ロシアントイテリアの特徴
- 犬種名:ロシアントイテリア(ロシアン・トイ/Russkiy Toy)
- 原産国:ロシア
- 分類:愛玩犬グループ(FCIグループ9)
- 体高:20〜28cm
- 体重:1〜3kg前後
- 性格:知的で愛情深く、やや警戒心が強い傾向
- 被毛:スムースヘアード(短毛)/ロングヘアード(長毛)
- 毛色:ブラック&タン、ブラウン&タン、ブルー&タン、レッド、フォーン、セーブル など
- 寿命:12〜15歳
ロシアントイテリアは、チワワに似た小柄な姿が魅力の犬種です。華奢な体つきと高い位置にある立ち耳が特徴で、全体的に洗練された優雅な印象を与えます。
日本ではまだ希少ですが、その愛らしい外見から注目度が高まっています。
優雅な立ち耳と尾
特徴的な立ち耳は比較的大きく、耳の位置が高いため優雅な印象を引き立てます。特に長毛タイプでは、耳に豊かな飾り毛があり、この飾り毛が優美な外見をより際立たせています。
華奢で引き締まった体格
骨格は非常に繊細で華奢ですが、適度に引き締まった筋肉質な体つきが特徴的です。四肢は細長く、軽快で俊敏な動きを見せます。体はコンパクトながら、洗練されたシルエットが美しい犬種です。
チワワとの見た目の違い
ロシアントイテリアはチワワとよく比較されますが、頭部はチワワよりもやや小ぶりで丸みが少なく、マズル(鼻先)は短めで先細りです。瞳もやや小さく、全体的にきりっと引き締まった顔立ちをしています。
ロシアントイテリアの大きさ
ロシアントイテリアは愛玩犬のグループに属する非常に小さな犬種で、体高(地面から背中までの高さ)はおよそ20〜28cm、体重は一般的に3kg以下とされています。中には体重が1kg台という極めて小さな個体も見られます。
成犬になってもこのコンパクトなサイズを維持し、チワワやヨークシャー・テリアと同等か、さらに小さい場合もあるほどです。
子犬の頃は成長速度が速いものの、成犬の体格が完成するまでには個体差があり、超小型犬としての繊細な骨格を持つため、成長期の体調管理には注意が必要です。
ロシアントイテリアの被毛タイプ
ロシアントイテリアの被毛には、大きく分けてスムースヘアードとロングヘアードの2つのタイプがあります。
スムースヘアードは短く密着した滑らかな毛質が特徴で、手触りはなめらかで光沢があります。
ロングヘアードの場合は、胴体部分の被毛は比較的短めで、耳や四肢、尾にしなやかな飾り毛があるのが特徴です。特に耳の飾り毛は豊かで、優雅な外見の象徴ともなっています。
どちらのタイプも被毛の手入れは比較的簡単とされますが、ロングヘアードは飾り毛が絡まりやすいため、日常的なブラッシングが推奨されます。
ロシアントイテリアの毛色の種類
ロシアントイテリアの毛色は非常に多彩で、代表的な毛色としてブラック・アンド・タン(黒に黄褐色の模様)、ブラウン・アンド・タン、ブルー・アンド・タン(青みがかったグレーに黄褐色の模様)などがあります。
また、レッド(赤茶色)、フォーン(淡い黄褐色)、セーブル(毛先が黒く根元が黄褐色)など単色系や微妙なグラデーションを含む混合色も幅広く認められています。
毛色のバリエーションが豊富なため、個体ごとの見た目に個性が生まれ、それがこの犬種の魅力の一つとなっています。
ロシアントイテリアの性格
ロシアントイテリアの性格は、タイプによって少しずつ異なりますが、いずれも知的で飼い主への愛情が深い犬として知られています。
ロングヘアードは穏やかで落ち着いた気質を持つ個体が多く、家族に寄り添うような優しい一面を見せます。一方、スムースヘアードはより活発で明るく、好奇心旺盛な性格の傾向があります。
どちらのタイプも警戒心がやや強く、テリア種特有の芯の強さを備えており、見知らぬ人や物音に反応して吠えることがあります。
ただし、賢く観察力の高い犬でもあるため、飼い主が一貫した態度で接すれば落ち着きのある行動を身につけやすい犬種です。甘やかしすぎず、子犬の頃からの社会化を丁寧に行うことで、信頼関係を軸にした穏やかな性格に育ちます。
ロシアントイテリアは、家庭内での人との絆を大切にし、適度な距離感を保ちながら深い愛情を示すパートナー犬といえるでしょう。
ロシアントイテリアの歴史
ロシアントイテリアは、その名のとおりロシア原産の小型犬で、19世紀後半にイギリスからロシアへ持ち込まれたトイ・マンチェスター・テリアを基礎として誕生しました。
当時、ロシアの貴族社会ではイギリス産の小型テリアが愛玩犬として人気でしたが、20世紀初頭の社会変動によりその数は激減します。
第二次世界大戦後、ロシア国内に残された少数の犬をもとに、小型で上品な家庭犬として改良が進められました。
