いちじくは犬に食べさせてはいけない果物
結論から言うと、犬にいちじくを与えてはいけません。人間にとっては栄養価の高い果物ですが、犬にとっては中毒症状やアレルギー反応を引き起こす可能性のある危険な食べ物です。
少量であったとしても、犬の体質によっては重篤な症状につながる恐れがあるため、興味を示しても決して与えないようにしてください。この記事では、なぜ犬にいちじくが危険なのか、その理由と万が一食べてしまった際の対処法を詳しく解説します。
いちじくに含まれる栄養素と犬への影響
いちじくには犬の健康を害する可能性のある成分が含まれています。人間にとって有益な栄養素が、犬には異なる影響を及ぼすことを理解しておくことが重要です。
フィシン
フィシンは、いちじくに含まれるタンパク質分解酵素の一種です。この成分が犬の口内や消化器の粘膜を刺激し、荒らしてしまうことがあります。その結果、口の中の痛み、よだれ、嘔吐、下痢といった症状を引き起こす原因となります。
また、アレルギー反応を誘発しやすく、皮膚のかゆみや炎症につながることもあります。
ソラレン
ソラレンは、光毒性という性質を持つ物質です。犬がソラレンを摂取した後に紫外線を浴びると、皮膚に炎症やかぶれが起こる「光線過敏症」を発症するリスクがあります。特に、皮膚が薄い部分や毛の少ない部分に症状が出やすいとされています。
カリウム
カリウムは生命維持に不可欠なミネラルですが、過剰に摂取すると体に負担をかけることがあります。
特に、心臓病や腎臓病を患っている犬の場合、体内のカリウムを正常に排出できず、「高カリウム血症」を引き起こす危険性があります。高カリウム血症は、不整脈や四肢の麻痺など、深刻な症状につながるため注意が必要です。
食物繊維
いちじくには水溶性食物繊維が豊富に含まれています。適量であれば便通の改善に役立ちますが、犬がイチジクを多量に食べた場合は過剰摂取になりがちです。
食物繊維の摂りすぎは、かえって犬の消化器に負担をかけ、下痢や便秘といった消化不良の原因となります。
犬がいちじくを食べたときに起こる中毒症状
犬がいちじくを食べると、含まれる有害成分によって様々な中毒症状が引き起こされる可能性があります。症状の出方には個体差がありますが、以下のようなサインが見られた場合は注意が必要です。
主な中毒症状
犬がいちじくを摂取した際に、特に注意すべき中毒症状について解説します。
口や顔周りの炎症・かゆみ
いちじくに含まれるフィシンの刺激により、口の周りや口内が赤く腫れたり、ただれたりすることがあります。犬は強いかゆみや痛みを感じ、しきりに顔を床や家具にこすりつけたり、前足で掻いたりする行動を見せることがあります。
よだれ(流涎)
口の中がフィシンによって刺激されると、その痛みや不快感から大量のよだれが止まらなくなることがあります。普段よりも明らかに多いよだれが続く場合は、中毒症状のサインと考えられます。
嘔吐や下痢
フィシンは消化器の粘膜も刺激します。そのため、胃や腸が炎症を起こし、食べたものを吐き戻す嘔吐や、消化不良による下痢といった症状が見られることがあります。
皮膚の炎症(光線過敏症)
ソラレンを摂取した後に日光に当たることで、皮膚に炎症が起こる可能性があります。特に、耳や鼻周り、お腹など、毛が薄く紫外線が当たりやすい部分が赤くなったり、水ぶくれができたりすることがあります。
症状が現れるまでの時間
中毒症状が現れるまでの時間は、犬の個体差や食べた量、部位によって異なりますが、一般的には食べてから数分後~数時間以内に発症することが多いです。
異変に気づけるよう、もし食べてしまった場合は、その後数時間は犬の様子を注意深く観察してください。
犬がいちじくを食べた際の危険な摂取量
犬にとっていちじくの危険な摂取量に、「ここまでなら安全」という基準はありません。たとえひとかけらであっても、犬の体質や健康状態によっては中毒症状を引き起こす可能性があるため、基本的には「少量でも危険」と認識してください。
いちじくで中毒を起こす量の目安
いちじくの中毒量に関する明確な科学的データは確立されていません。しかし、体が小さい犬ほど、同じ量を食べても体重に占める有害成分の割合が高くなるため、より深刻な影響が出やすいと考えられます。
例えば、チワワやトイプードルのような小型犬がひとかけら食べるのと、柴犬やゴールデンレトリバーのような中型犬・大型犬が同じ量を食べるのとでは、危険性が大きく異なります。
重症化しやすい犬の特徴と注意点
症状の現れ方には大きな個体差があります。アレルギー体質の犬は、フィシンに対してより強い反応を示す傾向があります。
また、子犬やシニア犬、腎臓や心臓に持病のある犬は、健康な成犬に比べて有害な成分をうまく代謝・排出できず、重症化しやすいリスクを抱えています。
部位ごとの危険度の違い
いちじくは、どの部位も犬にとって危険です。それぞれの危険性について解説します。
果肉
甘い香りのする果肉には、フィシンやソラレンが含まれており、犬が食べると中毒症状を引き起こします。生の果肉はもちろん危険です。
皮・葉・茎
いちじくは、果肉よりも皮や葉、茎の部分に有害成分であるフィシンやソラレンがより多く含まれています。庭にいちじくの木が植えられている場合は、犬が落ちている葉や枝を口にしないよう、厳重な管理が必要です。
種
いちじくの種は小さいですが、消化が悪く、アレルギーの原因となる可能性があります。大量に摂取すれば消化器に負担をかけることも考えられます。
ドライフルーツや加工品は生より危険?
