犬の早食い防止は健康管理にも繋がる!
食器にご飯を入れた途端、もしくは入れている最中から我慢しきれず、ものすごい勢いで早食いをしてしまう子が、皆さんの愛犬の中にもいるかもしれません。
犬は食べ物を飲みこめる大きさに切り裂くための裂肉歯は発達していますが、人のように口に入ってきた食べ物をすりつぶすための構造は持っていません。また、人の唾液に含まれるような消化酵素を持たず、味を感じる味蕾の数も人より少ないため、「味わって食事する」という習慣がそもそもないのです。
群れの仲間に対して負けじと食べなければいけないという生存本能からも、犬が早食いの習慣を持つのは仕方ない部分もありますが、家庭犬にとっては大きな悪影響につながることもあります。
消化不良による嘔吐
勢いよく胃の中に食べ物が入ると、胃に急な負担がかかってしまうため、ご飯を食べた直後に吐くという行為を引き起こしやすくなります。中でも消化性の高くないドライフードを丸飲みする場合は、胃で始まる食べ物をドロドロにする作業(消化)にも時間がかかり、より長時間胃の中に食べ物が停滞する原因にもなってしまいます。
お腹を大きく動かして吐くこと自体、愛犬にとっては体力を使い疲れるものですが、食べ物と一緒に逆流してしまった胃酸が食道の粘膜を荒らしてしまうこともあります。
誤嚥・のどに詰まる
通常飲みこんだ食べ物は食道を通って胃に向かいますが、早食いで勢いよく口を通過した時に誤って気道に入り込むことで空気の通り道を塞いでしまい、呼吸ができなくなってしまうことがあります。
体格に見合わない大きすぎる食べ物を丸飲みした時や、ドッグフード同士が唾液で張りつき、大きい状態のままで飲みこんでしまうと、のどに詰まらせるリスクはより高まります。
咳をしてわんちゃん自身で吐き出すことができなければ、飼い主さんが吐き出させる応急処置を行わないと命に関わることもあるため、早食い防止策を検討してあげなければいけません。
監修ドッグトレーナーによる補足
シニア犬になると、食べ物を飲み込みにくくなったり、のどに詰まらせるリスクが高くなります。
飲み込む動きに必要となる舌やのどの筋力の低下や、加齢や病気が原因で起こるのどや食道の形が変わる、体の機能低下などが影響しているからと言われています。
過食・肥満
犬は元々長期間獲物が取れなかった時のために食いだめできるよう、一度にたくさんの食事を摂取できる胃を持つ動物です。
そのため、早食いするとドライフードを胃に入れても膨張して満腹感につながるまでに時間がかかり、
- 食べ物をもっと催促する
- まだお腹が空いているからと食べ過ぎてしまう
といった肥満や過食につながることが多くなります。
胃拡張・胃捻転
早食いで急いでご飯を食べようとすると、勢いの余りドッグフードだけでなく空気も一緒に飲みこんでしまいがちです。すると、胃の中に空気が多く入り込むことで急激に拡張し、胃がねじれやすい形となります。
その状態のまま運動や遊びで体を動かすと、胸が深い犬種では特に胃捻転を引き起こしやすくなると考えられています。胃捻転になると、周囲の血管も一緒にねじれる他、排出できなくなったガスによって胃はさらに拡張を続け、周囲の臓器にも影響を与えてショック状態による死亡を招くことがあります。
- 早食いは消化管に一気に食べ物が流れ込むことと空気まで一緒に飲みんでしまうことが問題
- 日常的な嘔吐による炎症や肥満など二次的な健康問題を呼び込んでしまう
- 早食いによる悪影響には気道閉塞や胃捻転など命に関わる危険を招くことがある
監修ドッグトレーナーによる補足
胃捻転や腸捻転は、一晩で命に関わる怖い病気です。体重が30㎏を超えるような大型犬は特に注意しましょう。
犬の早食い防止策9つ
わんちゃんたちには「早食いを止めなさい」と言い聞かせることは当然ながらできませんよね。
体の構造や本能からの早食いはもちろん、「早く食べないと誰かに取られちゃうかも!」という危機感を抱いて食事しているわんちゃんであれば、誰かが自分の食事に手を出そうとしたら攻撃や威嚇をしようとするなど、異常な執着心につなげてしまう危険もあります。
こういった早食いによる悪影響を愛犬から遠ざけるためには、早食い防止の対策を飼い主さんが考えてあげましょう。
フードをふやかして与える
硬くて小さいドライフードが1粒1粒はっきり分かれた状態のまま食べるよりも、あえて水を含んで大きくなった柔らかいドライフードを食べる方が、飲みこむために小さく噛もうと時間をかけて食べることがあります。
また、ドライフードをそのまま丸飲みして胃の中で膨張するのを待つより、あげる前からふやかしてかさ増ししておくことで、満腹感につなげられる可能性も高くなるでしょう。
人の手でふやかすことで胃の消化活動の手助けにもつながります。
ただし、ドライフードが好きなわんちゃんにとってはふやかしフードが嫌いな場合も少なくないので、そういった場合にはどれくらいのふやかしなら食べるか段階的に確認するのがおすすめです。
水やスープにドライフードを浮かせて食べにくくする
ふやかしフードが嫌いなわんちゃんなら、ドライフードの食感が変わる前に食べられる工夫の1つとして、さらっとした水やスープが入った器にドライフードを浮かせて食べてもらう方法も検討してみましょう。
ただ器に入っている状態よりも、水の上で逃げるドライフードを追いかけながら食べることになるので、完食するまでに時間がかかり早食い防止につなげられることがあります。
