ホファヴァルトってどんな犬?
- 英語表記: Hovawart(ホファヴァルト)
- 原産国: ドイツ
- 分類: 大型犬
- FCIグループ: 2G(使役犬)
- 体高: オス 63~70cm、メス 58~65cm
- 体重: オス 約30~40kg、メス 約25~35kg
- 寿命: 10歳~14歳
- 性格: 忠実、知的、勇敢、穏やか、警戒心が強い
- 被毛タイプ: ダブルコート
- 毛色: ブラック&ゴールド、ブラック、ブロンド
- 運動量: 非常に多い
ホファヴァルトは、ドイツ原産の大型犬で、その名前はドイツ語で「農場(Hof)」と「番人(Wart)」を意味します。その名の通り、古くから農場や家畜を外敵から守る番犬として活躍してきました。
体重25~40kgほどのがっしりとしたたくましい体格と、豊かな被毛が特徴的で、一見するとゴールデン・レトリーバーやレオンベルガーにも似た印象を与えます。
性格は非常に賢く、飼い主家族に対しては深い愛情と忠誠心を示します。落ち着きがあり、状況判断能力にも優れているため、頼れる家庭の守護神となるでしょう。番犬としての本能はありますが、基本的には穏やかで優しい性格をしており、家族以外の人や犬にもフレンドリーです。
その知性と身体能力の高さから、単なるペットとしてだけでなく、災害救助犬や警察犬など、様々な分野で活躍する能力を秘めた犬種です。
ホファヴァルトの歴史
ホファヴァルトは、中世のドイツで誕生した非常に古い歴史を持つ犬種です。当時の文献にも、農場や城を守る番犬としてその存在が記されており、その能力は高く評価されていました。
しかし、時代が移り変わる中で他の犬種の人気に押され、20世紀初頭には絶滅の危機に瀕してしまいます。この状況を憂いたドイツの愛好家たちが、古い文献に残された記録をもとに、ホファヴァルトの再現プロジェクトを開始しました。
このプロジェクトでは、ジャーマン・シェパード・ドッグやニューファンドランド、レオンベルガーなど、様々な犬種の血を導入しながら、理想とするホファヴァルトの姿を追求したと言われています。
熱心なブリーダーたちの努力の結果、ホファヴァルトは力強く、賢明で、忠実な犬種として復活を遂げ、1937年にドイツのケネルクラブで正式に犬種として公認されました。
ホファヴァルトの気をつけたい病気やケガ
ホファヴァルトは比較的丈夫な犬種とされていますが、大型犬であるがゆえに注意したい病気や、犬種としてかかりやすいとされる遺伝性の疾患も存在します。愛犬と長く健康に暮らすために、飼い主が知っておくべき代表的な病気やケガについて解説します。
股関節形成不全
股関節形成不全は、大型犬によく見られる遺伝性の関節疾患です。これは、太ももの骨の先端が骨盤の受け皿部分に正常にはまらないことで、関節に炎症や変形が起こる病気です。
症状としては、歩くときに腰を左右に振るような歩き方(モンローウォーク)をしたり、運動を嫌がる、段差の上り下りをためらうといった様子が見られます。
遺伝的な要因が大きいため、親犬がこの病気を持っていないかを確認することが重要ですが、成長期の過度な運動や肥満も発症リスクを高めるため、適切な体重管理と食事、適度な運動が予防につながります。
胃拡張・捻転症候群(胃捻転)
胃拡張・捻転症候群、通称「胃捻転」は、胃にガスが溜まって大きく膨らみ、さらにねじれてしまう緊急性の高い病気です。ホファヴァルトのように胸が深い体型の犬種で特に注意が必要とされています。
食後すぐの激しい運動などが引き金になることが多く、発症すると吐こうとしても吐けない、大量のよだれを垂らす、お腹がパンパンに張る、ぐったりして動けないといった症状が現れます。処置が遅れると命に関わるため、異変を感じたらすぐに動物病院を受診する必要があります。
予防策として、食事は1回量を減らして複数回に分ける、食後しばらくは安静にさせるといった工夫が有効です。
甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症は、体内の代謝を調整する甲状腺ホルモンの分泌が減少することで、様々な症状を引き起こす内分泌系の病気です。
症状の現れ方はゆっくりで、なんとなく元気がない、すぐに疲れる、寒がる、体重が増える(肥満)、皮膚が乾燥してフケが増える、脱毛するといった多岐にわたり、中年齢以降の犬に発症しやすい傾向があります。
