警察犬訓練士になるには
警察犬を訓練する警察犬訓練士、聞いただけで難しそうですね。責任の重い仕事でもあります。それでもチャレンジしてみたい方もいると思います。警察犬訓練士になるには、主に2つの方法があります。
どうやって警察犬訓練士になればいいか、説明していきます。
直轄警察犬訓練士
1つ目の資格は、直轄警察犬訓練士です。その名の通り、警察に所属する訓練士で、まずは警察官として採用される必要があります。
直轄警察犬訓練士は、警察官の一員なので、希望しても必ず訓練士になれるわけではありません。東京の警視庁以外は、地方公務員となりますので、普通の公務員と同じように、様々な部署への異動があります。
希望の鑑識課に配属され、警察犬の訓練に携われたとしても、ずっとその仕事を続けていけるとは限りません。
受験資格、学歴など
- 学歴は高卒以上、年齢は35歳未満
- 警察官採用試験には、身長と体重の要件があります
- 警察官採用試験に合格した上で、警察学校での研修を修了し、鑑識課に配属されること
嘱託警察犬訓練士(公認訓練士)
ずっと警察犬訓練士として働きたい方には、嘱託警察犬訓練士の資格をおすすめします。その名の通り嘱託なので、警察の一員ではありません。異動もありませんし、警察犬訓練士だけをやっていくことができます。
しくみがちょっと複雑ですが、公認訓練士として必須の三等訓練士の資格をとるためには、訓練の経験があることが求められています。そのため、見習い訓練士として、民間の訓練施設で経験を積む必要があります。
見習い訓練士は原則として住み込みで、公認訓練士が運営する警察犬訓練所でトレーニングを受けます。住み込みで働く形なので学費はかからず、数万円程度の報酬が出ます。
またはジャパンケネルクラブ(JC)などが運営する訓練所で犬のトレーニングについて学び、受験資格を満たすようにしましょう。
日本シェパード犬登録協会(JSV)に入会することによっても、公認訓練士の受験資格を得ることができます。
いずれの形にしても、資格を得るための訓練実績とは、日本警察犬協会の試験科目で、自分が訓練した犬を2頭以上、5科目以上合格させることです。訓練学校でトレーニングした犬と一緒に試験を受ける必要があります。
公認訓練士は学歴不問ですが、見習い訓練士として数年の修業期間が必要なので、若い方は途中で進路を変更したくなる可能性もあります。
中卒ではなくて、高卒のほうが、進路変更の際には断然有利なので、高校は卒業しておくことをおすすめします。
受験資格、学歴など
- 学歴の指定は特になし
- 公認訓練士になるには、見習い訓練士として訓練所に住み込みでトレーニングを受け、三等訓練士の受験資格を得る必要があります
- 三等訓練士の受験資格は、18歳以上で日本警察犬協会員であること、訓練の経験があること、所定の訓練試験合格実績があることです
- 警察犬訓練士には直轄と嘱託の2種類ある
- 直轄警察犬訓練士には異動がつきもの
- 嘱託警察犬訓練士は犬の訓練だけを仕事にできる
警察犬訓練士に必要な資格
警察犬訓練士になるためには資格の取得が必要です。ここでは代表的な資格について特徴と取得方法を解説していきます
警察犬指導手
警察犬指導手とは、各都道府県が年1回開催する嘱託警察犬審査会における実技試験を合格することで犬と共に認定される資格です。合格した犬も嘱託警察犬として認められます。合格した警察犬指導手と嘱託警察犬は警察からの出動要請に応じて、現場で活動することになります。
有効期間は1年間となり、更新するためには毎年試験に合格する必要があります。警察犬指導手は複数の犬と共に試験に挑むことも可能です。その場合、合格した嘱託警察犬を複数管理することも可能です。
公認訓練士
ここでいう公認訓練士とは、NPD(公益社団法人日本警察犬協会)によって認定される資格です。資格内でも階級が区分されており、三等訓練士、二等訓練士、一等訓練士、一等訓練士正、一等訓練士長の順に昇格していきます。
公認訓練士の始まりである三等訓練士を取得するためには、訓練所などで所定の条件を満たすことで受験できる試験に合格する必要があります。公認訓練士の昇格には、実績年数・能力などを加味し公益社団法人日本警察犬協会理事会によって決定されます。
JKCやJSVの公認訓練士
公認訓練士資格は公益社団法人日本警察犬協会以外にも取得できる訓練士資格が存在します。まずひとつがJKC(一般社団法人ジャパンケネルクラブ)提供の資格です。訓練準士補、訓練士補、訓練練士、訓練教士、訓練範士、訓練師範の全6種あり取得のためにはJKCに1年以上の在籍歴が必要です。
