意外と身のまわりにあるかも!? 『鉛中毒』の危険性について

意外と身のまわりにあるかも!? 『鉛中毒』の危険性について

中毒症状の中ではメジャーなものと言っても過言ではない『鉛中毒』。近年ではその危険性から警戒が強まり、鉛をそのまま使った製品が減少したため大分少なくなりましたが、まだ私たちの身のまわりに鉛中毒の危険が潜んでいることを知ってますか?

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記事の監修

  • 獣医師
  • 平松育子
  • (AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター )

獣医師・AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター
山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月 有限会社ふくふく動物病院 取締役・院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。
獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かし、ペットの病気やペットと楽しむアロマに関する情報をお届けします。

鉛中毒って何?

診察台の上の犬

『鉛中毒』と聞くと『鉛』が危険な物質であるかのように聞こえますが、鉛そのものが全ての害になるわけではありません。
私たちやワンちゃんの食べている食材にも、微量ながら鉛は含まれていますし、鉛自体は体に必要な栄養素です。
但し、日常的に摂取する量としては、本当にごくごく僅かな量で、つまり『鉛中毒』とは簡単に言うと「普段の食材などから摂取する量よりも、何倍もの鉛を過剰摂取してしまい、身体に異常をきたすこと」なのです。

人間の場合、溶接などの際に発生する鉛やその化合物の霧状粉末や、粉塵を吸い込んだり、あるいはそれらによって汚染された手で口元を触ったりする事により体内へ吸収する事で、鉛中毒になります。
また、海外では鉛を含んだ塗料が剥がれたものを口にいれてしまう、またはその塗料が誇りとなって舞ったものを吸い込んでしまうことで、鉛中毒になるケースがあります。

身のまわりにある鉛を含むもの

  • 昔のペンキ

ペンキ

今のペンキは問題ありません。
しかし、お家の外装などは10年に1度の塗り替えが一般的ですので、意外と古いままのお家が多いです。

  • ハンダ付けされたもの

ハンダゴテ

主に基盤や電子パーツに多いです。

  • バッテリー

バッテリーのイラスト

  • リノリウム

リノリウム床材

床材に使用されている材質の一種です。

鉛中毒になるとどうなっちゃうの?

鉛中毒は消化器系と神経系に異常をきたします。
嘔吐・下痢が鉛中毒の初期サイン。
それを放置してしまえば、最終的には痙攣発作を起こします。
特にパピーは重度の症状まで陥りやすいと言われているため、子犬の時期は特に注意と素早い対応が求められます。

主な症状

嘔吐、下痢、食欲不振、体重減少、腹痛、興奮、発作、失明、変な物を食べるようになるなどの奇行、神経系の異常

軽度から重度までさまざまな症状がみられます。
更に急性の場合には貧血を起こす事もあります。

治療法は?

管を通した犬

もしも、神経症に至るまで重症化してしまった場合、カルシウム剤を静脈注射し体外排出する必要があります。
更に、消化器・筋肉・脂肪細胞の内部に入り込んでしまっている場合には、手術での摘出が必要になります。

鉛中毒の症状はジステンパーの症状に似ている

凶暴化した犬

気を付けたいのはこの鉛中毒がジステンパーの症状によく似ており、判断がなかなか難しいということです。
判断を誤れば処置も遅れ、最悪の結果を生み出す事にも繋がります。

判断するには?

動物病院を受診し、担当医師と状況をよく話し、血液検査とレントゲンを撮ってからの診断が必要になります。

ジステンパーって?

犬ジステンパーウィルス(CDV)によって感染する感染症。
ほとんどの肉食動物に感染しますが、イヌ科は特に感染力が強い病気です。

主な症状と進行

  • 感染から4~6日

発熱、食欲不振などの風邪っぽい症状

  • 感染から1週間~

総合的に元気が無い、結膜炎、角膜炎、目やに、嘔吐、腹痛、下痢、血便、咳、くしゃみ、呼吸不全、鼻先の乾燥

重症化すると

鉛中毒同様、神経に異常が出てきます。
チック症(体の色々な所がピクピクと律動的な痙攣を起こす事)、下半身麻痺、てんかん発作、無意味な暴走など。

これらをジステンパー性神経症状といいます。
非常によく似た症状ですが、病気の種類も処置の仕方も変わってきます。

まとめ

元気のない犬

症状が非常によく似ているということは病気の処置をする上で、獣医師にとっても非常に厄介だと言えます。
まず、症状が出たら検査をしっかりと受けて、それがどんな病気による症状なのかということを突き止めなくてはなりません。

そして、鉛中毒は人間でも亡くなるくらい深刻な問題です。
海外で女児が、鉛でできたオモチャのアクセサリーを口に含み中毒死した悲惨な事故は、10年以上も前でもありながら記憶に残っている人も多いことでしょう。

人間でも亡くなる程の症状を起こす鉛中毒。
これが体の小さなワンちゃんなら、たとえ少量であってもどんな結果になってしまうか、想像は容易にできます。

海外での事件後、子供用のオモチャなどの部品からは積極的に鉛が排除されるようになり、今ではそれが当たり前となるほど定着しました。
しかし、世界から一切の鉛が消えた訳ではありません。
どこでどんな物に鉛が使われているか、私たちには知る由もないのです。

部品などは「ワンちゃんのいる所にそのまま出さない」などの対策は取れますが、今一度見直して欲しいのは家の外装や床材です。
今住んでいるお家に、どんな素材が使われているか調べるだけで救える命があります。

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