犬がぶどうを食べた!危険な量と中毒症状、飼い主にできる応急処置

犬がぶどうを食べた!危険な量と中毒症状、飼い主にできる応急処置

犬にぶどうは絶対に与えないで!一粒でも急性腎障害などの中毒症状を引き起こす危険があります。ぶどうやレーズンを食べた時の初期症状、危険な摂取量の目安、症状がなくても病院へ行くべき理由と正しい応急処置を詳しく解説します。

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記事の監修

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、日々の診療で力を入れさせていただいています。

犬にぶどうを食べさせても大丈夫?

ぶどうとぶどうジュースの横に並ぶ2頭の子犬

犬にぶどうを与えてはいけません。少量でも「ぶどう中毒」と呼ばれる特有の中毒症状を引き起こす可能性があり、犬にとって非常に危険な食べ物です。

品種や皮、種の有無に関係なく、すべてのぶどうやレーズンに中毒の危険性があります。原因となる有害成分は特定されておらず、どの犬にも発症するリスクがあるため、絶対に食べさせてはいけません。

ぶどうで犬が腎不全になる危険性

犬がぶどうを摂取すると、急激に腎臓の機能が低下する「急性腎不全(急性腎障害とも呼ばれる)」を発症する危険性があります。

腎臓は体内の老廃物を排泄する臓器ですが、腎機能が失われると毒素が体内に蓄積され、命にかかわる深刻な状態に陥ります。腎臓へのダメージは不可逆的なこともあり、迅速な対応が求められます。

原因物質が分かっていない現状

犬に対してぶどうがなぜ毒性を示すのか、その原因物質は現在も特定されていません。

一部の研究でぶどうに含まれる「酒石酸(しゅせきさん)」が関与している可能性が指摘されていますが、まだ仮説の段階です。原因が明確に分かっていないため、どの量なら安全という目安が存在せず、「少しなら問題ない」という判断は危険です。

レーズンはぶどう以上に危険

ぶどうを乾燥させたレーズンは成分が濃縮されているため、生のぶどうよりさらに少量でも中毒症状を引き起こす可能性があります。

レーズン入りのパンやお菓子は気付かずに犬が口にするケースも多いため、飼い主は十分に注意が必要です。

加工しても中毒のリスクは残る

ぶどうジュース、ゼリー、ワイン、ぶどうを含むパンや菓子類などの加工食品も、加熱や発酵を経ても有害成分が完全に消えるわけではありません。

知らずに摂取すると中毒症状を引き起こす危険があるため、犬には一切与えないようにしましょう。

犬がぶどうを食べたときに現れる中毒症状

体調が悪そうに横になっている犬

犬がぶどうを食べた場合、中毒症状は比較的短時間で現れ始めます。ただし、摂取量や個体差によって症状の出方や重症度は異なり、無症状のまま体内で腎臓へのダメージが進行することもあります。

飼い主は犬の状態を注意深く観察し、異常が見られたら迅速な対応が必要です。

食後すぐに出る初期症状

ぶどうを食べてから数時間以内(早ければ2時間程度)に症状が現れ始めに中毒症状がみられる場合もあります。

初期段階で特に多く見られるのが嘔吐や下痢、食欲の低下、元気がなくなるなどの消化器症状です。中でも繰り返す嘔吐は特に注意が必要で、食べたぶどうがそのまま吐き出されるケースもあります。

腎不全の症状

急性腎不全の症状が表れ始めると以下のような症状がみられます。

食欲不振や嘔吐、元気消失し、おしっこが薄く多くなる傾向があります。

さらに進行するとおしっこの量が急激に減ったり、全く排尿が見られなくなったり(乏尿・無尿)した場合は、腎機能が著しく低下している可能性があります。さらに、飲水量が増えているにも関わらず尿が出ない場合、極めて危険な状態であると考えられます。

命の危険を示す重度症状

急性腎不全が進行すると、犬はぐったりとして動かなくなったり、全身のけいれんを起こしたりすることがあります。

重度の脱水(口腔粘膜が乾燥し、皮膚の弾力が失われる)や、口臭がアンモニア様になることもあり、これらの症状が見られたら緊急を要します。直ちに動物病院を受診する必要があります。

