犬は信頼できない人間の指示には従わなくなる

京都大学やウィーン大学など複数の研究チームが、犬が人の嘘を識別できるのか、嘘をついた人へどのような反応を示すようになるのか、単なる間違いと故意の嘘を見分けられるのかなどに関する研究を行いました。
その結果、犬は故意の嘘を見分けることができること、より多く故意の嘘をついた人の指示には従わなくなる傾向があることがわかりました。
犬のがっかりする表情や驚いた表情があまりにもかわいいため、愛犬のかわいさ見たさでわざと嘘をつく飼い主さんもいるかもしれません。ただし、何度も嘘をついていると犬はそれを見分け、次第に言うことを聞いてくれなくなる可能性が高いことを意識して、からかい半分の嘘は控えることをおすすめします。
その場しのぎの嘘はいずれ通用しなくなる

おそらく、かわいさ見たさやからかい半分で愛犬に嘘をつく飼い主さんはそれほど多くなく、犬が苦手としていることをやらせるための「方便」として嘘をつくケースが多いのではないでしょうか。
例えば、ワクチン接種で動物病院に連れて行く際に、「病院に行く」とは言わずに「お散歩に行こう!」と言ってみたり、嫌いな歯磨きをさせるために「おやつをあげるからおいで!」と呼んでみたりといったような嘘です。
しかし、愛犬のための嘘でも、繰り返していると犬はだんだん飼い主の言動を信じられなくなり、指示に従わなくなっていきます。最初の頃は「お散歩」や「おやつ」にだまされて一緒に出かけたり歯磨きをされたりするかもしれません。
しかしそれはその場しのぎに過ぎません。いずれは「嘘だ」と見破られて通用しなくなり、通院や歯磨きといった愛犬の苦手を本当の意味で克服させることはできません。それどころか、ますますハードルを高めてしまう結果になることでしょう。
愛犬を危険から守れなくなる

犬が飼い主さんの指示に素直に従うのは、飼い主さんを自分の親のように信頼し、家族としての愛情を感じているからです。飼い主さんに世話を焼いてもらったり、社会生活に必要なルールを教えてもらったりする中で、飼い主さんの愛情と誠実さをしっかりと受け止めている証です。
ところが、信頼していた飼い主さんが頻繁に嘘をつくようになったとしたら、どうでしょう。飼い主さんへの信頼感と愛情が損なわれる可能性が高く、その結果飼い主さんの指示を聞かなくなってしまうことでしょう。なぜなら、犬は経験したことからさまざまなことを学び、自分がどう行動するべきかの判断基準にするからです。
犬が指示に従わなくなると、必要なケアをしづらくなるだけではすみません。想定外の出来事に直面してパニック状態になった愛犬を落ち着かせられなくなるということでもあります。車の往来が激しい道路への飛び出し、街中での逸走などを止められず、愛犬の身を守ることができなくなってしまうかもしれないということなのです。
愛犬の苦手なことを克服させるためのポイント

愛犬には常に誠実に向き合いましょう。通院や苦手なケアなどを受け入れさせるためであっても、嘘をつくのは良くありません。とは言え、現実的には「お散歩に行こう」とか「おやつをあげるからこっちにおいで」など、ついその場しのぎの嘘をついてしまう飼い主さんは少なくないかもしれません。
愛犬の苦手意識は、飼い主さんが根気良くトレーニングすることで「楽しいこと」もしくは「やる価値のあるもの」へと塗り替えられます。犬にとって今まで避けたかったことが、やりたいことに変化するように動機付けをしてあげることが大切なのです。
褒め言葉や撫でる、遊ぶ、おやつをあげるといったご褒美を上手に活用し、動物病院に行くと獣医さんや看護師さんから優しくしてもらえる、歯を磨くとおいしいおやつが食べられるなど、周囲の人たちの協力も得ながら、犬が「やりたくなる」ような動機付けを繰り返すことが、 愛犬の苦手なことを克服させるためのポイントです。
まとめ

言葉を主なコミュニケーション手段としている人間は、「嘘も方便」とか「ハッピー・エイプリルフール」など、物事をうまく進めたり人間関係を楽しむために「嘘」を活用できます。しかし言葉の裏を読むなどの複雑な思考が苦手な犬にとって、「嘘」は混乱を招き、自信喪失や飼い主さんへの不信感を生むと考えられます。
多くの飼い主さんは、必要だけれども犬が嫌がることを、少しでもスムーズにやらせるために、悪気のない嘘をつくことがあると思います。その根底にあるのは愛情です。しかしそれはその場しのぎにしかならず、愛犬のためになるとは言えません。
最新の動物行動学に基づいたトレーニングを実施している家庭犬のトレーナーやドッグスクール等に相談しながら、嘘でごまかさずに愛犬と誠実に向き合い、愛犬の苦手を克服させられる飼い主さんを目指しましょう!



