チワワは多頭飼いに向いている?
まず結論として、チワワは比較的多頭飼いに適している犬種です。
ただし、性格やその犬の経験によって向き不向きが分かれるため慎重な判断が必要です。
もともと群れで生活していた犬の習性に加え、チワワ特有の飼い主への愛情深さや、他の犬とコミュニケーションを取ろうとする性質が理由として挙げられます。
しかし、それはあくまで適切な準備と知識があってこその話です。安易に始めてしまうと、犬たちにとっても飼い主にとっても不幸な結果になりかねません。
多頭飼いならではの喜びを最大限に享受するために、メリット・デメリットから具体的な注意点まで、しっかりと理解を深めていきましょう。
チワワを多頭飼いするメリット・デメリット
新しい家族を迎えることは、大きな喜びと共に責任も伴います。まずは、チワワの多頭飼いによって得られる素晴らしい点と、事前に覚悟しておくべき現実的な課題の両方を冷静に見ていきましょう。
多頭飼いのメリット
複数のチワワと暮らす生活は、一頭飼いでは得られない特別な魅力に満ちています。
犬同士の社会性が身につく
犬は本来、群れで行動し、その中で様々なルールを学ぶ生き物です。多頭飼いをすることで、犬同士の挨拶の仕方や力加減、遊びの誘い方といった「犬社会の作法」を日々学ぶことができます。これは、ドッグランや散歩中に出会う他の犬とのコミュニケーション能力向上にも繋がり、犬自身のストレス軽減にも役立ちます。
留守番時の寂しさや不安の軽減
飼い主さんが仕事などで家を空けている間、犬は孤独を感じやすいものです。多頭飼いの場合、信頼できる仲間がそばにいることで、分離不安(飼い主と離れることに極度のストレスを感じる状態)の緩和が期待できます。
お互いの存在が心の支えとなり、落ち着いて留守番ができるようになるケースは少なくありません。
なお、相性や生活環境によっては逆にストレス要因になる場合もあるため、導入前に専門家へ相談しましょう
運動不足の解消につながる
チワワは小型犬ですが、活発で遊び好きな一面も持っています。犬同士でじゃれ合ったり、追いかけっこをしたりすることは、室内での良い運動になります。飼い主が常に遊び相手になるのが難しい場合でも、犬たちが自発的に体を動かす機会が増え、心身の健康維持に貢献します。
多頭飼いならではのチワワの「可愛い一面」がみられる
じゃれ合って遊ぶ姿、寄り添って眠る姿など、犬同士の愛らしい交流を間近で見られるのは、多頭飼いの飼い主だけが味わえる特権です。また、それぞれの犬の個性や、犬同士の関係性の中から生まれる新しい一面を発見することは、飼い主にとって大きな喜びと癒やしをもたらしてくれるでしょう。
多頭飼いのデメリット
一方で、命を預かる数が増えることによる負担も現実的に存在します。憧れだけで判断せず、デメリットもしっかりと受け止めることが重要です。
経済的な負担の増加
当然ながら、頭数が増えれば飼育費用も増えます。毎日のフード代やトイレシートなどの消耗品費はもちろん、年に一度のワクチン接種やフィラリア予防薬などの医療費も頭数分必要です。特に、予期せぬ病気や怪我をした際の治療費は高額になる可能性があり、2匹同時に医療費がかかるリスクも想定しておく必要があります。
飼育スペースの確保が必要
チワワは小型犬ですが、それぞれの犬が安心して過ごせるパーソナルスペースは不可欠です。食事や寝る場所、トイレなどをそれぞれに用意することを考えると、ある程度の広さが必要になります。特に、後述するケージやクレートを犬の数だけ設置できるか、事前に確認しておくことが大切です。
お世話にかかる時間と労力の増加
食事の準備、トイレの掃除、ブラッシングや爪切りといった日々のお手入れ、そして散歩も基本的には頭数分、時間と労力がかかります。一匹ずつに愛情を注ぎ、それぞれの健康状態をきめ細かくチェックするための時間を確保できるか、ご自身のライフスタイルと照らし合わせて考える必要があります。
犬同士の相性の問題
すべての犬がすぐに仲良くなれるわけではありません。性格や年齢、性別の組み合わせによっては、お互いにストレスを感じたり、喧嘩が絶えなかったりするケースもあります。最悪の場合、完全に生活空間を分けなければならない可能性もゼロではなく、多頭飼いを始める上で最も慎重になるべき点と言えるでしょう。
