鼻ぺちゃ犬とは
皆さんは「鼻ペちゃ犬」という言葉をご存知でしょうか。名前の通り、鼻がぺちゃっと潰れているような外見が愛らしい犬種のことを鼻ペちゃ犬と言うことがあります。
短頭種とも言われているため、こちらで呼ばれることも多いでしょう。そんな愛らしい鼻ペちゃ犬ですが、実は鼻の頭部分が短いことによって、様々な病気を引き起こしやすいと言われています。特に呼吸器系の病気や気候の変化には注意が必要です。
今回はこの鼻ペちゃ犬が患いやすい「短頭種気道症候群」を始めとした様々な注意すべき病気をご紹介しますが、まずは鼻ペちゃ犬にはどのような犬種が当てはまるのか、鼻ペちゃ犬の代表犬種を見ていきましょう。どの子も愛嬌たっぷりで可愛らしいですよ!
フレンチブルドッグ
鼻ペちゃ犬と聞いて、まず浮かんだ犬種がフレンチブルドッグ、という方も多いでしょう。フレンチブルドッグは日本国内でもとても人気の高い鼻ペちゃ犬です。
ぺちゃっとした鼻はもちろん、大きな耳が特徴的で可愛らしいと評判です。また可愛らしくもユニークな表情や行動を多く見せてくれるところも、フレンチブルドッグ好きにとってはたまらないポイントとなります。
飼い主に対する愛情が深く、一緒に過ごすことを好む性格の子が多い傾向にあります。また過度な人見知りをすることもなく、他の犬に自分から近寄って行くフレンドリーさを兼ね備えている子も少なくありません。穏やかで無駄吠えも少ないため、住宅環境事情からも日本国内でも人気の鼻ペちゃ犬になりました。
パグ
フレンチブルドッグと並んで鼻ペちゃ犬の代表犬種として挙げられる犬種がパグです。鼻ペちゃ犬らしいぺちゃっとした鼻に大きなつぶらな瞳が印象的で愛らしいパグは、その表情もにこにこと笑っているような表情が多く、多くの人から愛されています。
鼻ペちゃ犬フレンチブルドッグと同じく、がっしりとした筋肉質の体格に短毛であるという身体的特徴を持っています。さらに同じ点を挙げるならば、無駄吠えが比較的少ない点が共通しています。
明るく素直な性格で見ているだけでこちらを和ませてくれるような犬種ではありますが、頑固でマイペースな一面を持つ子も多い犬種です。さっきまで一緒に遊んでいたと思ったら突然飽き、どこかへ行ってしまうといったユニークな行動もよく見られます。
また飼い主のことが大好きという点でもフレンチブルドッグと共通していますが、非常に甘えんぼうで依存心が強いため、他の犬を構っていたりすると嫉妬をする一面も覗かせます。
ボストンテリア
一見、「フレンチブルドッグ?」と間違えてしまう人も多いほどフレンチブルドッグと似た外見をしているボストンテリアですが、ボストンテリアはもう少し細身の体型の鼻ペちゃ犬です。別名として「小さなアメリカの紳士」という呼び名もあるんですよ。
被毛はやはりフレンチブルドッグやパグと同じように短毛ですが、毛質が少々異なり、なめらかな肌触りをしているのが特徴的です。こまめにシャンプータオルなどで拭いてあげると、綺麗な状態を常に保ってあげることができます。
鼻ペちゃ犬のボストンテリアは基本的には穏やかでフレンドリーな性格をしており、遊ぶことも大好きです。ボストンテリアは無駄吠えも比較的少ない鼻ペちゃ犬種ではあります。しかし、テリア犬種でもあるため縄張り意識は強く、子犬期から多くの犬や人と触れ合わせることで社交性が身に付くタイプの犬種です。
我慢強さも持ち合わせている鼻ペちゃ犬のボストンテリアは、小さな子どもの遊び相手になってあげることも多いです。ネットを探してみると、子どもと遊ぶ動画がたくさん見つかりますよ!
