犬の輸血について

犬の輸血について

もし愛犬が輸血が必要な状況になったら…そんなことを考えたことはありますか?輸血が必要な場面は、救急時が多く、短い時間の中で判断を迫られるような場面です。犬の輸血が必要な場面と、輸血を行う際に知りたい知識についてまとめました。

お気に入り登録
SupervisorImage

記事の監修

日本獣医生命科学大学卒業。北海道の大学病院で獣医師として勤務。一般診療をメインに行いながら、大学にて麻酔の研究も並行して行う。「動物と飼い主さんに寄り添った治療」を目標に掲げ、日々診療に励んでいます。

犬に輸血が必要な病気

病院で診察を受ける犬

動物医療の発展と、飼い主さんの犬の治療に対する意識の変化によって、動物病院で輸血を行うケースは増えています。

皆さんがご存じの通り、輸血はいわゆる貧血の状態を改善するために行われます。生物は全血量の1/3以上が失われてしまうと生命の危機に晒されます。これは、例えば5kgの犬なら110ml失血するだけで、命に関わるということになります。

輸血が必要になる病気は、大きく分けて2つに分けられます。

出血による貧血

1つ目は、体の中や外のどこかで出血がおきて、身体から血液が失われているケースです。出血で血液そのものが足りなくなっている状態です。

  • 外傷:交通事故や大きな切り傷など
  • 胃潰瘍など消化管からの出血
  • 感染症:内部寄生虫やノミなどによる吸血
  • 腫瘤

赤血球に対する異常

2つ目は、何らかの原因で血液中の赤血球が壊されたり、作られなくなったりすることで、不足してしまい、貧血になってしまうケースです。この場合は、赤血球が壊されていることで、黄疸という症状が現れることがあります。

  • 中毒:玉ねぎや薬物など
  • 感染症:バベシア症(マダニが媒介)など
  • 自己免疫性疾患
  • 骨髄性疾患
  • 腎臓病

貧血のときの症状について

犬の貧血の程度が軽いうちは、あまり症状に現れることはありません。貧血が進行するにつれ、症状として現れてきますが、病気がゆっくり進行している場合、犬の体が状況に慣れてしまい、症状が分かりづらい場合もあります。

定期的な健康診断で、血液の状態を確認して、早期発見に努めましょう。犬が貧血を起こしている場合、以下のような症状を起こすことがあります。これらの症状を見つけたら、早めに動物病院を受診してください。

  • 運動不耐性:動きたがらない、散歩に行きたがらない
  • チアノーゼ:歯茎や舌などの可視粘膜が青白くなる
  • 心拍亢進、呼吸促拍

犬に輸血が必要なときに行われる検査

血液検査のイメージ画像

動物病院で、輸血が必要なほど貧血が進んでいると分かり、輸血することになった場合、輸血に向けて更に検査が必要です。それはどのような検査でしょうか。

犬の血液型検査

人にABO式の血液型があるように、犬にも血液型があります。犬ではDEA式という方法で、13種類以上の血液型に分類することができます。犬の輸血の場合でも、血液型が適合しているかが重要です。

動物病院では、輸血にとって重要な(DEA1.1)陽性・陰性の判定を行うことができます。供血犬を探す際には、受血犬の血液型と合致する血液型の犬を探します。

血液交差適合試験

血液型の一致する供血犬が見つかったら、供血犬と受血犬の血液同士を用いて、輸血の際に血液抗体による凝集反応の有無を調べます。血液型検査の結果が一致していても、交差試験の結果凝集が認められた場合は、輸血を行うことができません。

供血犬を探す

動物医療の世界では、人の献血制度のようなシステムはありません。ですので、飼い主や動物病院が供血犬を探さなくてはなりません。

「病院犬」という言葉をご存じですか?
動物病院で飼育されていて、輸血が必要な犬がいた場合に、供血犬として協力してくれている犬たちです。
病院犬のいる動物病院は、輸血が必要になった場合、その犬たちから採血を行うことができますので、早く輸血を始められるという利点があります。

ですが、犬自身の負担を考えると、病院犬からの供血では、血液が足りない場面が数多くあります。また病院犬がいない病院もたくさんあります。そんなときに備えて「供血ボランティア」という形で犬を募集している病院もあります。

それでも血液が足りないということが起こります。お近くの動物病院で「供血ボランティア」を募集していないか、ぜひ確認してみてください。

輸血を行った後の注意

横になっている術後の柴犬

貧血をおこしている犬に輸血を行うと、貧血が改善するため、犬の状態は良くなるでしょう。ですが、貧血は対症療法であり、病気自体を治してくれるわけではありません。輸血後の治療について、担当獣医師とよく相談しましょう。また、先述の検査結果に問題がなくても、輸血後に副反応が起こる場合があるため、処置後の管理が重要です。

まとめ

飼い主と並んで座る犬

愛犬に輸血が必要になるような場面と、輸血を行う際に知っておきたい知識についてまとめました。輸血を行うような場面は、一刻も早く処置を始めたいことがしばしばあります。

実際の場面に遭遇した場合、輸血について改めて調べるような時間はないかもしれません。そのような場面に備えて、輸血に限らず、日頃から知識を収集しておくようにすると、いざという時にも後悔がない選択ができるでしょう。そして、一番は輸血が必要な場面に遭遇しないことです。

そのためには、日頃から愛犬の様子を観察したり、健康診断を受けたりして、健康管理をしていきましょう。

はてな
Pocket
この記事を読んだあなたにおすすめ
合わせて読みたい

あなたが知っている情報をぜひ教えてください!

※他の飼い主さんの参考になるよう、この記事のテーマに沿った書き込みをお願いいたします。

年齢を選択
性別を選択
写真を付ける
書き込みに関する注意点
この書き込み機能は「他の犬の飼い主さんの為にもなる情報や体験談等をみんなで共有し、犬と人の生活をより豊かにしていく」ために作られた機能です。従って、下記の内容にあたる悪質と捉えられる文章を投稿した際は、投稿の削除や該当する箇所の削除、又はブロック処理をさせていただきます。予めご了承の上、節度ある書き込みをお願い致します。

・過度と捉えられる批判的な書き込み
・誹謗中傷にあたる過度な書き込み
・ライター個人を誹謗中傷するような書き込み
・荒らし行為
・宣伝行為
・その他悪質と捉えられる全ての行為

※android版アプリは画像の投稿に対応しておりません。