チワワを多頭飼いする際の注意点
ここからは、実際に多頭飼いを成功させるための具体的なポイントを解説します。特に、繊細で警戒心が強い一面を持つチワワだからこそ、丁寧な配慮が求められます。
仲良く多頭飼いするためのポイント
新しい犬を迎える際は、焦らず、段階を踏んで関係を築いていくことが何よりも大切です。
先住犬を最優先に考える
多頭飼いを成功させる最大の秘訣は、「先住犬ファースト」を徹底することです。食事を与える、おやつをあげる、名前を呼ぶ、撫でるなど、何事も先住犬から行うようにしましょう。これは、先住犬のプライドを守り、「自分の立場は脅かされていない」という安心感を与えるための重要なルールです。飼い主が新しい犬ばかりを可愛がると、先住犬は嫉妬から問題行動を起こすことがあります。
お迎え初日は慎重に対面させる
新しい犬を家に迎えて、いきなり自由にさせるのは絶対に避けるべきです。新しい犬は健康チェック後、数日〜1週間はケージ越しに慣らし、段階的に対面させるようにしましょう。
最初は新しい犬をケージやクレートに入れた状態で、先住犬に匂いを嗅がせるなどして存在に慣れさせましょう。対面させる場所は、お互いがテリトリー意識を持たない玄関やリビングの中央などが理想的です。短時間の対面から始め、徐々に時間を延ばしていくのが安全な方法です。
それぞれに一人の時間と空間を作る
仲が良いからといって、常に一緒にいさせる必要はありません。犬にも一匹で静かに過ごしたい時があります。
それぞれが安心して休める専用のケージやベッドを用意し、時には飼い主と一対一で遊んだり、散歩に行ったりする時間を作ることで、個々の犬の満足度を高め、良好な関係を維持することができます。
オス・メスの相性はある?パターンごとに解説
一般的に相性が良いとされる組み合わせはありますが、最も重要なのは個々の性格です。あくまで傾向として参考にしてください。
先住犬がオス・新しい犬がオスの場合
去勢手術済みであれば、比較的穏やかな関係を築きやすい組み合わせです。ただし、お互いに縄張り意識や序列意識が強い場合、特に思春期(生後6ヶ月~1歳頃)に順位付けのための小競り合いが起こることがあります。飼い主が毅然とした態度で序列を明確にすることが重要です。
先住犬がオス・新しい犬がメスの場合
一般的に最もトラブルが少なく、理想的な組み合わせと言われることが多いパターンです。オスがメスに対して寛容な態度を示すことが多く、自然と受け入れやすい傾向にあります。ただし、双方の避妊・去勢手術は、望まない妊娠を避けるためにも計画的に行うべきです。
先住犬がメス・新しい犬がオスの場合
この組み合わせも比較的良好な関係を築きやすいです。メスが母性本能から年下の子犬の面倒を見たり、オスがメスのリーダーシップを受け入れたりすることが多いようです。先住犬のメスが、穏やかで面倒見の良い性格であれば成功しやすいでしょう。
先住犬がメス・新しい犬がメスの場合
最も注意が必要とされる組み合わせです。メス同士は一度関係がこじれると、執拗な喧嘩に発展しやすいと言われています。お互いの縄張り意識が強く、飼い主の愛情を巡ってライバル関係になりやすいため、特に慎重な導入が求められます。もちろん、非常に仲良くなるケースもたくさんあります。
チワワ同士がケンカした場合の対処法
どんなに仲が良くても、些細なことがきっかけで喧嘩に発展することはあり得ます。その際の対処法を知っておくことも大切です。
喧嘩の仲裁は冷静に
犬が喧嘩を始めた際、飼い主が大声で怒鳴ったり、素手で割って入ろうとしたりするのは危険です。興奮した犬に噛まれてしまう恐れがあります。まずは、手を叩いて大きな音を出したり、クッションなどを間に投げ入れたりして犬の注意をそらしましょう。一旦引き離したら、お互いが落ち着くまで別々の部屋やケージでクールダウンさせることが重要です。
喧嘩の原因を取り除く
