犬のアンダーショットとは
犬のアンダーショットとは、口を閉じたときに、下の歯のほうが前に出ている噛み合わせです。下あごのほうが上あごより長いことで、このような状態になります。人間で言うと、受け口の状態ですね。
ほとんどの犬種では、シザーズバイトといって、上の前歯よりほんの少しだけ下の歯が後ろにずれている噛み合わせがスタンダードとされています。アンダーショットは症状がひどくない限り生活に大きな支障はありませんが、好ましくないとされています。
ただし、アンダーショットがスタンダードである犬種もありますので、一概にアンダーショットが悪いとは言えません。
アンダーショットがスタンダードな犬種
前述の通りアンダーショットがスタンダードである犬種もいます。代表格は、ブルドッグです。パッと思い浮かべても、下あごが突き出たアンダーショットだとわかると思います。
あとは、ペキニーズ、パグ、ボストンテリア、フレンチブルドッグなどの「鼻ぺちゃ犬」達も、アンダーショットがスタンダードとされています。ブルドッグほど目立ちませんが、確かにちょっと受け口ですよね。
大型犬だと、ボクサーがアンダーショットです。これも、やはり犬種のスタンダードとされています。
このように、人為的にアンダーショットを維持している犬種もあります。次に原因について見ていきましょう。
アンダーショットの原因
遺伝
犬のアンダーショットの原因は、ほとんどが遺伝によるものです。親犬の遺伝子に、アンダーショットを含む不正咬合の要因が含まれていると、生まれた子犬の中に、アンダーショットが発現することがあります。
乳歯から永久歯に生え変わるときの問題
もう1つの原因は、「乳歯遺残」と呼ばれるものです。子犬が成長する過程で、乳歯から永久歯に生え変わりますが、本来であれば、乳歯は自然に脱落して、口の中に残ることはありません。ですが、中には乳歯が残ったままになり、永久歯の成長を邪魔してしまうことがあります。
このように、乳歯が残ってしまうと、嚙み合わせが正常でなくなり、犬がアンダーショットになってしまう場合もあります。
アンダーショットの問題点
口内が傷つく
上下の歯のズレが5mm以内の場合は、アンダーショットでも特に問題はありません。ですが、5mm以上ずれていると、犬の噛み合わせとしては問題が出てきます。
上下の歯のズレが大きいせいで、歯が歯ぐきや口内の粘膜に当たってしまい、口の中が傷つくことがあります。アンダーショットのせいで、慢性的に口に傷がある状態になると、細菌に感染するなど、健康上の問題も出てきます。
見た目の問題
上記のように、5mm以内のズレであれば、アンダーショットでもそれほど見た目に影響しません。ですが、それ以上のズレとなると、やはり見た目にもはっきりとわかってしまいます。
5mm以上ずれたアンダーショットだと、かなり「しゃくれ」の状態になります。見苦しいというわけではありませんが、ずいぶん特徴的な外見になると思います。
歯垢がつきやすい
アンダーショットの犬は、標準的な噛み合わせの犬に比べて、どうしても歯垢がつきやすくなります。人間でも歯並びが悪いと、歯磨きが難しくなり、歯垢がつきやすいですね。犬もやはり同じです。
筆者が昔一緒に暮らしたマルチーズの中に、アンダーショットの子がいました。若いときは全く問題ありませんでしたが、シニアになって、やはり歯が弱くなりました。当時は犬のオーラルケアが普及していなかったので、歯磨きの習慣もありませんでしたから、歯肉炎のような状態になり、口臭もきつくなったのを覚えています。
ですので、アンダーショットの犬は、歯磨きなどのオーラルケアをこまめにするほうがいいです。シニアになってから違いが出てきますので、若いときから歯磨きの習慣をつけてあげるといいですね。
アンダーショットの治療方法について
先述のとおり、アンダーショットであっても、さほどズレが大きくなく、生活に支障がない場合は、特別な治療の必要はありません。
でも、ズレが大きくて口の中を傷つけてしまう場合は、治療が必要となります。治療と言っても、人間のように歯列矯正をするわけにいきませんので、犬の場合は抜歯などの外科的措置をとることになります。
犬のアンダーショットは、上あごと下あごの長さの違いから起こる物理的なものなので、「治る」というものではありません。どうしても不具合を起こす歯を抜くか、短くするために切断することが治療になります。
ただし、犬の場合、抜歯と言っても人間のように簡単ではなく、全身麻酔を行いますので、相応のリスクを伴います。ですから、ただ単に見た目を良くするためだけに、アンダーショットの治療を行うのは、全くお勧めできません。あくまで、アンダーショットのせいで、口の中に問題が起こってしまう場合だけ、獣医師によく相談して、治療を決めてください。
まとめ
犬のアンダーショットは、ほとんどの場合、特に問題がないとわかりました。特定の犬種には、むしろアンダーショットが好ましいとさえされています。
ただし、上下の歯のズレが大きくて、口の中を傷つけてしまうような場合は、獣医師に相談して、抜歯などの治療を行う必要が出てきます。遺伝によるアンダーショットは仕方ありませんが、乳歯から永久歯に生え変わるときの問題で、アンダーショットになることもありますので、子犬の歯の生え変わり時期には、注意して観察するようにしましょう。