犬のパンティングとは
犬のパンティングとは、口を開けてハァハァといつもより速く呼吸することを言います。健康な犬がパンティングを行う主な目的は体温調節です。
ハァハァと呼吸することで、舌や口などの中の水分を蒸発させて、気化熱を生み出し、体から熱を逃がして体温を下げています。
パンティングで体温を下げる理由
人間の場合、体温が上昇すると全身の汗腺から汗を出し、その水分が蒸発する際に気化熱が発生するので、それを利用する事で体温を下げています。
しかし、犬は人間のようなさらっとした汗を出す汗腺が足裏の肉球など体の一部にしかないため、人間のように汗で体温を調整する事が出来ません。
また、犬は全身が被毛で覆われているため人間より熱が体表から逃げにくいと考えられます。そのため、パンティングによって体温を下げる必要があるのです。
危険なパンティングの見分け方
健康な犬の呼吸は1分間に15~20回(小型犬の方が多い)です。散歩や運動で息があがってパンティングしても、しばらくすれば収まるものは正常な反応です。
しかし、運動後や暑いわけでもないのにハァハァと呼吸が速い状態は時に注意が必要です。以下のような状態が見られたら、異常なパンティングかもしれません。
- パンティングが激しく、息苦しそう
- 運動していないのにハァハァしている
- ハァハァの音に雑音が混ざる
(ゼーゼー、ヒューヒュー、ガーガーなど) - 時間が経ってもパンティングが治まらない
何らかの病気や強いストレスが原因でパンティングをしている可能性もあるので、「何か変だな」と思ったらすぐにかかりつけの獣医師に相談してみてください。
パンティングが止まらない理由
犬は体温を調整する目的でハァハァとパンティングすることが多いです。ですが、体調の変化や心理的な要因、薬による影響などの様々な理由でパンティングをすることがあります。その原因をしっかりと見分けてあげましょう。
ストレスを感じている
犬が「心配・恐怖・不安」でストレスを感じている場合、人間と同じようにドキドキと興奮して呼吸が速くなります。中でも、「パニック状態」になるほどの過度のストレスは、様々な異常行動をも引き起こすことがあります。
- 主なストレスの症状
- 震える
よだれを垂らす
耳が後ろに垂れる
頻繁に口周りをなめる
小さくかがむ
そわそわと落ち着かない
尻尾を股の間に隠す
食事を拒否する
飼い主の声やいつもは従うコマンドに反応しない
戸惑ったように、または狂ったように鳴き叫ぶ
失禁をする
ストレスの原因となる人や犬、物音など原因がはっきり分かっている場合は、間に飼い主さんが入って安心させたり、慌てずいつも通りの姿を見せて冷静に対応しましょう。
入院などの環境変化が原因であれば、身の回りに愛犬が普段使っているベッドやおもちゃ、飼い主さんの匂いのする物を置いてあげるのがおすすめです。
女性 30代
うちの子は大きな音が苦手で、雷や花火が鳴るとあからさまに緊張して震えます。その時も「ハァハァ」していることがあるので、あれも恐怖やストレスからのパンティングなのでしょうね。
「短頭犬種」または「肥満体型」である
「鼻ぺちゃ犬」とも呼ばれる短頭犬種では、特徴的な呼吸器官の形状を持っていることから、軽い運動後やちょっとした暑さを感じただけでもパンティングをし、さらに雑音のようなものが混ざる場合があります。
- 主な短頭犬種
- ブルドッグ
フレンチブルドッグ
パグ
ボストンテリア
シーズー
キャバリアキングチャールズスパニエル
狆(ちん) etc
このような短頭犬種達は、参考文献:短頭種気道症候群と呼ばれる呼吸器の異常を抱えていることが多く、鼻腔が狭い、口や喉の長さも短い、気道がふさがれやすいなどといった特徴のためイビキをかきやすい犬種です。
いびきやパンティングがあまりに激しい場合は、呼吸がかなりしづらくなっている可能性もあるので、早めに動物病院で診てもらう事をおすすめします。状態によっては手術をする必要があることもあります。
また、肥満犬は首周りに脂肪がつくことで気管を圧迫して余計に呼吸がしにくくなってしまうことも多いので、適正体重を保つことを心がけましょう。
高体温になっている(熱中症など)
熱中症や感染症による発熱などによって体温が上昇しすぎた時にも、パンティングをすることでできる限り熱を蒸散させようとします。
元気がなくその場でうずくまっている、よだれが多い、体を触ると熱く感じる、嘔吐や下痢をするなど、複数の症状が重なっていることも多いため注意しましょう。
夏以外でも熱中症に注意!
