犬の9歳は人間に換算すると何歳?
愛犬が9歳を迎えると、「人間でいうと何歳くらいなんだろう?」と気になる飼い主さんは多いのではないでしょうか。
犬の年齢を人間の年齢に換算する方法は、犬の体のサイズによって異なります。一般的に、小型犬よりも大型犬の方が早く歳をとると言われています。
小型犬
トイ・プードルやチワワ、ミニチュア・ダックスフンドといった小型犬の場合、9歳は人間でいうとおよそ52〜56歳程度にあたります。
小型犬は比較的長寿な傾向がありますが、この頃からシニア犬としてのケアを意識し始めると良いでしょう。
心臓病や気管虚脱などは小型犬に比較的見られやすい病気であり、9歳という年齢では特に注意が必要です。
中型犬
柴犬やウェルシュ・コーギー・ペンブローク、ボーダー・コリーなどの中型犬では、9歳は人間でいうとおよそ50代後半から60代半ばくらいに相当します。
まだまだ元気な子も多いですが、少しずつシニア期特有の変化が見え始める頃です。例えば、柴犬はアレルギー性皮膚炎や認知機能不全を発症しやすいと言われることもあり、日頃の観察が重要になります。
大型犬
ゴールデン・レトリバーやラブラドール・レトリバー、秋田犬のような大型犬の場合、9歳は人間でいうとおよそ60代前半〜後半程度に相当すると考えられています。
若い頃の活発さから少し落ち着きが見られ、体力の変化も感じやすくなる時期です。例えば、大型犬は股関節形成不全などの関節疾患が出やすい犬種もいるため、若い頃からのケアが大切ですが、9歳になるとより一層注意が必要になります。
ミックス犬の場合
ミックス犬(雑種犬)の場合は、成犬時の体重を参考に、小型犬、中型犬、大型犬のいずれに分類されるかを確認し、それぞれの年齢換算を目安にすると良いでしょう。
例えば、体重が10kg未満であれば小型犬、10kg以上25kg未満であれば中型犬、25kg以上であれば大型犬といった具合です。
ただし、これはあくまで目安であり、両親の犬種や個体差によっても変わってきます。
9歳の犬に適した散歩時間は?
9歳の犬にとって、散歩は気分転換や適度な運動になり、健康維持に欠かせません。しかし、若い頃と同じような時間や内容で良いのか悩むかもしれません。9歳の犬の散歩時間は、その日の体調や天候、犬種による運動量を考慮し、無理のない範囲で調整することが重要です。
一般的に、健康な9歳の犬であれば、1日に2回、それぞれ20分から30分程度の散歩が目安とされますが、これはあくまで一般的な話です。例えば、元々活発なボーダー・コリーのような犬種と、比較的運動量が少ないシーズーのような犬種では必要な運動量は異なります。また、ニオイ探索や知育トイ等で脳を刺激する時間を設けることも有効です。
大切なのは、散歩から帰ってきたときの愛犬の様子をよく観察することです。息が上がりすぎていないか、足を引きずるような様子はないか、疲れすぎてぐったりしていないかなどをチェックしましょう。もし、以前よりも疲れやすくなったと感じる場合は、1回の散歩時間を短くして回数を増やす、コースを短くするなどの工夫が必要です。
暑い夏場や寒い冬場は、散歩の時間帯にも配慮が必要です。夏は涼しい早朝や夕方以降に、冬は比較的暖かい日中に散歩するなど、愛犬への負担が少ない時間帯を選びましょう。アスファルトの温度も、夏場は非常に高温になり、冬場は逆に冷えすぎるため、肉球の火傷やしもやけにも注意が必要です。
9歳の犬の健康管理ポイント
9歳になると、犬も人間と同様にシニア期に入り、若い頃とは異なる健康管理が求められます。日々の生活の中で愛犬の小さな変化に気づき、適切に対応することが健康寿命を延ばす鍵となります。
睡眠時間に注意
9歳の犬は、若い頃に比べて睡眠時間が長くなる傾向があります。これは自然な老化現象の一つであり、体力の回復により多くの時間が必要になるためです。安心してゆっくりと眠れるように、静かで快適な寝床を用意してあげましょう。ただし、あまりにも寝てばかりで元気がない、食欲もないといった場合は、何らかの体調不良のサインである可能性もあるため、動物病院に相談することをおすすめします。犬は一日の多くの時間を寝て過ごす動物ですが、その中でも特に高齢になるとその傾向が強まります。
歯の健康管理
歯周病は、多くのシニア犬が抱える問題の一つです。歯周病とは、歯垢や歯石に含まれる細菌によって歯ぐきや歯を支える組織が炎症を起こす病気す。
