チワワが震える理由と対処方法
チワワは、その小さな体と繊細な性格から、他の犬種に比べて震えやすい傾向があります。
まずは、日常生活の中でよく見られる、病気以外の原因による震えと、その対処法について見ていきましょう。
寒さによる生理的な震え
チワワの震えで最も多い原因の一つが「寒さ」です。チワワはメキシコ原産の犬種ですが、被毛が「シングルコート」といって下毛がなく、体温を保持するのが苦手です。
体が小さいため熱が逃げやすいこともあり、寒さに弱い犬種と言えます。犬は寒いと感じると、筋肉を小刻みに収縮させて熱を生み出そうとします。この生理現象が、私たちの目には震えとして映るのです。
寒さへの対処法
室温の管理が重要です。チワワが快適に過ごせる室温は25℃前後とされていますので、特に冬場や冷房が効いた夏場は、エアコンやヒーターで適切な温度を保ちましょう。
暖かいベッドや毛布を用意してあげることも有効です。また、冬場の散歩時には、体温低下を防ぐために服を着せてあげることをお勧めします。
恐怖や不安、警戒心による震え
チワワは非常に賢く繊細なため、恐怖や不安、警戒心といった精神的なストレスから震えることがよくあります。
これは、ストレスを感じた際に自律神経のうち「交感神経」が優位になり、体が戦闘や逃走に備えて緊張状態になるために起こる反応です。
雷や花火、工事の音に震える場合
聴覚が優れた犬にとって、雷鳴や花火、工事現場の騒音といった予測不能な大きな音は、強い恐怖の対象となります。このような場合、飼い主さんが慌てず、冷静でいることが何よりも大切です。
優しく声をかけながら体を撫でてあげたり、お気に入りのおもちゃで気を紛らわせたりして、安心できる状況を作ってあげましょう。カーテンを閉めて外の刺激を遮断したり、テレビや音楽をつけたりするのも効果的です。
散歩中に人や他の犬を怖がって震える場合
散歩中に知らない人や他の犬、車などとすれ違う際に震えるのは、恐怖心や警戒心の現れです。
無理に慣れさせようとせず、まずは愛犬が安心できる距離を保ちましょう。相手とすれ違う際に、おやつを与えて気を逸らすことで、「怖いこと=嬉しいこと」というポジティブな関連付けをしていくのも良いトレーニングになります。
子犬の頃からの「社会化」といって、様々な刺激に少しずつ慣れさせていく経験が、将来の過度な恐怖心を予防します。
興奮や期待による震え
震えは、ネガティブな感情だけで起こるわけではありません。「嬉しい」「楽しみ」といったポジティブな感情が高ぶった時にも、興奮のあまり震えることがあります。
飼い主さんの帰宅時や、散歩に行く直前、ごはんやおやつを待っている時などに見られるのがこのケースです。これは生理的な反応であり、特に心配する必要はありません。
もし興奮が激しい場合は、「おすわり」や「まて」といった指示で一度気持ちを落ち着かせる練習をすると良いでしょう。
病気やケガが原因でチワワが震える場合の対処法
震えの中には、病気やケガが背景に隠れている危険なものもあります。もし愛犬の震えが「いつもと違う」と感じたら、これから説明するような病気の可能性を念頭に置き、慎重に様子を観察してください。
低血糖症による震え
低血糖症とは、血液中の糖分の濃度(血糖値)が異常に低下してしまう状態を指します。脳はエネルギー源としてブドウ糖を大量に必要とするため、血糖値が下がると脳機能に支障をきたし、震えやけいれん、元気消失などの神経症状が現れます。
特に、まだ体を維持する機能が未熟な子犬や、体の小さいチワワは、食事の間隔が空きすぎたり、体力を消耗したりすることで低血糖に陥りやすい傾向があるため注意が必要です。
ぐったりして意識が朦朧としているような場合は、応急処置として少量のはちみつや砂糖水を歯茎に塗りつけ、すぐに動物病院を受診してください。これはあくまで病院へ向かうまでの緊急措置であり、根本的な治療ではありません。
痛みや不快感による震え
