダー論ですが最近では疑問視する声が多く上がってきています。飼い主は犬にとって頼れる存在であるべきという点ではリーダー論も完全に間違いというわけではありませんが、力で抑えつけたり食事の順番を意識することでリーダーとして認めさせるということはむずかしいと思います。犬と人間は家族として共に生きていく非常に近い存在で、信頼し合えるパートナーになることが望ましいと考えられています。犬にとって楽しく、頼りになる存在になれるような接し方を考え、実行していけるように頑張りましょう!

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ユーザーのコメント

  • 投稿者

    30代 女性 torapy

    1947年にシェンケルという科学者が狼の行動を実験しパックリーダー論(アルファ論)を証明し、それを基にしたウルフという本が12万部も売れたことから、
    (犬の祖先が狼であることもThe Behavioural Biology of Dogs (Cabi Publishing)という本に書かれております)
    犬にも飼い主が優位に立たなければならないという説が蔓延し、社会公認で暴力を用いたトレーニングが認められてきた悍ましい事実があります。

    しかし、2000年にメックというアメリカの科学者がパックリーダー論を反証しており、まずシェンケルの実験は野生の狼ではなく、動物園などから集めてきた人間が飼い慣らした血縁者同士でない狼を同じ囲いの中に入れて実験観察したこと→つまり、本来の行動ではなかったということです。
    家族でない狼同士が同じ囲いの中におり、過酷な餌の給餌制限、繁殖の操作などにより、争いが起きたということです。

    メックの証明では野生の狼は、家族単位で行動すること、夫婦なので繁殖による争いも起きないこと、子供に先に食べさせる、親は子を守る存在であることを証明しました。
メックの反証事実を知ってからは、共に暮らす犬や猫は私たちを家族として見ていると今なら分かります。アルファ論の誤情報を何も考えずに信じ込んでいた自分が愚かで情けないです。少し考えれば、犬猫が私をご主人様なんて思っているはずない、と分かったはずなのに。

    未だに、パックリーダー論を信じているトレーナーさんもいるようですし、一般人の私たちはもっと認知度が低いです。
    力を誇示し従えて良い子になるなんて科学的根拠は一切ないです。

    日本はトレーニング方法でも動物先進国に比べ30年遅れています。科学論文が翻訳されていない事も一旦かもしれませんが、International Wolf Centerというサイトで読めます。
メックは、はっきりとシェンケルの証明は間違っていると記載(反証)しています。

    私は現在、良いトレーナーさんと出会うことが出来て、苦痛や不快を一切伴わない正の強化トレーニングを教えてもらい、クリッカーなどを用いて犬と猫とお互い楽しく成長していっております。
    犬と猫の賢さに毎日驚かされております。

    行動分析学者の島宗先生という方のサイトで分かりやすくまとめられています
(リンク貼り付けの許可を頂いております)
    http://www.hosei-shinri.jp/simamune/2013/11/11-1-1.html


    International Wolf Center
    http://www.wolf.org/wolf-info/basic-wolf-info/in-depth-resources/scientific-publications/

    ご興味がございましたらご高覧下さいませ。
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