プーリーとは?
プーリーは、そのモップやドレッドヘアのように見えるユニークな被毛で知られるハンガリー原産の犬種です。
見た目のインパクトからSNSなどで「歩くモップ」として話題になることも多く、一度見たら忘れられない姿をしています。この特徴的な被毛は「コーテッド・コート」と呼ばれ、自然にできる縄状の束です。
元々は牧畜犬として家畜を誘導していた歴史を持ち、その賢さと活発さも魅力の一つです。日本では見かける機会が少ない珍しい犬種ですが、その独特の容姿と愛らしい性格で、知る人ぞ知る人気を集めています。
プーリーの特徴
大きさ
- オス:【体高】40cm~44cm【体重】13kg~15kg
- メス:【体高】37cm~41cm【体重】10kg~13kg
プーリーは中型犬に分類されます。ジャパンケネルクラブ(JKC)の定めるスタンダードでは、理想的な体高はオスが40cmから44cm、メスが37cmから41cmとされています。
体重はオスが13kgから15kg、メスが10kgから13kgが標準です。筋肉質でがっしりとした体格をしており、見た目以上に力強い犬種です。
毛色
- ブラック
- ホワイト
- シルバー
- フォーン
プーリーの毛色は、主にブラックがよく知られていますが、その他にもいくつかの色が認められています。ホワイト、シルバー、そしてフォーン(淡い黄褐色)などが存在します。
子犬の頃の色から成長につれて変化することもあります。どの毛色でも、縄状の被毛が作り出す独特の陰影がプーリーの魅力を一層引き立てます。
プーリーの性格
プーリーは活発で遊び好きな性質を持ちながら、家族に対しては非常に深い愛情を示す犬種です。もともと牧畜犬として人と共に働いてきた歴史から、知的で状況判断能力にも優れています。
好奇心旺盛
プーリーは非常に賢く、新しいことや周りの環境に強い興味を示します。そのため、トレーニングやしつけを楽しみながら覚えることができます。
飼い主に忠実
家族と認めた相手には非常に忠実で、深い絆を築こうとします。常に飼い主のそばにいたがり、愛情深いコンパニオンとなります。
警戒心を持つ一面も
見知らぬ人や他の犬に対しては、少し警戒心を見せることがあります。これは牧畜犬として家畜を守ってきた名残であり、優れた番犬としての素質も持っていることを示しています。
プーリーの価格相場
プーリーは日本国内でのブリーダーが非常に少なく、希少犬種であるため、価格は高額になる傾向があります。一般的な価格相場は50万円から80万円程度ですが、血統や月齢、ブリーダーによってはそれを上回ることもあります。
子犬を迎える際は、価格だけでなく、ブリーダーの飼育環境や犬の健康状態をしっかりと確認することが重要です。
プーリーの飼い方のポイント
しつけ
プーリーは非常に賢く、飼い主に従順なため、しつけは比較的しやすい犬種です。しかし、知能が高い分、悪いことも覚えてしまいます。
子犬の頃から社会性を身につけさせ、何が良いことで何が悪いことなのかを根気強く教えることが大切です。特に、見知らぬ人への警戒心を過度な吠えなどに発展させないよう、様々な人や環境に慣れさせる社会化トレーニングを積極的に行いましょう。
運動量
元牧畜犬であるプーリーは、豊富な運動量を必要とします。毎日の散歩は個体差に合わせて、1回につき30分から1時間程度を2回行うのが理想です。
単に歩くだけでなく、ドッグランなどで自由に走り回らせたり、ボール遊びなどのゲームを取り入れたりして、心身ともに満足させてあげることが重要です。運動不足はストレスの原因となり、問題行動につながる可能性もあります。
飼育環境の整え方
プーリーは活発な犬種なので、自由に動き回れるスペースを確保できる家庭が望ましいです。室内飼いが基本ですが、運動欲求を満たすために庭がある環境だとより良いでしょう。
