犬の混合ワクチンは毎年必要?接種する間隔や種類、値段などを解説

犬の混合ワクチンは毎年必要?接種する間隔や種類、値段などを解説

犬の混合ワクチン接種は毎年必要なの?日本国内での犬の混合ワクチン接種は、世界的な犬の混合ワクチン接種と少々異なる点が存在することをご存知でしょうか。近年、認知されつつあるその犬のワクチン接種についての新ルールとは一体どんなものなのでしょうか。犬の混合ワクチンの種類や接種間隔、値段などについて詳しく解説します。

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記事の監修

  • 獣医師
  • 平松育子
  • (AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター )

獣医師・AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター
山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月 有限会社ふくふく動物病院 取締役・院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。
獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かし、ペットの病気やペットと楽しむアロマに関する情報をお届けします。

犬の混合ワクチン接種とは

犬のおもちゃと注射器

犬の混合ワクチン接種とは感染症を予防するために無毒化、または毒性を弱めた病原体(ワクチン)を体内に送り込み「抗体」を作ることを指します。体内に抗体を作るということはあらかじめウイルスに対抗するための準備をするようなものであるため、病原体に感染したとしても症状を軽くすることが可能となります。

日本で接種が義務付けられている「狂犬病ワクチン」とは異なり、犬の混合ワクチン接種はあくまでも任意とされています。ただ漠然と犬の混合ワクチン接種は「絶対に受けなければならないもの」と認識している飼い主さんも多いようですが、近年では日本の「毎年、混合ワクチンを接種する」という習慣に疑問や議論が唱えられることも増えてきています。

この機会に犬の混合ワクチン接種とは一体どんな病気を予防するものなのか、必ず毎年接種する必要があるのかなどを再確認してみましょう。

犬の混合ワクチン接種は毎年必要なのか

犬と注射器を持つ手

犬の混合ワクチン接種は毎年必要なのかという点については、今現在でも様々な意見があるようです。というのも、日本国内では混合ワクチンも狂犬病ワクチンと同様に「毎年接種する」ことが習慣として浸透していますが、世界小動物獣医師会(WSAVA)のワクチネーションガイドラインでは「コアワクチンについては子犬期の初年度接種及びブースター接種を終えた後、3年毎よりも短い間隔で接種するべきではない」とされています。

コアワクチンとは世界中で感染が認められる重度の致死的な感染症から犬を守るためのワクチンのことを指します。このコアワクチン以外のワクチンを「ノンコアワクチン」と呼び、ノンコアワクチンについては必要性に応じて1年に1度、つまり毎年接種することが推奨されています。

世界小動物獣医師会(WSAVA)のワクチネーションガイドラインではコアワクチンの初年度及びブースター接種を終えた後、その免疫持続期間は何年にも渡り、終生持続することさえあるため不必要にワクチンを接種するべきではないと解説されています。

犬の混合ワクチン接種は無毒化、または毒性を弱くした病原体を体内に送り込み抗体を作るというシステムであるため、副作用などのリスクが伴うことも事実です。ただ、日本国内でペットホテルやドッグランなどを利用する際には「1年以内の混合ワクチン接種証明書」の提示が必要となることが殆どです。つまり、犬の混合ワクチンを毎年打つべきなのかどうかについては、愛犬の生活環境や体調なども考慮した上で、飼い主さんが判断するしかないということになります。

犬の混合ワクチン接種は特別値段が高いわけでもなく、毎年受けさせている人が多いからとりあえず接種している、という飼い主さんも多いようですが、年齢によってはかえって体に負担を掛けてしまう可能性もあります。この機会に愛犬が接種している混合ワクチンの種類やその内容、何歳まで受けさせるべきなのかなどをかかりつけの獣医師にしっかりと相談してみましょう。

犬の混合ワクチン接種の種類

ワクチンイメージ

一般的に日本で接種されることの多い犬の混合ワクチンには、以下のような種類があります。

ワクチン接種の種類①5種混合ワクチン

  • 犬ジステンパーウイルス
  • 犬パルボウイルス感染症
  • 犬アデノウイルス1型(伝染性肝炎)
  • 犬アデノウイルス2型感染症
  • 犬パラインフルエンザウイルス感染症

犬の混合ワクチン接種で最も一般的なのがこの「5種混合ワクチン」です。5種混合ワクチンは前述した「コアワクチン」と呼ばれる全ての犬が接種すべき3種(アデノウイルスが2種あるため、正確には4種)に、犬風邪とも呼ばれる「犬パラインフルエンザウイルス感染症」のワクチンが追加された5種類の混合ワクチンです。

日本国内では「コアワクチン」のみを混合したワクチンは流通しておらず、2種混合ワクチンでは「犬ジステンパーウイルス」「犬パルボウイルス感染症」のみ、3種混合ワクチンでは「犬ジステンパー」「アデノウイルス1型(伝染性肝炎)」「アデノウイルス2型」のみとなり、コアワクチンに不足が生じるためこの5種混合ワクチンが基本となります。