もうひとつがJSV(日本シェパード犬登録協会)です。NPD(公益社団法人日本警察犬協会)と異なりシェパード犬のみを対象としています。こちらも入会し受験に合格することで資格が取得できます。
警察犬訓練士の仕事内容
警察犬訓練士は、直轄、嘱託とも取得するのが難しい資格ですが、実際にはどんな仕事をすることになるのでしょう。具体的な業務内容について説明します。
警察犬を育てる訓練
警察犬訓練士の仕事として、まず挙げられるのは、警察犬候補の犬を訓練することです。警察犬は、犬の優れた嗅覚を活かして、警察の仕事をサポートする重要な役割を担っています。警察犬は、以下の4種類に分けられます。
- 麻薬探知犬
- 跡追求犬
- 気選別犬
- 威嚇犬
麻薬探知犬は、税関で仕事をします。跡追求犬というのは聞きなれない言葉ですが、犯罪捜査で遺留品に残された犯人のにおいをかいで、追跡するのが仕事です。テレビでよく見かけますね。
気選別犬は、追跡ではなく、証拠品のにおいと犯人のにおいが一致するかを確かめる役割です。威嚇犬は、その名の通り、犯人を確保する際にかみつくなどして威嚇する仕事です。
候補犬の性質などを踏まえて、どのような仕事が向いているか訓練するのが、警察犬訓練士の重要な仕事です。訓練をはじめたばかりの犬には、服従訓練をします。人間の命令を聞くように、基本的なコマンドを教えていきます。
服従訓練のあと、警察犬として欠かすことができないにおいをかぐ訓練を始めます。足跡追求や、臭気選別、犯人を警戒・威嚇する訓練と進めていきます。
訓練を進めていく中で、候補犬がどの種類の警察犬として活躍できるか、見極めるのも警察犬訓練士の仕事です。
警察犬のお世話全般
警察犬訓練士は、訓練だけでなく、犬の世話も担当します。日々の生活を共にすることで、信頼関係を築いていくのですね。
朝は犬の排泄や犬舎のそうじからはじまります。その後、訓練を兼ねて散歩のように犬を運動させます。朝ごはんをあげるのも、警察犬訓練士の仕事です。日中の訓練が終わったら、また犬に排泄をさせます。
訓練所の犬舎全体を毎日そうじするのは、なかなか大変だと思います。でも、警察犬の健康を保つために、季節を問わず、毎日犬舎を清潔に保つのも、警察犬訓練士の大事な仕事です。
一般の犬を対象にした訓練
警察犬訓練士は、一般の犬を対象にした訓練も行います。家庭犬のしつけ教室や、一般家庭に出かけて行く出張訓練も仕事のうちです。反対に、依頼された犬を訓練所で預かる預託訓練も行います。
警察犬訓練士は、警察犬という重要な任務を担う犬を訓練するスキルを持っているので、それを活かして家庭犬の訓練も行うことができます。
特に大型犬など、しっかりとしたトレーニングを必要とする犬種には、警察犬訓練士の技能がとても役に立ちます。
- 犬の訓練だけでなく、お世話全般も業務
- 嘱託警察犬訓練士の年収はがんばり次第
- 家庭犬の訓練も警察犬訓練士の仕事の一環
警察犬訓練士の年収は?
警察犬訓練士は難易度は高いですが、かなりやりがいのある仕事と言えます。やりがいとともに気になる収入ですが、直轄警察犬訓練士は、警察組織の一員なので、年収は350万程度からスタートします。その後徐々に給与が上がっていくので、公務員として安定した収入を得ることができます。
嘱託警察犬訓練士の場合は、年収200万程度と、直轄に比べてさみしい数字です。ですが、キャリアを積んで独立し、自分の訓練所を持つことができれば、収入アップすることができます。
容易ではないでしょうが、直轄警察犬訓練士を上回る収入を得ることも可能です。
嘱託警察犬訓練士は、犬の訓練だけを専門にできる代わりに、公務員としての地位がありません。でも、犬の訓練を専業にしたい方には、チャレンジする意義は大きいです。信頼性の高い資格なので、独立したあとに有利になるでしょう。
警察犬訓練士に向いている人
警察犬訓練士には様々な素養が求められます。単に犬が好きなだけでは、仮に資格を取得できたとしても勤めて続けるのは困難です。警察犬訓練士として活躍するためには、犬と共に早朝から訓練に励める体力、犬に関する様々な知識と教養を学ぶ向上心、思うようにいかなくても感情的にならず根気強く犬を鍛えていく自制心と忍耐力が欠かせません。
また警察犬訓練士は犬以外に人とも指導教室などで関わる機会があります。適切に犬の訓練方法を指導するためにも、人間に対しても社交性が求められます。警察犬訓練士の仕事では体力面・精神面においてストレスを感じることが少なくありません。そうした厳しい世界だとしても犬と一緒に仕事がしたい、警察犬の訓練に携わりたいなど、成し遂げたい夢や目標を持っているかも大切な要素といえます。