また、特徴的な被毛は熱がこもりやすいため、夏場の温度管理には特に注意が必要です。エアコンを適切に使用し、犬が常に快適に過ごせる室温を保つようにしてください。
被毛のケア
プーリーの最も特徴的な縄状の被毛は、特別なケアを必要とします。この被毛はブラシでとかすのではなく、根元から絡まないように手で丁寧に一本一本の束に分けてあげる作業が欠かせません。
これを怠ると、被毛がフェルト状に固まり、皮膚炎の原因となります。シャンプーも可能ですが、被毛の内部まで完全に乾かすのに非常に時間がかかるため、専門のトリミングサロンに相談するのが安心です。
食事の与え方
食事は、プーリーの年齢や活動量に合わせた総合栄養食を与えるのが基本です。活発な犬種のため、良質なたんぱく質を豊富に含むフードを選ぶと良いでしょう。
一度にたくさんの量を与えると肥満の原因になるため、1日の給与量を守り、数回に分けて与えるのがおすすめです。常に新鮮な水が飲めるようにしておくことも忘れないでください。
プーリーの平均寿命
プーリーの平均寿命は12歳から16歳程度とされており、中型犬としては比較的長寿な犬種です。日々の健康管理や適切な飼育環境を整えることで、より長く健やかな時間を共に過ごすことが期待できます。
プーリーのかかりやすい病気
股関節形成不全
股関節形成不全は、股関節が正常に発達しない遺伝性の病気で、中型犬や大型犬に見られます。歩き方に異常が見られたり、運動を嫌がるようになったりした場合は注意が必要です。体重管理を徹底し、関節に負担をかけない生活を心がけることが予防につながります。
進行性網膜萎縮症(PRA)
進行性網膜萎縮症は、眼の網膜が徐々に機能しなくなり、最終的には失明に至る遺伝性の病気です。初期症状として夜盲症(暗い場所で見えにくくなる)が現れます。現在のところ有効な治療法はなく、定期的な眼科検診が早期発見のために重要です。
皮膚疾患
縄状の被毛同士が密になると通気性が低下しやすく、湿気がこもってしまうため、細菌が繁殖して皮膚炎を起こすことがあります。
シャンプー後は、被毛の根元まで完全に乾かすことが非常に重要です。また、定期的に被毛をチェックし、皮膚に赤みや湿疹がないか確認する習慣をつけましょう。
プーリーの歴史
プーリーの歴史は非常に古く、その起源は1000年以上前のアジアに遡ります。
9世紀頃、遊牧民族であったマジャール人が現在のハンガリーに移住する際に連れてきた牧畜犬が、プーリーの直接の祖先であると考えられています。
彼らはハンガリーの広大な平原で、大型の護畜犬であるコモンドールと共に、羊の群れを管理し、オオカミなどの外敵から守るという重要な役割を担っていました。
そのドレッドヘアのような縄状の被毛は、単なる飾りではありません。厳しい気候や外敵の牙から身を守るための天然の鎧として機能し、牧畜犬としての過酷な仕事をこなす上で不可欠なものでした。
賢く機敏なプーリーは、群れから離れた羊を巧みに誘導し、時には羊の背中に飛び乗って群れを正しい方向へ導いたとも言われています。
17世紀以降、他国の牧羊犬との交雑が進み、一時は純粋なプーリーの数が激減し、絶滅の危機に瀕しました。しかし、20世紀初頭にハンガリーの愛好家たちが復元プログラムに着手し、その犬種標準(スタンダード)が定められました。
その後、2度の世界大戦で再びその数は減少しましたが、ブリーダーたちの懸命な努力により血統は守られ、今日では家庭犬としても世界中で愛されています。
まとめ
プーリーは、モップのような個性的な外見と、賢く愛情深い性格を併せ持つ魅力的な犬種です。そのユニークな被毛は特別なケアを必要としますが、家族に対しては深い愛情で応えてくれる最高のパートナーとなり得ます。
プーリーを家族として迎えることを検討する際は、その特徴や飼い方を深く理解し、生涯にわたって責任を持つ覚悟が必要です。適切な環境とケアを提供することで、プーリーとの生活はかけがえのないものになるでしょう。