5種混合ワクチンに含まれているコアワクチン、犬ジステンパーウイルス(CDV)、犬アデノウイルス(CAV)、犬パルボウイルス2型ウイルスは世界中で感染が認められており、いずれも命に関わる重篤な症状を示すため生活環境に関わらず子犬期からの適切なワクチン接種が重要となります。

ワクチン接種の種類②6種混合ワクチン

  • 犬ジステンパーウイルス
  • 犬パルボウイルス感染症
  • 犬アデノウイルス1型(伝染性肝炎)
  • 犬アデノウイルス2型感染症
  • 犬パラインフルエンザウイルス感染症
  • 犬コロナウイルス感染症

犬の6種混合ワクチンは、5種混合ワクチンの内容に「犬コロナウイルス感染症」ワクチンが追加されたものを指します。犬コロナウイルス感染症とは、消化管にコロナウイルスが感染することで嘔吐や下痢などの症状を引き起こします。成犬の場合、コロナウイルスに感染しても無症状であることが殆どですが子犬の場合は重篤化しやすく、特に犬パルボウイルス感染症との混合感染では死に至る可能性もある病気です。

ワクチン接種の種類③8種混合ワクチン

  • 犬ジステンパーウイルス
  • 犬パルボウイルス感染症
  • 犬アデノウイルス1型(伝染性肝炎)
  • 犬アデノウイルス2型感染症
  • 犬パラインフルエンザウイルス感染症
  • 犬コロナウイルス感染症
  • 犬レプトスピラ症(イクテロヘモラジー、カニコーラ)

犬の8種混合ワクチンは、6種混合ワクチンに犬レプトスピラ症(2種)を追加した混合ワクチンとなります。レプトスピラ症は全ての哺乳類に感染する人獣共通感染症であり、保菌している野ネズミなどの尿中に菌が排泄されます。その菌に汚染された水を飲んだり、傷口から入り込んだりすることで感染します。主に農作業を手伝う犬や川遊びをする犬が感染しやすい病気です。

犬の混合ワクチンは上記の3種類以外にも2種~10種など数多く存在します。5種ワクチンを基本として生活環境に応じたノンコアワクチンを追加していくようなイメージですね。混合ワクチンの数が多ければ多いほど予防できる病気が増えることは事実ですが、生活環境によっては必要のないノンコアワクチンも存在します。

副作用のリスクも考慮すれば、やはり愛犬にとって本当に必要なワクチンの種類を適切に選ぶことが何よりも重要となります。毎年5種以上の混合ワクチンを接種している場合は、愛犬が過ごす生活環境においてのノンコアワクチンの必要性を再度確認してみてください。

犬の混合ワクチン接種を受ける間隔

注射器を見る犬

犬の混合ワクチン接種を受ける間隔については「毎年」「3年以上」など様々な見解がありますが、その間隔を正しく見極める方法として動物病院での「抗体価検査」です。抗体価検査には採血が必要となるため、年に1度の健康診断の際にその時点で愛犬が持つ「抗体」について調べることを習慣付けると良いでしょう。

犬のワクチン抗体価検査の値段は動物病院によっても異なりますが、4,000円~8,000円程度であることが多いようです。

この抗体価検査は「コアワクチン」に分類されるジステンパーウイルス、アデノウイルス、パルボウイルスの抗体のみを判別することが可能となっています。免疫が持続しており混合ワクチン接種が不要な場合もあれば、混合ワクチン接種を行ったのにも関わらず抗体を持たない場合もありますので、コアワクチンをすぐに接種すべきかどうかを判断するためにも、抗体価検査についてかかりつけの獣医師に相談してみましょう。

ただし、上記の抗体価検査やワクチン接種の間隔の調整が推奨されているのは「コアワクチン」についてです。一般的にノンコアワクチンの免疫持続期間は1年間とされているため、生活環境に応じて必要性が高い場合には年に1度のノンコアワクチン接種が必要となりますので注意してください。

犬の混合ワクチン接種の値段

犬の足とお金

犬の混合ワクチン接種の値段については、一般的に以下のようになっています。

  • 犬の2種、3種混合ワクチン 4,000円~5,000円
  • 犬の5種、6種混合ワクチン 4,500円~8,000円
  • 犬の8種、9種混合ワクチン 5,000円~10,000円

犬の混合ワクチン接種の値段については動物病院によっても異なりますが、一般的には1種のワクチンにつき1,000円~2,000円程度の費用が必要となる場合が多いようです。なかには同じ種類の混合ワクチンでもその値段に3,000円以上の差が出る場合もあり、A病院の5種混合ワクチンとB病院の8種混合ワクチンの値段が同じ…といった状況に困惑する飼い主さんもいらっしゃるようです。

