欠伸をしたとき、じゃれているとき、愛犬の大きく開けた口の中を見て、その構造に驚いたことはありませんか。歯の形や舌の長さなど、人間と大きく違う部分は多く、その中でも特に犬の上顎部分は特殊。まるで洗濯板のように凸凹しているのです。
人間のつるっとした上顎とは明らかに構造が違います。では、この凸凹は何という部分で、どのような役割を持つのでしょうか。ここからは、犬の上顎部分について、またそれに関係する病気について詳しくご説明いたします。
上顎の凸凹は?
犬の上顎部分全体は「口蓋」と呼ばれますが、その中でも上顎の凸凹した部分は、「硬口蓋(こうこうがい)」と呼ばれる部分です。上部にある鼻腔と口腔を分ける役割をしており、その表面は凸凹と波打つようになっています。また、その奥の少し柔らかい部分は「軟口蓋(なんこうがい)」と呼ばれます。
硬口蓋の役割
主な役割は、前述の通り鼻腔と口腔を隔てることです。この凹凸については、赤ちゃんのときに母親の乳を飲みやすくするためであったり、温度調節を助けるためであったりするという意見があります。
犬は肉球部分でしか汗をかけず、口からハッハッと熱を放出することで体温を調節していますが、その際に上顎の凸凹が表面積を大きくしたり、空気を循環させたりと役立っているそうです。
口蓋の病気
口蓋裂
口蓋に発症するものとして、「口蓋裂」という病気があります。口蓋裂とは、鼻腔と口腔を隔てるはずの口蓋に、穴や裂け目がある状態を指します。先天性の障害であり、このままでは成長することができません。
口蓋の穴により、口に入れたミルクが鼻に逆流してしまったり、口蓋と舌を密着させることができないので、母乳をそもそも吸うことができなかったりと、上手く栄養を摂取することができないためです。
治療するには手術しかありませんが、生まれて間もなくは手術に耐えうる体力がないため、数か月待ってから行います。それまでの間は、栄養を与えるための人間による補助が必要となります。
軟口蓋過長症
軟口蓋過長症とは、硬口蓋の奥にある軟口蓋が通常よりも長いことにより起こる呼吸器疾患です。先天的な要素が大きいとされ、パグやブルドッグのような短頭種に多く見られます。呼吸に雑音が混じり、呼吸困難によるいびきや開口呼吸、酷くなると嚥下運動にも支障をきたすようになります。
気管に負担がかかるため気管虚脱が起きることも。最悪の場合、命の危険があり、犬にとっても苦しい症状であるため、早期発見と治療が求められる病気です。治療は外科手術が主で、施術すれば治る確率の高い病気。肥満や興奮、夏場に悪化するケースが多いので注意が必要です。
口蓋もチェックしよう
犬の口蓋部分について述べて参りました。あまり馴染みのない器官であったのではないでしょうか。口蓋部分はなかなかじっくり見ることのできない部分ではありますが、ガンなどの腫瘍ができることもあるので、意識してチェックするようにしましょう。
また生まれたばかりの子犬で、母乳を飲む様子がおかしいと感じた場合も、口の中をよく確認すること。もちろん短頭種も要注意です。呼吸の様子に気を配ってあげましょう。
上顎というと、ふだん外側から見えることのない部分であるだけに、飼い主による健康チェックが大切となる部分です。口の中を見せたり触らせたりすることに、なるべく慣れさせておくようにしましょう。
犬の体内構造は人間とは違います。それらの構造を理解し、健康管理をきちんと行って、健康な愛犬と長く共に過ごしたいものですね。