犬の下痢とは
もっともよく見られる腸疾患の症状です。通常は急性ですが、慢性になることもあります。急性の下痢は軽度のものから、命にかかわる重篤な状態になるものもあります。
また、犬の下痢と嘔吐が同時にあると、重篤な症状になることが多いです。犬の便は通常便、軟便、下痢便(泥状便・水様便)に分かれます。
通常便は、固体であること、適度な硬さで、始末する時紙越しにつまんでも形が崩れないもので、始末した後地面に残っていない状態のものです。
軟便は、固体から泥を少し固めたような状態の便です。始末しても一部が地面に残ってしまう程度の柔らかさのものを指します。
犬の下痢便(泥状便・水様便)とはドロドロの泥状から液体状のものを指します。時にゼリー状のもの(腸粘膜)が混ざることもあります。
始末するには水で洗い流す必要があります。
犬が下痢をする考えられる原因
- 食べ過ぎ
- 複数回目の便
- お腹が冷えた
- 食べなれないものを食べた
- 胃腸の不調
- 細菌やウイルスに感染した
- 傷んだものを食べた
- 消化管に腫瘍ができた
- 寄生虫症
- 非ステロイド性抗炎症剤
- ストレス
原因としてはほぼ人間と同じです。
犬の下痢の特徴と原因
- 水様性のもの:急速に腸を通過
- ゼリー状のもので覆われる:大腸炎の可能性
- 油性、油っぽい:脂肪が消化吸収されていない、吸収不良
- 泡を含む:腸内にガスを発酵させる細菌が多い
- タール色、黒色:食道、胃、小腸からの出血の可能性
- 血餅、真っ赤な血液:結腸、直腸、肛門からの出血の可能性
- 粘土様でキラキラ光る:消化吸収が不十分、膵臓疾患の可能性
- 黄色がかった緑:急速に腸を通過
- 少量の便を頻繁に排泄:結腸への刺激
- 大量の便を1日3~4回排泄:小腸の消化吸収不良の可能性
- 正常な臭い:急速な腸通過のため、吸収不良
- 不快臭:細菌によって発酵している
- 嘔吐:胃腸炎の可能性
- 体重減少:吸収不良
- 体重減少はなく、食欲もある:大腸疾患の可能性
様子見で大丈夫な犬の下痢
食べ過ぎや複数回目の便が下痢である、食べなれないものを食べた翌日の便が下痢、痛んだものを食べての下痢など、犬が下痢だけで嘔吐しておらず飼い主が原因を分かっていれば、問題はありません。
犬が下痢をしたときの対処法
犬が嘔吐していないで下痢だけをしている時は、水分がどんどん奪われてしまいますので新鮮な水がいつでも飲める状態にしてください。ただし水をがぶがぶ飲むとかえって下痢がひどくなることもありますので、少量頻回飲めるようにすることをお勧めします。
しかし餌は24時間抜くか、量を減らして胃腸を休ませることが必要です。犬が食べ物を欲しがっても、下痢をしていれば与えすぎは禁物です。翌日の便が調子いい、もしくは出ない状態であればいつもの餌の量の半分を与えます。
この時に、整腸剤(ビオフェルミンなど)やプレーンヨーグルトを少量混ぜて与えてもいいでしょう。(ヨーグルトは乳糖不耐性の場合はかえって下痢をひどくしてしまいます。初めてあげるときには注意が必要です。)
それでまた様子を見て、下痢をしなければ通常に戻して大丈夫です。軽度の下痢であれば、胃腸を休ませてやれば、大体は良くなります。しかし、続く下痢もあります(慢性の下痢)。
胃腸を24時間休めても続くようであれば、病院に連れて行ってみてください。急性の下痢が慢性の下痢の原因であることもあります。
病院へ連れていく必要のある犬の下痢
急性出血性胃腸炎の場合、出血を伴う嘔吐と下痢を起こし、命にかかわることもある重症疾患です。
獣医は、中毒、拾い食い、異物の飲みこみではないかを確認しますので、犬の状態を把握しておきましょう。
抗生物質と整腸剤
犬が下痢や嘔吐をした場合、病院で抗生物質と整腸剤を処方されることがあります。この時に気を付けてほしいのが、整腸剤(ビオフェルミン)が「ビオフェルミンS」なのか「ビオフェルミンR」なのかということです。
抗生物質は細菌を殺すための薬です。一方ビオフェルミンは整腸剤なため、善玉菌と言われている腸内細菌が効率よく取れるようになっているものです。
抗生物質は悪玉菌を殺し、善玉菌を生かしておく、ということはありません。
善玉菌であろうが、悪玉菌であろうが、細菌であることには変わりないので、すべて殺してしまいます。そうなると、せっかく飲んでいる整腸剤も無駄になってしまいます。
そのため、抗生物質に殺されないように調整された整腸剤「ビオフェルミンR」というものがあります。
これは、抗生物質と同時に処方されるときに使われている整腸剤です。ビオフェルミンRは抗生物質に殺されないように加工されていますので、同時に飲んでも問題ありません。
病院で抗生物質と整腸剤が処方された時に、確認してみてくださいね。また、人間の場合も同じように処方されます。ちなみに市販されているのは「ビオフェルミンS」ですので、抗生物質と一緒に飲むことはできません。
ですが、ビオフェルミンRは病院でしか処方されないため、手軽に購入できるビオフェルミンSを日頃の健康管理用に与えてみても良いかもしれません。
薬を飲ませるときに苦労することも多いのですが、お薬を飲ませるためのチーズ味のサプリメントなどもありますし、チーズにくるんだりバターを塗ったりと、食べ物と認識するようにして与えてくださいね。
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犬の嘔吐とは
犬の胃が受け付けない食べ物や、異物を食べて時間が経ってから吐くことを指します。食道を通過して胃に入った食べ物が、筋肉の収縮によって力強く押し上げられます。吐き気を伴い、胃の内容物を口から吐き出します。