その過程で、ロングヘアードタイプが誕生し、当初は「モスクワ・ロングヘアード・トイ・テリア」と呼ばれていましたが、のちにスムースヘアードを含む形で犬種名が「ロシアン・トイ(ロシアントイテリア)」として統一されました。
現在はロシア国内を中心にヨーロッパ各国でも人気が高まり、日本ではまだ希少犬種とされています。優雅な外見と愛らしい性格から、近年注目度が上がっている小型犬のひとつです。
ロシアントイテリアの価格相場
ロシアントイテリアは希少犬種のため、子犬の価格相場は30万円〜50万円程度とされています。
価格には個体の毛色や被毛タイプ(ロングヘアードまたはスムースヘアード)、血統や親犬の実績などの要素が大きく影響します。特に希少な毛色やドッグショーで優れた評価を受けた親犬の子犬は価格が高めに設定される傾向があります。
また、ペットショップの店頭ではほとんど見かけないため、一般的に購入経路は専門の犬舎や繁殖者からの直接入手が中心となっています。
入手方法や取引形態によっても価格は異なり、子犬の健康検査やワクチン接種、血統書の有無、販売後のアフターフォローの充実度によって価格差が生じることもあります。
提示された価格の内訳や内容をしっかりと確認し、納得したうえで迎えるようにしましょう。
ロシアントイテリアのブリーダーを探す方法
ロシアントイテリアのような希少な犬種を迎える場合は、繁殖に精通した専門のブリーダーを探すことが一般的です。
国内では数が限られているため、インターネット上のブリーダー紹介サイトや犬種専門の愛好家団体などを活用すると探しやすくなります。特にロシアントイテリアの場合は個体数が少ないため、実績や繁殖経験のある犬舎を選ぶと安心です。
ブリーダーを訪問する際には、子犬だけでなく親犬や兄弟犬の健康状態、飼育環境の清潔さ、社会化状況などを直接確認するとよいでしょう。
また、この犬種に多い遺伝性疾患に対して適切な健康診断や検査を行っているかも重要なチェックポイントです。迎える際には、犬舎の繁殖方針や飼育管理の詳細をよく確認し、信頼できるブリーダーから迎えることが大切です。
タイミングによっては保護団体や動物愛護団体などで譲渡情報が得られる場合もありますので、そうした選択肢も検討しておくとよいでしょう。
ロシアントイテリアの飼い方
ロシアントイテリアは華奢な骨格と繊細な性格を持つため、快適で安全な室内環境の準備と丁寧な健康管理が求められます。
超小型犬であることから、室内で過ごすことが基本であり、日常生活の中で起こりうる怪我や事故への予防対策が重要になります。また、寒さに弱いため、季節に応じた配慮が必要です。
飼育環境づくり
ロシアントイテリアは骨が細く華奢で、フローリングなど滑りやすい床では、膝蓋骨脱臼(パテラ)や骨折のリスクが高まります。
床には滑り止め加工のされたカーペットや、コルクマットなど衝撃吸収性のある素材を使用して、安全に歩行できる環境を整えてあげましょう。
また、高所からの飛び降りによる骨折を防ぐために、ソファやベッドへの昇降用スロープやステップの設置が効果的です。
食事管理
ロシアントイテリアは体が小さく顎も華奢なため、超小型犬専用の小粒で食べやすい高品質なドッグフードが適しています。
特に子犬期は低血糖症を起こしやすいため、1日3~4回に分けて少量ずつ食事を与える工夫が必要です。成犬になった後も適切な食事量と栄養バランスを守り、肥満を防ぐことが長期的な健康維持につながります。
室温管理や防寒対策
ロシアントイテリア、特にスムースヘアードは毛が短く寒さに弱いため、冬場は室内でも暖房器具を使用して適切な室温(およそ22℃前後)を維持しましょう。
また、ベッドには保温性の高い毛布を用意するほか、室内で過ごすときや外出時には服を着せるなどの防寒対策を行い、寒さによる体調不良を予防することが大切です。
ロシアントイテリアのしつけ方
ロシアントイテリアは賢く飼い主の気持ちを敏感に感じ取る犬種ですが、その小ささと愛らしさゆえについ甘やかしてしまいがちです。
特にスムースヘアードは活発で警戒心が強く吠えやすい傾向があるため、吠え癖がつかないように注意が必要です。家に迎え入れた日からしつけを始め、家族全員が一貫した態度で接しましょう。
吠えたり要求したりした際は、一旦その行動を落ち着いて無視し、望ましい行動をした瞬間に褒めて伸ばす「正の強化」を行うと効果的です。
また、小さな体を守るためにも、「待て」や「おいで」などの基本的な指示を早期に習得させて、危険を回避できるようにすると安心です。
ロシアントイテリアの運動量
ロシアントイテリアは非常に小さい犬種であるため、必要な運動量はそれほど多くありません。しかし、健康維持やストレス解消、適度な刺激を与えるために毎日の散歩は欠かせません。