特に夏場などの熱中症が起きやすい時期は注意が必要で、愛犬がパンティングしていたら部屋の換気をして風を通したり、エアコン等で室内温度を下げましょう。
また、実は意外に多い熱中症シーズンは「春」です。5月ごろのお出かけしやすい時期に愛犬と屋外に出かけて、暑いからとハァハァとパンティングしても熱の蒸散が間に合わず、体温が上がりすぎてしまうことがよくあります。
犬は楽しいあまり夢中になって動いてしまうこともありますし、小型犬は地面から近い場所にいて地面からの熱を受けやすいので、飼い主さんがほどよくコントロールして、外では定期的に日陰に避難し、こまめに水を飲ませるなどの対処をしましょう。
体調不良のサイン
犬が痛みや気持ち悪さを伴うケガや病気を抱えている場合、体が興奮・緊張状態になってパンティングを起こすことがあります。
暑くないのにハァハァと息が荒い時には、行動や顔つき、パンティングの仕方に違いがないかを確認し、動物病院で体のチェックをしてもらいましょう。
女性 40代
うちの子は真夏日でクーラーの部屋でもパンティングが酷く、病院へ連れて行って3日後に亡くなってしまいました。クッシング症候群があり、また肺に水が溜まっていたため、応急で利尿剤を飲みましたが、1日だけ楽になっていたようでした。ただのパンティングだと思わず「おかしいかな?」と思ったら、直ぐに病院へ連れて行ってあげてください。思わぬ病気が進行していることもあります。
ステロイドなど薬物の副作用
抗炎症薬や免疫を抑える薬として使われるステロイドには、食欲やのどの渇きが増す、肝臓が大きくなるといった副作用がよく見られます。
いつもより多い食事や飲水によって胃や膀胱が膨らんだり、大きくなった肝臓の影響などで胸が圧迫されると、息苦しさを感じて、いつもとは違うパンティングが起こることがあります。これは特に長期間投薬している場合に起こります。
女性 40代
我が家の愛犬は免疫介在性溶血性貧血で、ステロイド投与による副作用によりパンティングをし、呼吸数が1分間に100回以上あります。
異常なパンティングになる症状と病気
異常な呼吸の原因として考えられる犬の異常には、以下のようなものがあります。
息苦しい、呼吸困難に陥っている
- 僧帽弁閉鎖不全症などによる心臓の異常
- 肺炎や気管虚脱、短頭種気道症候群などの呼吸器(空気の通り道)の異常
心肺機能を低下させる病気や、空気の通り道が塞がっている・狭いといったトラブルを体に抱えていると、息苦しさを感じてゆっくり休んでいる時でもハァハァと荒い息をすることがあります。
こういった病気では、体が少しでも酸素を取り込もうと激しくあえぐような呼吸をしたり、それでも酸素が足りないと舌が青紫色になるチアノーゼという症状が現れることになります。
女性 40代
うちの愛犬は「心臓疾患」を持っているので、呼吸の数は増えていると思います。呼吸の仕方もパンティングのような呼吸で、酷い息づかいになると「ハァ、ガー、ハァ、ガーッ」と息を吸う時に雑音が混じってきます。パンティングをしている時が一番舌の状態を見やすいので、その時に確認して貧血ではなさそうかやチアノーゼが出ていないかも見ています。
貧血を引き起こしている
- 免疫介在性溶血性貧血などの免疫の病気
- マダニが媒介するバベシア症などの感染症
- 玉ネギの誤食などによる中毒症状
- 体内で起きた腫瘍や内臓の破裂
このような病気や事故が原因で赤血球の破壊や出血が起こると、体は貧血状態になり、酸素が体にうまく行き渡らなくなるため、ハァハァと息が荒くなったり、元気がなくなることがあります。貧血が重度になると、愛犬の唇の粘膜が白っぽくなります。
まとめ
犬にとってパンティングは、体温調節をするための行動で非常に重要なものです。しかし、気温や室温が暑すぎるわけでもないのに、愛犬がハァハァと息苦しそうに呼吸をしている場合は、もしかしたら病気かもしれないという事を頭に置いておきましょう。
愛犬の息遣いをよく観察して、原因を探ってください。そして、愛犬の呼吸の仕方に異常を感じたらすばやく動物病院を受診し、適切な治療を受けましょう。
毎日散歩や遊びが楽しめるよう、愛犬の健康に対してしっかりとした観察眼を持って接していきたいですね。