犬が干し柿を食べても大丈夫?
犬にとって中毒を引き起こすような食べ物はいくつかあります。果物の中ではぶどう・レーズンが有名ですね。こういった果物を食べることで急性腎不全を引き起こすことが知られています。
しかし、柿に関してはそういった犬にとっての毒性を含むという報告や、中毒症状を示したという報告はありません。そのため、柿は犬が食べても大丈夫な果物と言えます。
その柿の中から、渋柿を食用にするために干して作られた干し柿も同様です。犬が干し柿を食べても、体に緊急性を与えるような病気や症状を引き起こすことはありません。
干し柿の栄養素と犬へのメリット
β-カロテン
柿を干し柿にしてもβ-カロテンはしっかりと残り、体の中でビタミンAに変換されて活用されます。
β-カロテン自体にも抗酸化作用があり、それだけでも体の酸化と戦う一助になってくれます。併せて、変換されたビタミンAは目の視細胞の構成成分として、または亜鉛やタンパク質(アミノ酸)と協力して皮膚の健康を保つために働いてくれます。
また、妊娠期には胎子の成長のためにビタミンAの要求量が増えますが、フードだけでは補えない場合にこのビタミンAを追加してあげることで、母体とお腹の中の子犬の成長を助けてくれます。
ビタミンAは脂溶性ビタミンのため、体に蓄積されることから過剰摂取には注意が必要ですが、β-カロテンは体に必要とされる量だけビタミンAに変換されます。そのため、干し柿1個を食べた場合でも過剰摂取にはなりにくいと予想されます。
ちなみに、柿の段階では多いビタミンCは、干し柿になるとその成分がほぼなくなってしまいます。
炭水化物
柿は元々多くの糖分・食物繊維を含む果物です。炭水化物とは糖分と食物繊維を合わせたものであり、干し柿に含まれる炭水化物の割合は多いことから、1個当たりのカロリーは比較的高めの102kcal(1個37g換算)です。
ぎゅっと濃縮された甘味を始め、通常の柿の状態よりも、食物繊維の量はぐっと増えます。犬は甘味を好む傾向があることと、干し柿になれば通常よりもさらに強くなる甘味から、「おいしい!」と喜んで食べることの多い味です。
犬に干し柿を食べさせる時の与え方や適量に関して
柿の種葉は取り除く
干し柿の中にある種・上についている葉は必ず取り除いてからあげるようにしましょう。種も葉も、犬にとっては消化することができない部分です。特に種は胃を通過できず長期間留まってしまったり、運よく胃を通過したとしても、犬の体格によっては腸で詰まって開腹手術が必要になることもあります。
もし万が一が心配な場合は、あらかじめ種を抜いて作られた干し柿もあるため、そういったものを購入しましょう。皮に関しては干し柿を作る際にすでにむかれている状態なので、気にする必要はありません。
干し柿は小さく切ってから与える
干し柿は通常の柿のままで食べる場合と比べ、歯ごたえのしっかりとした状態です。犬の食性として、基本的には飲みこめる大きさであれば丸飲みする傾向にあるため、場合によってはのどに詰まったり、お腹の中で消化しきれない場合があります。
あげる時には愛犬の口の大きさに合わせて、包丁で5mm~1cm角程度に切ってからあげてくださいね。
1回にあげる量は愛犬の体格に合わせる
干し柿も含め、柿はカロリーが高めの食品です。例えば、5kgの運動量がそこそこある成犬が必要とする1日のカロリーが374kcalです。干し柿1個で102kcalということは、1日に必要とするカロリーの約36%を占めてしまいます。1日の半分とはいきませんが、1日に必要な摂取カロリーの1/3を摂取することになってしまいますね。
成人女性なら、1食650kcal程度の食事やおやつを食べたのと同じ量です。「そんなに大きくないし…」と思ってあげた果物が、実は体格の小さい犬にとってはかなりのカロリーになることは知っておきましょう。
犬に干し柿を与える際の注意点とは?
干し柿が犬には緊急性のある症状を引き起こさないとは言え、与える時にはいくつか注意が必要です。また、通常の柿とは栄養成分が若干異なってくるため、それも併せて知っておきましょう。
アレルギー反応は起こりうるもの
口にするもの・触れるものすべてのものに、アレルギー反応というものが発生する可能性はあります。そのため、愛犬が柿を食べた時に消化不良ではなく、口元を痒がる、嘔吐・下痢といった消化器症状を引き起こすアレルギー反応が起こる可能性もゼロではありません。
また、シラカバ花粉にアレルギーを持っている場合、そのアレルギー源となるタンパク質が似ていることから、りんごや桃、バナナなどと同時に、柿も交差反応を示すことがわかっています。人では口の中やのどにイガイガとした反応が見られることが多いようですが、犬たちではどこまでそういった反応を示してくれるかは未知数です。
シラカバ花粉感作例における口腔アレルギー症候群を起こす原因食物のクラスタリング:
もしも愛犬がアトピー性皮膚炎や食物アレルギーを持っている場合、不用意に別の食品をあげることは止めておいた方が良いでしょう。特に、現在症状がコントロールできているのであればなおさらです。
アレルギー反応が起こらなくても、食べなれない果物を食べたり、1度に犬の体格に見合わない量を食べてしまうと、消化不良による下痢などを引き起こす可能性は十分あります。与えた後は半日~1日はしっかり様子を見ておきましょう。
強い甘味は偏食の元?
もしも愛犬がおいしいものを求めて食べ物の好き嫌いが強い子なら、干し柿のおいしさが場合によってはそれを助長してしまう可能性もあります。
「おいしいものだけを食べたい」と思うのは犬も同じです。ですが、おやつだけを食べ続けると栄養バランスが乱れるのはもちろん、場合によっては健康に影響を与える可能性もあります。
こういった味の強いおいしいものをあげるなら、基本的にはベースとなるメインのごはんが食べられることを前提として、ほんのちょっとのおやつとして与えてください。甘みの強いおいしい干し柿を食べることでメインのごはんがおろそかになり、おいしいものが出てくるまで待ってしまうような子の場合は、干し柿はあげないほうが良いでしょう。
犬に柿は与えても大丈夫?
これまでお話したように、干し柿でも通常の柿でも、適量をたまにという程度であれば、犬の健康に影響を与えることなく楽しむことができる果物と言えます。
栄養成分でもお話した通り、干し柿と通常の柿の状態での大きな違いは、ビタミンCと食物繊維の量です。
- 強い甘味を楽しみたい
- 手作りの犬用カップケーキなどに混ぜ込みたい
- お家の外でも小さく切ったものを持ち歩いて気軽に楽しみたい
といった時には、ドライフルーツの1つである干し柿を選んだほうが良いでしょう。
反対に、
- ビタミンCの抗酸化作用を少しでも追加したい
- 新鮮なみずみずしさを一緒に味わいたい
- 強すぎる甘味は避けたい
といった時には通常の柿を選んでみてください。
干し柿ではなく通常の柿をあげたいなと思った方は、ぜひ以下の記事も参考にしてみてくださいね。
まとめ
ドッグフード以外の季節の味覚は、なくても生きてはいけますが、せっかくなら愛犬とおいしいものを楽しみたいものですよね。干し柿もその1つで、特徴的な甘味を味わわせてあげたいなと思うこともあるでしょう。
そんな時には与え方に注意して、ほんの少量をとっておきのごほうびとしてあげるようにしてください。もしも干し柿のような甘い味が好きな子であれば、苦手なトレーニングのごほうびに活用してもいいでしょう。
体調の変化に気をつけながら、おいしい味覚を楽しんでみてくださいね。