犬に定期的な健康診断が必要な理由は?
犬の健康診断は必要なのでしょうか?犬の平均寿命は年々伸びており、2009年では13.1歳、2019年では14. 1歳と言われています。犬の長寿化に比例して、愛犬の健康維持に気を付ける飼い主さんも増えてきています。
しかしながら、定期的な健康診断を受診しない飼い主さんも多くいます。本文では、健康診断が必要か否か、受けることで具体的にどのようなメリットがあるのかを紹介します。
病気の早期発見・早期治療につながる
動物には、怪我や体の不調を隠す本能が備わっています。弱っていると外敵から襲われやすくなるため、不調を隠して身を守るのです。
犬も、見た目では体調不良に気づきにくく、体に不調が表れた時には重篤になっていることもあります。定期的に健康診断を受けていれば、見た目では気づけなかった不調を数値的に発見できます。病気を早期発見できれば早期治療ができ、健康維持につながります。
犬の体調が悪化した時の比較データになる
多くの飼い主は、犬の体調が悪くなってから動物病院を受診するでしょう。しかし、それでは健康な状態のデータと体調悪い時のデータを比較できません。
定期的に健診することで元気な時のデータを残しておき、体調が悪化した時に比較できます。比較することで、病気の原因やいつから異常な数値、画像になっているかがわかりやすくなるメリットがあります。
犬に初めて健康診断を受けさせるタイミング
犬に初めて健康診断を受けさせるタイミングをご存知ですか。実は、受ける時期に決まりはありません。
体に不調が出はじめる6歳頃になってから、または、シニアになってから受診すれば良いと考える飼い主もいますが、多くの獣医は1歳から健康診断を受けるよう推奨しています。
子犬なら健康に問題がないというわけではありません。1歳でも若齢から発症する先天性の病気もあるため、人間ドックのような健康診断セットを受診できます。
ペットショップで迎えた子犬は年齢がわかりますが、保護犬など年齢がわからない犬の場合は、健康状態の詳細を把握するためにも自宅に迎え入れて環境に慣れたら早めに受診するようにしましょう。
健診で重篤な病気がなかったとしても、幼少期のデータは今後の健康管理に大いに役立ちます。
犬の理想的な健康診断の頻度
犬の健康的な健康診断の頻度はどれくらいなのでしょうか?犬の成長に合わせて適切な健診頻度も変化してきます。
犬は人間と比べて成長スピードが速く、小・中型犬の1歳は人間の15歳、大型犬の1歳は人間の12歳に相当すると言われています。
その後の成長は緩やかになりますが、人間と比べると成長スピードは速く、小・中型犬は1年で4歳、大型犬は7歳年をとっています。
1年間健診を受けないだけで人間なら4~7年健診をしないことになるのです。犬の老化は想像以上に早いため、適切な健診頻度を知ることが大切です。
1歳未満の子犬
1歳未満の子犬は異常が現れたら、すぐに受診が必要です。1歳未満の子犬はワクチン接種や寄生虫薬の処方、去勢・避妊手術などのタイミングで獣医師による簡単な健康チェックをしてもらう機会が多くあります。
月齢に合わせて1~2ヶ月に1回は体格・成長度チェックを中心とした簡易的な健康診断をお願いしましょう。健診を受けていても子犬の体調に異常が現れたら早めに獣医師に相談することが大切です。
1歳~6歳までの成犬
1歳~6歳までの成犬は、年に1回の健康診断がおすすめ。成犬期は犬にとって最も活発に行動できる年齢です。一見健康に見えても隠れた病気が進行している可能性も。
体調が悪い時はすぐに受診するかと思いますが、病気の早期発見のためにも1年に1回程度の健康診断はとても大切です。
7歳以上のシニア犬
7歳以上のシニア犬は、半年に1回程度の健診がおすすめ。小型犬や中型犬の7歳は人間に例えると「高齢期」ではなくても「中年期(熟年期/シニア期の始まり)」に突入する時期です。
人間の中年期同様に、生活習慣病が出やすく目に見えない老化や病気が増えやすくなっています。
日々の愛犬との触れ合いで体の表面の異常はチェックすることができますが、無自覚な病気も進行している可能性もあるため、半年に1回の健診が安心です。
犬の健康診断で行う内容
普段病院に行くときは、犬の体調不良の原因を調べて適切な処置や治療を行いますが、犬の健康診断ではどのようなことをするのでしょうか?
