安全に犬の採血するために
我々人間の採血の際には、腕を自分で出して採血が終わるまでそのまま待ちます。犬の場合はどうでしょうか。思い出してみましょう。
犬の場合は、動物看護師におさえられて、獣医師が毛をかき分けながら採血しています。どんな状況でもじっと採血を我慢できる犬や、採血がまるで気にならない様子の犬もいますが、絶えず動こうとする犬も多くいます。
犬の採血に使われる部位も確認しておきましょう。部位は主に3つあります。
- 後足の外側(外側伏在静脈)
- 前足(橈側皮静脈)
- 首(頚静脈)
動物病院では、血管の太さや犬の性格から採血部位を決定します。犬の安全な採血の為には、血管に細い針を刺して検査に必要な量が採取できるまで、犬に動かず待っていてもらわなければなりません。犬が動いてしまうと時間がかかってしまったり、何度も針を刺すことになってしまいます。これでは犬はますます採血嫌いになってしまい、次は嫌がるようになってもっと時間がかかって…、と悪循環になってしまいます。
そうならない為に、採血者はできるだけ短い時間で採血を行うように心がけています。飼い主は犬が採血の間動かないように待っていられるような環境づくりを心掛けましょう。その為にできることはなんでしょうか。
犬の採血に立ち会う場合
犬の採血は、飼い主もいる診察室で行う場合があります。特に採血量が多くない場合(毎年のフィラリア抗原検査など)で、よく見られます。
犬の気を採血から逸らす
犬の採血に立ち会う場合に一番多いケースです。多くの犬は、獣医師が触れている部分に気が向いていて、針を刺す前から緊張している状態です。その状態では針の痛みを感じやすくなってしまいます。気を逸らしてあげるのは、我々が採血してもらう時に、採血部位を見ないようにしたり、わざと足をつねったりするのと同じようなことです。
気を逸らしてあげるためにおすすめしたいのが、顔を撫でながら優しく声をかけてあげることです。必要以上に大きな声を出したり、コマンドをかけたりする必要はありません。飼い主が「犬が動かないようにしよう」と必死になるほど、犬は緊張してしまいます。できるだけいつも通りを心掛けましょう。
採血の後には、ぜひご褒美をあげてください。いつも与えているもので構いません。ただし、採血中にご褒美を見せると、そちらに向かっていこうとする犬がいますので、採血が終わるまで待ってから与えてください。
スタッフと一緒に犬をおさえる
飼い主と身体が密着していた方が、落ち着いて採血を受けられる犬がいます。そういった犬の場合は、飼い主もスタッフと一緒に保定(犬をおさえる事)できるといいでしょう。
その場合、おさえかたはスタッフの指示に従います。多くの場合、犬から飼い主の顔が見やすい、前側からの保定をお願いされることが多いようです。その際は、保定しながら優しく声をかけてあげましょう。慣れない保定で飼い主も緊張すると思いますが、できるだけ犬に緊張が伝わらないよう平常心でいることを心掛けてください。
同行の家族がいる場合は、その人に声をかけたり顔を撫でてもらうとより良いでしょう。採血後は、前述と同様にご褒美をあげてください。
動物病院のスタッフに犬を預けて採血をする場合
飼い主と一緒にいると、どうしても動いてしまい採血が難しい犬もいます。とても甘えん坊で飼い主に助けを求めようと動いてしまう犬や、飼い主と一緒にいると強気になって暴れようとする犬の場合は、飼い主から犬を預かって別室で採血を行うことが多くあります。
飼い主から見えないところで採血を行うことに抵抗のある方もいるかもしれませんが、結果として犬にとって嫌な時間が減るという利点があります。
また、飼い主が「血を見るのが苦手」という場合にも別室で採血を行います。これは飼い主が血を見なくて済むという他にも、飼い主の不安や不快感が犬に伝わらないという利点があります。犬は飼い主が不安な気持ちだった場合、その気持ちを敏感に受け取り犬自身も不安を感じてしまいます。もし、血を見るのが苦手な場合は動物病院のスタッフに伝え、別室で採血をしてもらいましょう。
犬の採血までにお家でできること
犬を飼っていれば、年に一度のフィラリア抗原検査などで採血する機会が必ず訪れます。日頃からお家で、脚や腕を触ったり身体を密着させることに慣れさせたり、知らない人に慣れておくと犬の負担はグッと減ります。
可能であれば、犬が動物病院を怖がらないように仕向けてあげることも有効です。用事がなくても動物病院へ顔を出して、手の空いているスタッフがいればオヤツを1つ与えてもらったりしてみましょう。動物病院のスタッフは動物好きばかりなので、喜んで対応してもらえると思います。
まとめ
犬の採血の時に、飼い主にできることについてまとめました。
犬の採血は当事者である犬はもちろん、飼い主にとっても緊張する瞬間です。それでも、飼い主が平常心でいつも通り接することができれば、犬の不安も和らぎます。健康な子であっても健康診断やフィラリア抗原検査で、体調を崩すことがあれば尚更、避けて通れないのが「採血」です。
その時にぜひこの記事を思い出して、犬が安心できるように振舞っていただければと思います。