犬が誤飲すると命に関わる人間の医薬品

犬が誤飲すると命に関わる人間の医薬品

どんなものであれ犬の誤飲事故は恐ろしいものですが、中でも人間の医薬品は思わぬ重い症状を引き起こすことがあります。日常的な医薬品の中で特に危険度の高いものをご紹介します。

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記事の監修

日本獣医生命科学大学卒業。北海道の大学病院で獣医師として勤務。一般診療をメインに行いながら、大学にて麻酔の研究も並行して行う。「動物と飼い主さんに寄り添った治療」を目標に掲げ、日々診療に励んでいます。

犬には命取りにも!人間の医薬品の誤飲

シーズーとビンから出た白い錠剤

犬と暮らしていると、日常生活の中に誤飲事故につながりそうな危険が、たくさんあることに気がつきますね。その中でも、とりわけ危険度が高いのが人間の医薬品です。

基本的には人間用の医薬品は、全部犬や猫にとっては危険だと認識しておくことが大切ですが、特に重篤な症状を引き起こす薬があります。ごく一般的で、服用している人が多い処方薬、もっと一般的な町の薬局で買える市販薬、これらの中にも、犬にとっては致命的な危険になりかねないものがあります。

内服薬

白と青の錠剤のパッケージ

ごく一般的な内服薬で、犬にとって危険度の高いものがあります。

鎮痛解熱剤

どこの家庭にもある代表的な市販薬で、有効成分にいくつかの種類がありますが、犬や猫にとってはどの種類も危険です。

アセトアミノフェン(タイレノール、小児用バファリンなど)

小児用にも使われるので、マイルドなイメージがありますが、犬や猫には少量でも赤血球破壊による溶血性貧血、急性腎臓/肝臓障害などの重い症状を引き起こします。

非ステロイド性抗炎症薬

  • イブプロフェン(イブなど)
  • アスピリン(バファリンなど)
  • ロキソプロフェン(ロキソニンなど)
  • エテンザミド(ノーシン、新セデスなど)

これらの成分は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と呼ばれ、ペットの誤飲では胃潰瘍や腎機能障害を引き起こします。上記のアセトアミノフェンも、広義ではNSAIDsですが、症状に違いがあるので別にしました。その他の全ての鎮痛解熱剤は、市販薬、処方薬を問わずペットにはとても危険です。

市販の風邪薬

市販の風邪薬には、ほとんど全てと言って良いくらいに鎮痛解熱剤の成分が含まれます。包装の形態も瓶に入っていて、うっかり落としたり蓋の締め方が甘かったりする危険もありますので、取扱いには細心の注意が必要です。

降圧剤

高血圧の治療に使われる薬です。
その名の通り、血圧を低くするため、犬や猫が誤飲すると目まいやふらつきを引き起こします。心臓の弱い動物には特に危険です。降圧剤の中でも、βブロッカーという成分の薬は、少量の誤飲でも命に関わるほどの血圧低下や心拍数低下を引き起こしてしまう場合があります。

意外な盲点、外用薬

湿布薬を貼った男性の後ろ姿

内服薬は、多くの人が保管や使用の際に注意をするのですが、意外と忘れられがちなのが外用薬です。塗り薬や湿布剤にも危険は潜んでいます。

塗り薬をつけた部位をペットが舐めたり、傷口に使ったガーゼや、湿布剤をゴミ箱から拾って口にしてしまう場合も少なくありません。ガーゼや湿布は、大好きな飼い主さんの匂いが付いているので、ペットが興味を持つからです。

鎮痛消炎外用薬

打ち身や捻挫、肩こりなどに使う湿布や塗り薬です。医師処方のものと市販のもので成分が違いますが、どちらも注意が必要です。

フルルビプロフェン(医師処方)

病院で医師によって処方される湿布剤や消炎軟膏に含まれる成分で、少量でもペットの健康に重篤な影響を及ぼします。急性腎障害や、消化器官へのダメージから、短い時間のうちに命に関わることもあり、この成分の軟膏を塗った皮膚を舐めた猫の死亡例も報告されています。

湿布剤の誤飲は市販のもの以上に危険なので、保管だけでなく、使用後は絶対にペットが触れないところに捨てるなど、細心の注意が必要です。

サリチル酸グリコール(市販のもの)

肩こりや筋肉痛などの市販の湿布剤や塗り薬に使われている成分です。これも非ステロイド性の抗炎症薬です。誤飲した場合には、嘔吐や胃潰瘍を引き起こします。特に湿布薬を誤飲してしまった場合、早急に処置をしないと重篤な胃潰瘍になり、命に関わることもあります。

かゆみ、かぶれ用の外用薬

これもとても一般的で、どこの家庭にもある外用薬です。

ステロイド外用薬

炎症を伴うかゆみの治療に使う外用薬で、医師処方と市販薬があります。誤飲した場合、喉の渇き、頻尿、嘔吐、下痢などを引き起こします。処方薬ではステロイド成分が多く含まれるため、症状が重くなったり長引いたりすることがあります。貼るパッチタイプのものもあるので、湿布剤同様に捨てるときにも注意が必要です。

酸化亜鉛外用薬

湿疹、外傷、白癬などの治療に使われます。赤ちゃんのオムツかぶれ用クリームなどにも使われる、皮膚用の外用薬としてはマイルドなものですが、ペットが誤飲すると出血を伴う嘔吐や下痢など、消化器官にダメージを与えます。

まとめ

数種類の錠剤を覗き込む犬

身近な医薬品の中で、犬や猫にとって特に危険度の高いものをご紹介しました。とは言っても、全ての人間用の医薬品は、犬や猫が絶対に触れないようにしておくことが大前提です。そして医薬品の誤飲は、一刻も早く病院で診察を受けましょう。誤飲してしまった医薬品の種類を、獣医師に伝えることも重要です。

身近な医薬品に想像以上の危険が潜んでいると知ることで、全ての医薬品の取扱い(保管や使用時だけでなく捨てるときまで含めて)のリスク管理を心に刻んでいただけると幸いです。

《参考》
https://www.petpoisonhelpline.com/pet-owners/basics/top-10-human-medications-poisonous-to-pets/
https://www.petmd.com/dog/centers/nutrition/evr_dg_pain-medication-for-dogs

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