犬の「フライバイト」とは
空中を見つめ、ハエなどの小さな虫を噛むような行動、また、追いかけるような行動を、「フライバイト」といいます。犬がフライバイトをするのは、「常同行動」が関係していると考えられています。この時、空中には何もなく、何も飛んでいないのが特徴です。
恐怖や不安などの精神的ストレスを感じると、これらを回避・解消しようと転移行動をし始めます。これは、全く違う行動をすることで気を紛らわそうとしているのです。
人間でいうと、イライラしたときに舌打ちしたり、壁を殴ったりするなどの八つ当たりをする、などの行動ですね。通常の場合、瞬間的にみられる転移行動は問題ないのですが、行動が終わることなく、継続的にみられる場合があります。これを「常同行動」といいます。常同行動の一つに、フライバイトが挙げられます。
これらの行動が、今回だけでその後みられなければ問題ないのですが、頻繁に行うようであれば、すぐに獣医師さんに相談しましょう。
犬にみられる常同行動
- 空中のハエを噛むような仕草(フライバイト)
- 自分のしっぽを追いかけ、くるくる回る
- 一点を見つめ、吠える
- 影を追いかける
- 体の一部を舐め続ける
- 自分の毛を噛む
犬が常同行動をする原因
犬が常同行動をする原因は明確にされていませんが、恐怖や不安などの精神的ストレスが溜まることで発症すると考えられています。例えば、自由な空間が少ないなどの行動範囲の制限や、イイコトをしても褒めてもらえないしつけ、留守番が多く、飼い主とのコミュニケーション不足による欲求不満などです。
よく、動物園のケージの中をぐるぐるとひたすら歩いている動物を見たことがありませんか?実は、あれも常同行動のあらわれで、自然環境から離され、狭いケージの中で暮らし、仲間との交流もままならないことが、ストレスになっていると考えられます。
犬のフライバイトは病気の可能性も?
犬がハエ追い行動をする理由として、「てんかん」も考えられます。てんかんとは、痙攣のような発作が全身に繰り返し起きる病気で、ビーグルやゴールデンレトリーバー、ミニチュア・シュナウザー、チワワ、ヨーキー などに発症が多いといわれています。
脳内のニューロンとよばれる神経細胞が、微量の電気信号を送り、情報の伝達を行っているのですが、何かしらの原因により電気信号の流れがショートしてしまうことでてんかん発作が発症します。脳の病気によって発症する「症候性てんかん」と、脳に病気がみられないのに発症する「特発性てんかん」に分類されます。
どちらの場合も発作中は意識がありませんが、全身ではなく部分的に発作が起こる場合もあります。この場合は意識があり、顔の一部が痙攣したり、よだれが大量に出たりします。
てんかん発作は、ほとんど場合が何かしらの前兆があります。その一つにハエ追い行動が挙げられ、その他に目がキョロキョロしている、いつもより落ち着きがない、などの行動をします。
犬がハエ追い行動をしていたら
まず、犬がハエ追い行動をしている原因を探りましょう。犬が示す常同行動は多く挙げられるため、ストレスによるものなのか、病気によるものなのか、見極めなければいけません。
ストレスによるもの
一番大切なのは、ストレスを溜めさせないことです。常同行動の症状が初期段階であれば、改善が望めます。2週間ほど行っても改善がみられない場合は、すぐに獣医師さんに相談しましょう。
- 運動を十分に行い、適度な疲労感を与えることで、興奮を発散させる
- イイコトをしたときには、思いっきり褒める
- 他の人や犬とじゃれることで、社会化を学ばせる
- 長時間ケージに閉じ込めず、行動範囲を狭めない
- 話しかけたり触れたりすることで、コミュニケーションを密にとる
病気によるもの
ハエ追い行動のあと、てんかんのような発作がみられたら、すぐに獣医師さんに診てもらいましょう。急に愛犬が倒れてパニックになるかもしれませんが、このときの愛犬の様子をきちんと観察し、獣医師さんに報告することが大切です。
- 発作が起こる直前の犬の行動
- 発作が起きたときの犬の様子
- 発作が起こっている時間
- 意識があるか
- 発作が治まったあとの犬の様子
まとめ
犬は、意味もなくハエ追い行動をしているのではありません。そうしてしまう、何かしらの原因が必ずあります。もちろん、雷や強風、不意の大きな音など、犬にとって避けられないストレスもあります。それ以外のところで、犬のストレスをできる限り、取り除いてあげたいですね。