血液検査で診断が可能で、不足している甲状帳ホルモンを薬で補う治療を生涯続ける必要があります。定期的な健康診断で早期発見に努めることが大切です。
ホファヴァルトの飼い方と飼育のポイント
ホファヴァルトは非常に賢く身体能力も高いため、その魅力を最大限に引き出し、良き家庭犬として共に暮らすためには、犬種特性に合わせた飼い方が重要になります。
ここでは、毎日の運動やしつけ、食事、お手入れなど、飼育における大切なポイントを項目ごとに詳しく解説します。
毎日の運動と知的な刺激で心身を満たす
ホファヴァルトは非常に活発で多くの運動量を必要とする犬種です。毎日の散歩は1日2回、それぞれ1時間以上を目安に、ただ歩くだけでなく、早歩きや軽いジョギングを取り入れると良いでしょう。
さらに、週末などにはドッグランで思い切り走らせたり、ハイキングや水遊びに連れて行ったりすることも心身の健康維持につながります。
また、ホファヴァルトは非常に賢いため、身体的な運動だけでなく、知的な刺激も不可欠です。ノーズワークや「持ってきて」などの頭を使う遊び、基本的な服従訓練などを日常的に取り入れることで、彼らの満足度を高め、問題行動の予防にもなります。
一貫性のあるリーダーシップが求められるしつけ
ホファヴァルトは飼い主に対して非常に忠実で、しつけや訓練の飲み込みも早い賢い犬種です。しかし、その賢さゆえに飼い主が頼りないと判断すると、自分がリーダーになろうとする頑固な一面も見せます。
そのため、子犬の頃から一貫した態度で、明確なリーダーシップを示すことが重要です。褒めて伸ばすポジティブなトレーニング方法が効果的ですが、いけないことは「ダメ」とはっきりと伝え、ルールを徹底させる必要があります。
また、番犬としての警戒心もあるため、様々な人や犬、物音に慣れさせる社会化トレーニングを子犬期に十分に行うことが、将来の良好な関係を築く鍵となります。
安全で広々とした飼育環境を整える
ホファヴァルトは大型犬であり、多くの運動量を必要とすることから、アパートやマンションでの飼育は難しく、できれば庭のある戸建て住宅での飼育が理想的です。番犬としての本能から、自分の縄張りを認識できる環境は彼らに安心感を与えます。
室内で飼育する場合でも、彼らがゆったりと過ごせる専用のスペース(クレートやサークル)を用意してあげましょう。
また、力が強く、ジャンプ力もあるため、庭のフェンスは高くて頑丈なものにする必要があります。誤飲の危険があるものは片付け、電気コードを保護するなど、室内での安全対策も怠らないようにしてください。
年齢と活動量に合わせたフード選び
ホファヴァルトの健康な体を作るためには、栄養バランスの取れた食事が欠かせません。主食には、大型犬の骨格や関節の成長に必要な栄養素がバランスよく配合されている高品質な総合栄養食のドッグフードを選びましょう。
与える量は、パッケージに記載されている給与量を目安にしますが、個々の運動量や体重の増減を見ながら調整することが大切です。
特に成長期の子犬には、大型犬の子犬用に設計されたフードを与え、適切な栄養を摂取させることが、健全な骨格形成のために非常に重要です。
定期的なブラッシングで美しい被毛を維持
ホファヴァルトは、寒さから身を守るための柔らかい下毛(アンダーコート)と、体を保護する硬い上毛(オーバーコート)からなるダブルコートの被毛を持っています。
日常のお手入れとしては、週に2〜3回程度のブラッシングで毛のもつれを防ぎ、皮膚の健康を保ちます。その上で、特に春と秋の換毛期には大量の毛が抜けるため、毎日ブラッシングを行うのが理想的です。
シャンプーは月に1回程度が目安ですが、汚れがひどい場合はその都度行いましょう。基本的にトリミングが必要な犬種ではありませんが、足裏の毛が伸びすぎると滑ってケガの原因になるため、定期的にカットしてあげてください。
ホファヴァルトの寿命
ホファヴァルトの平均寿命は10歳から12歳です。これは大型犬の中では平均的な部類に入ります。
もちろん、個体差や生活環境、食事内容、適切な運動などによって寿命は変わってきます。遺伝性疾患のリスクを減らすためにも、信頼できるブリーダーから迎えることが大切です。
日頃から健康状態をよく観察し、定期的な健康診断を受けることで、病気の早期発見・早期治療につなげ、愛犬との健やかな時間を長く保つことができるでしょう。
ホファヴァルトの価格相場【2025年最新版】
ホファヴァルトの子犬の価格相場は15万円~50万円以上と幅があるようです。
