犬が夏にかかりやすい「病気」6選
1.熱中症
高温多湿な日本の夏に、犬が最も注意すべきは熱中症です。特に短頭種や肥満犬、高齢犬、子犬はリスクが高い傾向にあります。
初期症状として激しいパンティングや多量のよだれ、舌が赤くなるなどが見られます。進行すると、ぐったりする、ふらつき、嘔吐、下痢、意識障害、痙攣といった重篤な症状が現れ、命に関わることもあるので気を付けましょう。
涼しい場所への移動、体を冷やす応急処置を速やかに行い、すぐに動物病院へ連絡することが大切です。
2.皮膚病
高温多湿な環境は、犬の皮膚に細菌や真菌が繁殖しやすい状態を作り、皮膚病のリスクを高めます。代表的なものに膿皮症やマラセチア皮膚炎があり、皮膚の赤み、かゆみ、フケ、脱毛、べたつき、そして独特な臭いが主な症状です。
特に、股や脇の下、指の間、口周り、耳などが好発部位です。定期的なシャンプーと適切な乾燥、そして通気性の良い環境を保つことが、これらの皮膚病の予防には欠かせません。
3.胃腸炎・下痢
夏は犬も食欲が落ちやすく、消化機能が低下したり、冷たい水の過剰摂取や食べ物の腐敗などから胃腸炎や下痢を引き起こしやすくなります。主な症状は嘔吐、下痢(水様性や血便)、食欲不振、元気消失、腹痛などです。
特に下痢が続くと脱水症状に陥りやすく、体力が著しく低下する危険性があります。愛犬にこれらの症状が見られた場合は、一時的に食事を中止し、水分補給に努めつつ、早めに動物病院を受診するようにしましょう。
4.尿路結石・膀胱炎
夏場に犬の飲水量が減ると、尿が濃縮されやすくなるため、尿路結石や膀胱炎のリスクが高まります。主な症状としては、頻繁に排尿する、排尿時に痛みを伴って鳴いたり震えたりする、血尿が出る、排尿が困難になる、あるいは尿が漏れてしまうといった異変が見られます。
特にオス犬は尿道が細いため、結石による完全閉塞のリスクがあり、緊急性が高い場合もあります。十分な水分補給と適切な食事が予防の鍵となります。
5.レプトスピラ症(人獣共通感染症)
レプトスピラ症は、レプトスピラ菌に感染した動物の尿や、その尿で汚染された水たまりや土壌との接触によって感染する人獣共通感染症です。夏場の水辺での活動中に感染するリスクが高まります。
症状は発熱、食欲不振、嘔吐、下痢に加え、黄疸や筋肉痛、重度の場合は腎不全や肝不全を引き起こし、命に関わることもあります。予防にはワクチン接種が有効であり、散歩後は足をきれいに洗うなど、感染源への接触を避ける工夫をするようにしましょう。
6.その他の注意すべき病気
夏に特に注意が必要な病気として、蚊が媒介するフィラリア症が挙げられます。毎月の予防薬投与が最も重要です。
また、高温多湿で悪化しやすい外耳炎も多く見られます。定期的な耳のケアと通気性の確保が大切です。さらに、BBQの残り物や放置された人間の食べ物など、夏特有の場面で誤飲・誤食のリスクも高まります。
危険な物を犬の届く場所に置かないよう、飼い主が常に注意を払うようにしましょう。
見逃したくない危険な症状と緊急対応
犬の体調異変を見逃さないためには、日頃からの観察が非常に大切です。熱中症の初期サインである激しいパンティングや舌の強い赤み、脱水症状の目安となる皮膚の弾力性低下や歯茎の乾燥、目のくぼみなどは特に注意してください。
嘔吐や下痢の頻度、血の混入、あるいは全く尿が出ない、排尿時に激しく痛がるなどの症状は緊急性が高いサインです。これらの危険な症状が見られた際は、落ち着いて状況をメモし、すぐに動物病院へ連絡して指示を仰ぎ、慌てずに受診しましょう。
今からできる対策方法
快適な環境を整える
夏の暑さから愛犬を守るためには、室温と湿度を適切に管理することが大切です。エアコンや除湿器を効果的に使い、常に室内の風通しを良くしましょう。
また、クールマットやひんやりウェア、凍らせたペットボトルをタオルで巻いたものなど、暑さ対策グッズを上手に活用するのもおすすめです。いつでも新鮮な水が飲めるよう、水飲み場を複数用意し、清潔に保つことで、愛犬が快適に過ごせる環境を整えられます。
運動の工夫
夏の散歩や運動は、時間帯を工夫することが大切です。気温が上昇する日中を避け、早朝や夜間の涼しい時間帯を選びましょう。
散歩に出る前には、アスファルトの路面温度を飼い主が手で触って確認し、熱くないかを確かめてください。散歩中もこまめに水分補給を促し、無理のない運動量を心がけましょう。
暑さが厳しい日は、屋外での激しい運動は避け、室内での遊びに切り替えるなど、柔軟に対応してください。
食事と水分補給の工夫
夏バテ気味で食欲が落ちる犬のために、消化に良い食事を心がけましょう。ドライフードをぬるま湯でふやかしたり、水分量の多いウェットフードを取り入れたりするのも良い方法です。
新鮮な水を常に清潔な器で与えるのはもちろんのこと、食欲増進のために少量の氷を水に浮かべたり、冷たい水を与えたりするのも効果的です。ただし、冷たいものの与えすぎは胃腸に負担をかけることもあるので、様子を見ながら調整してください。
定期的なケアと予防
夏は皮膚病のリスクが高まるため、定期的なシャンプーで皮膚を清潔に保ち、しっかりと乾燥させることが重要です。また、ブラッシングで被毛の通気性を良くすることも予防に繋がります。
レプトスピラ症など、夏に感染リスクが高まる病気に対しては、かかりつけの獣医師と相談し、必要に応じてワクチン接種を行いましょう。ノミ・ダニやフィラリアの予防薬も、一年を通して忘れずに投与することが愛犬の健康を守る上で大切なことです。
飼い主の意識と観察力
愛犬の命を守るためには、飼い主の意識と日頃の観察力が最も重要です。犬の異変にいち早く気づけるよう、普段から愛犬の様子をよく観察し、些細な変化も見逃さないようにしましょう。
特に夏場は、犬を車内に置き去りにするなど、暑い場所に放置することは絶対に避けてください。正しい知識を持ち、迷信や根拠のない情報に惑わされず、常に獣医師の指示に従うことで、愛犬は健やかに夏を乗り切ることができますよ。
まとめ
日本の夏は、犬にとって熱中症をはじめ多くの病気のリスクが高まる季節です。しかし、私たちがそれぞれの病気の症状や適切な対処法を知り、日頃から愛犬の様子を注意深く観察することで、早期発見・早期治療に繋がります。
快適な環境作りや運動・食事の工夫、定期的な予防ケアを徹底し、愛犬が元気に夏を過ごせるよう、積極的に対策をとるようにしましょう。