進行すると歯が抜け落ちたり、さらには細菌が体内に侵入して心臓病や腎臓病などの全身疾患を引き起こす可能性も指摘されています。
9歳になったら、これまで以上に毎日の歯磨きケアが重要になります。歯ブラシを嫌がる場合は、歯磨きシートやデンタルガム、指にガーゼを巻いてこするなど、愛犬が受け入れやすい方法から試してみましょう。
定期的に動物病院で歯のチェックを受け、必要であれば歯石除去などの処置をしてもらうことも大切です。日本で人気の高いトイ・プードルやチワワなどの小型犬は、顎が小さく歯が密集しているため、特に歯周病になりやすい傾向があると言われています。
なお、麻酔下での歯石除去は高齢犬にリスクがあるため、歯石除去前に血液検査などで全身の状態を確認し、麻酔リスクを獣医師と十分相談するようにしましょう。
体重管理で病気のリスクを抑える
その他にも、9歳の犬の健康管理で注意したい点はいくつかあります。体重管理は非常に重要で、肥満は関節や心臓への負担を増やし、様々な病気のリスクを高めます。適切な食事量と適度な運動を心がけましょう。
定期的な健康診断も忘れずに
また、定期的な健康診断も欠かせません。シニア期に入ったら、半年に一度程度の健康診断を受けることが推奨されます。血液検査や尿検査、レントゲン検査などを行うことで、目に見えない病気の早期発見・早期治療に繋がります。
ブラッシングやマッサージで体をケア
日々のブラッシングやマッサージは、血行を促進し、皮膚の健康を保つだけでなく、愛犬とのコミュニケーションを深め、体の異常を早期に発見する良い機会にもなります。しこりがないか、痛がる場所はないかなどをチェックしながら行いましょう。
犬が9歳になったら気をつけたい病気
9歳という年齢は、様々な病気のリスクが高まってくる時期でもあります。ここでは、特に注意したい代表的な病気をいくつか紹介します。これらの病気の兆候に早く気づき、適切な対応をすることが愛犬の健康を守るために非常に重要です。
心臓病
心臓病は、特に小型犬のシニア犬に多く見られる病気の一つです。代表的なものに僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)があり、これは心臓の弁がうまく機能しなくなることで血液が逆流してしまう病気です。初期症状としては、咳が出やすくなる、運動をしたがらなくなる、呼吸が速くなるなどが見られます。日本でも人気のキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルは、遺伝的にこの病気になりやすい犬種として知られています。
関節炎・椎間板ヘルニア
大型犬では股関節形成不全や肘関節形成不全、小型犬では膝蓋骨脱臼(パテラ)などが原因で、加齢とともに関節炎を発症しやすくなります。また、ミニチュア・ダックスフンドやウェルシュ・コーギー・ペンブロークのような胴長短足の犬種は、椎間板ヘルニアを発症しやすい傾向があります。症状としては、足をかばって歩く、段差を嫌がる、触られるのを嫌がる、抱き上げるとキャンと鳴く、後ろ足が麻痺するなどが見られます。
腎臓病
腎臓病もシニア犬に多く見られる病気で、腎臓の機能が徐々に低下していく慢性腎臓病が一般的です。初期には症状が現れにくいことが多いですが、進行すると多飲多尿(水をたくさん飲み、おしっこの量が増える)、食欲不振、体重減少、嘔吐などの症状が見られます。一度失われた腎機能は回復が難しいため、早期発見と進行を遅らせる治療が重要になります。
腫瘍(がん)
犬も人間と同様に、年齢とともに腫瘍(がん)の発生率が高まります。体表にできるしこり(乳腺腫瘍、皮膚腫瘍など)や、体内にできる腫瘍(リンパ腫、肥満細胞腫など)など、様々な種類があります。日頃から体をよく触ってしこりがないかチェックしたり、元気や食欲の変化、体重減少、原因不明の出血などがないか注意深く観察することが大切です。ゴールデン・レトリバーは比較的腫瘍の発生率が高い犬種の一つとして知られています。
認知機能不全(認知症)
犬も高齢になると、人間と同じように認知機能不全、いわゆる認知症を発症することがあります。症状としては、夜鳴き、昼夜逆転、徘徊、トイレの失敗、飼い主を認識できなくなるなどが見られます。これらの症状は、他の病気が原因である可能性もあるため、気になる行動が見られたらまずは動物病院に相談しましょう。
9歳の犬は保険に入れる?