なお、ホファヴァルトは日本国内では非常に希少な犬種であり、専門のブリーダーもごくわずか。そもそも販売されていケースも多いようです。
国内で販売されていない場合、海外のブリーダーから輸入することになりますが、その場合は子犬の価格に加えて輸送費や検疫などの諸経費がかかるため、さらに高額になります。
また、価格は血統や性別、毛色やその時の需要などによっても変動します。
ホファヴァルトの飼育費用
ホファヴァルトを家族として迎えるには、子犬の価格だけでなく、その生涯にわたって相応の費用がかかります。特に大型犬であるため、食費や医療費などが中・小型犬に比べて高額になることを理解しておく必要があります。
ここでは、迎える時にかかる初期費用と、年間でかかる費用の目安について解説します。
費用の種類 | 金額の目安 |
---|---|
初期費用(子犬代を除く) | 約10万円~20万円 |
年間費用 | 約30万円~50万円 |
迎える際にかかる初期費用
子犬の生体価格とは別に、飼育を始めるために必要なグッズを揃える費用がかかります。具体的には、ケージやサークル、ベッド、食器、首輪やリード、トイレトレーとシーツ、おもちゃ、ドッグフードなどが含まれます。
ホファヴァルトは大型犬なので、ケージやベッドなども大きなサイズが必要になり、その分費用も高くなります。これらの準備には、おおよそ10万円から20万円程度を見積もっておくと良いでしょう。
生涯にわたってかかる費用
毎日の食事代、ワクチン接種やフィラリア予防などの医療費、ペット保険料、シャンプーやブラシなどの消耗品代、ドッグランの利用料やしつけ教室の費用などが年間を通じてかかります。
特にホファヴァルトは体が大きい分、フードの消費量も多く、食費だけで年間10万円以上かかることも珍しくありません。また、万が一の大きな病気やケガに備えて、ペット保険への加入も検討すると安心です。
これらの費用を合計すると、年間で30万円から50万円程度が目安となります。ただし、高齢期になって病気やケガの治療費が増えたり、介護に関わる費用が発生すると、年間50万円以上かかる可能性も考えておきましょう。
ホファヴァルトをお迎えする方法
日本ではまだ珍しい犬種であるホファヴァルトは、どこで出会うことができるのでしょうか。これからホファヴァルトを家族に迎えたいと考えている方のために、現在考えられる主な3つの方法について、それぞれの特徴と現状を解説します。
ブリーダーから迎える
ホファヴァルトを日本国内で迎える場合、最も現実的な方法は専門のブリーダーを探すことです。しかし、前述の通り国内のブリーダーは極めて少ないため、常に子犬が生まれるのを待っている状況になる可能性があります。
ブリーダーから迎えるメリットは、親犬の性格や健康状態を確認でき、犬種の特性について詳しい話を聞けることです。ホファヴァルトの飼育経験が豊富なブリーダーは、飼い始めてからの相談にも乗ってくれる心強い存在となります。
海外からの輸入を視野に入れる場合は、信頼できる仲介業者やブリーダーを慎重に探す必要があります。
ペットショップで探す
ホファヴァルトがペットショップの店頭に並ぶことは、ほとんどないと言えるでしょう。日本での知名度や飼育頭数が非常に少ないため、ペットショップで偶然出会える可能性は極めて低いです。
もしホファヴァルトを迎えたいと強く希望する場合は、ペットショップに頼るのではなく、ブリーダーに直接コンタクトを取る方法が確実です。
里親になる
非常に希少な犬種であるため、ホファヴァルトが保護犬として里親を募集されるケースは稀です。
犬種にこだわらず、保護犬の里親になることを検討している場合は、地域の動物愛護センターや保護団体のウェブサイトを定期的に確認することをお勧めしますが、ホファヴァルトに出会える可能性は極めて低いと認識しておく必要があります。
まとめ
ホファヴァルトは、賢く、忠誠心にあふれ、家族を守る頼もしいパートナーとなりうる素晴らしい犬種です。そのたくましい容姿と深い愛情は、飼い主にとって何物にも代えがたい喜びとなるでしょう。
しかし、その能力を最大限に引き出し、共に幸せに暮らすためには、豊富な運動量と知的な刺激、そして飼い主の揺るぎないリーダーシップが不可欠です。また、大型犬ならではの飼育スペースや生涯かかる費用も十分に考慮する必要があります。
ホファヴァルトの特性を深く理解し、その生涯に責任を持つ覚悟ができた時、きっと最高の家族の一員としてあなたを迎えてくれるはずです。