喧嘩が起きた状況をよく観察し、原因を特定しましょう。おもちゃの取り合い、おやつの独占、飼い主の膝の上の奪い合いなど、原因は様々です。原因が分かれば、おもちゃは別々に与える、食事は離れた場所でさせるなど、喧嘩の火種を未然に防ぐ対策を講じることができます。
深刻な場合は専門家へ相談
喧嘩が頻繁に起こり、流血するほど激しい場合は、当事者だけで解決しようとせず、速やかにドッグトレーナーや獣医師といった専門家に相談してください。行動診療学を専門とする獣医師であれば、犬の心理面から問題行動の原因を探り、適切な治療やトレーニングプランを提案してくれます。
チワワの多頭飼いの環境作り
犬たちが快適かつ安全に暮らすためには、物理的な環境作りが非常に重要です。特にテリトリーとパーソナルスペースの確保は、ストレスを軽減し、無用なトラブルを避けるための鍵となります。
それぞれに専用のテリトリーを用意する
食事や水を飲む場所、トイレ、ベッドは、必ず犬の数だけ用意し、それぞれが邪魔されずに使えるように配置しましょう。特に食事は、お互いの食器を気にすることで争いの原因になりやすいため、少し離れた場所で与えるか、ケージの中で与えるのがおすすめです。これにより、犬は「自分のものは誰にも奪われない」と学習し、安心して生活することができます。
ケージやクレートの活用方法
多頭飼いにおいて、ケージやクレートは非常に有効なツールです。これは犬を閉じ込めるための「罰の部屋」ではなく、外部の刺激から遮断され、誰にも邪魔されずに安心して休める「自分だけの部屋(安全地帯)」として機能します。
これを犬に教えることを「クレートトレーニング」と呼びます。それぞれの犬に専用のケージを用意し、寝る時や留守番の時、飼い主が目を離す時などに活用することで、犬は心身ともにリラックスでき、トラブルの予防にも繋がります。
ケージやクレートを用意する際は、体長の1.5倍以上の奥行き・横幅を確保できる商品を購入するようにしましょう。
チワワの多頭飼い失敗談
憧れの多頭飼いですが、残念ながらうまくいかないケースも存在します。ここでは、よくある失敗のパターンをいくつかご紹介します。同じ轍を踏まないよう、教訓としてください。
相性の見極めを誤ったケース
先住犬が非常に穏やかで大人しい性格だったため、飼い主が「どんな子でも受け入れてくれるだろう」と考え、元気で活発な子犬を迎えました。
しかし、子犬の絶え間ない遊びの要求に先住犬は疲弊し、常に逃げ回るように。結果として先住犬は強いストレスから食欲不振や下痢などの体調不良を起こしてしまい、最終的に生活空間を完全に分離せざるを得なくなりました。
犬の性格の相性は、人間が思う以上に繊細です。
飼い主の愛情が偏ってしまったケース
小さくて可愛い新しい子犬にばかり飼い主の関心が向いてしまい、これまで一身に愛情を受けてきた先住犬が疎外感を覚えるケースです。
その結果、先住犬は飼い主の気を引こうとして、わざとトイレを失敗したり、物を破壊したり、過剰に吠えたりといった問題行動を起こすようになりました。
これは「アテンション行動」と呼ばれるもので、先住犬からのSOSサインです。
経済的な計画が甘かったケース
「小型犬だから大丈夫だろう」と、食費や消耗品程度の出費増しか考えていなかった例です。
ある時、先住犬が持病の心臓病を悪化させ、同時に新しい犬が誤飲で緊急手術が必要になるという事態が発生。
高額な医療費が短期間に重なり、経済的に極めて厳しい状況に陥ってしまいました。ペット保険への加入や、万が一のための貯蓄計画の重要性を物語るケースです。
まとめ
チワワの多頭飼いは、犬同士が寄り添い、遊び、成長していく姿を見ることができる、何物にも代えがたい素晴らしい経験です。犬たちの社会性が育まれ、留守番の寂しさが和らぐなど、多くのメリットがあります。
しかしその一方で、経済的、時間的な負担が増え、何よりも犬同士の相性という不確定な要素が伴います。成功の鍵は、勢いや憧れだけで判断しないこと。そして、どんな時も「先住犬の気持ちを最優先する」という覚悟を持つことです。
新しい家族を迎える前にもう一度、ご自身の生活環境、経済状況、そして何よりも先住犬の性格を冷静に見つめ直してみてください。