普段から水を飲む量が少ないというわんちゃんにもぴったりな食べ方です。
食事の回数を調節する
- ご飯への執着が強い
- 食べることが大きな楽しみになっている
というわんちゃんでは、「早食いしなくても大好きなご飯は何度も出てくるんだよ」と理解してもらうために、1日にあげる食事の回数を増やしてあげるのがおすすめです。
短い間隔で1日に何度も食べられると、「またご飯をくれるんだ!」と犬としての食べる喜びを何度も味わえるのと同時に、強い空腹感によって起こる「早く食べたい」という欲求を抑え、早食い防止に役立てられます。
また、少量ずつあげる方が、勢いよく入ってきた食べ物のによってかかる胃への負担を減らすこともでき、嘔吐回数が減ることもあります。
食事回数を増やす時には、1日にあげる総量はそのままにしておき、過剰なカロリーを摂取してしまわないよう注意しましょう。
監修ドッグトレーナーによる補足
脳が満腹を感じるまでには時間がかかります。一度に大量のフードを食べると、満腹を感じる前に食べすぎてしまう可能性も。
フードを小分けにして与えることで脳が満腹を感じやすくなり、早食いを抑えられることに繋がります。
粒の大きさが異なるフードを混ぜる
愛犬が食べにくいと感じるような、いつもとは違う大きさの粒のドッグフードを混ぜることによって、完食するまでに時間がかかるようになる場合もあります。
- いつも小粒なら普通粒を混ぜる
- いつも普通粒なら超小粒を混ぜる
など、わんちゃんの口の大きさによって、粒のサイズが変わると食べにくさが増すことがあるのです。
しかし、食べるスピードがさほど変わらないのであれば、早食い防止どころかのどに詰まらせたり誤嚥する可能性が高まるので、愛犬の様子を見て判断しましょう。
多頭飼いの場合は食事場所を分ける
同居している動物がいて、食事中にちょっかいを出されたり、横取りされてしまうために急いで食べているのであれば、
- 1頭ずつケージやサークルの中で食事をとる
- 食事中にお互いの姿が見えないように部屋を分けて与える
といった対策を取ってあげましょう。
誰も自分のご飯を取らないと分かれば落ち着いて食事に臨むことができ、結果的に早食い防止につながるわんちゃんも多くなります。
早食い防止食器を利用する
あえてご飯を食べにくくするという意味を持たせるなら、早食い防止食器を活用してみる方法もあります。
早食い防止食器とは、食器の中に取り付けられた突起や壁によって、ご飯を入れる場所がいくつかのスペースにあらかじめ区切られているため、一気にかき込むようにして食べることが難しくなるという商品のことです。
鼻先を突っ込んで舌を起用に動かして拾うように食べる食器がほとんどのため、短頭種である犬種では活用しにくい食器とも言えます。また、最初から難易度が高く、普段の食器とは見た目が大きく違うものを選んでしまうと、食事自体が愛犬のストレスになってしまうこともあるため、食べている時の様子をよく観察してあげましょう。
フードを入れる知育おもちゃを利用する
時間をかけてご飯を食べてもらうのであれば、転がしたり匂いをたどって探し当てなければ食べられない知育おもちゃを活用するのもおすすめです。
時間をかけて食べられること以外にも、遊び感覚で楽しみながら食事ができるので、頭の体操でほどよく疲れさせてお留守番中の睡眠につなげてあげることもできます。早食い防止食器と同じく、最初から難しいものを取り入れてしまうと食べ方がわからず食事を諦めてしまう子がいるので、簡単なものから始めてあげるようにしましょう。
手からあげる
少量ずつあげるためには食器からご飯を食べることに固執せず、飼い主さんの手から数粒ずつあげることも検討してみましょう。
飼い主さんの手からあげるメリットには、
- 食事を取られたくないという犬の執着心をなくす
- 基本のコマンドやアイコンタクトをまじえたトレーニングの時間につなげる
- 飼い主さんが食事をくれるということを意識させ信頼関係を構築する
といったものもあるので、愛犬の食事にゆっくり時間をかけられるタイミングがある時には、ハンドフィーディング(手から食事をあげる)にもぜひチャレンジしてみてください。
監修ドッグトレーナーによる補足
ヨーロッパでは子犬を育てる時に、飼い主さんの手から食事をあげることからしつけを始めたりもします。
広いスペースにばらまくようにしてあげる
ご飯が食器のような狭いスペースに固まって置いてあると、一気にたくさんの量のご飯を口に含むことができるので、愛犬の早食いにつながってしまいがちです。
そこで、愛犬用のランチョンマット代わりになるものを用意して、その上に1回分のご飯をばらまくようにして置いてあげると、少しずつ顔を動かしながら拾って食べざるを得ないため、早食い防止につながります。
- 早食い防止策を考えるなら誰にも食事を取られないゆっくりと食べられる環境を作っておくことが大前提
- 環境を整えた後に少しずつ食べる工夫や食べにくさを与えてゆっくり食べざるを得ない食事方法を取り入れる
- 早食い防止策には犬種や性格によって合わないものもあるので愛犬の様子を見ながら試してみよう
犬の早食い防止におすすめのグッズ5選
早食い防止にはいろいろな方法があることをご紹介しましたが、ここからはより具体的に、それぞれの場面で気軽に取り入れることができる早食い防止対策グッズをご紹介しましょう!