無症状でも油断できない理由

中毒症状が出るまでの時間や症状の有無には個体差があります。症状が見られないからといって安全だと判断することは非常に危険です。

早期の診断と治療が命を守る鍵となるため、犬がぶどうを食べたことが分かった時点で、必ず動物病院に連絡し、獣医師の指示を仰ぎましょう。

犬がぶどうを食べた際の危険な摂取量

ぶどうに鼻を近づけている犬

犬がぶどう中毒を引き起こす具体的な摂取量については、いまだ明確な基準がありません。個体差が非常に大きく、少量の摂取でも重篤な症状を起こすことがあります。

実際に報告されている事例から目安となる摂取量を示しますが、これはあくまで目安であり、これ以下なら安全というわけではありません。

体重1kgで20gでも危険な場合も

過去の報告例では、生のぶどうの場合、犬の体重1kgあたり約20g以上摂取すると中毒症状を引き起こす可能性が高まるとされています。

例えば、体重3kgのチワワであれば、巨峰約2粒(40~50g)程度でも十分に危険な量となりえます。ただし、これよりも少ない量でも症状を起こしたケースがあるため、安全域は存在しないと考えるべきです。

レーズンはわずか3g/kgで中毒例あり

レーズンは水分が抜け成分が濃縮されているため、生のぶどうよりさらに少ない量でも中毒を引き起こす危険性があります。

最新の報告例では、体重1kgあたり約3gのレーズンで中毒症状が現れたケースもあります。小型犬にとってはわずか数粒が致命的となる可能性があるため、絶対に摂取を避けなければなりません。

摂取量では予測できない危険性

摂取量が多いほど中毒リスクは高まりますが、必ずしも摂取量と症状の重症度は比例しません。

少量であっても急性腎不全などの重篤な症状に陥る犬もいれば、大量摂取でも軽症で済む犬もいます。体重や摂取量だけで自己判断せず、必ず獣医師に相談することが重要です。

犬がぶどうを食べたときの応急処置

飼い主と一緒に獣医師の診察を受ける子犬

犬がぶどうを食べてしまったことが分かったら、迅速かつ冷静に対応することが何より重要です。飼い主が自己判断で行動すると症状を悪化させる可能性があるため、必ず専門家の指示を仰ぐようにしてください。

すぐに動物病院へ連絡を

ぶどうの摂取が判明したら、すぐにかかりつけの動物病院へ電話をし、獣医師の指示を受けてください。

診察時間外や夜間の場合は、あらかじめ調べておいた夜間救急動物病院や獣医救急相談窓口(#7119)に連絡を取りましょう。摂取から時間が経てば経つほど対応が難しくなるため、躊躇せずすぐに行動に移すことが重要です。

摂取状況と犬の様子を正確に伝える

動物病院へ連絡する際には、「何時頃」「どのくらいの量を」「どんな形(生のぶどう、レーズン、パンなど)で摂取したか」を正確に伝えてください。

また、犬種、体重、年齢、持病や服用中の薬があるかどうか、現在の犬の様子(嘔吐、下痢、元気の有無など)についても具体的に説明します。的確な情報を伝えることが迅速な処置につながります。

自己判断の催吐は絶対NG

インターネット上には「塩やオキシドールで犬に吐かせる方法」などの情報がありますが、非常に危険なため絶対に行わないでください。

無理に吐かせようとすると誤嚥性肺炎を引き起こしたり、食塩中毒(高ナトリウム血症)を起こしたりする可能性があります。吐かせる処置(催吐処置)は必ず動物病院で獣医師の管理下で行う必要があります。

症状がなくても受診が必要

摂取後すぐに症状がなくても、犬の体内で静かに腎臓へのダメージが進行している場合があります。

摂取直後であれば動物病院で催吐処置や活性炭投与、輸液などの治療が可能です。症状が出てからでは対応が遅れてしまうため、症状がなくても必ず動物病院を受診しましょう。

まとめ

飼い主が手に持つぶどうに興味を示している犬

犬にぶどうを与えるのは非常に危険です。少量でも急性腎不全などの深刻な中毒症状を引き起こす可能性があります。レーズンやジュースなどの加工品にも有害成分が残るため、注意が必要です。

摂取量と症状の重症度には必ずしも相関がなく、無症状でも腎臓へのダメージが進行することもあります。万が一、犬がぶどうを口にした場合は、自己判断で吐かせることは絶対に避け、すぐに動物病院に連絡し、適切な処置を受けましょう。

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