乾燥させたドライいちじくは、水分が抜けているため成分が凝縮されており、生の果物よりも少量で多くの有害成分を摂取してしまうことになり、非常に危険です。
また、ジャムやパンなどの加工品も、有害成分に加えて糖分が多く含まれており、犬の健康を害するため与えてはいけません。
犬がいちじくを食べたときの応急処置
万が一、愛犬がいちじくを食べてしまった場合は、飼い主がパニックにならず、落ち着いて行動することが最も重要です。迅速かつ適切な対応が、愛犬の健康を守ることにつながります。
食べてすぐに自宅で行うべき応急処置
まずは自宅でできる応急処置を行いますが、これらはあくまで動物病院へ行く前の初期対応です。自己判断で様子を見ることは避けてください。
口の中に残っているものを取り除く
犬がまだいちじくを口に含んでいる場合は、可能であれば優しく口を開けさせ、残っているものを取り除いてください。ただし、犬が興奮している場合は無理に行わず、安全を最優先してください。
口の周りを拭く・すすぐ
いちじくの成分が皮膚に付着していると、かぶれの原因になります。水で湿らせた清潔な布やガーゼで、口の周りを優しく拭ってあげましょう。犬が嫌がらなければ、口の中を水で軽くすすぐのも効果的です。
無理に吐かせない
自己判断で塩やオキシドールなどを使って無理に吐かせることは、絶対に行わないでください。食道や胃の粘膜を傷つけたり、吐瀉物が気管に入ってしまう誤嚥性肺炎を引き起こしたりするリスクがあり、かえって状態を悪化させる可能性があります。
すぐに動物病院へ行くべき症状
- ぐったりして元気がない
- 呼吸が速い・苦しそう
- 嘔吐や下痢が止まらない
- けいれんを起こしている
いちじくを食べたことがわかった時点で、症状の有無にかかわらず、まずはかかりつけの動物病院に連絡し、指示を仰ぐのが最も安全な対処法です。
特に、ぐったりして元気がない、呼吸が速い・苦しそう、嘔吐や下痢が止まらない、けいれんを起こしているといった症状が見られる場合は、命に関わる可能性もあるため、一刻も早く動物病院を受診してください。
動物病院で必ず伝えるべき情報
動物病院で獣医師が迅速かつ的確な診断を下せるよう、状況を正確に伝える準備をしておきましょう。以下の情報を整理しておくとスムーズです。
いつ食べたか
何時ごろにいちじくを食べたのか、できるだけ正確な時間を伝えてください。
何を食べたか
生の果肉、皮、葉、ドライいちじく、加工品など、どの部分を食べたのかを伝えます。
どのくらいの量を食べたか
「ひとかけら」「半分くらい」など、可能な限り具体的に食べた量を伝えましょう。
現在の犬の様子
嘔吐、下痢、よだれ、かゆみなど、普段と違う様子や症状が出ている場合は、その内容をすべて伝えてください。また、食べたいちじくの残りや、商品パッケージがあれば持参すると診察の助けになります。
まとめ
いちじくは、含まれるフィシンやソラレンといった成分により、犬にアレルギー反応や中毒症状を引き起こす危険な果物です。
生の果肉だけでなく、皮、葉、茎、そして成分が凝縮されたドライいちじくも決して与えてはいけません。ごく少量でも犬の体質によっては重篤な症状につながる恐れがあります。
もし愛犬が誤っていちじくを口にしてしまった場合は、自己判断で様子を見ずに、速やかに動物病院へ連絡し、獣医師の指示に従ってください。
愛犬の健康と安全を守るためには、飼い主が正しい知識を持ち、危険な食べ物を犬の届く範囲に置かないよう普段から注意することが何よりも大切です。