1日15分程度の短い散歩を朝夕2回ほど行うのが理想的です。
テリア種の性質も持ち合わせているため、室内でのおもちゃ遊びなどを通じて、飼い主とのコミュニケーションを積極的に取ることも重要です。
ただし、骨格が華奢で骨折などの怪我をしやすいため、高所からのジャンプや激しい運動は避け、安全を重視した遊び方を心掛けましょう。
ロシアントイテリアのお手入れ
ロシアントイテリアは被毛タイプに応じた定期的なブラッシングが必要です。
スムースヘアードは短毛で手入れが比較的簡単ですが、抜け毛や皮膚の健康維持のために、週に2〜3回ラバーブラシや獣毛ブラシで軽くブラッシングを行いましょう。
一方、ロングヘアードは耳や尾、四肢の飾り毛が絡まりやすいため、毎日スリッカーブラシやコームで丁寧にブラッシングすることが推奨されます。
シャンプーは月に1回程度を目安に行い、皮膚が敏感な個体も多いため、低刺激で保湿効果の高い犬用シャンプーを選ぶとよいでしょう。
また、ロングヘアードの場合は特に耳の中が蒸れやすいため、耳掃除を定期的に行って外耳炎を予防します。歯が小さく歯周病リスクもあるため、毎日または2日に1回の歯磨きを習慣化し、爪切りや足裏のケアも忘れず行ってください。
ロシアントイテリアの寿命
ロシアントイテリアの平均寿命は、一般的に12〜15歳程度とされています。これは超小型犬の中では標準的な範囲ですが、非常に華奢な体型のため、骨折などの怪我や関節疾患が寿命に影響することも少なくありません。
長生きさせるためには、室内の安全環境を整えることに加え、適切な食事管理による肥満予防や、日々の軽い運動による健康維持が重要です。
また、7歳を過ぎた頃から定期的に動物病院で健康診断を受け、病気の早期発見と適切なケアを行うことが、長寿につながる大切なポイントです。
ロシアントイテリアのかかりやすい病気
ロシアントイテリアは非常に小柄で華奢な体を持つため、特有の体格や骨格構造に起因する病気や怪我に注意が必要です。特に、関節や骨のトラブル、心臓疾患などは発症リスクが高いといわれています。
日常生活の中で予防できるものも多いため、飼育環境や生活習慣を整えることが健康維持の鍵となります。
膝蓋骨脱臼(パテラ)
ロシアントイテリアでよく見られるのが、膝のお皿がずれてしまう膝蓋骨脱臼(Patellar Luxation)です。滑りやすい床での生活や、ソファからの飛び降りなどが誘因となりやすく、症状が進むと痛みや歩行困難を引き起こします。
歩くときに後ろ足をスキップするような動きが見られたら、早めに動物病院で診察を受けましょう。日常的に滑りにくい床材を使うことや、過度なジャンプを避けることで予防が可能です。
骨折
骨が細く軽いロシアントイテリアは、抱っこ中の落下や家具のすき間への挟まりなど、些細な衝撃でも骨折につながることがあります。特に前脚の橈尺骨(とうしゃくこつ)は折れやすい部位として知られています。
抱き上げるときは体全体をしっかり支え、床には柔らかいマットを敷いて衝撃を和らげると安心です。また、他の犬との遊びでも体格差に注意し、無理な接触を避けましょう。
僧帽弁閉鎖不全症(心臓病)
小型犬に多い心臓疾患のひとつに、僧帽弁閉鎖不全症(Mitral Valve Disease)があります。心臓の弁がうまく閉じず血液が逆流する病気で、6〜7歳以降のシニア期に発症が増える傾向があります。
初期は症状が分かりづらいものの、進行すると咳が出たり、運動を嫌がるようになることがあります。定期的な聴診や心エコー検査を受け、早期に異常を見つけて治療を開始することが大切です。
小型犬特有の疾患
ロシアントイテリアでは、低血糖症や歯周病、水頭症など小型犬に多い病気にも注意が必要です。
特に子犬期の低血糖は、食事の間隔が空くことで起こるため、1日数回に分けたこまめな食事管理が効果的です。また、歯が小さく歯石がつきやすい傾向があるため、歯磨きを習慣化し、乳歯が残ったままになっていないかも確認しましょう。
体の小さいロシアントイテリアにとって、日々のちょっとしたケアが健康を守る第一歩となります。
まとめ
ロシアントイテリアは、チワワに似た愛らしい容姿と優雅な立ち耳を持つロシア原産の希少な小型犬です。非常に華奢で繊細な骨格を持つため、日常生活では骨折や関節疾患の予防に十分な注意を払う必要があります。
穏やかで優しいロングヘアードと、活発で好奇心旺盛なスムースヘアードがあり、タイプによる性格の傾向を理解したうえでの飼育が求められます。
健康管理や室内環境の整備、子犬期からの丁寧な社会化としつけを徹底できる家庭に適した犬種です。特性をよく理解して迎えることで、生涯を通じて良きパートナーとなってくれるでしょう。



