テチチとはどんな犬?
テチチは現在、残念ながら絶滅しているといわれています。存在していたとされる時代には、写真や映像などの技術が無かったため、今ではその姿を見ることはできません。
テチチの姿は、発見された文献や壁画からそのサイズなどが推測されています。
サイズ
テチチのサイズはかなり小さく、体重は10kg未満の小型犬だったようです。人間に改良された訳ではなく、野生では巣穴の中で生活していたため、元々サイズの小さい犬種でした。
体型
体型はキツネのように細長い胴体、長い脚、尖ったマズル(鼻先)をしていました。頭は丸っこい形をしていたようです。
耳と尾
長めの立ち耳と垂れた尾を持っていました。
毛色
毛色はいくつか種類があり、人間は毛色によってテチチの用途を変えていたといわれています。
- ブラウン
- ブラック
- クリーム
- ブラック&ホワイト
- ブラウン&ホワイト
性格
テチチは家畜として重宝され、子どもの遊び相手として人間と深く関わっていたようです。また、「子犬の頃から吠えない犬」とも言われていました。これらの事から、おとなしく、人懐っこい性格だったことが推測されます。
テチチという犬種の歴史
テチチは9世紀頃(西暦900~1168年)、現在のメキシコで栄えていたトルテック族が捕獲し、家畜にしたとされています。人間に飼われ始めてから絶滅に至るまで、テチチという犬種はどのような歴史をたどったのでしょうか。
テチチは食用にされていた犬種だった
家畜化したテチチは、トルテック族の後に力を持ったアズテック族が主に食用にしていました。特別なごちそうという訳ではなく、かなり頻繁に食されていたようです。
繁殖用の雄犬以外は、去勢や避妊を施され、穀物によって太らされて飼育されていました。
神聖な扱いを受け、生贄にされる
食用の他にも、テチチは宗教的な役割も担っていました。テチチの毛色の中で、ブルーの毛色のものは特に神聖とされ、特別視されていたようです。
レッドの毛色のテチチは、死者を悪霊から守ったり、死者の罪を代わりに請け負ったりするとされており、葬儀や儀式の際に生贄にされていました。
その証拠に古代メキシコ人の墓の中からは、人間の遺体と共に埋葬されたテチチと思われる犬の骨が見つかっています。アズテック族にとって、テチチは生活に欠かせない存在だったといえるでしょう。
絶滅の理由
1519年スペインの探検家や軍が南米へ入ってきました。これにより、アズテック文明は崩壊してしまいます。
この時にスペイン人が、食料として多くのテチチを食べてしまったようです。飼育されていた文明の崩壊、スペイン人による捕食、これらの出来事はテチチの数を激減させてしまいました。
近親交配は遺伝子的に弱い犬が生まれてしまうため、個体数が減ったテチチの純血種交配は無くなっていったと考えられます。これより後に、テチチという犬種が存在したとされる記録は残されていません。
チワワの基礎となる犬がアメリカに渡った
1850年、アメリカ人によってメキシコにあるチワワ州から小型の犬が数匹持ち帰られ、繁殖されました。
この時に持ち帰られた犬は、テチチの血を引く犬種だったのではないかと考えられています。選択交配によりサイズがさらに小型化された犬達、これが現在のチワワといわれているのです。
本当にテチチは絶滅したのか?
現在テチチは絶滅したとされています。しかし、「テチチはまだ南米のどこかで少数ながら存在している可能性がある」とする専門家もいて、真実は明らかとなっていません。
南米のどこか奥深くに、野生としてテチチが生き残っているかもしれませんね。
テチチ犬がチワワの原種といわれている理由
現代の日本で、ペットとして人気の高い犬種であるチワワ。サイズも小さく、丸い頭と大きな瞳が可愛いですよね。そのチワワの原種ではないかと有力視されているのが「テチチ」です。
なぜテチチはチワワの原種と言われているのでしょうか?
チワワに見た目が似ている
テチチは前述したとおり、写真や映像が残されていません。しかし、壁画や文献から推測されるテチチの姿は、チワワにとても似ているのです。
テチチのサイズは、チワワより少し大きかったようですが、小型犬であることが共通しています。他にも下記の共通点が挙げられています。
- 立ち耳
- 垂れ尾
- キツネのような顔と体型
- 毛色
見た目が似ているということは、遺伝子も似ているのではないかと想像するのが自然といえるでしょう。
チワワの名前はテチチがいたメキシコの州名が由来
チワワは、メキシコにある南米最大の州チワワが原産地とされ、州の名前がそのまま犬種名となっています。メキシコは、テチチが存在したという記録が多く残されている場所です。
同じ場所に存在していた犬種には、なにか繋がりがあるのではないかと推測されます。
チワワの遺伝情報が古代南米の犬種に由来している
チワワの起源はどこかという疑問には主に、メキシコ説、中国説、ヨーロッパ説を唱える学者達がいました。最も有力とされていたのがメキシコ説でしたが、確固たる証拠が見つからず、長い間結論は出ていませんでした。
しかし2013年、重大な発表がスウェーデンの進化遺伝学の研究者により行われました。
発表の内容は、「チワワのDNAタイプが、コロンブス以前(ヨーロッパに植民地化される前)のメキシコの犬のDNAタイプと一致した」というものでした。
この発表で、チワワはメキシコ産の犬種であることが証明されたのです。中国説やヨーロッパ説には、メキシコ説のように納得ができる根拠は発表されていません。
チワワがメキシコ産の犬種だという事実は、テチチとの繋がりを関連づけるのに重要な材料となるのではないでしょうか。
チワワはテチチが進化した犬種なのか?
これまで紹介した事柄を踏まえると、「チワワはテチチが進化したんだ!」と思う人もいるかもしれません。しかし、「チワワ=テチチ」の進化した姿という訳では無いのです。
チワワは、飼育しやすいよう様々な犬種を掛け合わせて人間に改良されています。
例えば、現代のチワワにはロングコートが存在しますが、これはパピヨンやヨークシャーテリアなどとスムースのチワワを交配した結果、誕生したものです。
このように、多くの犬種の血が混ざり合って誕生したのが、チワワということになります。
掛け合わされた数多くの犬種のうちの一種がテチチなのです。テチチの血をチワワが受け継いでいる、テチチはチワワの基礎となる犬種だったという表現が適しているでしょう。
まとめ
テチチという犬種が、チワワの基礎となった可能性がかなり高いということが、お分かりいただけたでしょうか?
現代ではペットとして世界中で愛されているチワワ。そのチワワの原種テチチが、古代メキシコでは食用や生贄にされていたことには、ショックを受けた方も多いと思います。
しかし、テチチが人々の生活に欠かせない存在であったからこそ、他の犬種と交配され、その血が受け継がれたともいえるでしょう。
残念ながら生きているテチチを見ることはできませんが、身近な犬種であるチワワにその遺伝子が残っていると考えると、不思議な気持ちになりますね。
まだまだ謎も多い犬テチチ。これから研究が進み、チワワとの関係性もさらに明らかになることを楽しみにしていましょう。