衛生面やわんちゃんと飼い主さんの使いやすさ・楽しさを重視しながら、皆さんの愛犬に取り入れられそうなものがあれば、ぜひ試してみてくださいね。
ドギーマン ゆっくりデコボコ食器
早食い防止食器の最も簡単なタイプで始めたいのであれば、突起が少ないこういった商品がおすすめです。突起や部品が少ない分洗いやすく、食材やドッグフードの油分を洗い残すといった衛生面への不安を感じることは少ないでしょう。
食器のサイズが小型犬サイズしかないため、大型犬が食べる量は1度には入れられません。また、慣れてくれば数日で食べる勢いが同じになってしまうこともあるので、すぐに難しい形状の食器に移行しなければいけない場合も出てくるかもしれません。
OPPO(オッポ)フードボール
通常の平らな食器と違い、玉状のゆらゆらと揺れる特殊な形をしている早食い防止食器です。器が安定していないので一気に中身を食べることができにくく、かつ器の中にも軽い仕切り板がついているので一部分ずつ食べる必要がある形状になっています。
顔を入れる部分がやや狭いので、垂れ耳のわんちゃんでもご飯が耳に付着して汚れるのを防いぎ、食べこぼしも少ないくできるのが特徴です。複雑な形をしていますが簡単に分解でき、丸洗いも可能。
ただし、短頭種で顔が大きいブルドッグ系の犬種は、底まで口が届かず使用しづらいため、同じOPPOシリーズの口が広い「オープンタイプ」がおすすめです。
Kong(コング) ワブラー
コングと言えばゴムのような弾力がある犬用おもちゃとして有名ですが、同じシリーズ商品の中には倒すとおもちゃが出てくるタイプのワブラーという商品もあります。こちらは何度倒しても起き上がってくるので、おもちゃの動きにわんちゃんが夢中になること間違いなし。
また、1個が大きめなので、1度にたくさんの量を入れたいという飼い主さんや、小型犬から大型犬まで多頭飼育している家庭でも、活用しやすい早食い防止グッズ兼知育おもちゃとなっています。
フードを入れる時・洗う時には上下を分解できるので、衛生面でも安心です。ウェットフードには対応していないため、もしも液体や缶詰ご飯を詰めたいのであれば、通常タイプのコングを利用してください。
嗅覚訓練マット
食器を使わず広い範囲に散らばったご飯を拾うようにして食べるのであれば、知育おもちゃ・嗅覚トレーニングも兼ねるノーズワークマットを活用するのがおすすめです。見た目もかわいく、短頭種・長頭種に関わらずクンクンと匂いを嗅ぎ当てながら食事をするので、食べ終わるまでに時間がかかるのは確実です。
ただし、布製なので洗濯に手間がかかりがちなこと、布へのいたずら癖(噛みちぎる・飲みこむなど)があるわんちゃんは、使用を避けてあげてくださいね。
ペットフェンス 透明パネル
多頭飼育で食事のためだけに部屋を分けるのは…という飼い主さんは、食事時だけ簡易のサークルとなるペットフェンスを活用するのも良いでしょう。必要のない時はバラバラにして片づけておくことができ、組み立ても簡単です。
力の強いわんちゃんや興奮しやすいわんちゃんでは耐久性が足りないので、その場合は頑丈なケージ・サークルを活用することをおすすめします。
- 愛犬が使うグッズは安全衛生的に使えるものから選ぼう
- 早食い防止対策グッズは、愛犬がイライラせずに楽しく使えるものを優先してあげるのがベスト
- 飼い主さん目線でも使う手間が大きくない商品を選ぶと毎日活用しやすい
まとめ
早食いによる健康被害を少しでも防ぐためには、毎日のちょっとした食事の工夫が欠かせません。この工夫は難しいものではなく、早食い防止グッズを活用したり、食事のあげ方を変えるだけで簡単にチャレンジできます。
また、わんちゃんと飼い主さんの好きなこと・やりやすい方法で対策を練ることができるほどさまざまな工夫の仕方があるため、できないと思うことは省いて試してみることも可能です。
愛犬が早食いによって吐く姿や、病気を抱える姿を見るのは飼い主さんも辛いもの。今日から1つずつでも、愛犬の早食い防止になるような対策をぜひ取り入れてみてくださいね。