シーズー
愛らしく上品な見た目が魅力のシーズーも鼻ペちゃ犬に含まれます。
被毛が長く、カラーも豊富なため、カットによって様々なアレンジを楽しめるという点も人気の秘密でしょう。長毛を活かしても良し、短毛にして可愛らしくアレンジしても良しの愛らしさ満点の鼻ペちゃ犬です。
積極的でフレンドリーな性格を持つシーズーは、上品な見た目とは裏腹に遊ぶことが大好きな活発な犬種でもあります。おもちゃで一緒に遊んであげると可愛らしい動作を見せてくれるところもポイントです。
また基本的には穏やかで落ち着いた性格のシーズーは、家庭犬としても大活躍してくれます。家族の行動をよく観察している子が多い犬種のため、家族の異変や子どもの遊びなどに付き合ってくれる一面も持っています。
長毛犬種のため、ブラッシングは毎日行うことが推奨されている犬種です。ブラッシングを週3回以上は最低でも行う必要があり、怠ると被毛が絡み合ってしまい衛生的にも悪い影響が出てしまいます。
ペキニーズ
シーズーと同様、中国原産のペキニーズはぺちゃっとした鼻とくりくりっとしたまん丸お目々が愛らしい鼻ペちゃ犬です。
実はペキニーズが違う犬種と交配され、改良された犬種がシーズーであるともいわれているほど鼻ペちゃ犬のシーズーとペキニーズは近い犬種でもあります。そのため、シーズーと同じく被毛は長く、ふさふさとした毛を靡かせながら歩く姿が愛らしく魅力的です。
元々の歴史を遡ると、中国の皇帝に送られ宮廷外不出と言われたほど、ペキニーズは宮廷でも愛されていた犬種なので、鼻ペちゃ犬の中でも見た目が優雅で上品な犬であることにも納得です。
この鼻ペちゃ犬のペキニーズは人に懐くことはあまりなく、家族であっても抱っこや膝の上に乗せられることを嫌がる子が多い犬種として知られています。そのため、「猫のようだ」と言われることもしばしばあります。
また頑固な性格の持ち主でもあり負けず嫌いな面も持っています。「喧嘩を売られれば買う」といったスタンスで、相手の犬から威嚇されれば応戦してしまうような一面も見せます。しかし、自分から喧嘩を売ることは滅多にないので安心してくださいね!
鼻ぺちゃ犬が注意すべき「短頭種気道症候群」
フレンチブルドッグやパグ、シーズーといった愛嬌たっぷりな鼻ペちゃ犬たちですが、トレードマークとも言えるこの「鼻ペちゃ」部分が原因となり、病気を引き起こす危険性もあることをご存知でしょうか。
鼻ペちゃ犬は他の犬種に比べて鼻の長さが短いため、呼吸器系の病気を引き起こす可能性が非常に高いといわれています。その中でも特に注意したい病気が「短頭種気道症候群(たんとうしゅきどうしょうこうぐん)」です。では、この短頭種気道症候群とは一体どのような病気なのでしょうか。原因や病気時に現れる症状、また治療法などもご紹介していきます。
原因
まずは短頭種気道症候群を発症してしまう原因についてご説明します。
前述したように、鼻ペちゃ犬と呼ばれる短頭種は、鼻の部分が他の犬種に比べて短いという特徴を持っています。この鼻の構造によって、鼻の穴が狭い、口内の上あご部分が垂れ下がってしまうという問題が生じやすいです。
そのため、興奮時や暑さを感じた時など、他の犬種であれば日常的に行っている呼吸であっても、鼻ペちゃ犬にとっては激しい呼吸となり、気道の入り口となる鼻の穴や軟口蓋部分を塞いでしまう恐れがあります。これにより息がしにくくなってしまったり、最悪の場合、呼吸困難を引き起こすこともあり、短頭種気道症候群に繋がってしまうのです。
症状
では、この短頭種気道症候群を発症した場合、鼻ペちゃ犬たちにはどのような症状が現れるのでしょうか。
まず最も多く見られる症状として、前述したように激しく荒い息づかいが挙げられます。通常の呼吸とは異なり、異常に早い息づかいであったり、「ゼーッ、ゼーッ」「ハッハッハッ」というような荒い息を継続的に行っている場合には、短頭種気道症候群の恐れがあるため注意が必要です。
またこの症状が治まらず進行してしまうと、最悪の場合呼吸困難に陥ってしまい、意識を失ったり、泡を吹き始めるといった症状が見られることもあります。命の危険性もありますので、獣医さんに診てもらう必要があります。
初期症状として挙げられる症状は、寝ている間にいびきをかいていたり、運動をすることを嫌がるといった行動の変化が当てはまります。「なんだかおかしいな」と感じたら、一度病院へ連れて行きましょう。
治療法
呼吸困難や意識を失うといった怖い症状を引き起こす危険性のある短頭種気道症候群ですが、もしも症状が現れた場合、どのような治療法が行われるかも飼い主としては気になるところですよね。
