『ティーカップドッグ』が抱える真の問題

『ティーカップドッグ』が抱える真の問題

ティーカップサイズと呼ばれる通常よりも小さいサイズのトイプードルやチワワは相変わらず人気ですね。けれど、その裏には「小さくてかわいい!」だけでは済まされない様々な問題が潜んでいます。

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ティーカッププードルや豆柴など、通常のスタンダードサイズよりもはるかに小さいサイズの犬たちは相変わらず人気を集めています。
飼育スペースもフードも少なくて済み、散歩の距離も短くてOKなど、都市部で忙しく暮らす人々のライフスタイルに合っているのかもしれません。
けれども、これらの極小サイズの犬は、そんなに単純に良いことづくめなわけではないのです。ぜひ一緒に考えてみてください。

ティーカップサイズの犬って何?

ティーカップに入る犬

正式にはティーカッププードルや豆柴という犬種はありません。プードルを例に取ると、スタンダード、ミディアム、ミニチュア、トイが犬種として認められていて、ティーカップサイズというのは極小のトイプードルです。
ティーカップサイズの極小犬を作り出すために、ブリーダーは産まれた子犬の中から一番小さい個体ばかりを選んで次世代の繁殖に使っていきます。しかし、小さい個体の中には先天的な異常やなんらかの病気のために通常サイズで産まれてこなかったものが含まれることも多々有ります。
日本と同じくティーカップサイズの犬が人気のアメリカでは多くの獣医師が「このようなブリーディングのやり方は経済的な利益ばかりを追求していて、生き物としては不自然である。繁殖に使われる犬や産まれてくる犬たちの健康には不安がつきまとう。」と述べています。そもそも正しい繁殖とは見た目だけを追求するのではなく、健康や気質などの遺伝要素も総合的に考えなくてはいけないものです。

ティーカップサイズの犬の健康リスク

寝転がる犬

先天的な異常の問題

先天的な異常や疾患のある個体同士が繁殖に使われるケースも多いため、ティーカップサイズの犬には心臓疾患、呼吸障害、消化器疾患、肝機能障害、盲目などの先天的異常を持って生まれてくる場合も多いのです。
スタンダード基準を守るきちんとしたブリーダーは、最初からスタンダードから外れることを目的とする繁殖をしない人が多いので、ティーカップサイズの犬の繁殖は商業的に大きな規模で行われているのが主流です。そんな状況で生まれた子犬はごく幼いうちから流通に乗せられます。先天的に病気のある体の弱い子犬が、流通の途中で命を落としてしまうことも多々有ります。

小さすぎるサイズが引き起こす問題

極小サイズのせいで、全ての歯が生えるためのスペースが無くて歯に問題が出ることもよく有ります。普通なら成長と共に自然と抜け落ちる乳歯が抜けず、手術が必要になることも珍しくありません。
通常サイズの小型犬でも多いと言われる膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう=膝の関節のお皿が正常な位置からはずれてしまう状態)はティーカップサイズではさらに多くなります。

飼い主が特に注意しなくてはいけないこと

極小サイズの犬は血糖値を一定に保つことが難しいので、一食ごはんを抜いただけでも危険なレベルの低血糖になり、てんかんが起きたり命に関わることもあります。低血糖は普通は子犬のうちは気をつけなくてはいけないのですが、極小サイズの犬の場合は成犬になっても注意が必要です。
また体温を保つ力も弱いので、室温や体温の管理には細心の注意を払います。血糖値や体温の管理は通常時だけでなく、病気や怪我で手術が必要になった時の麻酔中には特に難しく重要です。つまり極小サイズの犬は手術の麻酔のリスクが通常よりも高くなるということです。
ティーカップサイズの犬の細い骨はたいへん脆く折れやすいので、高いところから飛び降りさせないなど注意が必要です。

まとめ

小さい犬

「小さくてかわいい」「小さいから気軽に飼える」と思われがちな極小サイズの犬たちは「かわいい」だけでは受け止めきれないほどの問題があり、気軽どころか通常サイズの犬よりもずっと飼育がたいへんな面も多いことがわかっていただけたでしょうか。
何よりも多くの人が知っておかなくてはいけないことは、人間のたいへんさよりも、健康上の問題を多く背負わされる小さいサイズの犬たちの苦しみです。高く売れるからという理由だけで、通常のスタンダードからわざと外れるような繁殖を行い、その過程で多くの犬が命を落としたり病気に苦しんだりすることはとうてい受け入れられることではありません。

ジャパンケネルクラブもスタンダードから逸脱した極小サイズの犬たちが、犬としての健全性に欠ける場合があると注意を促しており、お勧めできないと正式に述べています。
ティーカップサイズの犬の存在の裏には多くの問題が潜んでいるということ、そしてそれを変えていくためには、一人でも多くの人が問題を認識していくことが大切ではないでしょうか。

《参考》
http://www.petmd.com/dog/general-health/truth-about-teacup-dogs
http://www.jkc.or.jp/modules/news/index.php?content_id=37

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ユーザーのコメント

  • 投稿者

    20代 女性 とと

    てんかんは原因不明の発作のことを言うので低血糖によりてんかんが起きることはありません。
    小さい犬を作るのは反対ですが記事を書くのであれば正しく書いていただきたいです。
  • 投稿者

    女性 肉豆腐

    小さい=かわいい、という文化が日本には根強くあるようですね。ティーカッププードルなんて、犬を飼ったことがある人だったらとんでもないことだと思ってしまうと思うのですが。普通サイズのトイプードルでさえ、脚の骨の太さは割りばしほどの太さなんだそうです。ティーカッププードルの骨格はどうなんでしょう、考えるだけで恐いです。
  • 投稿者

    40代 女性 ぽち

    ティーカッププードルなんて明らかに身体に無理をさせていますよね。あの大きさで例えば子供を産むなんてムリだろうなあと思うのに、繁殖させている訳ですよね。帝王切開なんだと思いますが自然に産むことが出来ないなんて、身体の負担もとても大変だと思いますよ。動物はおもちゃじゃないのですから、改良するにもよく考えてほしいです。
  • 投稿者

    40代 女性 すまいる

    ティーカップ、豆柴……。確かに見た目は可愛いです。
    でも、本来のサイズから随分かけ離れていることを見ると……怖い!何か病気持ってそう……と思ってしまいます。元動物看護師。

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