嘔吐に似ていますが、食べてすぐに吐くのは嘔吐と言わず、吐出と言います。吐出は食道内の食べ物を無意識に口から排出するので、吐き気はありません。
犬が嘔吐する原因
犬は吐きやすい生き物で、さまざまな要因で嘔吐します。
様子見で大丈夫な犬の嘔吐
基本的に下痢と同時に起きない、一過性の嘔吐で、犬に元気があれば食事を抜いて様子を見るようにしましょう。
特に問題のない嘔吐は、仔犬のための吐き戻しと、空腹です。犬は空腹の場合、胃液を吐きますので、すぐわかります。黄色っぽい泡混じりの液体です。
また、胃液を吐き続けると食道や喉が傷つけられて、出血することがあります。悪化する恐れがありますので、病院に行ってみてください。
また、車酔いでも嘔吐します。犬を連れて出かける時は、乗せる前に食事を食べさせないようにしましょう。食べ物が胃の中にあると余計に嘔吐しやすくなります。
犬が嘔吐したときの対処法
犬が元気な場合は、そのまま様子見しますが、数時間水や餌は与えないようにしましょう。
病院へ連れていく必要のある嘔吐
ウイルス感染症で「パルボウイルス感染症」という病気があります。この感染症は激しい嘔吐と下痢が特徴で悪化すれば命にかかわります。
この場合の下痢は血混じりの、トマトケチャップのような下痢をします。その場合は悠長に犬の様子を見ることなく、緊急に病院へ行きましょう。
また、水を飲んで5分以内に吐く場合も、緊急で連れて行きましょう。この場合異物がどこかに詰まっている可能性があります。発見が遅ければ詰まった箇所が壊死してしまい、緊急で異物摘出の手術を行っても亡くなる場合があります。
また、3~4日継続して嘔吐する場合は、なるべく早く病院に連れて行きましょう。単に胃が刺激されての嘔吐であればいいのですが、命にかかわるような閉塞の場合もあります。
犬が嘔吐したものも確認しましょう。異物が出てきた場合、まだ体内に残っている可能性も考えられますので、その場合は吐いた物も病院に持参しましょう。
終わりに
犬の下痢、嘔吐と一口にいっても、軽症なものから命にかかわる重篤なものまであります。
下痢や嘔吐が続くならば、元気や食欲があっても早めに受診しましょう。元気や食欲がない場合には、様子見は厳禁です。すぐ動物病院に連れていき検査・治療を受けましょう。
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犬の病気大辞典!知っておきたい基礎知識
ユーザーのコメント
30代 女性 べーちゃん
症状別に記載されているので参考になりました。そして、食べてすぐに吐くのは嘔吐と言わず、吐出ということも知りました。
今後愛犬との生活で気をつけていきたいと思います。
20代 女性 ゆー
パルボウイルスは犬のワクチン予防接種に含まれているので、成犬はそれほど問題ないですが子犬は要注意です。また、ペットショップ、ブリーダーから貰った子犬の中には、元気だけどずっと軟便だということがあります。
それにはトリコモナスやジアルジアといった原虫疾患を隠れて持っている可能性がありますので、子犬は健康診断と併せて糞便検査は必ず動物病院で診て貰った方が良いと思います。
20代 女性 なつみ
下痢の場合も、ごはんが急に変わった時にも起こりうることなので、愛犬に合うフードを見極めないといけませんね!
50代以上 男性 メグ
何も思い当たることがないので(せいぜい拾い食い!?)今は未だ様子見ですが、本当に心配です。
殆ど何も食べていないし、食欲もないのでウンチも余り出ませんが、大人しくずうううと寝ています。
で、今日抗生剤(サワシリン)が有ったのでカプセルから粉末を少し出してパンと一緒に与えました。
明日は日曜日なので、早く治って欲しい!!
神様、宜しくお願いします。
30代 女性 xoxo
こんなに真っ赤な液状の便を見たのが初めてだったため、すぐさま病院へ連れて行ったのですが、細菌性のものだったようでどこかでうつされてしまったようでした。ドッグカフェへ行くことが多かったため、たぶんそこで出会った子犬かなと思っています。下痢をしていたので。
真っ赤な血便ですが、じつは赤いものよりも血が黒くなってしまっている黒い血便の方が重症だと教えてもらいました。血が黒くなってしまっているのは、大腸よりもっと手前の内臓で出血をしているからだそう。
動物病院で注射を3種打って、処方された薬を飲んで3日ほどで便の調子は良くなりました。
40代 女性 こたママ
50代以上 男性 匿名
病院にも行って、血液検査、うんち検査をしましたが、原因は不明でした。
薬はプレドニゾロン5mg、バクトラミン配合錠(1/4)、ビオイムバスターを飲ませていましたが、一時的に下痢は止まるが、また下痢になります。
今では、うんちの状態を見ながら2~3日おきに飲ませています。
抗生剤なので体への負担を気にしつつ、かと言って薬で治るでもなく、体重は2キロ近く落ちるし、なすすべがなく、途方にくれています。
他の原因として、食物アレルギー、心因性も考えられます。
食欲はあるものの、アルブミンの数値も下がり年内も危ぶまれる状態です。
室内犬で、週に3日5時間程度留守番をさせています。室内は居間(18畳)を自由に動ける様にしています。
いいアドバイスが有りましたらよろしくお願いします。
10代 女性 10歳の犬オタク
軽いものもあれば重症なものもあると知りました。
嘔吐は少し異常があるため病院に連れて行くことになりました。
このページがとても参考になりました。
ありがとうございます!
30代 女性 匿名
女性 エル