基本的には手術をすることで、鼻の穴を広げたり軟口蓋の垂れ下がっている部分を切除することで気道を解放してあげるという方法が一般的です。しかし、手術をするには麻酔を使用しなければいけません。鼻ペちゃ犬の場合、麻酔をすることによって呼吸不全を引き起こすリスクも高いため、手術をする場合にはタイミングや愛犬の健康状態、飼い主との相談を念入りに行った上で決断することになります。
予防法
このように呼吸不全に陥ってしまうリスクの伴う手術をしなければ治療することは難しいため、短頭種気道症候群にならないよう、日頃から予防する事が重要です。
鼻ペちゃ犬が短頭種気道症候群にならないよう予防するためには、「温度管理」と「肥満対策」が重要なポイントとなります。
まず温度管理ですが、鼻ペちゃ犬は暑さによって激しい呼吸を強いられ、それにより短頭種気道症候群を引き起こすリスクが高まります。そのため、夏場は暑い時間帯に散歩へ連れて行かない、室内は冷房で冷やしておくことが重要です。
さらに肥満になると呼吸がしづらくなってしまうため、鼻ペちゃ犬が短頭種気道症候群を引き起こす可能性が高くなってしまいます。日頃から餌やおやつの与えすぎには気を付け、鼻ペちゃ犬の体重管理や食事管理、適度な運動をさせることが大切です。
鼻ぺちゃ犬が他にも注意すべき病気
鼻ペちゃ犬が注意しなければいけない病気として、「短頭種気道症候群」を詳しくご紹介しました。しかし、鼻ペちゃ犬が気を付けなければいけない病気はこれだけではありません。他にはどのような病気に気を付けるべきなのか、最後に3つの病気をご紹介します。
熱中症
基本的に犬は暑さを感じると呼吸によって唾液を出し、その唾液によって取り込む空気を冷却させて体内を冷やし熱中症を防ぎます。しかし、鼻ペちゃ犬の場合、短頭ですので取り込んだ空気を冷却できず、そのまま体内に送ってしまうことが多いです。すると、熱い空気が体内に取り込まれてしまったり、十分に冷却できずに空気が体内に送り込まれてしまうため、熱中症を防ぐことができず、症状を発症してしまうのです。
鼻ペちゃ犬の熱中症を防ぐには、夏場の室内温度は26℃を目安に保つよう、冷房をつけるようにしてください。さらに散歩は暑い時間帯を避け、朝は6時台、夜は7~8時以降に行くなど、鼻ペちゃ犬は特に工夫が必要です。
軟口蓋過長症
軟口蓋過長症(なんこうがいかちょうしょう)は、先ほど短頭種気道症候群を紹介したときに軽く触れました。軟口蓋と呼ばれる口の中の上あご部分にある柔らかい部分に関する症状を指します。
鼻ペちゃ犬の場合、この軟口蓋が他の犬種よりも長い事が多いため、気道部分が塞がってしまい呼吸困難を引き起こす危険性があります。これにより起こる症状を軟口蓋過長症と言います。
これは鼻ペちゃ犬が持つ元々の構造上の問題ですので、完全に治療するためには手術をするしか方法はありません。しかし、日頃から激しい呼吸をさせないような工夫をし、肥満にならないように体重管理を行うようにすることで、この症状を防ぐことは可能です。例えば鼻ペちゃ犬には激しい無理な運動はさせない、暑い時に外に出さない、あまり興奮させすぎないなど、飼い主が気を付けるだけでも予防することは可能です。
気管虚脱
気管虚脱(きかんきょだつ)は短頭種気道症候群の一種に含まれる病気です。
これは空気を取り込むために重要な気管部分が強度を失ってしまうことによって潰れてしまい、息がしにくくなってしまったり、呼吸困難に陥ってしまう病気です。主な症状として、「ゼーッ、ゼーッ」と異音を放つような呼吸をし出したり、息づかいが激しく苦しそうにするといった症状が挙げられます。
この症状は鼻ペちゃ犬だけでなく小型犬全般に多く見られる病気ですが、やはり呼吸器系が弱い鼻ペちゃ犬は特に注意が必要です。気管虚脱には薬を使うことで一時的に症状を抑える方法と、手術で気管を元に戻す外科的な治療法があります。前者を行うのももちろん良いですが、根本的な解決にはならないため、結果として手術を選択する飼い主も多いようです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。鼻ペちゃ犬はとても愛らしい見た目で私たちを楽しませてくれる最高のパートナーです。しかし、その愛らしいルックスが原因となり、引き起こされる病気も少なくありません。鼻ペちゃ犬の飼い主は日頃から十分注意して生活することはもちろんですが、万が一今回ご紹介したような症状が現れた場合には、早急に病院へ連れて行き診察してもらうようにしましょう。また手術に関しては鼻ペちゃ犬の場合、他の犬種に比べて特にリスクが高くなりますので、そちらもしっかり考えた上で決断してください。