犬が首をかしげる理由
みなさんの愛犬でも「よく首をかしげている」という子は多いかもしれませんね。
首をかしげること自体は珍しいことではありませんが、一言に「首をかしげる」と言ってもさまざまな理由や意味があると言われているのです。
犬が首をかしげる理由について詳しく解説していきます。
気になる音を聞き取ろうとしている
犬は聞きなれない音や気になる音をもっとよく聞き取ろうとした時に、左右に首をかしげる仕草をします。
嗅覚が優れていることで有名な犬ですが、じつは耳もとてもいいと言われており人間の約2倍近くの音域まで聞き取れるとも言われています。
そのため、首をかしげることで耳の位置や角度を微調整して、その気になる音がどこから聞こえるのかなどを確認しようとするのです。
例えば、おもちゃの音や鳥の鳴き声、飼い主の口笛の音を聞いた際に愛犬が首をかしげるのを見たら「一生懸命に音を聞こうとしているんだな」と優しく見守ってあげましょう。
別の視野から物や相手を見ようとしている
犬は普段と別の視野から物や相手を見ようとした際にも首をかしげることがあると言われています。
嗅覚や聴覚とは違い「視覚」はあまり良くはない犬ですが、首をかしげることで視線をいつもと少し変えて視野を広げようとしているのです。
探究心や好奇心が高いことの表れでもあるので、先ほどの「音をよく聞こうとしている」時と同様に、愛犬はどんなことが気になっているのかを静かに観察するようにしてくださいね。
飼い主の喜ぶことを理解して再現している
過去に愛犬が首をかしげているのを見た時に「かわいい!」と声に出して興奮した経験がある飼い主さんも多くいるのではないでしょうか。
犬は学習能力がとても優れている動物です。「過去に自分が首をかしげた際に飼い主が喜んでくれた」と学習し、その後は特に理由がなくても「飼い主を喜ばせたい」という気持ちだけで首をかしげる子も珍しくはありません。
なんだか健気でかわいらしいですよね。
犬が首をかしげることに関する最新研究
犬が首をかしげることには、さまざまな意味や理由があるということがわかりました。ですが、じつは先ほどお話したこと以外にも考えられる理由などがあると最新の研究によって明らかになってきたのです。
ここからは「犬が首をかしげることに関する最新研究」について、詳しくご紹介していきます。
しつけ中によく首をかしげる犬は賢い傾向にある
しつけを行っている最中に愛犬が首をかしげていた、という経験をしたことのある飼い主さんもいるかもしれませんね。
ハンガリーのある大学が行った研究では「他の犬と比べて知能が高く賢い犬のほうがしつけの間に首をかしげる回数が多かった」という結果が出ました。
その結果から研究者たちの間では「犬が首をかしげるという仕草は、集中力を高めてこれまで蓄積した情報を思い出しているサインなのではないか」と言われているのです。
この研究結果によると「犬が首をかしげているのは集中して情報を思い出しているとき」なので、普段のしつけでもそのタイミングを狙って教えると良いチャンスになるかもしれません。
ただし、決して「しつけ中に首をかしげない犬が賢くない」という意味ではありません。首をかしげないからと言って「しつけができていない」なんていうこともありませんので、飼い主さんは安心してくださいね。
監修ドッグトレーナーによる補足
人間も何かを思い出そうとする時に、首をかしげると言われています。
なかなか思い出せない時に首をかしげることがありますよね。人間は、思い出せない腹立たしさを紛らわしている行動の一つといいます。
犬が左右に首をかしげる向きにも決まりがある
さらに、人間にも「利き手」があるように、犬が首をかしげるのにも「かたむけやすい向き」があるということがわかりました。
飼い主のいる場所などの条件を変えながら実験や観察を行ったそうですが、どれも因果関係がなかったようで研究に立ち会った学者も「首を左にかしげている犬は、この先もずっと左にかしげ続けるだろう」と言っていたそうです。
いち飼い主の立場からは「首をかしげる向きにそこまで重要性を感じられない」と思ってしまう人も多いかもしれません。
しかし、このように「犬にも利き◯◯があるのかもしれない」というのはこれまで犬の研究を続けてきた学者にとっては大発見なのだそうです。
そう考えると、飼い主としても「これからも犬について新たな発見が生まれるかもしれない」と、今後の研究結果が少し楽しみになってきますよね。
犬が首をかしげる時の注意点
最新の研究からも犬が首をかしげることに関してさまざまなことがわかってきて、ただかわいらしいように見える犬の行動でも奥が深いと改めて感じる人も多いかと思います。
しかし、犬が首をかしげる様子には注意しなくてはいけないこともあるようです。ここからは、犬が首をかしげる際の注意点について解説していきます。
犬が首をかしげたままの時は病気を疑う
犬が首をかしげてもすぐに元に戻るようであれば問題はありませんが、次のような様子も見られる際には注意が必要です。
- 正面から見て顔がまっすぐ維持できていない
- 顔が傾いている時間が長い
- 頭を振ったり足でかこうとする仕草が多い
- まっすぐに歩けずふらつく
- 眼球が左右や上下に揺れている
- 姿勢を低くして頭を押し付ける
犬が首をかしげた状態のままでいるのには、病気だけではなく生まれつきの筋肉の問題や過去の外傷による後遺症なども考えられます。
おかしいと感じたら、すぐに動物病院を受診するようにしましょう。
耳や脳神経の病気の場合は早期の受診が必要になる
首をかしげたままだったり先ほどお話したようなことが見られたりする場合には病気を疑った方がいい場合も多くあります。
- 外耳炎や中耳内耳炎など耳の痒みや痛みが起きて気になっている
- 老犬の場合はバランス感覚を司る前庭に異常が発生し腫瘍を疑うケースもある
- 小型犬に多く発症する脳炎によって異常行動が見られる場合もある
先ほどご紹介した行動にはこのような病気が潜んでいる可能性も十分に考えられるので、注意深く愛犬の様子を観察することが大切です。
さらに、どの場合でも早期の発見と受診が重要となり、病気によっては受診するタイミングによってその後の生命に関わると言っても過言ではありません。
急にその行動を始めたというケースもあれば、生まれつきというケースもあるでしょう。もし生まれつきの場合でも先ほどお話したように先天性の病気が潜んでいる可能性もあります。
少しでも愛犬の首をかしげる行動に違和感があるようであれば、早めにかかりつけの動物病院を受診しましょう。
その際には、他に気になる症状が出ていないかの確認を行い、犬の動画や写真を撮影しておくと診断がスムーズに進むのでおすすめです。
監修ドッグトレーナーによる補足
外耳炎や腫瘍がある場合、その部位を触られるのを嫌がります。
逃げたり牙をむくなどいつもと違う行動を見せたら、すぐに動物病院を受診しましょう。
まとめ
犬が首をかしげるという行動にはさまざまな理由や意味が隠されていることがわかりました。
音をよく聞こうとしていたり飼い主を喜ばせようとしていたり、見ていてかわいらしく愛犬をいじらしいと感じてしまう反面で病気が潜んでいる可能性を考えると不安にも感じてしまいます。
しかし「賢い犬ほど首をかしげる回数が多い」という最新の研究結果も出ていますし「うちの子が首をかしげるのはどうしてなの?」と考える飼い主さんもきっと多いかもしれませんね。
不安なことがあれば、早めに動物病院で相談することも大切ですが、愛犬が首をかしげている時にはまず犬と併せてその周囲なども注意深く観察してみましょう。
そうすることで愛犬が首をかしげている理由も見えてくるかもしれませんよ。