愛犬が9歳になると、病気やケガのリスクが高まるため、ペット保険への加入や見直しを考える飼い主さんもいるでしょう。結論から言うと、9歳の犬でも加入できるペット保険は存在します。
ただし、ペット保険は犬の年齢が上がるほど加入条件が厳しくなったり、保険料が高くなったりする傾向があります。また、加入前にかかっていた病気やケガ(既往症)は補償の対象外となるのが一般的です。
保険会社やプランによって、加入できる年齢の上限、補償内容、保険料、免責金額(自己負担額)などが大きく異なります。例えば、特定の病気に特化したプランや、手術・入院のみを補償するプラン、通院もカバーするプランなど様々です。
9歳の犬の保険を検討する際は、複数の保険会社の資料を取り寄せ、比較検討することが重要です。
9歳の犬に適したドッグフードの選び方
9歳の犬は、消化機能が衰え始めたり、運動量が減って消費カロリーが低下したりするため、食事内容にも配慮が必要です。愛犬の健康状態や活動量、体質に合ったドッグフードを選ぶことが、健康維持にとって非常に重要になります。
シニア用・高齢犬用フードを検討する
多くのドッグフードメーカーから、シニア用(高齢犬用)のフードが販売されています。これらのフードは、一般的に成犬用フードに比べて低カロリー・低脂肪で、消化しやすく、関節ケア成分(グルコサミンやコンドロイチンなど)や抗酸化成分(ビタミンEやCなど)が配合されていることが多いです。ただし、「シニア用」と表示されていても、その基準はメーカーによって異なるため、成分表示をよく確認することが大切です。
主原料(タンパク質源)を確認する
犬にとってタンパク質は非常に重要な栄養素ですが、シニア犬にとっては質の高いタンパク質を適量摂取することが大切です。鶏肉、魚、ラム肉など、アレルギーの有無や愛犬の好みに合わせて選びましょう。消化の良いタンパク質源が使われているかどうかもポイントです。
消化のしやすさを考慮する
消化機能が低下してくるシニア犬には、消化の良い原材料を使用しているフードが適しています。穀物アレルギーが心配な場合はグレインフリー(穀物不使用)のフードも選択肢の一つですが、必ずしも全ての犬にとってグレインフリーが良いとは限りません。愛犬の体質や獣医師の意見を参考に選びましょう。「グレインフリー」とは、トウモロコシや小麦、米などの穀物を使用していないドッグフードのことを指します。
粒の大きさや硬さもチェック
歯が弱くなっていたり、飲み込む力が弱くなっていたりする場合には、粒が小さめで、硬すぎないフードの方が食べやすいでしょう。ふやかしやすいフードも選択肢に入ります。なかなか食べてくれない場合は、少し温めたり、ウェットフードをトッピングしたりするのも食欲増進に繋がることがあります。
獣医師に相談する
特定の病気(腎臓病、心臓病、アレルギーなど)を抱えている場合は、獣医師の指導のもと、療法食を選ぶ必要があります。自己判断でフードを変更せず、必ず獣医師に相談しましょう。また、健康な犬であっても、どのフードを選べば良いか迷った場合は、動物病院でアドバイスをもらうのが最も確実です。
フードを切り替える際は、1週間から10日ほどかけて、今までのフードに新しいフードを少しずつ混ぜながら、徐々に慣らしていくようにしましょう。急に切り替えると、お腹を壊してしまうことがあります。
まとめ
愛犬が9歳を迎えるということは、シニア期への本格的な入り口に立ったということです。人間の年齢に換算すると、犬種によって差はありますが、50代後半から70代に相当し、若い頃とは異なるケアや配慮が必要になってきます。
散歩の時間や内容を見直し、睡眠や歯の健康といった日々の健康管理に一層気を配ることが大切です。また、心臓病や関節疾患、腎臓病、腫瘍、認知機能不全といったシニア期に多い病気のサインを見逃さないよう、日頃から愛犬の様子をよく観察し、定期的な健康診断を受けましょう。
ペット保険は、いざという時の備えとして心強い味方になりますが、加入条件や補償内容は様々です。愛犬の年齢や健康状態に合わせて慎重に検討する必要があります。そして、毎日の食事は健康の基本です。消化が良く、栄養バランスの取れたシニア犬向けのフードを選び、愛犬がいつまでも元気でいられるようにサポートしてあげてください。
9歳という年齢は、これまでの感謝を込めて、そしてこれからの愛犬との時間をより豊かにするために、飼い主として何ができるかを改めて考える良い機会でもあります。この記事が、愛犬との健やかで幸せな毎日のために、少しでもお役に立てれば幸いです。