犬は言葉で痛みを訴えることができません。そのため、体のどこかに痛みを感じているサインとして、震えを見せることがあります。例えば、椎間板ヘルニアのような背骨の痛み、関節炎、腹痛、歯の痛み、あるいはケガ(骨折や捻挫など)が原因かもしれません。
震えとともに、キャンと鳴く、特定の場所を触られるのを嫌がる、食欲がない、歩き方がおかしいといった症状が見られる場合は、痛みが原因である可能性が高いです。無理に体を動かさず、安静な状態を保って速やかに獣医師の診察を受けましょう。
神経系の疾患による震え
脳や脊髄といった神経系に異常がある場合、症状の一つとして震えが現れることがあります。
てんかん
てんかんは、脳の神経細胞の異常な電気的興奮によって、発作を繰り返す脳の病気です。発作の症状は様々ですが、全身または体の一部がけいれしたり、意識を失ったりすることがあります。発作の前兆として、そわそわしたり、震えたりすることもあります。
水頭症
水頭症は、脳の中の「脳室」と呼ばれる空間に、脳脊髄液という液体が過剰に溜まって脳を圧迫してしまう病気です。チワワは先天的にこの病気のリスクが比較的高い犬種として知られています。震えやけいれんのほか、元気消失、学習能力の低下、視覚障害などの症状が見られることがあります。
これらの神経疾患が疑われる場合は、自己判断は禁物です。必ず動物病院で精密な検査と診断を受ける必要があります。もしけいれん発作が起きた際は、慌てずに愛犬の周りにある家具などをどけて安全を確保し、可能であればスマートフォンなどで動画を撮影しておくと、後の診断の大きな助けになります。
中毒による震え
私たち人間には無害でも、犬にとっては毒となる食べ物や植物、化学物質は数多く存在します。チョコレートや玉ねぎ、キシリトール、殺虫剤、観葉植物などを誤って口にしてしまうと、中毒症状として震えやけいれん、嘔吐、よだれなどが現れることがあります。
もし誤食が疑われる場合は、何を、いつ、どのくらい食べたかを可能な限り確認し、すぐに動物病院に連絡して指示を仰いでください。その際、原因となった物の残りやパッケージを持参すると、よりスムーズな診断と治療につながります。
すぐに動物病院に連れていく必要がある危険な震え
多くの原因があるチワワの震えですが、中には一刻を争う危険なケースも存在します。
以下のようなサインが見られた場合は、様子を見ずに、ただちに動物病院へ連れて行ってください。
震えと同時に他の異常な症状が見られる
震えに加えて、ぐったりして元気がない、食欲が全くない、嘔吐や下痢を繰り返している、呼吸が明らかに速くて苦しそう、歯茎の色が白っぽい、意識がはっきりしない、といった症状が一つでも見られる場合は、深刻な病気の可能性があります。
体を硬直させるような「けいれん」を伴う
小刻みな震えではなく、体を硬直させたり、手足を自転車をこぐようにバタつかせたりする「けいれん発作」を起こしている場合は、緊急事態です。
意識がなく、呼びかけに反応しないこともあります。
明らかな痛みを伴っている
抱き上げようとしたり、体に触れたりした際に「キャン!」と悲鳴のような鳴き声をあげる、特定の足を引きずるなど、強い痛みが疑われる場合は、骨折や重度のヘルニアなどが考えられます。
震えが長時間止まらない、または悪化している
体を温めたり、安心させたりといった対処をしても、震えが何時間も続いている場合や、時間の経過とともに震え方がどんどん激しくなっている場合も、獣医師の診察が必要です。
まとめ
愛犬のチワワの震えには、寒さや恐怖といった日常的なものから、命に関わる重大な病気まで、様々な原因が隠されています。飼い主さんにとって最も大切なのは、日頃から愛犬の様子をよく観察し、「いつもとどこか違う」という小さな変化に気づいてあげることです。
震えの原因を正しく見極め、今回ご紹介した対処法を試してみてください。そして、少しでも「おかしいな」と感じたり、危険な震えのサインが見られたりした場合は、決して自己判断で様子を見続けず、かかりつけの動物病院に相談することをためらわないでください。
あなたの的確な判断と迅速な行動が、愛するチワワの健康と命を守ることに繋がります。