犬にとっての幸せとは
犬が人と一緒に暮らすためには、家族以外の人や犬たちも敵ではないと理解し、かわいらしく甘えることで愛される犬になることが大切です。この能力を身につければ、愛犬はこの先どんなことがあっても、きっと安全で幸せに暮らしていけるでしょう。
この能力は、犬が自力で獲得できるものではありません。飼い主さんが人間社会のルールを教え、誰からも愛される犬に育てなければなりません。この人間社会のルールを教えるということが、しつけなのです。
愛犬に上手に甘えさせることでお互いの間に愛情と信頼の絆を築き、好ましい行動をしたらすぐに褒めることが、上手に躾けるコツです。ところが、甘えさせて褒めると聞き、愛犬の好き勝手にさせてしまう方がいます。これはしつけではなく、ただの甘やかしです。
甘やかしていると、犬は人間社会の中で暮らすのに必要なルールを覚えられず、周囲から疎まれたり、家族以外の人や犬との付き合い方が分からず、必要以上に臆病になったりと、犬自身にも飼い主さんにもいいことはありません。犬を不幸にしてしまう具体的な甘やかしの例を見ていきましょう。
犬を不幸にしてしまう甘やかし
1.欲しがる物を欲しがるだけ食べさせてしまう
食事は健康に生きていくためにとても大切なものであり、犬にとっての1日の中での楽しみな時間の一つでもあります。飼い主さんの食事を見たり美味しそうなニオイを嗅ぐと、かわいらしく甘えておねだりするかもしれません。
ただし、お腹が空いているわけでもないのにねだられるままに食べさせてしまうのは、甘やかしに他なりません。人の食事は、犬に必要な栄養バランスを満たしていません。
また、必要以上に食べさせることで、肥満を招いてしまうでしょう。栄養バランスの悪い食事や肥満は、愛犬の健康を害し、犬自身が辛い思いをしながら生きていかなければならない結末につながってしまいます。
2.飼い主さんの許可なく食べることを許してしまう
食事の際に、飼い主さんの「ヨシ」などの許可を待たずに勝手に食べさせてしまうのも、甘やかしの一つに数えられます。
食べるのに許可など必要がないと考えるかもしれませんが、それはあまりおすすめできません。許可なく勝手に食べることで、拾い食いや盗み食いによる誤植事故につながるリスクが高まるからです。
誤食は、消化できない異物を内蔵器官に詰まらせる、人には安全でも犬には有毒な食材を食べてしまうなど、命に関わるような危険な状態を引き起こすリスクの高い行動です。
3.愛犬の好き勝手に行動させてしまう
飼い主さんは、いざという時に愛犬を危険な目に遭わせないようにする必要があります、そのためには、名前を呼んで注意を飼い主さんに向けたり、指示に従うようにトレーニングしておく必要があります。
こういった必要なこともせずに、ただ愛犬を好き勝手にさせておくだけの暮らしは、愛犬を危険な目に遭わせるリスクを高めてしまいます。
4.必要なことでも愛犬が嫌がるとやめてしまう
爪切り、歯磨き、ブラッシングなどの日々のお手入れや、動物病院への通院、必要なトレーニングなど、犬によっては嫌がって逃げ出したりカーミングシグナル(ストレスを示す行動)を示すことがあるかもしれません。
しかし、嫌がるからとやらせないのは、甘やかしです。伸びすぎた爪は肉球を傷つけ、歯周病が悪化すると酷い病気を引き起こし、なかなか気付けず必要な治療を受けさせられずに重症化させるなど、その場は良くても、後々愛犬を不幸にしてしまいかねません。
5.人見知り・犬見知りを放置してしまう
愛犬の人見知りや犬見知りをそのままにしておくのも、愛犬を不幸にする甘やかしの一つです。犬にもさまざまな性格や個性がありますが、人見知りや犬見知りをそのままにしてしまうと、愛犬が生きづらくなってしまうからです。
人見知りや犬見知りな犬の多くは、必要以上に警戒心が強く臆病です。これは経験不足によることが多いのが実情です。
愛犬のペースに合わせ、できるだけ多くの人や犬との良いコミュニケーションを経験させることで、人や犬がそれほど怖くないことを教えましょう。愛犬は、穏やかな気持ちで暮らせるようになるでしょう。
しつけ方、接し方に自信が持てない場合はプロに頼ろう
甘えさせることと甘やかすことを混同してしまうと、信頼の絆が崩れたり、いざというときに愛犬を守ることができなくなってしまったりと、いいことはありません。
根気よく、そして知恵を絞りながら、愛犬に人間社会のルールを教えるのは飼い主さんの役目です。しかし教え方がわからない、どのように愛犬と接すればいいのかがわからないという方もいらっしゃるでしょう。
その場合は、身近なプロに相談することをおすすめします。動物病院のスタッフやドッグトレーナーなどのプロに相談し、愛犬と一緒に学びを深めていきましょう。
まとめ
愛犬との間に信頼と愛情の絆を作るためには、愛犬に上手に甘えさせ、安心させることが大切です。しかし、甘えさせるのと甘やかすことを混同してしまうと、愛犬をゆくゆく不幸にしてしまうかもしれません。
愛犬への愛情から出た行為であっても、甘やかしは愛犬のためになりません。時々、今回紹介したポイントで愛犬への接し方を振り返ってみてください。