他の犬のうんちを移植すると下痢が治る?
抗生物質よりも効果的!?糞便移植の効果とは?
ストレスが原因で下痢を引き起こすのは人間だけではありません。
犬も飼育環境の悪化や、ストレスによって下痢を引き起こすことがあります。
下痢の要因の多くが腸内環境の悪化によるもので、俗にいう悪玉菌の増加が原因となっています。
抗生物質の投薬によるデメリット
下痢を改善させる効果的な方法のひとつとして挙げられるのが抗生物質の投薬です。
体内の菌をやっつけてしまうことができるため、下痢の元となっている悪玉菌を除去するのにも効果があります。
しかし、抗生物質は、悪玉菌だけでなく、腸内環境を改善させるのに必要な善玉菌までも殺菌してしまうため、飼育環境やストレスが改善されなければ、結局はまた悪玉菌の増加によって腸内環境が悪化してしまうことになります。
抗生物質の投薬を行うのであれば、ストレスとの原因となる元も改善させなければ意味がありません。
糞便移植ってどんなもの?その目的は?
糞便移植という言葉を額面通りに受け取ってしまうと、他の犬の糞便を下痢の犬へ移植するという風にイメージしてしまいますよね?
実際のところはどういうことが行われるのでしょうか?
糞便移植の目的は、厳密にいうと腸内環境の整った犬の持つバクテリアを利用しようというものです。
健康な犬の糞便には良好なバクテリアが含まれており、それを培養して下痢の犬へ移植するというのが、糞便移植の実態なのです。
糞便移植の効果
事実、糞便移植によって下痢に悩む犬の93%が改善されたという研究結果もあります。
しかも、そのほとんどが24時間以内に腸内環境の改善が始まるという即効性もあります。
犬の肛門から直接流し込むという方法で済むので、"移植"という言葉から連想されるほど大規模な手間も時間もかからないというメリットもあるのです。
腸内環境悪化予防にも期待
この糞便移植は、当初、子犬による実験にとどまっていましたが、現段階では成犬だけにとどまらず、妊娠している犬の実験でも成果が出ています。
母犬の腸内環境が改善されると、生まれてくる子犬の腸内環境も良好であるということも確認されているので、対症療法としての糞便移植だけでなく、腸内環境の悪化を防ぐという予防医療としても大きな期待が寄せられています。
腸内環境が改善されることでどんなメリットがあるの?
腸内環境の改善は免疫力アップに効果的!
腸内環境の改善によるメリットは、ただ単に下痢や便秘が改善されるというだけではありません。
人間でいえば「腸内環境改善=美容」という認識が強いかもしれませんが、実は動物の免疫細胞のほとんどが腸内で作られていることはあまり知られていません。
腸内環境が良好に保たれていれば免疫力のアップに繋がり、健康な体作りも可能となりますが、腸内環境が悪化していると免疫力の低下を招き、病気に対する抵抗力も弱くなってしまうのです。
糞便移植は人間にも効果がある?
健康な糞便から採取したバクテリアを移植するという糞便移植ですが、現在のところ人間への応用は現実的ではないとされています。
現状、人間の腸内環境改善で主流となっているのが、乳酸菌の摂取や整腸剤などの服用です。
理論上は人間への応用も可能なものの、人間で糞便移植を行う際には大腸の内視鏡検査も必須となるため、費用も高額になりますし、身体的負担も増してしまいます。
近未来の医療では主流になっているかもしれません
しかし、日々著しい進化をみせている医療ですから、人間同士の糞便移植という手法も、そのうち定着していく可能性もあるかもしれませんね。
まとめ
人間もそうですが、下痢や便秘というのはとても辛いものですし、その辛さも味わったことのない人にしかわかりません。
ストレスが原因で下痢を引き起こす犬もいれば、生まれつき胃腸の弱い犬もいます。
下痢の糞便を処理する飼い主さんも大変ですが、それ以上に下痢をしている犬も、とても辛い思いをしているはず。
投薬による治療ももちろん悪いことではありませんが、投薬で一時的に改善しても、再び下痢になってしまうという悪循環にはまってしまうこともあります。
糞便移植によって強い腸に生まれ変わることのできるこの手法。
近い将来、動物病院でも当たり前にみられる治療法となることを期待したいですね。