多くの場合、健康診断セットとして検査内容が決まっています。どの検査項目を選ぶべきかオプションをどうすれば良いのか迷った場合は獣医師に相談しましょう。
問診・一般身体検査
- 問診:普段の様子を獣医に伝えます。与えている餌のことや、今まで飲んだ薬のこと、生活リズムなども重要な情報です。普段よくお世話をする飼い主が問診を受けるようにしましょう。
- 一般検査:獣医の五感で視診、聴診、触診などを行います。視診では目、耳、歯など体の表面の様子を確認します。
聴診では、聴診器で呼吸の音や心拍に異音がないか確認します。触診は、お腹に触ってしこりの有無などをチェックしたりします。他にも、臭いを嗅ぐことで膿のニオイや異臭を察知できます。
血液検査
採血をして血液の状態を調べます。血液の成分を分析することで各臓器が正常に働いているか、炎症が起きていないかなど数値として把握できます。血液検査は主に「全血球検査(CBC)」と「血液生化学検査」の2種類があります。
- 全血球検査(CBC):赤血球数や白血球数など血球を調べることで貧血の有無や炎症が起きていないかを調べられます。
- 血液生化学検査:血液中の成分を分析し内臓の働きや栄養状態を把握できます。
レントゲン・超音波検査などの画像検査
レントゲン検査と超音波検査(エコー検査)は共に画面に体内の映像を映し出し診断をおこないます。
レントゲン検査では、骨の異常、臓器の位置・形などが静止画として見られます。
超音波検査は、体の表面に超音波プローブ(探触子たんしょくし:超音波の出る器械)を当てた部位の状態をリアルタイムで確認できます。レントゲンに映らない血流の確認や、X線に写らない結石などの発見に有効です。患部にゼリーを塗って行いますが、患部の除毛が必要な場合もあります。
大きな動物病院では健康診断でCT検査をすることもあります。CT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)とは、X線を利用して体の内部(断面)を画像化する検査です。画像処理を行うことにより、レントゲンより体の細かな情報を得ることが可能です。
尿検査・便検査
尿・便検査は、病院によって採取指示が異なるため、事前に確認が必要です。自宅で採取するのか、採取容器は病院でもらえるのかなど検査予約時に確認しましょう。
- 尿検査:腎臓や膀胱、前立腺が正常に機能しているか把握できます。また、糖尿病の発見にも役立ちます。
- 便検査:細菌バランス、寄生虫の有無、食べ物の消化状態が把握できます。
犬の健康診断にかかる費用
人間ドックのような犬の健康診断にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか?
日本獣医師会が平成27年度に調査した「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査及び飼育者意識調査」の調査結果によると、健康診断(1日ドック)の料金の平均は14,021円で、7,500円~30,000円に大半の病院が入っているのでひとつの目安にするといいかもしれません。
健診は複数の検査項目が組み合わさっており、多くの病院では年齢別にコース分けされています。
子犬は、生後半年までに病院で診てもらう機会が多いので、健診に多くの項目は必要ありません。ただし、年齢がわからない迎え入れたばかりの犬は、子犬であっても先天的な病気がないか健診を受けるようにしましょう。
健診の項目と値段は動物病院によって様々です。一般的に健康診断は病気の診察ではないため、保険適用外(全額自己負担)になります。
加入している保険内容に健診費用も該当するのか、健診費用や支払方法の確認を事前にしておくと安心して健診を受けることができますね。
犬の健康診断を行う時の注意点
犬の健康診断を行う時はいくつか注意点があります。事前準備ができていないと、当日検査が受けられないこともあります。基本的に、健康診断は予約、説明を受けてから受診します。説明内容を理解して当日を迎えるようにしましょう。
検査前の犬に必要な準備や持参物を確認する
健康診断前には、食事や飲水のタイミング、尿・便の持参は必要か?など事前確認が必要です。
また、同居家族がうっかりごはんをあげないように、検査前の注意点を家族にも伝えておきましょう。
犬のことをよく理解している人が連れて行く
健康診断は、普段の状態を獣医に伝える問診も重要になってきます。検査内容の質問や問診、検査結果の説明などは日ごろよくお世話をしている人が聞くようにしましょう。
人づてに聞いた曖昧な情報や、何度も同じ質問をするなどは動物病院のスタッフや飼い主自体の手間も増えてしまいます。
まとめ
近年、犬の寿命が延びていることにより、犬の健康志向も高まっています。それに合わせて、動物病院では様々な健康診断セットが増えています。
年齢に合わせた健康診断を受けることで、病気の早期発見、早期治療に役立ちます。犬の老化スピードを考えると、年1回の健康診断は決して多くありません。
1歳からでも受けられる健康診断セットもあるため、どのような項目を受診できるのか、かかりつけの動物病院へ確認しましょう。
共に過ごす愛犬に長生きしてほしい、健康でいてほしいと多くの飼い主が願っています。言葉を話せない愛犬のためにも定期的な健康診断がおすすめです。