しかし、決して同じ値段なら種類が多いほうがお得!というわけではありませんので、値段よりもワクチンの内容についてしっかりと理解できるよう心がけたいですね。

子犬の混合ワクチン接種について

子犬と注射器を持つ獣医師

子犬の混合ワクチン接種については、スケジュールをしっかりと理解して適切に接種する必要があります。というのも、母親の初乳から受け継いだ「移行抗体」「受動免疫」を持つ子犬期はコアワクチンを接種してもその効果を阻害するため、最も早く抗体が切れていることを想定した生後6週齢~8週齢からワクチンプログラム(ワクチネーション)を開始し、最後の接種が生後16週齢以降となるように複数回接種する必要があるのです。そのため、子犬のワクチンプログラムは一般的に以下のようになります。

  • 生後6週齢~8週齢      初回混合ワクチン接種
  • 初回接種から2週間~4週間後 2回目~3回目の混合ワクチン接種
  • 前回接種から2週間~4週間後 3回目~4回目の混合ワクチン接種
  • 生後6ヶ月~12ヶ月      ブースター接種

ブースター接種とは生後16週齢以降を最終としたワクチン接種で十分に免疫を得られていない場合に追加でワクチン接種することを言います。そのため、最終のワクチン接種から約4週間以降の抗体価検査の結果によれば不必要となることもあります。

一般的に子犬の初回混合ワクチン接種は5種混合ワクチンが用いられることが多く、それ以降は5種混合ワクチン、8種混合ワクチンなど生活環境に合わせて混合ワクチンの種類を選びます。また、何らかの事情で混合ワクチンを1度しか接種できない場合には生後16週齢以降に接種することが重要です。

日本国内では上記のような子犬のワクチンプログラム完了後から毎年継続して混合ワクチンを接種することが多いですが、最終接種から12ヶ月~23ヶ月経過した時点で75.5%の犬の「コアワクチン」の免疫持続が確認されたとの報告もあります。このように子犬期のワクチンプログラムは後に大きな影響を与える可能性もあるため、かかりつけの獣医師としっかり相談しながら初乳を飲んでいるかや子犬の体調、体質などにあわせて慎重にスケジュールを組みましょう。

まとめ

ワクチン接種する大型犬

犬の混合ワクチン接種についてご紹介しました。実際に犬の混合ワクチンについてどんな病気を予防できるのか、どんな副作用があるのか、どのような間隔で接種するべきなのか…詳しいことはよく分からないまま、獣医師の指示通りに接種しているという飼い主さんも多いようです。

もちろん、かかりつけの獣医師が生活環境などを考慮したうえで混合ワクチンの種類を適切に選んでくれている場合もありますので獣医師の指示に従うことを否定するわけではありません。

しかし、なかには「料金が1,000円しか変わらないから、多くの病気を予防できる混合ワクチンを選んでいる」という飼い主さんの声を聞くことも少なくないため、日本国内での犬の混合ワクチンに対する飼い主の理解はもっと深めていかなければならないと思います。

この機会に愛犬が毎年受けている混合ワクチンの種類やそのワクチンに含まれている「ノンコアワクチン」、愛犬が接種している「ノンコアワクチン」で予防できる病気の感染経路などを理解した上で、愛犬にとって本当に必要なワクチンなのかどうかを是非調べてみてください。

特に副作用のリスクが高くなるシニア犬の場合は、抗体価検査や今後の接種についてかかりつけの獣医師に相談することを強くおすすめします。

監修獣医師による補足

ワクチンの抗体価検査は、すべての動物病院で実施しているわけではないので事前に確認しましょう。検査時間には約25分が必要になります。混合ワクチンは3年に1回でいいという情報も流れていますが、正確には抗体価検査を毎年行い、抗体価が下がっていればコアワクチンを含むワクチンを接種し、抗体価がしっかりあればコアワクチンを接種する必要はなく、生活環境に応じてノンコアワクチンを接種するという解釈が正しいです。毎年接種していても抗体価があがっていない場合もあります。ワクチン接種はかかりつけの動物病院でしっかり話し合って受けるようにしてください。

犬と猫のワクチネーションガイドライン
https://www.wsava.org/WSAVA/media/PDF_old/WSAVA-vaccination-guidelines-2015-Japanese.pdf

犬用ワクチチェック
https://vaccicheck.jp/wp-vacc2/

獣医師:平松育子
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ユーザーのコメント

  • 投稿者

    40代 男性 匿名

    獣医はこういった事を飼い主に説明するべきです。抗体価検査すら知らない人も多い。さらに言えばワクチンを打たなくても自然に抗体がつく場合もある。それなのに毎年「ワクチンを打つ時期」とハガキを送ってくる。当然、個体には負担はかかるし最悪の場合、命に関わることもあるのだが決してその事を飼い主に伝える事はない。
    ワクチンを打った後も大した説明もせずに様子を診ることもなく直ぐに帰す。だから金儲けの為と言われる。ワクチンを打たなければ命に関わるなら野良犬や野良猫問題は起きていない。本当に動物の事を思い命を大事に思うならありえない。技術の面では先進国かもしれないが動物の事では後進国。
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