警察犬訓練士とドッグトレーナーの違い
ここまで読んでくださった方は、警察犬訓練士とドッグトレーナーはどう違うの?と疑問を感じたことと思います。どちらも犬を訓練する仕事ではありますが、資格の取得にかなり違いがあります。
ドッグトレーナーは主にペットの訓練士
警察犬訓練士とドッグトレーナーの一番大きな違いは、使役犬を対象とするかどうかです。警察犬訓練士は、警察犬という使役犬のトレーニングをするため、資格のハードルも高くなっています。
ドッグトレーナーは、一般の家庭犬を対象にするため、警察犬訓練士ほど厳格な資格は必要ありません。ドッグトレーナーは、飼い主から依頼を受けて、通常の生活に必要なしつけをします。
子犬のトレーニングを頼まれる場合から、噛みつきなどで困っている飼い主さんから、犬の行動改善を頼まれる場合まで、さまざまです。
一般的にドッグトレーナーといって思い浮かべる仕事内容で、ほぼ間違いありません。訓練ではなく、しつけを行うのがドッグトレーナーです。
警察犬訓練士のように犬舎のそうじもありませんし、住み込みで修行する必要もなく、1人で開業することも可能です。
ドッグトレーナーの資格は必須ではない
ドッグトレーナーは、警察犬訓練士とは違い、必ず資格を取らなければいけないわけではありません。当然、学歴不問です。
ただ、自分の経験や知識だけではカバーしきれないことが出てくるでしょうし、開業したときの信頼性を高めるためにも、トレーナーの資格を持っていたほうが有利です。
ドッグトレーナーの資格は、いずれも民間の認定資格なので、自分に合ったものを選ぶことになります。できれば、ドッグトレーナー協会の資格が望ましいですが、養成学校に通うなどして、そこで資格を取得することもできます。
ドッグトレーナーの資格は独学でも習得可能
ドッグトレーナーを目指すに当たり、専門学校などに通うのは、費用の面で難しい場合もあると思います。そんなときは、通信講座を使って、独学で資格を取得することを考えてみてはいかがでしょう。
ただ、やはりドッグトレーナーは実際に犬と接することが大切なので、通信講座で勉強しつつ、なるべくたくさんの犬と触れ合う機会を作るようにしましょう。保護団体のボランティアなどがいいかと思います。
保護団体には、これから飼い主を探すにあたり、トイレなどの基本的なしつけを必要としている犬達がいます。さまざまな年齢や犬種、性格の犬と接する良い機会になるでしょう。開業する際にも、経歴として有利になる可能性があります。
ドッグトレーナーとして働ける場
ドッグトレーナーの資格をとったら、どういう働き方をするかも考えておきましょう。最初から独立して、フリーのドッグトレーナーになることもできますが、しつけ教室を主催するような会社やペットショップ、ドッグランのスタッフなど、会社に所属して働くこともできます。
または、現在トリマーや動物看護師として働いている方は、飼い主さんのしつけについての悩みにアドバイスすることで、ドッグトレーナーの資格を活かすことができます。
ドッグトレーナーの収入は、最初は250万程度と、一般的な会社員より低いです。キャリアを積んで、独立することで、年収アップを狙うことになります。
- 警察犬訓練士よりドッグトレーナーのほうが資格がとりやすい
- ドッグトレーナーは家庭犬にしつけをする仕事
- 独学でも資格取得ができる
まとめ:警察犬訓練士になるにはいくつかの方法がある!
警察犬訓練士は、直轄と嘱託の2種類あり、警察官になるか、訓練士だけをやるかでどちらを選ぶかが決まってきます。
いずれにしても、資格取得のハードルは高いです。嘱託の場合は、訓練所に住み込む修行期間があるので、それが一番大変だと思います。
でも、警察犬訓練士は、警察の捜査に役立つ犬を育て、現場に出かけるという面で、訓練士中の訓練士と言えるでしょう。専門性を高めたい人には、うってつけの仕事だと思います。
警察犬訓練士はハードルが高いと感じる方は、ドッグトレーナーになる道もあります。こちらは専門学校もありますし、独学で資格をとることもできます。捜査を手伝う犬を育てる警察犬訓練士と違って、犬のしつけ全般が仕事になります。
とはいえ、ドッグトレーナーもさまざまな犬を相手にするので、警察犬訓練士より楽だとはいえません。
でも、犬が大好きで、いろいろな家庭犬と飼い主が楽しく暮らせるように手伝うことにやりがいを感じる人にとっては、素晴らしい仕事になるでしょう。